ネギまとかちょっと真面目に妄想してみた   作:おーり

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『薬味坊主奮闘日記(略)』

 

「魔法使いには二つのスタイルがある。

 一つはスタンダードな『魔法使い型』。砲撃専門で、距離を取って大魔法で敵を一掃するのが主な戦い方だな。基本的に安全圏から攻撃するのが第一なのだが、そのためには自身の戦闘圏域をしっかりと把握する空間認識能力は必要不可欠となる。まあ戦うことを目的とする奴には多かれ少なかれそれは必須なのだけどな。ちなみに私はこのタイプに当たる。

 もう一つは『魔法剣士型』。接近戦が主な戦い方になるが、魔法と両立して戦術を組み立てる以上同時に二つ以上のことをこなせるような並立思考が必須となる。ワンマンでも真価を発揮できる完全戦闘専門タイプと言ったところか。このタイプはナギだな、近づいて大魔法をバカスカ撃つとかいう戦法をよく取っていたが、対峙した相手が可哀相なくらいだった。

 ちなみにどちらも極めたものにとっては大差は無くなる。得意な戦法とは言うが、なんだかんだで魔法使いというのはどいつもこいつも戦闘野菜人みたいな成長を見せるからな、この先もその意識が改善されない限りは脳筋が蔓延るだけだろうな」

 

 

 最後に愚痴みたいなことを零しつつ、エヴァンジェリンはそう締め括った。

 大人しく聞いていた一行はほほー、と納得のため息を漏らす。

 その部屋の隅でごろりと放置されているそらには誰も気にかけない。ネギを回復させたクタァトは湖に戻ったし、ヘラクレスはそもそも小屋に入れない。という事情とは関係無しに、あまり彼に目線を向けないように彼女たちは極力努めていた。

 単に彼の造った作品の出来を軽蔑していた、というだけであって決してエヴァンジェリンの嫉妬混じりの『お仕置き』が恐ろしかったから、という理由では断じて無い。乙女の心情は複雑なのだ。

 

 

「あのー、そらさんもやっぱり魔法剣士なんですか?」

 

 

 そんな空気を読めていないのか読む気がなかったのか、ネギ少年が挙手して尋ねた。

 それを受けて嘆息を一つ、

 

 

「いいや、あいつは『魔法使いタイプ』だよ」

 

 

 どうやらお仕置きしたことで少しは溜飲も下げたらしい。エヴァンジェリンの怒りが再燃しないことに静かな安堵の息を零した少女たちは、同時にえっ?と彼女を再び見た。

 

 

「やろうと思えばやれるのだろうけどな、そらは魔法と体術を同時に行使しない。距離を取って魔法を使うという、意外とスタンダードな魔法使いだ」

 

 

 もっとも近づけばスタンドという切り札も持っているわけだが、そのことは敢えて教えないエヴァンジェリン。彼女にとってもその技術は見えないし、本気で敵対すれば対処の仕方が今ひとつわからない。

 しかし、それ以前にそらはスタンドを戦闘に多用する、という方法をあまり取らないというのも理由には含まれている。今のところ防御くらいにしか咄嗟に働かせられない能力でもあるので、やり易いほうへと戦法を傾けてしまうのは仕方の無いことなのだが。

 

 

「……意外でした、てっきり烏丸さんは魔法剣士かと」

 

「あいつの専門はそもそも研究職だ。『造ること』に興味が赴いたのだから、そうなるのも仕方の無いところなんだろうな」

 

 

 まあその結果が例の理想の女体を造る、ということに繋がったのだが。とは誰も言わない、言っちゃいけないことである。

 

 

「それよりも私が知りたいのはお前のほうだよ、ネギ先生。

 お前はその歳で、なんでそこまでして強さを望んでる? ナギを探す、という名目だけではまだ私は納得してないんだ。今日は時間もあるし、是非ともじっくりと語って欲しいのだがな?」

 

 

 その言葉に全員が、考え込んでいたネギに視線を向けた。

 確かに、少年特有の強さに憧れている、という理由も無きにしも非ずであろうが、彼にはそもそも魔法世界へと密航したという前科がある。そこまでして強さを手にしたいという焦りが見え隠れしている。向こう見ずすぎるのだ、この少年は。

 

 そのことに朧気ながら気付いていた少女たちは、顔を上げて思いつめる彼の返答を静かに待っていた。

 

 

「――……わかりました。そうですね、皆さんには話しておいたほうがいいかもしれません」

 

 

   × × × × ×

 

 

 気付いたら涙ぐむ少女たち、という現状に直面して訳が分からず。どういうことだってばよ、と比較的平然としている茶々丸に質問してみた。

 

 

「ネギ先生の過去バナ」

 

「把握」

 

 

 ……起きたらクライマックスが終わっていたでござる。

 なんだろう、このすっごい置いてきぼり感。

 まあ、その代償というわけではないだろうが面白い夢を見れたから別段文句は無いけど。魔法世界のラストダンジョンで無双をした謎の夢想。今更だけど火星と麻帆良ってかなり距離があるのにどうやってハチリュウを呼べたのかが未だに謎だ。だからこそ夢だろうなーとは思った。

 

 さて、そんな現実逃避はともかくとして話に加わるか。

 

 

「で? つまりはそれがキミの原動力ってことか」

 

「わっ! お、起きてたんですかそらさん?」

 

「話は夢の中で聞いていた……」

 

「そんなZ戦士みたいなことが……!?」

 

 

 リアクションを返してくれるのはネギ君のみで、他の娘は涙ぐむのにお忙しいご様子である。

 まださっきのことが尾を引いてるとか、そういうわけじゃないよな……?

 

 

「で、だ。キミがそうやって強くなろうっていうのはよくわかった。つまりは村人をそんな目に合わせた悪魔への復讐心か」

 

「ち、違います! 僕は……!」

 

「? 村人を助けたかったら先ずは解呪法を探すじゃないか。力を強さを望む今のキミが、それを否定できるわけ無いだろ?」

 

「そ、それは……っ!」

 

 

 必死で否定しようとしたネギ君を庇うように、その場にいたほとんどの女子が俺とネギ君の間に立ち塞がった。

 まるで悪役を相手しているかのような睨めつけ方がちょっと心に刺さった。

 

 

「何のつもり?」

 

「烏丸さん、言って良いことと悪いことがあるですよ」

 

「イイコトも何も、ただの事実を聞かせて何が悪いのかね?」

 

「こんな幼い子に聞かせることではありません!」

 

「そんなんでも、君らの『先生』だ」

 

 

 割と正論に聞こえたのだろう、俺の言葉にぐぅっと怯む綾瀬。

 

 

「他のも同意見?」

 

 

 伺うように小首を傾げると怯むような表情でも、しかし一歩もその場から離れようとしない仮契約ガールズ+1。

 そんな彼女らを掻き分けて、ネギ君が前へと出てきた。空気を読んで、一触即発の事態とでも思ったのかも知れん。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください!

 皆さんも聞いてください!

 僕がこのことを話したのは、僕の傍にいると危険に巻き込まれるだろうから、もう普通の女子中学生に戻ったほうが良いと思ったからで……!」

 

「――はぁ?」

 

 

 思わず、そんな言葉が漏れた。

 矢鱈大きく響いたその困惑の声は皆の関心を集めるのには適役だったらしく、全員が言葉に詰まったような表情でこっちを見てくる。

 仕方ないので俺はそのまま言葉を続けることに。

 

 

「ネギ君、キミが麻帆良に来て此処まで過ごしているのに今更そこの娘らはキミの言う『日常』には戻れないと思うぜ?」

 

「………………えっ?」

 

 

 これは『原作』でも思ったことなのだが、受け持つ女子らの安否を伺う割には、そういうところがこの子は若干想像力が足りてないようで。

 

 

「まずな、キミが中心的に狙われたと仮定しようか。

 そうなると狙う側の心情は関わるものが増えれば増えるほど弱点として扱えるものが増えるってことになるわけなんだが、狙う側と狙われる側で有利なのはどう考えても狙う側だ。キミは今更縁を切るには麻帆良にどっぷりと浸りすぎてる、そこの仮契約ガールズが魔法から足を洗ったとしても、『狙われなくなる』っていう理屈には繋がらんぞ」

 

「……? っ!」

 

「気付いたか。

 それとキミの襲われた村についてだ。

 実際のところ、なんで襲われたんだろうな?」

 

「そ、それは僕の父さんが英雄で、その生まれ故郷だから……」

 

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、とでも言いたいか? じゃあ、その悪魔の軍団に敗北しつつも応戦できたっていうほぼ軍隊みたいな魔法使いの大隊については? 魔法使いっていうのは村人全員が『そう』なら悪魔にも対応できるレベルにすぐ至れるものなのか?」

 

 

 思い出すのは漫画でそれを読んでいた記憶。誰も彼もが杖を持ち、応戦するような姿勢のままに石化していたまるで何処かの軍隊のような対応力。いつでも襲われることを想定していたのかと思わんばかりに、逃げようとする者があまりにも少な過ぎた。

 

 

「……どういう、ことですか……?」

 

 

 震える声で核心を問うネギ君。

 そんな彼に応える言葉はというと――、

 

 

「――さぁ?」

 

 

 そう応えれば誰も彼もがズッコケた。

 

 

「思わせぶりなことを言っておいてそれですの!?」

 

 

 聞き入っていたらしい雪広が怒鳴る。

 

 

「俺はネギ君の村を襲った犯人じゃないからな。

 憶測でしかモノを言えないさ。

 でも、」

 

 

 言葉を区切り、ネギ君へと再び視線を向け、

 

 

「ネギ君、キミの村が襲われたのは、本当にキミの父親が原因かな?」

 

 

 本人がいない状態でも狙われる『だけ』の村なんてのは意味が無い。英雄は確かに怨みも買うが、本人以外を襲撃して鬱憤を晴らそうとするには、彼の話だと戦力を多用し過ぎにしか思えなかった。

 

 

「だからね、ネギ君」

 

 

 だから、結局言いたいことはキチンと言っておくことにした。

 

 

「キミが世界の中心って訳じゃない。キミ以外が狙われる襲われる要因を生むのは、割とこの世の真理みたいなものだ。

 彼女らを危険から遠ざけようとしても、『絶対安全』なんてのはない。どうせ強くなるなら皆一緒に強くなれよ、先生なんだろ?」

 

 

   × × × × ×

 

 

「で、そこまで言うからにはそらには先生を強くするプランでもあるんだろうな?」

 

 

 括弧良い事言ったのにこれだよ。

 

 エヴァ姉の発言でみんなが視線を向けてくる。

 自分の株を上げたわけだから此処で下げるようなことはあまり言いたくないけど、正直俺にはあんまり修行として使えるネタがないんだよなぁ。

 

 

「んー、火山エリアにでももう一回いってみる?」

 

「嫌ですッッッ!!!」

 

 

 全力で拒否られてしまった。

 トラウマか。そうか。

 

 

「じゃあヘラクレスくんと模擬戦? 彼、ちょっと手加減が出来ない程度の膂力を持ってるから、直に相手するとなると魔法の効かないネプチューン●ンと戦うような状況になると思うけど」

 

「誰ネ、ネプチュー●マンって?」

 

 

 完璧超人。決して四葉のプリキ●アの青い子ではない。

 

 

「魔法が効かない時点で詰んでるじゃないですかやだー!」

 

「“千の雷”の直撃を数十発放てば倒せるんじゃね?」

 

「そんな上手いことサンドバッグにする前に僕の魔力が尽きますよ!?」

 

 

 まあその前にかわすと思うけど。

 

 

「じゃあセルシウスを、」

 

「それはもっと無理だと思うけど!?」

 

 

 早乙女から待ったが入った。

 こっちもトラウマか。そうか。

 

 

「……? それって、どんなのですか?」

 

「氷の女王です」

 

「うえ!? エヴァンジェリンさんみたいな!?」

 

 

 ん?

 

 

「あれ、エヴァ姉、ひょっとして見せたの?」

 

「まあな。というか、それを使わないと逃げ切れなかった……」

 

 

 ああ、ハチリュウね。

 それくらいのレベルだって状態測定が済んでるのならこっちは万々歳だが。

 

 

「あんな究極技法みたいな魔法僕にもまだできないです……!」

 

「だろうね」

 

 

 その状態でも同質だから千日手にしかならんし。

 

 

「そら、此処以外に作ったエリアがあるだろ。そっちを使うのはどうだ?」

 

「あー?」

 

 

 正直、まともな魔法の修行には向いてないんだけどなぁ。

 

 

「んー………………………………………………、

 ………………じゃあ、ダンジョンにでも潜ってみる?」

 

「「「「沈黙長っ」」」」

 

 

 ネギ君とバカイエローとバカブラックと触覚に同時に突っ込みを入れられた。

 ……あとなんか宮崎はキラキラした目でこっちを見てた。

 

 

   × × × × ×

 

 

「大まかな形は俺が手掛けたわけだけど、中の時間の流れは此処とも外とも違う。早い話がダイオラマ魔法球の中にもう一つあるって思えばいいけど」

 

「それも作ったんですか?」

 

「魔法球を作るには至らなかったけどな。

 入り口はこの洞窟からしか入れないし、緊急脱出ルートはクタァトのいる湖に繋がっている。それ以外の出口は“迷宮”の深奥にしか用意されてない」

 

 

 農場エリアの奥の山、そこにある洞窟を進みながら大体の説明をする。

 俺がエヴァ姉にもらったエリアは魔法球ひとつ分のみで、俺はその中に四つのエリアを増築したに過ぎない。

 この洞窟の奥にしかもう二つのエリアへの入り口は用意されておらず、そこも用意するに当たって色々と環境調整する中で一番のネックだった『時間の流れ』を構成するのに、魔法球の術式を模した空間をなんとか作ることに成功した。が、もう二度とやりたくない。

 

 

「正直、あれは作るのに成功したのはいいけどそれだけで割と色んな構成を試したから俺としては大体終わってるものなんだけどな。片付けてない物置みたいなもので、あまり他人を入れたくない」

 

「……なんかスイマセン」

 

「いいさ。使えるといえば使えるし、『チームのレベル上げ』には最適な場所かもしれんし、な」

 

 

 そう進むうちに奥へとついた。

 地面には五望星みたいな形で巨大な魔法円と直線状の溝が彫られており、それぞれの頂点にもまた適度な大きさの円が彫られている。

 全員がその魔法陣を眺めて呆然とする中、古がポツリと、

 

 

「………………人間の魂を代償に賢者の石でも作ったアルか?」

 

「お前からそういう突っ込みいれられるとは思わなかったよ」

 

 

 まあ誰かにそう言われるかも、とは思ってはいたけど。

 

 

「方円はでかいけど入り口は一つだけだ。

 中心に立って“迷宮(メイズ)”と唱えるだけで初心者モードへと入れる。クラスを上げたければダンジョンの奥に用意されている『クリアのご褒美』を見つけるんだな。初心者用は全十階層、半日あれば戻ってこれるさ」

 

「いくつクラスがあるんですの?」

 

「全部で五つ。初心者モード、上級者モード、達人モード、神モード、モード鬼。階層は十、五十、百、五百、千、とそれぞれ上がっていく。

 あと中には俺の手がけた魔獣(モンスター)と、初心者モードのみ休憩所が階層ごとにあるから、休みたくなったらそこで休むといい」

 

「「「「「「……モンスター?」」」」」」

 

 

 入る予定だった六人が聞き違いかとでも言いたげにこちらを振り向いた。

 

 

「そいつらを捕食する上位個体が階層のボスだ。それを倒せば下の階層へと入れる入り口が用意される。ちなみに魔獣の肉は火を通したりすれば人が食うことも出来るぞ。丁度いい魔法薬とかアイテムとかの素材にも使えるから、一部採ってきたら俺が加工してやるよ」

 

「わー、なんか本格的にRPGみたいになってきましたねー」

 

 

 宮崎がのほほんとそう宣う。さっき目を輝かせていたのはあれか、図書館探検部としての血が騒いだのか。

 

 

「迷宮の名前とかはあるんですか?」

 

「一応な」

 

 

 綾瀬が尋ねてきてそう応える。

 誰もが続きを待つ。

 正直、冗談で名づけたからあんまり言いたくないのだが。

 ……期待されてるなら、言うしかない、か。

 

 

「………………。『ダンジョンの達人~何度だって遊べるドン!~』だ」

 

「「「「「「「「「「アウトアウト!」」」」」」」」」」

 

 

 総勢十名での総ツッコミは流石に響くなぁ。

 

 

 




~話は夢で聞いていた・・・
 子供に現実を突きつけるそらくん、素敵!

~ネプチュー●マン
 マグネットパワー!な完璧超人

~四葉のプリキ●アの青い子
 私、完璧!

~賢者の石の錬成陣
 中心は、此処だ・・・!

~ダンジョンの達人~何度だって遊べるドン!~
 ちなみに死んでも出られるわけではなくてコンテニューに入る
 もう一度遊ぶドン?


お待たせしました62話、ちょっと詰め込みすぎな気もしましたがなんとか構成できました
途中の解釈をお前其れ何処かで見たことあるぞ、と思った方には申し訳ございません。以前読ませてもらった二次創作のネギまを参考としました
パクったわけじゃないよ!リスペクトだよ!
でもあの村の事情についてはこの作品ではこれ以上深く掘り下げるつもりはありませんのでそれで打ち止めです。ご安心を
いや、実際凄く説明力のある解釈だったので一番ありえそうだなぁ、とは思ったんですけどね、さすがにそのまま此処で扱うのは駄目だろ、と思いましたので若干暈して付け加えました
実際のところ原作でも『誰が』は明かしても『何故』かは明確にしていませんでしたし、ネギって実は本当にこの世界において付け合わせ程度の薬味的な存在だったのじゃないかなーとも思いつつこんな展開になりました。異論は認める

なんだかモ●ハンみたいなダンジョン攻略でそっちに期待される方もいらっしゃる予感
でも内部を事細かにやる気はないっす
それだけで話題占めるのももうネギまじゃなくなっちゃうしなぁ・・・

次回そろそろ出番の危ういあの娘が登場予定
どうなるかは俺も知らぬ。ではまた

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