スカーフェイスっていつの間に終わってたん?
フルボッコな三十六話
おや? GPSにジャミングが……?
恐らくは烏丸さんですね。こんな真似ができるのは。
早めに勝負をつけたほうがよさそうです。
そう判断し、雪広さんに回し蹴りを仕掛けます。
が、寸でのところで回避され距離を取られました。
計画通り、彼女としても一端距離を取りたかったのでしょうから、僥倖でしょうね。
「はぁっ、はぁっ、の、のどかさん! 茶々丸さんの心は、まだ読み取れないんですのっ!?」
「そ、それがぁ~」
一向に援護がこないことに痺れを切らしたのか、雪広さんが宮崎さんを叱責しています。
そんなぷんすか怒っている雪広さんに、宮崎さんは読み取っている本の内容を語って聞かせました。
「ジャ、ジャガイモ2個、たまねぎ一つ、にんじん一本、コンソメ適量、牛乳300cc」
「それはシチューの作り方メモですッ!!」
「で、でも~、こんなことしか考えて無いんですよぉ~!」
「言ったはずです、対処はできる、と」
私が宮崎さんの『いどのえにっき』対策として用意して『もらった』のは並列演算用の副次電脳、人間風にいうならば『脳みそをもうニ、三個追加してもらった』とでも言えるでしょうか。
『名前を知る相手の思考を読む』というアーティファクトは確かに脅威かもしれませんが、名前を知れぬ相手が『私』以外に複数内側に居れば、どれが戦闘思考を行っているのかを読みきれないと推測しましたが、どうやらそれは的中したようですね。
ちなみに宮崎さんの読んだのは今夜の献立です。
「そして、雪広さん。あなたの相手もそろそろ終わりにしたく思います
なので、切り札を用意しておきました」
「切り札、ですって……?」
「はい
――『こんなこともあろうかと』ッ」
恐らくは烏丸さんによる魔力ジャミングが広範囲に及ばないうちに、外部パーツの召喚キーワードを唱えます。
すると即座に『それ』が飛来し、『装備』を切り離しました。
切り離された装備が、ガシンガシィンと音を立て私の肩口へと装着されます。
時間にしてほんの数秒。私の高起動戦闘形態が今ここに完成いたしました。
「これが――モード『三面六臂』
またの名を『茶々丸阿修羅モード』です」
副次電脳は二個ですし、外部パーツは四本の腕です。これで某悪魔超人の技だって使えます。
「な……! な……っ!?」
唖然としている雪広さんは言葉を紡げないご様子です。
烏丸さん曰く『切り札とは、己が確実に勝てる回数のことを指す』そうです。
さすがに合気での戦闘技術が優れているからといって、このような事態に即座に対処できる経験は無いでしょう?
「さて雪広さん、ここで質問しますが……
――腕が六本ある相手と、戦ったことはありますか?」
× × × × ×
以前にも語ったと思うが、魔法使いが自分の得意な系統の呪文を使い続けてゆくうちに、本人の属性がそちらへと偏って行く反作用を、俺は『純化』と呼んでいる。
これは得意な属性の魔法が更に強力に行使できるというメリットを魔法使い側へと与えるのだが、同時にその方面の魔法しか扱えなくなる、というデメリットも孕んでいるのだが、所詮は得意不得意の範疇で収められる問題なので実は大して問題視されていないことでもあるのだ。
その前提をさておいて、俺は魔法理論を研究しているうちにふと気づいたことがある。
はじめから一属性のみを偏らせる魔法使いを作ることはできるのか? と。
はっきり言ってマッドサイエンティストの考え方なのだが、同時にやってみたいこともあったので、更にはエヴァ姉の城という時間がそれなりにある場所も提供してもらっていたので、ついその研究を完成させてしまった。
その完成系の一つが、わが娘『セルシウス』となる。
『凍れ』
呟きの一つで、『共に』召喚された吹雪が彼女の意のままに簡易ゴーレムらを氷漬けにしてゆく。
威力的に俺も巻き込まれてもおかしくない距離と効果なのだが、俺は『同調』という裏技で一時的にセルシウスとシンクロしている状態なので平気。
ちなみにこの技はスタンドではなく魔法、それも同一血族にしかできない血統魔法だとかいう特殊な分野の魔法を研究してオリジナルアレンジした代物なので、『俺が』『誰にでも』扱えるわけではないもの。悪しからず。
『どうした小娘ども? 逃げるだけが精一杯か?』
「逃げたくもなるわーーーッ!!!
あたしのインフェルノアニキがまさかの紙装甲じゃ勝ち目なんて無いじゃんよーーーッ!!!」
悲鳴を上げながら早乙女が綾瀬を抱えて全力ダッシュ。ちなみに魔力供給状態。
さっきまで素のままだったが、逃げるために急いで魔力供給をしてもらえるようネギ君に連絡を入れていた。わかるわ。
さてこのセルシウス、構成自体は結構単純。
俺の血を素体として作り出したホムンクルスに氷の精霊を封入量限界まで圧縮して馴染ませた。
ホムンクルス、『人造人間』または『人造妖精』とされる代物だけど、この世界じゃ多分アーウェルンクスシリーズとかと同じようなものなのだろう。作ってから『そういうもの』の製造法令、とか一瞬頭を過ぎったけれど、俺はそもそも正しく『魔法使い』として学徒となっているわけじゃないから気にすること無いか。と思うことにした。実際魔法世界の法律に抵触するかもしれないけど、知らん。
話を戻すと、そもそもこのホムンクルス【フラスコの中の小人】と呼ばれるものは外部供給と最低限度の結界が無ければすぐに自己崩壊を起こす、と漁った文献にはあったので、存在成立の方法としてとある漫画の錬金術を採用して成立に至った。
とは言っても、『例のアレ』のように人の魂を凝縮するような外道な手段ではもちろんない。それの代わりの核として『氷の精霊』という、一属性のみの純化前提製造を積極的に促進させた成果である。間違っても『扉』なんぞ開く必要もないし、「持って行かれた……!」なんてことはしていない。
結果として、エヴァ姉の『氷の女王』状態を常時再現してしまったのだが、まあ問題ないだろう。
同調状態だってこいつが俺の血を使ったホムンクルスだからできるだけだし、その状態だと俺にも氷の魔法や低レベルの攻撃魔法が効かなくなる、という恩恵にも与れるのだけれど。でもエヴァ姉相手だと千日手になるんだよなー。お陰でどのレベルぐらいに戦えるのかがよくわからん。
まあ、あの二人なら確実に勝てると踏んだから召喚したわけなのだけど。
今回の戦いは俺がエヴァ姉との模擬戦でやるような戦い方じゃ駄目だ。
俺の戦い方は、エヴァ姉相手じゃ基本的に防戦一方で逃走前提。逃げてもあいつらは追ってはこないだろうし、魔法使いの世界へ足を踏み入れたあいつらに、魔法の怖さを思い知らせるためには『格の違い』をしっかりと見せ付けなくちゃならなかった。
逃げようと思えば『跳ね馬』であの場から離れられたし、倒すだけなら小太郎戦みたいなスタンドの使い方で嬲るのも出来た。
でも、今回は『わかりやすい敗北』を与える必要があるわけだ。うん、めんどくさい。
あと俺のスタンドってあんまり戦闘向きじゃないし。
「!? え、ちょっ! ネギ君!?」
急に、がくん、と逃走スピードが落ちる。
早乙女の魔力供給がいきなり尽きたらしい。
「そうそう、セルシウスの吹雪は広がれば広がるほど魔力ジャミングがかかって外部との連絡がつかなくなる。早々逃げ切れると思うなよー?」
「なにその反則仕様!?」
『ぼやぼやしておると氷漬けじゃぞ?』
「ぎゃぁーーーッ!!?」
女子の上げる悲鳴じゃねえなあ。
「ええいくそ! やってやるわよ!
召喚! インフェルノアニキ×109!」
さっきよりずっと多い筋肉らがその場に現れた。
むさ苦しさに辟易するが、これが今のあいつらの最大戦力なんだろう。
「それじゃあ止めといくか」
『うむ。愛の共同作業じゃな』
どこで覚えた。
「『エターナルフォースブリザード!!!』」
どーーーん。相手は死んだ。
すいーつ(笑)
~茶々丸の対処
並列演算用の副次電脳と外部装備の腕+4本。全部超のお手製。
止めは阿修羅バ●ターだ!
~烏丸の切り札
彼曰く「勝てる回数」のことをそう呼ぶらしい。スタンドは「隠し球」と思っているっぽい。それにしてもスタンドの評価が低すぎる。
~エターナルフォースブリザード
あいてはしぬ。
ちなみに傍から見た見た目は「石破ラブラブ●響拳」。本当は掛け声は何でも良いらしい。
もっと文量があったはずなのに出来上がってみれば完全なる説明回。ゆえきちどこいった?
大体のところは説明できたはず。前回で疑問に思った方も納得してくれればよろしいのですけどー?
従者サイドは大体これで決着。あとはネギが勝てるかどうか・・・あっ、無理だわ、これ
それでもまだまだ吸血鬼編は終わりじゃないです
もうちょっとお付き合いください。では