二度見も辞さない68話
注意!
今回某西尾維新作品を未読の方にはわかりづらいかもしれませんが、
わかんねえよボケェ!なお方が居ても決して腹パンとかしないで、大きな心でお読みください!
顔面に命中したことを確認して、巧はようやく溜飲が下るのを覚える。魔法は万能だ。これだけの怪我を負っても、この学園でならばどうせしばらくすれば治すことが出来るのだろう。そういう思いで、ぴくりとも動かなくなったそらを遠目に観察する。
烏丸そらは魔法生徒としては随分と低い評価を受けているが、あの真祖の弟子をやっているのは見過ごせることではなく、更に一部の人間にしか理解できないことだがスタンド使いという特殊な能力者であることもあって隠されているが実力はかなり高い。巧も同じくスタンド使いであるから、その実力は一目でわかるようなものではない、と理解できる。
だからこそ、これまでずっと観察し相手の実力と弱点を見極めてきた。ずっと仕返ししたかったが、ただ突っ込むのでは無謀だということは誰の目にも明らかだったので、臥薪嘗胆の精神で伏してチャンスを伺っていた。
それが今日、ようやく憂さを晴らすことに成功した。
その決定打を与えることがほぼ致命傷に近い攻撃となったのは、これまで溜まっていた気分を一新するためだ。決して歯止めが利かなかったとか、そういうわけではない。ハーレムを作っているのが羨ましかったとか、そんな理由は無いのだ。決して。
だが。と巧は考える。
最後にこちらのスタンドの性能をほぼ見当てられていたのが、わずかに痛い。
そもそも同じ部屋であったのだ。四月の初め頃はネギ先生とのごたごたが原因らしく部屋から居なかった時期もあったが、今は部屋換えを申請するほどの理由も無い。怪我の療養を理由に彼の方から部屋を別にする可能性も無きにしも非ずではあるが、どちらかというと報復が待っているのは火を見るよりも明らかなことは確かである。
致命傷に至るほどの害意に晒されれば、普通の人間ならば歯向かわない。これは人間が受け入れられるキャパシティの広さも相俟っての事実であるけど、そもそもの生物的な本能に基づく理屈にも関わる『性質』だ。
それすらも覆すのが主人公という人種である。
実際に存在するかどうかはどっちでもいいが、彼らは『諦めない』。反撃することを、歯向かうことを。だからこそ物語は成立するし、面白くなる。だが。
今この場においては、それは非情に迷惑な性質でしかないのだ。
巧の知る限り、烏丸そらという人物は実に主人公染みている。
真祖に気に入られているというバッグボーンに、ヒロイン染みた幼馴染との付かず離れずな関係性。そして強力な実力に、勝負を決するための天運地運。
羨ましい限りだが、これほどの主人公性は現実じゃそうそう見ることは無い。良くてネギ先生あたりがもう少し成長していれば、そのポジションに匹敵する存在になっていたかもしれないが……。
だがそれでも、『今』は完全に沈黙している。
この『今』を『安全』と認識し、勝利の凱歌に酔い痴れる気分で踵を返し――、
「――感謝する」
――彼から発せられたその一言で、足が止まった。
「正直……、嘗めてた」
起き上がれるはずが無い。そもそも言葉を発せられるはずが無い。
それほどの致命傷を与えた。半死半生で、息をすることも辛い現状で気を失っている。そう確信したはずだった。
「……俺は、自分が何かを使えるという自覚はあっても、……その使い手そのものであるという自覚が薄かったのだろうな。……知識を学び、研鑽を積む。学徒の一角としての責任しか負いたくない、という意識も、心の何処かにあったのだと……、――そう『受け入れる』」
しかし、息を辛そうに、だが流暢に発せられるその言葉には、先ほどまでの這い蹲っているようなくぐもったような反響がない。
そこまで理解して、巧は振り返る。そこには――、
「俺は今、『スタンド使いである』という自覚を覚えた。そういう風に『成長できた』。そのための試練を与えてくれたお前に、そう『感謝する』」
幽鬼のように、映画に見るようなゾンビさながらに、ぐったりとした姿勢のままに起き上がる。
烏丸そらが、復活していた。
ぐしゃぐしゃに潰れて、彼本来の魔法では治すことも出来ないはずの顔面に両手を当てつつ、彼は言葉を続ける。
「魔法使いとしてはエヴァ姉に関わっている以上、アレを超えるだけの成長性を示してくれる対象は居ないと思っていたが、スタンド使いとしてならば話はそう簡単じゃない。何故ならば、スタンドが成長するということは人間的に成長できるということと同義だからだ」
「……? ――ッ!?」
タオルで顔を拭くような、そんな仕草をした。
次の瞬間には傷痕がすべて塞がった、血の跡以外はまっさらに綺麗な顔に戻ったことを見、巧は言葉を失った。
「それでも、俺は正直期待していなかった。成長を示すだけの危機を受けるということは、麻帆良自体に侵入者が深奥まで来るということと同じだ。俺は警備には当たっていないからな、そんな俺が対処する状況なんて、既に麻帆良は八割負けていると見て間違いないだろう?」
言葉を続けながら左肩、太腿、手のひら、足、と手を当ててゆく。
テンポのいいスピードで、傷が次々と塞がってゆく。回復魔法を使うにしてもおかしすぎる素早さに、巧はそれを指差したまま言葉も出ない。
「正直俺自身が強くなりたい、などと考えているわけじゃない。常日頃からそう思うほど切羽詰まった生活をしているわけでも無いし、俺の本分は研究することだというのも理解しているからな。理屈を上手く扱えるだけの土壌があればそれでいい、そう思っていたのも確かだ。だが――、」
スタンド使いは、違うよなぁ?
と、そう言われたときに、巧はようやく気付いた。そらはさっきからずっとスタンドを出していない、という事実に。
「ど、どういうことだよ……っ! さっきから、なんなんだ! なにをやってるんだお前! それに……っ!」
一番気になるのは、最後の攻撃。
あれは確実に『へし折った』はずだ。反撃する意思を。勝負の決定打を。
勝敗は、あれで決まったはずなのだ。
なのに、何故平然としていられる?
「どうやって……! 最後の攻撃を、どうやって防いだんだよっ!?」
その巧の慟哭に、そらはきょとんとした表情を見せ。次の瞬間には、あぁ、と嗤った。
「確かに、あの一撃は見事だった。俺も回避も防御もできない、最良かつ最悪の攻撃だった。
――だから、あえて『喰らわせて』もらった。文字通り」
応えて、べろっ、と舌を出す。そこからは――、
――じゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃら、と。
大量の鉄矢が吐き出されて地面に堕ちた。
「――ふぅ。事前に『め●かボックス』を読んでいて助かったぜ」
「そんなわけあるかぁッ!!!?」
魂からの叫び声が木霊した。
× × × × ×
漫画のキャラクターではあるが、上峰書子というアブノーマルが存在する。
彼女は機関銃の銃撃を『喰らう』ことで防御した、委細の知れない一発キャラでしかなかった。
だから、どうした!?
と、巧は現実の不条理さにツッコミを入れる。
漫画で読んだからって使えたら修行いらねぇよ!簡単に再現できるようなものでもねぇよ!読むだけで強くなれたら魔法使いも今頃強さがインフレしているよ!お前いつ黒神●だかに改名したの!?
と思いつく限りの脳内ツッコミが冴え渡った。
言葉にすれば完全にキャラ崩壊もいいところなので、決して声には出さないが。
あとついでに言うと舌を出したときに、そらの舌の上に『言』という文字が踊っていたように見えた。
なんなの?ついでに言葉使いにも転職したの?スタンド使わないでそっちに転職するとか漫画が違く無い?そういえば復活のときも球磨●禊っぽかったですね。いつの間に世界線が移動したのさ?
と凄く言いたい、そんな巧くんも十五歳。中学生。多分そういう世界にも興味があるお年頃なんだと思われる。エル・プサイ・コングルゥ。
「――さて」
「――ッ!」
脳内ツッコミ虚しく、そらが一言発しただけで巧は身を竦ませる。
此処から第二ラウンドに移る?
そう想定できるが、想定するだけで逃げ出したくなる。
攻撃したのは自分だ。
だが相手も許せないことをした。
それでも、喧嘩は先に手を出したほうに非がある。
世の中の常識ではないが、そんな三段論法もあるのは確か。
今は静かに、地面に落ちた矢を拾っているそらだが、あそこまでボロボロにしたことを怨んでいない、とは思えない。というか、確実に反撃に移られる。
アカン、逃げたい。
巧の泣き言が加速する。
そもそも接近戦が一番苦手なのは、魔法使いとしてもスタンド使いとしても致命的である。巧の戦法は、攻撃力&火力で遠方からの射撃。しかもそれが上手いこと当たる確立が低い。という無様なものだ。バランスが悪いのは、彼自身自覚していることだった。
「どうする?」
「…………?」
どうする、とは?
そらの質問の意図が読めなかった。
「俺としては、悪いことをしたなぁ、という自覚はあるのさ。だからさっきも謝ったし、きちんと弁償もしたい。大柴くん、キミはまだ続けたいか?」
――終われる?
追われることなく終わることができる?
まるで地獄に吊るされた蜘蛛の糸のように、その言葉が希望に見えた。
そうだ、悪いのはそらのほうじゃないか。
そもそも最初に攻撃されるようなことをしたのは彼の方じゃないか。
そこまで考えて、その提案を受け入れようと思ったそのとき――、
「――………………っ」
――唐突に、理解した。
これは、完全に強者の余裕だと。
場の空気を呑み込み、劣勢であったはずの彼我の差を覆し、互いの憤慨を無かったことにし、勝負に負けて優勢を奪い取る。
それだけのことが出来るということを見せ付けられる。そんな惨めな敗北を、ちらちらとイヤらしく見せ付けられる。
そんな相手と、これからもルームメイトとして暮らす……?
「握手をしようぜ。これで手打ちだ」
そう言葉を投げかけられて、手を出してきた。
巧はその手を、――払いのける。
「――嫌だね……!」
自分は悪くない。悪いのはそらだ。
だから、たとえ負けだとしても負けたままではいられない。
手打ち?引き分け?
そんななあなあで、自分の憤慨をなかったことにされて堪るか……!
これが捻くれた鬱屈した思考だったとしても、大柴巧にも意地(プライド)がある。
「け、決着をつけてやる……!かかってこいやぁ……!」
そう心に決めて、烏丸そらを睨み付けた。
声は相変わらず震えていたけど、心の震えは止ませない。そんな臆病者が、堂々と立ち上がろうとした瞬間だった。
「……そうかい」
憮然とした表情で、手にした鉄矢を重ねて束ねる。
「じゃあ――」
束ねた矢を、――捩じる。
「俺の成長したスタンドは、インストールドット・ダイバーと名づけた。自身の中に潜ませることで、最小の出力で最大級の効果を発揮できる、それを理想とした、俺にできる最良の成長がこれだ」
捻じる、捩じて、捻じり巻く。
巧はその様子をじっと見詰め、突然始まったスタンドの解説も黙って聞いた。
未だ強者の余裕を続けているのか、とも思わなくも無い。しかし、これは必要な説明なのだと、感覚で理解する。
「俺の出力はこれで今まで以上になっている。対してスピードや射程はどうかと問われると、そこはそれ魔法がある。距離程度、速さ程度、なんとでもなる。つまり、」
決定打が、ある。
理解して、耳にして、解る。
誘っているのだ。一発勝負にしよう、と。
「手打ちの提案を受け入れない、そんな捻くれものにはこれが一番だな」
そうして出来上がった矢の束は、大きな螺子の形になっていた。
「――って、そこで『それ』かよ……っ!?」
「良いだろ? これで、捩じ伏せてやるよ」
冗談ではない。
何処まで漫画で表現するのかと言いたくもあるが、それを実行できるというだけの性質になったと言いたいのだろう。
……それが果たして成長なのか? という部分については、触れないようにしておく……。
「じょ、上等だ……!行くぞ、レインボウレインボー……!」
「お前にも、雨と泥の感触を味合わせてやる!」
――少年たちの決着は、すぐに着いた。
~めだ●ボックスを読んでて助かったぜ
上峰書子たんマジリスペクト
~『言』
『体言使い』
行動がそのまま現象として顕現する、肉体言語的なスタイル。手を当てれば『手当て』になって傷を塞げるし、攻撃を食らえば『喰らう』ことが出来る。鉄の束を滑ることなく『捻じる』ことが出来るし、螺子で『捩じ伏せる』ことも可能となった
既存のスタイルと違う点は、相手が居なくても効果を発揮できるという点。自身がそれを理解できれば、自身の認識できる範囲内に効果を及ばすことも可能である
但しそら自身はこれが『スタイル』の一種だと自覚しているわけではない
~インストールドット・ダイバー
自らの内側にスタンドを顕現させる新形態。インストールドットは本来『意思』『概念』を表層に顕現させるスタンドなので、この形態になって更に性質に磨きがかかったといえる。というか、いちいち文字を入力するのがめんどくさい、と常々思っていたのでこういう風に成長しないかなぁ、という理想が形になった形態
スタンド本来の利点を捨てることで能力のみを特化させた超接近戦仕様。より使いどころが難しくなった、とも言える
パワー:E スピード:E 射程距離:E 持続力:A+++ 精密性:C 成長性:C
という低スペックなのはそら本来の機動力に由来する所為。これに魔法を加えることができるので『戦いの唄』などを使えば前半三つはすぐに覆せる
~螺子
皆ご存知、裸エプロン先輩の特化技能。の、超劣化再現
でも別にこれで貫いたからといって何かが出来るというわけではない。単に相手を『捩じ伏せる』だけなのでせいぜい心を折る程度
すこーし短い
でも大体出来たので更新
今一歩足りないなーと思うのは俺だけじゃないはず
どうしよう、西尾維新を読み直すか?
でもそらの負完全っぷりがやばい
世界が違ったら確実にそっち側へ傾いていたと思う
悪魔が未だに現れないレイニーデビル
次回で終了予定。では