あの後起こったことなんて、寝汗で寝苦しいエヴァの身体を拭いたり、心細いエヴァに寝付くまで手を握られたまま離されなかったり、夜半にエヴァがふと目が覚めて部屋を見回してみるとそらが椅子に座ってでも隣で舟漕いでる姿にホッとしたりにやにやしたりとそれくらいしかないもんね!
そんなことより三十四話を始めるんだからッ!
ばーかばーか!
「復活……」
ぐっ、と広げた片手を握り締め、
「復活……っ」
それを胸のところへ近づけ、
「――ふっかぁぁぁぁつ!!!」
高々と掲げて、ロリータ吸血鬼は「ひゃっはー」とはしゃいで見せた。
本日、大停電予定日の午後七時半くらい。無事風邪から快復しきったエヴァ姉は、なんとか当初の予定を解消できそうである。
まあなんだかんだとはしゃぎつつ、あの後二日くらい寝込んで正直予定ギリギリなわけなのだが。
病み上がりなのだからもうちょっと大人しくしていたらどうよ? と思わなくもない。
なんだかんだで大停電には、学園結界が電力供給の不足に伴って一旦消滅するわけで、そうなると真祖の吸血鬼であるエヴァ姉も力が戻る。
その隙に『外に出られない封印』である『登校地獄』を解呪するのが今回のミッション。
『登校地獄』を解呪するにはかけた本人であるナギ=スプリングフィールドの血統が必要であり、その代替え品としてネギ君の血が狙われているのが真相なわけだ。
ちなみに件のネギ君を呼ぶメッセンジャーの役割は、原作通りに血を吸ってあったという佐々木まき絵。呼び出しに伴って運動部他三人も芋づる式に引きずり出さないように、なんとか佐々木だけを動かすように予めエヴァ姉には言ってある。
いや、だってアキラたんとか巻き込んだら後で何言われるかわからんし……。あと一応は茶々丸の友達だそうだし。
それはそうと、エヴァ姉も随分とテンションが高いご様子。あのしおらしかったエヴァ姉はもういないんだね……。正直、あんな感じの妹がいたら確実に犯罪に走っていた。危なかった。
今にも「清々しい気分だぜぇ~……まるで新年一日目の朝に(ry」とか言い出しそうでちょっとだけ引く。
満月も一緒に昇っている、とか言っていたので魔力も最高潮に達しているのだろう。……って、ん?
「エヴァ姉、ちょっといい?」
「清々s、ん? なんだそら? 聞きたいことでもあるのか?」
おお、いい笑顔だ。
何か言いかけたことは聞かなかったことにしよう。
「エヴァ姉って満月時に一番強くなるって言ってたよね?」
「ああ、その通りだ。月の魔力が一番高まる今日に大停電が起こるとはなぁ。くっくっく、爺も詰めが甘いことだ……!」
「それおかしくね?」
「――え?」
「いつか見た文献ではさ、吸血鬼の力の基本は重力を操りその源流である『重力子』を支配することだって書いてあったんだけど。
それ故に、星の重力が高まる太陽の出ている昼間や満月時は、重力への干渉が効きにくくなるために弱くなる。ってもあったんだけど。
だから、吸血鬼の最高時は、星の力が分散する夜、それも新月時が一番だ。って」
「…………」
「逆に、吸血鬼の対存在である人狼が満月時に一番強くなるのは、人狼こそが吸血鬼の天敵だから。ともあったけどね。
その人狼も、重力子の干渉によって吸血鬼が別の吸血鬼に対抗するために作り出した改造人間的な下僕だから天敵足り得る。っていうらしいけど」
「………………」
黙ってしまった。
ひょっとしてエヴァ姉もそのこと知らなかったのかな。それともエヴァ姉が特別なだけ?
まあ、どっちにしろ満月でテンション高まるってやっぱ吸血鬼らしくないよな。どっちかというと狼男っぽい。
「じゃあエヴァ姉は今日から語尾ガンスね」
「ガンス!?」
× × × × ×
「エヴァンジェリンさん! ……って、あれぇ?」
「ガンス……、ガンスってなんだよ……」
ネギ君登場。
でもエヴァ姉はさっきの会話を未だに引き摺っているらしい。代わりに俺が相手しておこう。って、おやあ?
「ネギ君、キミ一人?」
「烏丸さん……あの、エヴァンジェリンさんは一体……?」
「まあすぐに戻るさ
で、キミだけなの?」
やってきたのはネギ君一人。従者が一人も居ない状態では、勝負は目に見えてると思うのだけど。
「はい、まずは話し合いに来ました」
「ふっ、話し合いとはまたずいぶんと甘いことを言うな?」
エヴァ姉が復活した。
二人が会話するらしいので、心持ち控える気持ちで聞き手に回る。
「はい。僕の父さんが十五年前に呪いをかけて麻帆良に封じ込めたって……茶々丸さんに聞きました」
「ふん、しゃべったのか、このおしゃべりロボめ」
睨まれても、何処吹く風だよコイツも。
前から思っていたけどお前本当に従者? 本当にロボ?
「でも、本来の『登校地獄』は卒業と同時に解呪されるものだとも……、正直、父さんの封印法がバグってるんじゃないかとも思います」
鋭いな。
「だから、解呪のお手伝いをします! その代わりに生徒を襲うのはやめていただけませんか!?」
あれー。なんか微妙にハナシが食い違ってない?
エヴァ姉のほうを見ると、ちょっと口の端が引き攣っているのが見えた。
「……フン。私は吸血鬼だ、人を襲うな、と言うほうが無理な相談さ」
えー?
実はそれほど吸血行為しなくても結構平然と生きられるのに?
「だからこそネギ先生、言うことを聞かせたいなら勝って見せろッ!」
「オールベットだッ!」と互いの血と尊厳を賭けた勝負を挑むエヴァ姉。
ははぁ、このロリっ娘ってば、偶には俺以外で遊びたいからこんな風に挑発してるな?
まあ、いいけどね。
「……わかりました。それではエヴァンジェリンさん、勝負です!」
そう応え、杖を構えて向けるネギ君。
ふむ、そろそろいいか。
「よし、よく応えた。じゃあはじめようか」
立ち上がり、コキコキと首を鳴らす俺。
エヴァ姉の傍らに立ち、ぽきぽきとこぶしを鳴らす茶々丸。正直俺よりやる気だ、こいつ。
「「え」」
異口同音に言葉に痞えるエヴァ姉と葱坊主。
「おいおいどうした? 鳩が88砲(アハトアハト)喰らったような顔してるぞ?」
「砕け散りますよねそれ!? じゃなくて、あの……ここは僕とエヴァンジェリンさんの一騎打ちにする場面では……?」
「ははは、面白いことを言うなー、ネギ君は
――魔法使いの戦いが、そんな正々堂々とできるものだと思っているのかい?」
そう応えてやったら、だらだらと脂汗を流し始め、
「い、いえ、こっちは、ほら、従者も連れてきてませんし、騎士道精神、とか……」
「俺は紳士ではあっても騎士じゃない
茶々丸は元より従者で人形。エヴァ姉にいたっては吸血鬼だ。キミらの都合を慮る悪役が、どこにいるのかな?」
ははは。
更に流れる汗の量が増えたなー。
今にも泣き出しそうだゾ?
「さて、奇しくもあの夜と同じ状況なわけだし、口上を上げておこうか?」
エヴァ姉は何処か他人事みたいに乾いた笑いを浮かべているので、代わりに俺が。
正直いっぱいいっぱいな感じにしか見えないネギ坊主は、ひぃ、と息を呑んだ。
「さぁ――始まるザマスよ!」
「………………え?」
「………………」
「………………フンガー」
応えたのは茶々丸のみ。
空気が、凍りついた。
俺と茶々丸の目線が、エヴァ姉に刺さる。
ノっかってよ。
「いや、言わないからな!? 空気読めよお前みたいな目で見られても言わないからな!? というか茶々丸も何故ノった!? フンガーって何だフンガーって!?」
「正直、言わなければ宇宙の法則が乱れる気がしました」
「なんだその意味不明な理由は!?」
うちゅうのほうそくがみだれちゃ、仕方ないでしょ。
せっかくのガンス要員なのに……。
「……あっ、ま、まともにはじめてくださいよ!」
ネギ君、それ違う。
~まえがき
わっふるわっふる多過ぎぃ!
本気で対処しきれないのでこれで勘弁。
~吸血鬼と人狼の関係性
実は結構知られてない隠し設定。しかも割りと現実的な方面での。設定を掘り下げた解釈でもある。
この世界にて適応されるのかは謎。
~吸血鬼の性質
重力子を支配するので本格的な真祖になれば太陽も克服できる。ハイデイライトウォーカーなんかメじゃない。それどころか太陽の魔力まで使用できるのでその力で圧殺されるかも知れぬという恐怖。
はっきり言って勝てる気がしない。
~語尾がんす
狼男といったらこれ。
古くから伝わる文献には吸血鬼はざます、狼男はがんす、人造人間はふんがー、と記されている。
~「さぁーあ、はじめるざますよ!」
いにしえよりの合言葉。
ネギ君のは『幸運星』。実はこっちがオマージュ。
それを口にできた時点で、ネギ君が休み中に何をやっていたのかが容易に想像できそうなもので。
二時間で書き上げた。あまりにも感想の数が多くって(泣
エヴァの続きはあれで勘弁してください
そろそろシリアスな戦闘シーンの出番かも?
結局今回もgdgdなのに、本当にシリアスになれるのか?
行く末は俺にも見極められねえ・・・
あ、章ごとにわけてみました。では