ネギまとかちょっと真面目に妄想してみた   作:おーり

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『不思議の国のエヴァンジェリン』

 

 むかーしむかしと言うほどでも無いろんぐろんぐなんとかかんとかなとある時代のお話です。

 あるところに“アリス”という名前の夢見る美少女がおりましたそうです。

 

 

「はぁーあー、毎日毎日似たような日々、たまにはおもしろおかしな抱腹絶倒の展開を迎えてみたいものだわー」

 

 

 金髪ロングにカチューシャをつけて水色のエプロンドレスを着た美少女は、実に棒読み臭く教室の真ん中でそんな腹パンを一発決めたくなるような台詞をのたまっておりました。

 というかもうちょっとやる気を出せないのですか、そこの幼女。

 

 

「ナレーション、うるさい」

 

 

 ナレーションにけちをつけないでください。

 早くも地が滲み出てきている幼女の言動はともかく、退屈そうな仕草で背伸びをする幼女。

 中身はともかく、格好は『死んでくれる?』の例のあの娘にクリソツでした。

 これでミニスカートにローレグなぱんつでも穿いておればお前どこのゼカマシ?とツッコミを入れられたというのに、こういうときは空気を読もうとしませんがこれでもかというくらいの美少女です。

 退屈そうな仕草でもきっちりと絵になりますね。

 

 

「いちいちうるさいな……。いいから早く導入に入れよ……」

 

 

 さてそんな幼女がナレーションに愚痴を呟きだした折、教室の隅から一匹のウサギが飛び出したのでした。

 

 

「遅刻遅刻ー」

 

 

 忙しそうに走り出す一匹の白兎。

 口には食パンをくわえて学生服で駆け出すその姿は、実にこの世が順調に狂ってる、と全身を使って表現しているかのようでもありました。

 そんなウサギを見て、退屈であったアリスはきらきらと目を輝かせます。

 

 

「ほほぉ、面白い。今日の晩御飯はウサギ鍋に決定だな」

 

 

 若干違ったようです。

 退屈とか、興味がわいたとか、そんな子供らしい理由ではなく、きっちりと食欲に直結する発想でアリスはウサギを追って駆け出しました。

 ウサギさん逃げてー。

 

 

     ×   ×   ×   ×   ×

 

 

 ウサギを追って教室を飛び出し、学園中を駆け回るアリスはウサギを見失ってしまっておりました。

 

 

「ちっ、見失ったか。逃げ足の速いウサギだ……」

 

 

 獲物を狙う猛禽のような目つきをしながら、アリスは憎憎しげに呟きました。

 学内に蔓延る屋台の数々に気を取られ買い食いを繰り返しているうちに至った結果なためにお祭りの観音様みたいな様相になっているのはさておき、このままでは物語が進行しませんのでナレーションは心を鬼にして進行させます。

 そうこうしているうちにアリスは次の屋台へとツケで買い食いを敢行しようという有様でしたが、見失ってしまったウサギの足取りをアリスは聞き込みで辿ろうという腹積もりなのでした。

 さぁ、並んでいるそこの男性二人に聞き込みをしなさい。

 

 

「なに?いやそんなの台本には、」

 

 

 アリスは聞き込みをするのでした。

 そこの屋台に並んでいる、金髪ロンゲとドレッドヘア黒人の二人の男性に。

 はりーはりー。

 

 

「ちっ、貴様覚えておけよ……。

 あー、そこの二人、ウサギを見なかったか?」

 

「へっ?なになに?」

―ウサギー?

 

 

 振り返った二人の男性は後ろ姿とは裏腹に気の良さそうな気配でした。

 金髪ロンゲのほうは若干女顔で優しそうですし、ドレッドな黒人の方はとぼけたような口調で心なしか精神年齢が幼そうに見えます。

 ……この様子ではだぶるぴーすでアヘがおらめぇ、な展開には発展しなさそうですね。

 残念です。

 あとそこのドレッドさんはフキダシで会話するように努めるように。

 ナレーションである私とキャラが被りますので。

 

 

「貴様本気で覚えておけよ……!」

「……なんかすげぇろくでもねぇこと言われてる気がする」

「……とりあえずそこのやつの言ってることは気にするな。で? 見たのか、見なかったのか?」

 

 

 場を取り繕ってあげているナレーションを放置プレイしつつ質問してみても、彼らは『見ていない』と首を横に振ります。

 

 

「学生服を着たウサギって……、流石にそんなのを見た記憶はないなぁー」

―僕も見てないー

 

「――……見た」

 

 

 結局彼女の聞き込みが徒労に終わろうとしていたそのとき、並んでいた屋台のお兄さんが口を開きました。

 

 

「なに、何処へ向かった?」

「あっちの、南のほう」

 

 

 客商売にあるまじき片言な説明をするお兄さんはさておき、指差す方向は教室とはまるで逆方向です。

 

 

「ふむ、一直線に向かっているのか……。助かったぞ、屋台のバイト」

 

 

 そのときでした、寡黙なお兄さんがアリスの言葉に頷くのを見届ける間もなく駆け出そうとする彼女の前に、一人の西洋甲冑の騎士が立ちはだかったのです。

 

 

「おおっと! ここから先は通行止めだ! 通りたければハートの女王さまの許可をもらうんぐふるぁば!?」

 

 

 騎士の割には何処か軽薄な言葉使いにいらっとしたのでしょう。

 駆け出したアリスは立ち止まることなく、立ちはだかった騎士にシャイニングウィザードをぶちかましていました。

 

 

「なんだ貴様は」

「ば、な、なんだ貴様はってか、そうです私がナイトです」

「聞いとらんわ。そこを退け、通らせてもらうぞ」

「だから駄目なんだってばよ!」

 

 

 若干凹んだ騎士甲冑でしたが、脇をすり抜けようとするアリスを阻止するように反復横跳びでカバディを繰り返します。

 重濃な鎧を身に纏っているにもかかわらず、軽快なフットワークでアリスを翻弄するのでした。

 

 

「ちっ、面倒くさい……。じゃあ女王とやらは何処にいるというのだ」

「あ、はい。ここから北のほうにあるハートの女王の城にいらっしゃいます」

 

 

 自らのフットワークに注視されることなくスルーされたのが堪えたのでしょう、騎士は割かしさらりと自らの主の居場所を語っていました。

 居場所を聞いたアリスは、もうこの場所には用は無いとばかりにさっさと北の城へと歩を進めるのでした。

 

 

     ×   ×   ×   ×   ×

 

 

「ようこそマスター。私がハートの女王の茶々丸です」

「おい、演技しろよ」

 

 

 北の方向へと歩めば、そこには演技の糞ど下手なメイドロボが女王のコスプレでふんぞり返っていました。

 ぷぎゃー。

 

 

「さっきからナレーションに悪意しか感じないなぁ!?」

「そんなことよりもマスター、南の広場で行われているお茶会はわが国の人間で無い貴女には参加資格がございません。どうしても参加したいというのならば、相応の褒章を授かってからでなければ」

「いや、別に参加したいというわけでは……」

 

 

 いちいちナレーションにツッコミを挿入れる主人公をさておいて、ハートの女王は物語を進めていました。

 

 

「そうですね、それでは北の森に棲むというジャバウォックという怪物を倒してきてください。そのとき初めて貴女にお茶会の参加資格を授けましょう」

「一介の少女に頼むにしては随分とルナティックな要求すぎやしないか!?」

 

 

 ベリーハードな資格取得条件を突き出されて、アリスはその場で駄々を捏ねました。

 泣きながら手足をばたつかせ、ひっくり返って暴れまくり、うずくまって嗚咽をもらし、そして寝ます。

 

 

「いやしてないからな!? やってないことをさもやったかのように説明するなよナレーション!?」

 

 

 やりなさい。

 はりー。

 

 

「しないというとろうに!」

 

「仕方ありませんね。それでは資格の授与とともに特別に褒美も授けましょう。この国に一匹しかいない、珍しい生き物です」

 

 

 ハートの女王はそう言ってカーテンの被さった篭を用意します。

 矢鱈と大きな、人間一人くらいなら入っていそうな鳥篭でした。

 

 

「ジャバウォックを倒した暁にはこの生き物を授けましょう。特別に鳴き声を聞かせてあげます」

「え、な、鳴き声? ……んにゃーぉう」

 

 

 ……なんかどこかで聞いたことのあるような声が鳥篭から聞こえました。

 アリスもまた何かに気付いたかのように、その鳥篭をじっと見つめます。

 

 

「ふ、ふん! そこまで言うなら手を貸してやらないこともないな! 北の森に棲むとか言うそいつがどんな怪物だろうと私の敵では無いわ!」

 

 

 すげぇやる気になったアリスは、意気揚々と北の森へと歩を進めるのでした。

 何が彼女をそこまでやる気にさせているのでしょうね?

 

 

     ×   ×   ×   ×   ×

 

 

「貴様が怪物か! 塵殺してやるから覚悟しろ!」

「あ、あれー!? 闇の福音さんがすげぇやる気になっていますよー!?」

 

 

 怪物の着ぐるみを着た誰かが彼女のやる気にすっごい驚いていました。

 中二臭い二つ名を叫びつつ怯えたように後ずさります。

 

 

「ゆくぞ! リクラック・ララック・ライラック――!」

「ちょ!? 詠唱まで入ってる!? やめてー! 誰か助けてー!?」

 

 

 何がしか唱えだしたアリスに怯えて怪物は既に戦闘意欲なんてありませんでした(すっとぼけ)。

 アリスのエターナルフォースブリザードがジャバウォックを倒す、というCGを観戦しつつ(ここ重要)、物語はさくさく進行します。

 

 

     ×   ×   ×   ×   ×

 

 

「怪物退治、ご苦労様ですマスター」

「ふん、私の手にかかればあんなやつ一捻りよ」

 

 

 ふんす! と鼻息荒いアリスの様子に、ついてきていた観客の皆様も顔を綻ばせます。

 民族大移動よろしくあっちへこっちへ歩き回っているというのに、よくもまあついてこれるものですね。

 ロリコンってすげぇです。

 

 

「それで茶々……女王よ、褒美とやらを見せてもらおうか? ああいや、別に興味なんて無いのだがな、貴様がくれると言うのならばもらってやら無いことも無いというだけであってだな」

 

 

 何かもじもじと歯切れの悪いアリスです。

 そういう仕草がロリコンをホイホイさせる要素なのでしょうか。

 参考になりますね。

 

 

「いいでしょう。お茶会の参加資格、そしてこちらをあなたへ授けます」

「おお!――……おぉ?」

 

 

 女王の言葉と共にかけられていたカーテンが取っ払われました。

 が、そこには何も入っておらず、空の鳥篭があるだけでした。

 あ、下の方にテープレコーダーが。

 

 

「……おい?」

「本来ならば、この中にはチェシャ猫が入っていたのですが、どうやらいつの間にか逃げ出していたようですね」

 

 

 ジト目を向けるアリスとは対照的に、ハートの女王は飄々とした様子で空の鳥篭をアリスへと手渡すのでした。

 正直大きすぎて持てないので、アリスは鳥篭を放置して城から去りました。

 

 

     ×   ×   ×   ×   ×

 

 

 お茶会にいたのは、卵みたいな胴体をした伯爵『ハンプティダンプティ』、ながーいシルクハットを頭に乗せた紳士風の『帽子屋』、そして身体中をピンクと水玉の斑点で彩られた『三月兎』の三名でした。

 兎を除いて、どいつもこいつもミスキャストとしか言いようの無い配役です。

 騎士とジャバウォックを連れてきてミスキャストカルテットとでも呼ぶべきでしょうか。

 

 

「なんだこのナレーション、口悪すぎだろ……」

「誰がミスキャストだコラァ」

「お前等だよ」

 

 

 アリスは茶会の席に着き、ナレーションに愚痴をこぼすハンプティダンプティと帽子屋の二人にツッコミを入れました。

 そしてそこの三月兎は配色ミスを施しただけの冒頭のうさぎと同一人物にしか見えなかったのです。

 なんという2Pカラー。

 

 

「さて、ハートの女王に聞いたところによると、貴様らはあの篭の中身について詳しいそうだな? 答えてもらうぞ、チェシャ猫はいったい何処にいるのかをな……!」

「えーそこは時計兎のことじゃなかったっけー?」

「おい、台本通りにやれよ」

「うるさい、とっとと答えろ」

 

 

 アリスの関心は完全に特別なペットへと向いているご様子でした。

 最初に駆けていたウサギさんの真名が『時計兎』であったという事実までスルーです。

 

 そうしてアリスはチェシャ猫を探して麻帆良祭を縦横無尽に走り回ることとなったのですが、それはまた別のお話。

 お祭りの最中に猫と少女を見かけたというお方はご一報ください。

 アリスの冒険はこれからだー。

 




キャスト

アリス(エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル)
時計兎&三月兎(因幡誠一)
ハートの女王(絡繰茶々丸)

騎士(神宮司久貴)
ジャバウォック(大柴巧)
ハンプティダンプティ(織村一夏)
帽子屋(敷浪飛鳥)

チェシャ猫(烏丸そら)
ナレーション(鈴木6号)


特別出演

通行人A(篠原一樹)
通行人B(ジャン・B・キャンデロロ)
バイトの店員(灰島健児)
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