ネギまとかちょっと真面目に妄想してみた   作:おーり

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これじゃない感を引っさげての二十五話
なんだか大サービス



『そろそろ麻帆良に帰ろうぜ』

 

 かぽーん、という音が響く。

 浴室ではお馴染みの効果音なのだけれど、木桶の音であってるのだろーか。これで鹿縅だとか言ったら首を捻らざるをえないのだけれど。

 そんな益体もないことに思考を持っていかれつつ、風呂場なう。

 女子風呂だと思った? 残念! そらくんでした!

 ちなみに未だにこのかの実家。即ち関西呪ずつ協会(噛んだ)。略して関呪。

 大体犬っ子のせい。

 相手し終えればすでに夕方で、再生遅いネギ君の回復待ち中にこのかが泊まってゆく方向でパパさんに話してた。

 まあお嬢のご実家であることだし、このかパパはネギ君にもそこそこお話があるらしいし、泊まるところが絶対だったわけでもないのですんなり承諾。

 

 このかパパ&ネギ君に連れられ、銭湯みたいな風呂に浸かっていたところでそんな話をされた。

 大体女子の行動力が既定なんだし、別に俺に話さなくっても良かったんじゃね?

 

 

「それでは私はもう出ますが、烏丸君はどうします?」

 

「あー、俺はもうちょっと浸かってます

 ねぎ君は?」

 

「僕は詠春さんがお話があるそうなので、お先に上がりますね」

 

「おー」

 

 

 やったぜい、でかい風呂場を、独り占め(五・七・五調)。

 風呂はいいよね。

 徐倫(ジョリーン)の残した人類の英知だよ。

 あれ、ケインだっけ?

 

 普段ゆったり浸かることをしない俺だけど、麻帆良では基本個人風呂がないからなんだよなー。

 男子寮は大浴場だし。

 大抵いも洗い状態だし。

 部活ではシャワーだし。

 カラスの行水だし。

 せっかくの機会だから脳髄に染み渡るまで溶けきってやるぜぇ。はふぅ。

 

 

――カラカラカラ

 

『とぉーう』

 

――ドボン!

 

 

 ――うぉ!?

 

 

「なんだぁ!?」

 

「――ぷっは! のんびりしとんなー兄ちゃん!」

 

 

 犬っ子が現れた。

 お風呂場で飛び込むんじゃありません!

 

 

「お前かよ。もう平気かー?」

 

「おー。あんなに簡単にやられたん初めてやったわ

 どうやったんや? 攻撃がぜんぜん見えへんかったし」

 

 

 まあ単にインストールドットで頭を揺らしただけなんすけどね。

 『攻撃』自体は正しく通じないから、『揺らす』だけのつもりでのスタンド攻撃。というよりは触れた程度の攻撃だけど。

 三箇所くらい別々の場所から頭だけを揺さぶれば流石に三半規管とか脳とかもまともに動けていられるわけないし。

 

 ん? ヒテンミツルギスタイルはなんだったのかって?

 ただのポーズですけどなにか?

 

 

「……まさか飛天御剣流とはな、ほんもんの使い手がおったなんて、世界は広いで」

 

 

 信じるなよ。

 

 

「……そんな兄ちゃんに、折り入って頼みがあるんやけど」

 

「おー? なんだー?」

 

 

 ここんところ誰かに何かを頼まれてばかりのような気もする。

 そろそろ「だが断る」と主張しておいたほうがいいのかもしれない。

 

 

「――俺と、結婚してくれへん?」

「だがことw――なんだって?」

 

 

 おかしいな。俺の耳がおかしくなったんだろうか。

 思わず難聴系主人公みたいな聞き返しをしてしまったが、俺は悪くない。

 

 

「せやから、俺と結婚してくれ」

 

「――ああ、耳がおかしくなったわけじゃなさそうだな……どういうこった」

 

 

 ウホッ、いいショタっ子! いいのかい? 俺はノンケでもほいほい食っちまう黄色いタクシーなんだぜ?

 ――みたいなことは絶対言わない。

 つうか、

 

 

「男に求婚するとは……

 修行のし過ぎで頭がおかしくなったか」

 

「なんでや」

 

 

 その返答こそなんでだよ。

 

 

「あのな。おとことおとこはこのくにのほうりつではけっこんできないんだよー?」

 

「なんで全部ひらがなやねん!? 殊更馬鹿みたいに扱うなや!」

 

「ことさらバカだろーがてめーは」

 

 

 会って一日も経ってないけど。

 こいつが脳筋なのは変えようのない事実だと思う。

 

 

「つうか出てけ。今すぐ出てけ。男に言い寄られたとかいう事実を無かったことにしたいから。俺とお前は風呂場では会わなかった。いいな?」

 

 

 くそ、なんで俺は『大嘘憑き』を持っていないんだ!

 

 

「そんな邪険に扱わんでも……

 つーか、」

 

 

 手をひらひらと振って立ち去れアピールをしていると、不意に犬っ子がその手を掴む。

 ぐいっ、と、そのまま湯船の中へと引き下げた。

 

 

「誰が、……んっ、誰が『男』やねん」

 

 

 小太郎の赤らめた顔を思わず凝視し、同時に、ぷに、という柔らかい感触が手に伝わる。

 視線は濁り気のない湯船に張られた湯へ向かい、水鏡越しに揺れている『少年』の肢体を窺う。

 この手を下ろした先の箇所を見、その表情を情報の一端として観測。発言、行動、そして感触を改めて知るべく、微かに動かす。

 

 

「ひぁ……っ」

 

 

 びくん、と小太郎が甲高い声を上げて身を捩った。

 

 というか、この感触は、どう間違っても、

 

 つ い て な い

 

 ………………殿、こやつ、女子でござるぞ……。

 

 ――どういう、ことだってばよ……。

 

 

   × × × × ×

 

 

「ほぉー、一族の集大成ねー」

 

「せや。今日び犬神憑きだけじゃ生き残れへんねん」

 

 

 なんだかややこしい話を聞いてしまった。

 

 なんでも、この『十三代目(・・・・)犬上小太郎』は女子の身でありながら実力も相俟って襲名してしまった『犬神筋』の次期党首だとか。

 本来『神族』として集落の信仰と畏怖を一身に受けているはずの『犬神筋』だが、群や地域の吸収合併や過疎化などの影響でそれらを讃え奉る『周囲』の人間が減少に。

 いくら神だといったところで、奉る人間がいなくなっては正しく成立するはずもなく、このまま時代の波に呑まれて消え行くはずであった。

 

 それをなんとかしようと一念発起したのが『先代』の小太郎。

 彼は狗族、俗に言う『人狼』または『ワイルドハーフ』などと呼ばれる『妖怪』を嫁として引き入れて血筋の強化を図ったのだという。

 まあそんな意図は後付けで、本音は、好きになった嫁さんが妖怪でした。という事実もあるやも知れないが本当のところは知らん。

 

 結果として現在の『小太郎』はこれこのとおり。

 一族の期待を一身に背負い、『犬神筋代表』として関西呪術協会へと出向していたのだという。

 それも一族自体の意図や本音がどの辺にあるかは知らないが、襲名までしているということは実力的にも血統的にもこいつが一番優れているのだろう。

 

 ……つうか、そんな話を風呂場でするなや。

 

 

「なんで結婚とかってなったんだよ……」

 

「おかんが強いやつと番(つがい)になれば将来あんたいやー、ゆーて

 あと千草ねーちゃんが風呂場で身体を触らせれば大体の男は落ちるゆうとった」

 

 

 眼鏡ェ……!

 

 

「とりあえずその千草とかいう奴の話は聞かなかったことにしておけ

 つか人間と結婚したって言う割には妙に野性的なおかんだな」

 

 

 実際触ったことに関してはスルーの方向で。

 俺からじゃないもん。

 柔らかかったけど、無理やりとかじゃないもん。

 

 

「なーなー、結婚してー」

 

「こ と わ る」

 

 

 意味わかって言ってんのかよ色々とやばいだろこの娘。

 というか原作どこいった。

 犬神筋とかのくだりは絶対原作に無いだろうがよ。

 いや、原作で犬神(物理)っていうのもどーかと思ったけどさ。

 本物の犬神筋は小太郎の語った通りの『憑き物筋』の類だって話だし、呪詛や怨念方面に偏った『妖怪』とは別種の民俗学分野の一族がなんでこんなんになっているのかは……、まあ魔法が実際にある世界だからなー。仕方ないのかも知れん。

 

 

「つーか俺はもう上がる。結婚もしないし明日は帰るし」

 

「えー、ほんなら俺も、」

 

「馬っ鹿、おま、そのまま上がろうとすんな!」

 

 

 見えちゃうでしょうがぁ!?

 

 

「?」

 

「羞恥心ぐらい持てよ……っ!」

 

 

 きょとんとした顔で湯船からざばぁ、と上半身だけを外気に晒した小太郎の胸部は、確かに女と言われれば納得の微かな膨らみがあr――

 

 

――カラカラカラ

 

 

 ――はい?

 

 出ようとはしていたが、戸に手をかけてはいなかった。

 それなのに戸を開ける音が鳴り、思わずそちらを振り返る。

 そこには――、

 

 

「――ゆき、ひろ……?」

「え――、そら、さん……?」

 

 

 ――幼なじみの、同級生の裸体が、タオルで腰から下だけをわずかに隠した裸体が、金の長い髪が、豊満な胸部が、見開かれた目が、雪のような白い肌が、薄ピンク色の先端が、きれいな肌が、もっちりと柔らかそうなおっぱいが、全裸が。

 ――そこに、あった。

 

 

「――ぁ」「~~っ!」

 

 

 一瞬、お互いにお互いの状況を姿をすべてを確認し、声を詰まらせて言うべきことを見つけられなくて、次の瞬間には、

 

 

――パァン!!!

 

 

 頬を打った平手の音が、風呂場に木霊した。

 

 ……つうか、でかかったな、雪広の胸……。

 

 

 




~かぽーん
 なぞの効果音。
 正体は永遠の謎。
 本気で鹿縅だったら目も当てられない。

~徐倫の残した、
 名台詞のはずなのにどこか違う。
 ケインも違う。惜しい。

~「俺と結婚してくれへん?」
 この作品の小太郎君は女の子。
 前々回ぐらいから語りたかったネタ。
 困るのは夏美ちゃんぐらいだけど、元の世界線を知らなければ問題ないよね!

~先代の『小太郎』
 原作で両親がどうなっていたのか知らないけど、男女と人種がこうならばこうなっていたんじゃね?くらいの軽い気持ちでの改変。
 今でもご両親はラブラブ夫婦。

~眼鏡ェ
 いい年のお姉さん(意味深)。
 やんちゃな少女に何を教えているのか。
 ナニですね。わかるわ。

~お風呂場でばったり
 ラブ米の定番。
 やっとスレタイ詐欺と言われない仕事をした気分。
 こんなんどうよ、という気持ちで額を拭う。
 被害者はいいんちょ。

ちょっと短いかも。二十五話でした
改めて読み返してみると超ひでぇ。なんぞ、この内容www
ちなみに前回の番外編で語るはずだった注釈は多分次回か次々回あたりの予定。しずな先生の第三形態とかね!

現場は風呂場で濡れ場な表現が多分にあった今回ですがぎりぎり全年齢向けに書けたと思ってる。いやアウトじゃね?とお思いのあなた、富士○書房とかのラノベならこれくらいの表現はありますよー
ありますよね!?(切実な言い訳)

次回はようやく麻帆良へ帰郷
果たしてナニが待っているのか
豪徳寺さんはレギュラーになれるのか?
乞うご期待。それでは

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