ネギまとかちょっと真面目に妄想してみた   作:おーり

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『聞くところによると若干はらわたの煮え繰り返るO☆HA☆NA☆SHIだとか』

 

「そーいやあ和泉、お前先輩と何かあった?」

 

「うぇ!? べ、べつになんもあらんよ!?」

 

「いや、嘘つけよ」

 

 

 朝連終了後、和泉に気になったことを聞いてみた。見るからにわかりやすいどもり方でうろたえるさまは結構可愛いのだが、嘘を吐かれてスルーできるような問題じゃない。

 件の先輩というのは高校生の部活の先輩であるのだが、マネージャーをやっている和泉とは彼氏彼女の仲となっているという専らのうわさ、もとい現実。というか俺が仲を取り持ったし。リアルで『ラブレターを○○君に渡して』を言われるとは中々に鬼畜仕様だよこの世界。

 しかし、そうまでして恋仲になったというのに今日の二人は若干おかしい。なんだか余所余所しいようにも見える。

 

 

「先輩もなんかお前のこと避けてるし。喧嘩でもした? なんなら前みたいに恋のキューピッドに、」

 

「やめて」

 

 

 怒鳴られた、わけじゃないが、断とした口調にこっちの思考が止まる。

 なんだ、とてつもなくやな予感がする。まるででかい地雷を踏み抜いたような……

 

 

「ごめんな、でもほんとになんでもないから、そっとしといてくれんか?」

 

「お、おう」

 

 

 和泉の口調は至極平坦で、なんだか感情を押し殺しているように聞こえた。

 こういうときは余計なことは言わないのが吉。KYになれ、空気読もうぜってことだな。

 

 そんな馬鹿な思考をしているうちに和泉は立ち去っていった。

 マネージャーの仕事は?

 

 

「宍戸、お前亜子ちゃんと別れたってほんと?」

 

 

うん? 宍戸って例の先輩……、は? 別れた?

 

 

「あー、まあなー」

 

「なんでよ? 可愛い娘だし、もったいねーなー」

 

 

 こっちに俺がいることには気づいていないらしい。

 俺に気づかないまま、先輩らは話を続ける。

 

 

「確かに可愛いけどさー、なんかおどおどしていて話が続かないんだよな。

 年も中二だし、あんまり『そーいうこと』をやるわけにはいかないだろ? だからのめり込む前に別れておこうかなーってさ」

 

「勝者の余裕かよ。イケメン滅べ」

 

「ははっ、まあ付き合うならやっぱり同年代の子って話だな。仲を取り持った烏丸には悪いけどさ」

 

 

 ………………別に俺を気にする必要はないだろうけれど、あんたはもっと気にすべき相手がいるんじゃないのか?

 相手のことを慮ってのことかも知れないけど、それは結局あんたの独りよがりな考え方じゃないのか?

 もっといい別れ方ができたんじゃないのか? あんたは俺たちより年上で、経験も豊富なんだろ?

 ………………なんで和泉が辛そうにしているんだよ?

 

 先輩に気づかれないようにその場を後にした。その人が特別悪いってわけじゃない、強いて言うなら間が悪い程度の話だ。

 でも和泉にとっては、中学二年で子供であったとしても、あの時俺に仲を取り持って欲しいと頼んできたあの時の様は、あいつにとっても一世一代の恋だったのは間違いなく思えた。

 

 それからは、なんとなく和泉を気にかけるようになっていた。

 これが恋だとは、あまり思いたくはない。

 

 

   × × × × ×

 

 

 ………………と、いうような話が半年前にあったとさ。

 

 馬鹿か、俺は……。

 

 は、恥ずかしすぎる……っ!

 思い返して脳が千切れるような羞恥! 誰か俺を殺せ!

 なんなの!? 「恋だとは思いたくはない(キリッ」!? 何かっこつけてんだよ馬鹿か俺は!?

 それでやったことも特にないよ! 和泉のやつが可哀想だとか勝手に無意識に思って、それに惹かれているような猿かと思うような直情思考に陥ってんじゃねえかよ! 嫌いじゃないよ! 嫌いじゃないけど漫画だろ! 漫画でも現実だけどさ! 割り切れるかヴォケェ! なにを言ってんだ俺は!

 

 ぐぅあぁぁぁ……、落ち着け俺くーるになれ、俺は割り切っているだろ。

 この世界は漫画。俺はそれを割り切って楽しむために生きている。

 チートで無双だー。ヒロインかわいいー。エッチな場面もご褒美です! って自覚していたはずだろ。

 そりゃ修行で心がささくれ立っていたときは愚痴愚痴と文句も出たけどさ、全部が全部本音じゃねえよ?

 それがなに? 可愛い娘とお近づきになってにゃんにゃんするためにその子を気にかけて半年部活に付き合って………………告白できない中二か!? 中二だよ!

 

 ……まあ、今更内申どうこうされたくはないから部活やめるとかはしないけどさ。

 

 ………………この考え方もどうなんだよ。

 

 はーあ、頭の中ぐっちゃぐちゃさ。こんなんで主人公が現れたときに介入できるのかねぇ。

 和泉はもっと幸せになるべきだと思うから、あいつの次の恋であるネギとの関係を推し進めてやろうと思っていたんだけど。

 

 あれ、この考え方もなんかおかしい気がする……。

 

 

「どしたん? さっきから百面相しとったけど……」

 

「あ、和泉。

 え、そんなに変だった?」

 

「うん。高畑せんせーのことで思い悩んでいる明日菜みたいやったな、さすが幼なじみ」

 

「マジでか」

 

 

 むぅ、幼なじみと呼ばれるのは不本意ではないが、アレと同列に見られるのは流石におかしい人な気がする。自重しよう。

 

 つーか、俺は認識阻害も効かない障壁が常時張っているから、そんなにぐちゃぐちゃと思い悩むようにはなるはずもないんだけど。

 どうしてこうなった?

 




~ATフィールド並みの
 最強の拒絶タイプだ。→要するに人の意見を聞かない頑固者。→じゃあこの内心は全部こいつの本領じゃん。→そこまで思考が及ばない。元から考えるのが得意なタイプじゃないくせに思考する渦に嵌まりだした思春期であった主人公。もっと成長しましょう。

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