『【速報】一月の早朝に幼なじみが屋外でパンツ一丁になっている件について』
今更メタなハナシをするようで申し訳ないのだが、原作の第一話なんてもう覚えていない。それなりに濃い十四年を生きてきたわけだし、原作知識が復活したのがついこの間だといったからってそれで十全に詳細をこと細かく覚えているほど記憶力はない。精々が大まかな『正史』の流れを把握しているって程度の情報だ。
その『記憶』だって、前世で大量の二次創作を読み耽っていたことから補填された記憶だから、公式設定とはやや齟齬が生じているのかもしれないし。
なにが言いたいのかというと、
ネギがやってきたのって二月~三月じゃなかったっけ?
× × × × ×
「やあ、それじゃあ行こうか」
「うす
つーか今更ですけど、男子って俺一人なんですか?」
「まあね
テストケースだって言ったろ? まずは三学期の間に顔を知り合う程度、それから男子への配慮を彼女ら自身にも自然と身につかせてあげたいというのが教師側の意見でね」
ああ、要するに俺は当て馬か。
まあどっちが名目かは知らんけど、「せいぎのまほうつかい」としてはやっぱり目的は「ネギ」の成長を促すほうなのかも知れん。
別段気にするつもりもないけど、良いように使われるって言うのはやっぱり面白くない、よな。
「ところで、エヴァ姉から英雄の息子がこの学園に来ると聞いてますけど、それと何か関係が?」
「あれ、それも聞いていたのかい?
まったく、エヴァは口が軽いなぁ」
ハハハと笑うダンディ髭。エヴァ姉もあんたには言われたくはないだろうよ。
……今更だけど、なんで明日菜はこのおっさんのことが好きなんだろう……。
やっぱりファザコン程度の感情なのかな。結論出すのは早いかも知れんけど。
「そうだね、2-Aで三学期の間に教師としてやってもらうことになるんだけど、烏丸君にはそれもフォローして欲しいっていうのもあるかな?」
「ふぇ?」
っと、変な声でた。俺は萌えキャラかっ。
「えっと、失礼を承知で聞きますけども
あんた正気ですか」
「その言い回しは前にも聞いたね……
まあ、そう聞き返されるのも仕方ないかもしれないね、他の魔法先生方はキミの事を良く思っていないみたいだし」
それを本人に言ってしまっていいのか。知ってるけどさ。
「でもね、僕や学園長個人としては、キミの事をそれなりに買っているんだよ
彼は……、言いようが悪いかもしれないけど田舎育ちだからね、結構世間の常識を知らない部分があると思うんだ」
「魔法使いとして育てられていたらそうなるでしょうね。いくつなのかは知りませんけど」
「その点、烏丸君なら正確な対応でそれとないフォローをできるんじゃないかと思ってね
あと、もしも危ないことがあってもキミならその障壁があるだろ? 英雄を凌ぐ魔力障壁だなんていう神殿の防御に匹敵する代物を抱えているキミなら何とかできるんじゃないかと」
「おいこらおっさん
それは盾か、盾になれってことなのか」
「ハハハ」
目をそらすな。
「まあ冗談はともかく、」
「本当に冗談であって欲しいんですけどね」
「冗談だよ?
彼は将来を有望視されているとはいえまだまだ若い、だからこそ失敗するのも糧になるのだけれど、どうにも本国がきな臭くてね
その『失敗』を快く思っていないみたいなんだよ
それがこっちとしては参ってしまってね」
「随分と明け透けに事情話してますけど……
俺がそれを知って何かに利用する、とか考えないんですか?」
「正式な魔法関係者が身近にいない烏丸君だから言える話さ
残念だけど、僕にはキミみたいな相手がもういないんだよね……」
「おっさんの愚痴相手には進んでなりたくないっすね
あとその言い方だと俺に友達がいないみたいに聞こえるのでやめて欲しいっす」
「キミこそ明け透けだねえ
ま、そういうところが僕としては話しやすいんだけど」
裏目った……。
切る牌を間違えたか……っ。
「大きく失敗すれば僕らが『対処』に回るのだろうけれど、そうなるってことはクラスにもそれなりの『処方』をすることになるかもしれない
僕ら個人としてはそれをなるべく抑えたいんだ」
「倫理的なハナシっすか、わからなくもないのでそれは『理解した』とは受け取っておきますよ」
いい加減聞きたくもないので話を切る。
こんなグダグダを朝一でやりたくはないよ。せっかくほんとの朝一は明日菜のバカっぷりで癒されてきたのに、タバコと硝煙の香りがするおっさんの相手でその空気を掻き消されるのはもう勘弁。
第一、聞きたい話はそっちじゃない。
「それで、その英雄の息子、ずいぶんと若い若いと言ってますけど
大体いくつなんですか?」
知ってるけどさ。
もしも知識と齟齬が生じていたら目も当てられないかもしれないし。
「ああ、言ってなかったっけ?
――十歳だよ」
「魔法使いは本当に馬鹿なのか?」
知ってたけどさ。
× × × × ×
『もう一回言ってみなさいよこのガキーーー!?』
『はわわーーー!!?』
幼なじみが小学生ぐらいの男の子をネックハンギングツリーで〆てる件について……。
すごく、近寄りがたいです……。
「うわぁ……
知り合いが小学生をカツアゲしてるぅ……」
「!? そ、そら!?
何でここにいるのよ!?
っていうかこれはちが……、ヒクなーーー!!」
「あー、そらくんやー
ひさしぶりやなー、今日はどーしたん?」
思わず幼なじみから知り合いへと降格してしまう光景を尻目に、久しぶりに顔を合わすこのかへと向き直す。
「ん、久しぶりこのか
今日は学園長に呼ばれてきました」
「そうなんかー
……ん? 高畑先生と?」
「そっちは付き添いっつうか、そっちにつれてこられたって言うか」
「聞きなさいよ!!
って高畑先生!?」
「ああ! た、タカミチー! たすけてー!」
明日菜と一緒のタイミングで悲鳴を上げている、大荷物を背負った小学生くらいの男の子。多分ネギ。
高畑先生はそれを若干のんきな目で眺めながらハハハと笑う。いや、笑っていていい雰囲気には見えねえですよ? 明日菜のツインテが怒髪のように天を衝いているし。
「明日菜君、放してあげてくれるかな? 彼は大事なお客様でね、今のところは」
まだオフレコにしておくつもりなのか、若干含みのあるような言い方で明日菜にそう告げる。
いいけどさー、その言い方だと「後でどんな風にしてもかまわない」っていう感じにも聞こえるよな。ああほら、明日菜が思い至ったような悪い笑みを浮かべてるし……。
「ククク……、『今のところは』ってことは後でオシオキしてやれば良い訳ね……、散々バカにした罪をその血で贖うといいわ……」
「オイ、暗黒面に堕ちてるぞ
マジで戻って来い」
そんな俺らを余所に再会の挨拶で盛り上がっているおっさんと子供。
会話の端々に迎えに行くはずだったけど、とか、都合がつかなかったから二人を向かわせた、とか聞こえた。おい、まさかとは思うけど俺をダシにしてないか、あのおっさん。
「明日菜~、戻ってこんと話が進まへんよ~?」
「ハッ
……あれ、あのガキはどこ? 確かに磔刑にしたはず……」
「どういうオシオキしたんだよ、お前の想像が怖すぎるわ」
「あ、そら
そういえばあんたはなんでここにいるの? ここって女子校よ?」
「ハナシがすすまねえから後で言うよ
それより、高畑先生ウィズお子様が何か言いたいらしいぞ」
泣き止んだのか、ちょっとだけきりっと心を引き締めた雰囲気を見せるネギ少年(多分)。その横に付き添っているおっさんは授業参観付き添いの親父のようにも見える。心なしか奥さんに逃げられたようにも見える。不思議。
「手数をかけたね、明日菜君、このか君」
「いっ、いえ! でも、高畑先生が言っていた今日来るはずの『先生』に会えなかったんですけど……」
「いやいや、会えているんだよ
ほら、ネギ君」
促されて前へと出てくる、幼いながらもイケメンの空気を醸し出す少年。
ん、んん? なんか忘れているような……?
「え、えっと、あのボクは……
ふ、ふぇ……、」
あ、少年の魔力が昂ってる?
これって暴走の兆候じゃあ……。
ああ、武装解除、か。
「フェックション!!」
その瞬間、正面にいた明日菜の衣服がパンツ一枚を残し、無残にも花びらと化して散った。
誰も、何も言えない。
気まずいなんて言葉ではとても言い表せない沈黙がその場を支配し、その時間は実質たったの数秒だったはずなのに、まるで何時間にも感じるほどだった。
そんな中、俺がまず取った行動は、
「チェキー」
とりあえず、ケータイで写メっておいた。
「と、撮るなバカーーー!!!?」
「うんゴメン。寒くね?」
「もっとほかに言うことがあるでしょうが!?」
「ああ、そうだよな
女の子は腹を冷やすのも問題だし、毛糸のパンツなんて子供みたいな下着でも仕方な――」
「それ以上言うと本気で殺す!!!」
言い合いながらも自分のコートを手渡す。
まだ俺が冬服を使っていて助かったと思え。寒空の下パンいちはどうかとも思うし。
俺は寒いがな。
そしてそのパンいちにした張本人の少年はというと、謝るでもなく目をそらすでもなく、あわわはわわと慌てるばかりで役立たずであった。それでも英国紳士の国から来たのか。少年よ、もっと紳士たれ。
「そらくんの言うのは変態紳士とちゃう?」
「違うよ
変態じゃないよ
仮に変態といわれても変態という名の紳士だよ」
「それはどっちにしても変態やな
とりあえず、写メは消しておこうな?」
「………………うぃっす」
後ろ手に構えられていたトンカチが怖かったので、言う通りにしました。
~盾になれ
烏丸シールドは絶対じゃないっす。ふぇぇ・・・。
~毛糸・くま・ぱんいち
改めて思い返すとひでぇ原作。明日菜が幼すぎる。
この空気が恒常化する女子高って、最早異界じゃね?