ちょっとだけ未来の話を出番のないあの娘で
「いやな? 最近、そらくんとシテへんなぁ……って」
「……おあえ?」
目の前のルームメイトの台詞が、彼女を言葉に詰まらせた。
脳の言語野を正しく行使できなかったその発言に注視することなく、ある意味での問題発言を口走った彼女、和泉亜子は憂鬱そうに言葉を続ける。
「最初にわたしのほうからがっつきすぎたんがいけなかったんかなぁ」
「へ、へぇ……」
「最近はアキラとか明日菜のほうが沢山シテるみたいやし」
「え、ほぇえ!?」
予想外の人物名がふつーに出てきて、さすがに許容の限界を迎える。
目がぐるぐると理解不能を示すかのように廻りだした佐々木まき絵を救助するかのごとく、明石裕奈が会話に参戦した。
「なになに何のはなしー?」
「ゆ、ゆーなー、亜子がシテなくてアキラがシテて最近とみにごぶさたで!」
「いや、わけわかんないから」
まき絵の話では要領を得ない、と視線を亜子へ傾ければ、
「いや、そらくんとシテへんなーって話をな」
「へー……、へぇあ!?」
絶賛混乱中のパッションピンクに引き続き、3-Aにて崇められる乳神様の一角も衛生兵筆頭に狙い撃たれた。
己がよく『知ってる』名を縒りにも縒ってな会話の最中にその気もなく見出してしまい、流石の撃墜率一位も狼狽える。
「あ、でも一番シトるのはふーかとさよちゃんかな」
「聞き捨てならないんだけど!?」
× × × × ×
「そらっちのロリコーン!!!」
「いきなりなんだ人聞き悪ぃ!?」
扉をドバンと開け放ち、人聞きの悪い台詞で突撃してきたのは裕奈だった。
丁度その場にいたのは6号とエヴァ姉だったので、そう言われても言い逃れできないのが物悲しい。
でも此処はエヴァ姉の家だから居るのは仕方ないことだと思うんだ。
でもなんか、よくよく話を聞いてみたら違うことだった。
「なーんだー、シテるシテないって単なるスキンシップのことかー、あはは、なーんだー」
よくわからんが、一応はそういう一線を越えたと言う記憶は俺にはない。
釈明と言うわけではないけど、童貞で悪いかと開き直れば裕奈は朗らかに笑って、
「「ひらがなで話しなさい!」」
「ごめんな、まきえ、ゆーな」
一緒に来ていた亜子によくわからんことで怒っていた。何故か一緒にいた佐々木と共に。
その怒りのままドン、と叩かれたテーブルで湯飲みが跳ねた。威力から怒気の程も伺える。理由はよくわからんけど。
怒られてはいてもどこか朗らかそうに、亜子が「してないしてない」と呟いた後、「まあ、」と続ける。
「かくしんはんなんやけどなー」
「「うおおおおおい!!?」」
だから。一体何の話?
× × × × ×
「はぁ、すきんしっぷ、ですか」
6号が、なんかいまいち合点が行ってないような声音で三人の説明に応える。
エヴァ姉はというと、目線はしっかりと俺のほうを捉えていた。
「なんだ、そんなに言うほどシテるのか?」
「ひらがなではなしなさい
……そんなにしてるかなー?」
言われた風香やさよちゃんとの最近の接触回数を数えてみようと、思い浮かべて指を手折り、浮かんだ数に自分で絶句した。
「……ああ、これは言い逃れできないわ」
「早いなっ」
いや、だって思い返すだけで二人して俺に乗っかかっている姿ばかりが浮かぶし。
二人ともあーやって触れ合うことが楽しくて仕方ないんだろうなー、とは思う。
さよちゃんは実体があるから生身の触れ合いが新鮮なんだろうし、風香は感覚が子供だからだろう。まおちゃんにもそういう感じで通じる触れ合いが多い気もするし。
俺のことを兄代わりにでも思っているんじゃないかな、と。
「(……とか考えてるんだろうな、如何に兄代わりとかいう名目を挙げてもその触れ合いが過剰なことの理由にはならんだろうに)」
「? エヴァ姉、なんか言った?」
「いいや? 大河内と神楽坂はどうなんだ?」
「二人と……?」
あきらは、まだ俺のほうが身長低いからなー。あまり並びたくないから思わず先に歩いちゃうんだけど、そういう時は手を離すなって要求されたし。なんだか面倒を見させられている弟か子供になったような気分で微妙。
明日菜は、やっぱり出かけるときは手を離すなとよく言われる。といってもこっちは身長に大差はないから、のんびりとしたものだ。付き合いだす前と関係性があまり変わってない、とちうたんによく言われるのはご愛嬌。それに関してはあんたに言われたくはない。とだけ返しておく。
「――って感じか」
「う、初々しい……、手をつなぐだけって、なんかすっごく健全なんだけど……」
「すぐにそっちの方向に持って行くお前らがヨゴレてるんじゃねえの?」
「「はぐぅ!」」
胸を押さえて仰け反る佐々木と裕奈。
対して、亜子は突っ込みを入れる。
「でもそのデートの最終地点はラ●ホなんやろ?」
「「「「おっさんかお前は!?」」」」
俺、エヴァ姉、裕奈、佐々木のツッコミが同時に入った。
視界の端では「ラ●ホとはなんですか?」「連れ込み宿のことです。恋人たちが逢瀬を――」と6号と茶々丸の会話がちら見しているが、突っ込まないほうが火傷しない。と見ない振りを決め込んだ。
「でも、アキラはそらくんにあすなろ抱きしてるの見たことあるけど?」
「「ほぉ?」」
裕奈とエヴァ姉がこっちを見た。
あすなろ抱きってどんなの?
「あとは明日菜がだいしゅきほーるどでそらくんにのっかかっている姿勢とか」
「「へぇえ?」」
いや、それはあいつが馬鹿で、混んでいた店で「合い席」の意味合いをそう解釈しただけで、すぐに離れたし。
というか何処で見ていた。お前。
「ずいぶんと密着してるじゃないか」
「そうだねー、誰がヨゴレてるって?」
一応は『付き合って』いるんだし、そうやって怒気を孕んで凄まれる謂れは無いと思うのですけれど。
ちなみに佐々木は一端俺から距離をとって、しかし興味津々でこちらを見ている。
ネギ君にでも要求する気か? 参考にしたいのか? この先起こるとしたら修羅場か惨劇だぞ? そんなのを参考にしてなにをする気だお前。
「わたしにもそーいうのしてほしいなーって」
「……えー」
「なんでイヤそうやねん!?」
思わず引いた。
その俺の様子にエヴァ姉も裕奈も気になったようで、孕んでいた怒気が若干萎む。
宜しい、ならば語って進ぜようじゃないか。
× × × × ×
「――ここ、か?」
「うん、そう、そのへんや」
上気した肌が緩やかに波打つ。
上着は端に脱ぎ捨てられ、指先で触れるたびに怯えたような、歓喜しているかのような、そんな感情で反応が返る様が愛おしさを誘発させる。
「いく、ぞ?」
「うん、キテ……」
露出した肌の、一番敏感な部分。
大きく開いた薄皮を、そらがつつ、となぞり上げる。
「ひぅ……っ」
「だいじょうぶかよ……、止めとくか?」
「んっ、ううん、だいじょ、ぶやから、でも、もっと、優しくぅ……」
「充分優しいつもりだけどな」
そう言いながら、触れることを止めず。
しかも見上げられる顔は、赤く薄く染まりながらも『続き』を期待した微笑。
――だから、これは仕方のないことだ。
そう自分に言い聞かせ、そらは背中へと手を回し――、
× × × × ×
「続きはWebで」
「「「おおい!?」」」
この先は教育上宜しくないからね。
ウン。シカタナイヨネ。
「ちょ、そらっち童貞って言ってたジャン!? 嘘だったの!? 私の気持ちを踏みにじったのね!?」
「あんまり童貞童貞言うなバカおっぱい」
「うわーん! 亜子に寝取られたー!」
寝取られてませんし未だに卒業できていません。清いままです。
でも言わない。なんかこの娘わざと騒いでるのが丸わかりだし。
エヴァ姉のほうも、俺が卒業できてないのは感覚で捉えているっぽい。吸血鬼だからなー。匂いとかでわかるのかも知れぬわ。
結果、騒いでいるのは裕奈だけとなり、
「構ってよ!」
「「「知らんがな」」」
俺、亜子、エヴァ姉が異口同音で切り捨てた。
佐々木? 目を回して寝てるよ。
あ、ちなみに本当に一線は越えてません。背中の傷をなぞったって程度の行為でした。
……そういうのを要求されたから、それ以上のスキンシップとか言われてもなんか引くんだよなー。この娘、アブノーマルすぎじゃね?
割と急ぎ足で書き殴りました。壁を叩く所存で
亜子√だと思った? 残念! ハーレム√でした!
ここに至る道のりが一向に思いつかない。誰か回収率100%のデータを俺にくれ
記念と言うことで書いてみた特別編
時系列は大体夏休み後
仮契約とかの関係上こんな関係になっているけれど本当にこうなるかどうかは知らぬ
多分次回は原作√再開。では