ちょっと今回ネタが少ない。戦々恐々な三十七話
見た目どちらも子供にしか見えない教師と生徒が、夜の麻帆良で非現実的な技術で大人の遊び(意味深)を繰り広げているちょうどそのころ。
同じく非現実的な技術を持っている本物の大人、俗に言う『正義の魔法使い』達は大忙しだった。
何故ならば――、
「出でよ式神!」
「四季方従神、春蠱、」
「夏草、」
「秋蛇、」
「冬熊! そしてぇ、式神合成! 究極合体『赤兜』ぉぉぉッ!」
違う漫画に出てきそうな四メートルを越す大熊が、珍妙な和装の男たちの呼び出した『数種の虫の絡み合ったような生き物』や『蔦が絡み合って中身が解り辛い生き物(?)』、そして『頭蓋骨からはみ出てくる数匹の蛇』を次々と取り込んでゆく。
その『合体』は数秒で終わり、大熊の迫力と外観がコレまで以上に化け物じみて見えるようになった。ちなみに合体は例え何分かかろうとも待たなくてはならない。これは世界の常識である。
「ゆけぇ赤兜! 西洋魔法使いなんぞ蹴散らしてしまえぃ!」
「お前たちもぼやぼやするな! 百鬼や九十九でもかまわん! 援護を頼むぞ!」
「「「「「ハイ!!!」」」」」
一際老齢な和装の男性がノリノリで大熊に命令すれば、それに自らの式神を吸収させた青年の一人が背後に控えている数人~数十人の人影らに発破を飛ばす。
言われた人物たちは、己の力量に見合った式神を弱くとも数で補おうと大量に召喚して見せた。
――と、このように。
麻帆良の魔法使い、俗に言う『魔法教師』や『魔法生徒』らが大忙しなのは、何故か今日に限って侵入者らが大量にやってきて急遽対応を迫られたためなのであった。
自らの陣営の戦力が次々と補われてゆくことに気が大きくなったのか、蔦が絡み合った(ry(以下モン●ャラもどき)を召喚した青年が高らかに笑う。
「ハハハハハ! 本当に結界が消えているとはな! あの犬神の小僧の言ったことが本当とは!」
「夏衵、気を緩めるな
いくら人外に負荷を掛ける結界が無いとはいえ、彼奴らの数は膨大ぞ」
かじつ、と青年を呼んだ『虫』を召喚した禿頭の男が嗜める。が、青年には馬耳東風のようだ。
それもそのはず。
この現状は遊●王で相手が攻撃しないうちに自らのフィールドに次々と手札を伏せてゆくこととほぼ同等。これまで『碌に麻帆良へ攻め入れなかった』という鬱憤を晴らすべく、戦力をかき集めてこの場へと辿り着けたことが、青年にとって実に面白い。
「くそっ! なんで今日に限ってこんなに侵入者が!?」
「援軍を呼べ! 私たちだけでは侵入を許してしまうぞ!」
麻帆良の第一線を防衛していた魔法教師が叫び声を上げる。
相手が人外のみで構成するならば『学園結界』を復活させるのが第一なのであるが、今回の侵入者は何故かそれだけではないのだ。
「桜花烈斬!」
「空洞虚実拳!」
「土遁・破濁流!」
「ざーんがーんけーん」
ドォッ、と剣波が拳波が岩石の濁流が土地を削る。
一部気の抜けた声も聞こえたが威力は間違いなく本物で、ただの術者だけで構成されたわけではない『侵入者』の団体が学園結界のみでは抑えきれないことを如実に物語る。
よって、第一に防衛すべきはこの第一線。
麻帆良の停電復帰へ割かれていたはずの魔法関係者らは、戦えるものから次々とこの場へと集まってくる。
停電が復活するまでは、もうしばらくかかりそうである。
× × × × ×
同時刻、世界樹前。
「――良し々々、西洋魔法士らは見事に一線にてかかりきりのようだな」
にやにやといやらしい笑みを浮かべながら、小男が世界樹の前へと現れた。
その背後には数人の人物が控えているが、どの人物も格好は普通の作業着で、夜中にいる場所を除けば魔法関係者だと疑われることもないだろう。
しかし場所は違えるわけには行かない。彼らの目的はこの世界樹なのだから。
「――厳冬殿らはよくやってくれているようですね」
「ああ、あいつ等が盛大な囮を買って出てくれている間に、俺たちは自分の仕事を済ませるぞ」
「「「「はい」」」」
今回の作戦はただの侵入ではない。
そもそも、敷地内に踏み入っても『どろけい』みたいに領土を確保できるわけでもない。彼らが麻帆良に踏み入る目的は、元々二つあるのだ。
一つは、此処が『重霊地』誑しめられている原因、『世界樹・旙桃』を調査すること。
魔法使いらは何故かこの『樹』を重視している。その内包している魔力量、が第一かもしれないが、それくらいならば他にも日本には各地に相応の霊地があるのだ。
旛桃には、此処にしかない『何か』が隠されている恐れがある。
もう一つは、彼ら『関西呪術協会』の長・近衛詠春の娘『近衛このか』。
協会やら長やらとはいうものの、実際のところ『関西呪術協会』は『関東魔法協会』と同じくそれぞれ地方で成立している術士・術式に目を光らせている『だけ』の目障りな存在でしかない。それらはそれぞれが相応の最大勢力を抱えている、というだけで名が知れ渡っているのであって、彼ら自身に『言うことを聞かせる権限』などというものは実は存在していないのである。
仕事が欲しければ自分たちは自分たち自身が相応の場所に売り込んでいるし、政府が人材を欲しがったときには実は相応の専門機関が存在している。間違っても『外様』の息の罹っている『関東』に話を通す必要がないのはもちろん、自分たちが日本の半分の術士を従えていると勘違いしている『関西』の紹介で仕事が降りてきた、などという事態すら自分たちには来た覚えも無い。そんなものが無くとも相応の場所から仕事を請けている身としては、正直こいつらなんのために居座っているの? といい加減に堪忍袋の緒も切れそうなのであったりもする。
そんな両協会の泣き所、とでも呼べる立ち位置にいるのが『近衛このか』なのだ。
それを確保できれば、少なくとも余計なところで茶々を入れられたり、そもそも日本で堂々と認識阻害の結界を敷くような真似を看過する必要もなくなるはずだ。
「――と思ってはいるが、まあ確保とは言っても犯罪的なことをやろうというつもりは特に無いが」
世界樹の幹を削りながら、顔に似合わず小男『八秦』は自身の思考を日和らせた。
彼はよく、見た目変態的。エ●ゲに登場してそう悪い意味で。などと評価されるのだが、その実仕事振りは真面目一辺倒。実は政府からもそれなりの評価と仕事を与えられているのが、この男の正体だ。
しかしそもそも今回の作戦上『近衛このか』は自分たちとは無関係。関西呪術協会に思うところはあっても、男は黙って自分の仕事をこなすのである。
「八秦さん、サンプル入手しました」
「意外と簡単でしたね……」
「できれば地下も見ておきたいが……、それは高望みしすぎか……?
――ん!?」
と、ふと何か脅威のようなものを見過ごしたような、そんな警戒心が彼の中に沸き起こった。
慌てて振り向けばそこには、
――戦車が。
× × × × ×
同時刻、麻帆良女子寮前にて。
一人の男性が必死に逃げて行くのを尻目に、少女はケータイを取り出す。
「もしもし、こちら女子寮前です。たった今侵入者を迎撃したところなのですが」
『そかそか、被害はあるか?』
電話に出たのは少年の声だった。というかそらだった。かけた相手がそうだからそれは間違いないのだが、少女はふと疑問に思う。
「もしかして、侵入してくることわかってました?」
『ん? なんでわかった?』
「あまりにも落ち着いてますので……
とりあえず、一人逃げられましたが、他には被害は無いです」
件の男性と行動をともにしていた他のものたちは、彼女の足下で氷漬けになって転がされていた。
逃げた男性の気配は遠ざかっているので、足下の彼らを捕縛してしまえばあとは魔法教師にでも任せてしまえばいいだろう。
『女子寮に、いない生徒、って今わかるか?』
「私が確認している限りでは、綾瀬ゆえ、早乙女ハルナ、桜咲刹那、龍宮マナ、宮崎のどか、雪広あやか、のみです。停電直後、佐々木まき絵が同室の和泉亜子に引き渡された以外は、外出は誰もしていないかと」
『明日菜とこのかも?』
「……お待ちを
――はい、いますね」
『良し。じゃあ引き続き、番犬宜しく』
「わん」
彼女としては、実は少年の言うことに従う義理は無く、少年がいずれ気持ちよく自分たちの手伝いをしてくれることを見越しての賄賂のようなつもりで今の仕事に就いていた。
決して寮監と言う立ち位置が楽しくなってきたわけでも、たまに少年に頭を撫でてもらうことが気持ちいいというわけでもなく、ただそういう下心があるのだ。
だから余計なことは聞かず、少女6号は足下の人物らを魔法教師へと引き渡すための連絡をしに自室へと戻っていった。
……最後の返事に、ちょっとだけ込めた稚気が伝わったかどうかで少し悩んだのは、誰にも知られてはいけないことなのである。
× × × × ×
『ぶるぁぁぁぁぁっ!?』
『げ、厳冬どのぉ!? くそぉっ! 誰だ! 誰が撃ったぁッ!?』
壮年の男性が自身の砲撃に撃墜されるのを遠目に確認して、彼女はその場を離脱した。
その姿は誰にも見えることはなく、撃たれた本人くらいしか認識することはできなかっただろう。だが念には念を入れて、彼女は遠距離から件の男性を砲撃した。
これで今夜二人目である。
「あと一人いるみたいだけど……
そっちは逃げているみたいだし、もう放置してもかまわないかしらね」
そう呟くと、遠隔操作していた『戦車』に戻ってくるように命令を飛ばした。
彼女は表舞台に立つつもりは無い。
彼女はあくまで静かな生活を送りたいだけの、彼女曰く無害な人物でいたいのだ。
だから魔法使いのごたごたに、進んで関わる気は更々無かった。が、その対象に『スタンド使い』が関わっていれば別だ。
その存在は、放っておけば遠回しに自分に被害をもたらす恐れがあるのである。
「とはいっても、今日のはどれも反応が弱かったわね……
ま、撃っておいても問題ないわね」
一人自室で空恐ろしいことを呟きながら、源しずなは目を閉じた。
× × × × ×
遠見の魔法でエヴァ姉とネギ君の勝負がついたのを確認していたら、6号から連絡が来た。
ちなみに遠見の魔法とは、よく魔法使いが水晶をかざして別の場所を見る、というアレのことなのだが、俺のはケータイの動画での閲覧。……言って置くが、普段から使っているわけじゃないからな。
遠見の魔法って見たい本人が魔力を伝播させる必要があるから、結構逆探知が簡単だったりするんだよなぁ。魔法使いらって意外と視線には敏感だし。
今回は付近に魔力ジャミングをかけているし、先生方も別の対処でいっぱいいっぱいだろう。
つーかエヴァ姉、とどめに”雷の斧“を使ったよ。本人は『選別だ』とかいう屁理屈で父親(ナギ)のよく使っていた魔法を見せたみたいだけど。これがネギ君強化フラグにちょっと近づくかも?
最終確認として6号に聞けば、このかが無事なのは元より、明日菜も外出していないご様子。小動物も仮契約従者が四人いるから安心しきっていたのかも知れんな。
それなりに小細工を弄したのも報われるってなものだ。
俺が今回やったことは、小太郎に麻帆良の結界が弱まる日があることを伝えた程度。そのことをそれとなーく周囲に広めて、とは言ってあったけれど、ここまで大々的に攻め入って来いとは一言も言って無いけど。まあ注意をそちらに向けれたので、万事由ということにしとこう。
エヴァ姉が原作で負けた要因は、麻帆良停電の早期復旧に伴っての結界の急回復。そして魔法無効化体質という、魔法使いにとっては反則級のワイルドカードである明日菜の仮契約。
正直どっちも主人公だなぁ、と言えるくらいには都合の良過ぎる展開だろうけれど、『それら』が追いつかない程度の展開で決着してしまえば問題は無い。
実際、今夜の勝者はエヴァ姉で決定したし。
どんな経緯で関西の人らに情報を流したのが俺だということがばれるかわからんから、そっちのほうにも一応はもっともらしい理由も用意してあるのだけれど……。
まあ、今夜のところは『こいつ』で〆、といこうかね。
「――今晩は
どちらへ、お出かけ?」
× × × × ×
男は、一見駄目人間に近しい容姿をしている。
無精ひげを適度に生やし、髪はぼさぼさで手入れもせず、格好はラフといえば聞こえはいいが半パン・サンダル・開襟柄シャツと一見すれば駄目人間どころか何処のチンピラ? と問いたくなるような格好であるが、こう見えて『この』商売に関しては玄人(プロ)なのである。
素人(アマ)と玄人(プロ)との違いは多々あれど、彼は嗅覚の鋭さ、が一番に取り立たされるのではないかと自負している。
それも生き延びれるかどうか、という瀬戸際にて発揮される嗅覚だ。
男は、笹浦福次はその嗅覚に従って、いの一番に逃げ出した。
もっともその嗅覚が絶対というわけではないことも、彼は自覚している。
この仕事を請け負った時だって、普段から福利厚生の利かぬ仕事をしている癖に生活はその日暮らしに近しい見立ての甘さが招いた借金にて首が回らなくなったことで、急遽纏まった金を欲したところに舞い込んできた仕事を引き受けてのこの様なのだ。
正直、その嗅覚を普段から使えよ、と言ってやりたいこともない。
それでも、無様にでも生き延びる欲求はあるのだと自負できる。その程度には嗅覚も働く。
彼は『関西呪術協会の長の娘の誘拐』という仕事を割り振られたときに、うっすらと感じた『嫌な予感』が、女子寮の前まで来て急速に肥大化したのを感じ取り、真っ先に逃げ出したのであった。
その逃走の最中に、今回の作戦筆頭である『厳冬』が撃墜されたことを無線で知り、自分の嫌な予感が的中したことも確信した。
そもそも逃走する前に見えたが、女子寮にあんなに強い魔法使いが控えている、などという情報は入っていなかったし。元より彼は、金にさえ困っていなければこんな仕事を請け負うつもりもなかった。
金の問題は片はつかないだろうが、前金だけでもそこそこあるのだ。それで一応の段落をつけて逃げる。そして生き延びて残りの借金をどうにかするための仕事を探そう。
そのためにも、こんな場所で捕まらないためにも、人の気配の無い場所を、魔法が使われていない場所を、魔力の感じないような場所を狙って逃走を図っていた。
そこへ、森へと、抜けていったその先に――、
「――今晩は
どちらへ、お出かけ?」
――学生服を着た少年が、笹浦を待ち構えていた。
~侵入者だぁぁぁ
原作でも裏側であったかもしれない展開。さすがにこんなピンポイントで狙われる可能性は低かっただろうけれど、そこはまあ主人公のあれの所為で。
~関西とか関東とか
原作では政府にもコネがあるよ、って何処かで読んだ気もするけれど、この世界線ではこの程度の扱い。
鬼瓦の幕僚長なら魔法使いの要求とかも跳ね除けそうな気がした。気合で。
分野が違う? そんなの関係ねぇ。
~「わん」
犬ミミ6号。今回の萌え要員。
~しずな先生もお仕事してるんですよ?
裏方ですけど、スタンド関連ならば出張ってきます。伏線、そして一部回収は次回。
~主人公だってたまには暗躍するのです。にぱー
暗躍言うにはちょっと動きが少なかったけれど、出てきた効果が意外に大物。
ちなみにそこまでは『見て』いません。『遠見』で観戦したのはエヴァ程度。
~厳冬
本日のオリキャラ。
関西ではそれなりの立場にいる……と、いうわけでもない老人。
戦闘方面のみの意外な脳筋なので主に仕事は現場。関西では古株なのに、性質上取り立たされないという不遇キャラ。
式神『冬熊』は他の式神を喰うことで強くなる。そのために必要な部下がそれぞれ四季の名を冠して部隊が編成されているとかなんとか。
~八秦
本日のオリキャラその2。
たまに政府の仕事も請け負う、とかいう見た目悪役キャラな小男。
らめぇ、なゲームならば結構見るかもしれない、という印象を呪術協会では受けられているとか。主に噂の主は巫女さん方と思われる。
砲撃を受けた理由はもちろん……?
~笹浦福次
本日のオリキャラその3。
正確にはきちんと協会に所属していない、傭兵みたいな駄目人間。土壇場の勘は確かに鋭いのだが、それが常時使えればせめて人並みにはこの仕事でももっと売れているはず。悪い人ではない。
強いてあげるなら運が悪い。
~「ざーんがーんけーん」
例のあの娘。
それはともかく、直接戦闘の部隊の中に忍者の影もあるね。多分覆面で顔を隠してるんじゃないかな。
なんか色々書いてたらずいぶんと間が空いてしまいました。三十七話でした
たまーにこういう書き方になるのは、あれです、病気みたいなものと思ってください。三人称がぁ、三人称が書きやすいんだよぉ・・・
それはそうと、作中でも書いた東西のあれ、ちょっとまじめに考えてもやっぱり二つの組織だけで日本全土を分割できるとは思えないので、この世界線じゃこうなりました。別にディスってるわけじゃないっすよ?
というか、魔法協会ってメガロの請負っていうか、中間管理職みたいなイメージが割りとあります。部下に恵まれているとは思えないですけど
あと以前にも感想で質問されたしずな先生の活動。基本スタンスは彼女もタカミチみたいな生活指導員なんだと思います。この世界じゃ戦う力を持っていますけど、戦えるからといって戦う必要性を自分で選択する必要は無い、っていう、ね?
わかるよね?
なんか長くなったし、次回はもっと短くしたいなぁ
更新期間も。では