序章的な87話
『後始末、その一』
「――と、まあ以上が今回起こった顛末となります」
学園祭の結末と、それに連なる説明不足分の解説。誰が何を起こして、誰が何を起こしたかったのか、それらを掻い摘んで簡潔に纏めて『責任者』へのネタ晴らしをやったところ、件の責任者は頭を抱えて蹲ってしまった。
ていうか学園長であった。
精々悩め悩め。
頭を抱えたくなる実情は今まで俺がナンデか抱えてきたものなのだし、そろそろ丸投げしてもいいんじゃないかなって思いたくなってきたし。
まあそんな簡単に投げられるような状況を抱えているわけじゃないから、そうそう適当にはやらないけどね。俺も。
「説明ご苦労……と言いたいところじゃが、正直どうすればいいのかのう……?」
「知りませんよそんなん」
生徒に縋りつこうとするんじゃないですよ。
喩えポーズでも受け入れるつもりは無いんです。
「冷たいのぅ……。麻帆良も一応は魔法使いの本国に属するわけじゃし、事件が起こったときは報告する必要性があるのじゃが……、こんなとんでも事件を報告しても信じてもらえなさそうじゃし……」
「報告しなければいいんじゃないですかね? 今年も『ちょっと』学園祭が盛り上がった、ってだけにしておきましょうよ」
「そもそもの原因が言える言葉かのう。世界樹にリンクした京都にあるらしい次元の穴、じゃったか? それ儂初耳なんじゃが……」
言ったところで魔法使いに対処できる問題でもないでしょうよ。
「まあそれ系で魔力放出量が嵩増しされていたらしいですけどね、それも因果だとでも割り切っていただければ」
「自分で言うのはやめぃ。確かに対処するべき事も無いし、処罰を与えるのも違う気もするがの……? それでももう少し説明を欲しかったのじゃけど……」
「だから、これこうして」
「遅くね?」
ドン☆マイ。
きゅるん、とガッツポで励ますと重厚に溜息を漏らす学園長。何すか。
「はぁ………………。
まあ、ワルプルギスの魔女ならば学園結界なんぞ素通りできるのも納得じゃし、他の魔法先生方に見つかっておらんのならば敢えて虎の尾を踏む必要もないかの……」
「虎の尾で済む人でもないですしねー」
「それを認識できんのが普通の魔法使いなのじゃよ……。というか『それ』クラスの魔女が他に4人も日本に点在しておるとか、まかり間違っても知られるわけにはいかんじゃろ」
この人はさすがに認識していたらしい。
もっとも、その『それ』扱いしたお人らのうち半分が人類にとって明確な『敵』であることまでは認識していないらしいが。
まあそれはそれで正解か。
なんであの人らは危険を正しく察知できないんだろうなー?とも思いかけたけど、正しく察知したところで、対抗手段なんぞ碌に通用しないお人らに喧嘩を売ったところで、無駄死に魔法使いの屍山血河が築かれる程度で終わる話であるだろうし。
「――あのぅ……」
学園長と若干共感しつつしみじみ頷いていると、一緒に部屋にて座っている長椅子の横から声がかかる。
「ところでなんでアタシまで呼ばれたんですか? まさか、美月のことで何かやっちゃいました……?」
ちうたんである。
正確には呼ばれたという名目で付いてきてもらったわけだけど、学園長も彼女自身に負い目があるので其処には言及しない。
俺の方を少しだけ見、多分だけど俺が必要以上に問い詰められないための盾代わりに連れてきたということを理解したのだろうが、対面する長椅子に座ったまま頭を下げた。
そうだね。丁度良い機会を作ったのだから、察することくらいは出来ないとね。
「うぇっ!?」
「いや、そっちも気になるところじゃけども本題はそもそも別じゃ。先ずは――、スマンかったのう、長谷川君」
それからは謝罪会見のように平謝りする学園長。
要するに認識阻害が効かない体質であるちうたんを長年放置していた、という部分が学園長には負い目としてあるわけだ。
俺は当然それを見越しているということを学園長も自覚しているわけで、下手に浅慮を晒せば突っつかれることも予測できる方からしてみれば、やはり先ずは手の内を晒すことが必要。
晒したところで負い目は消えないわけだから、ちうたんが言いたくないことや俺が突っ込まれたくないことも学園長からの言及も避けられる。
魔法先生を足止めしたスタンド使いであるゆえきちのこととか、別次元の存在が扱っていた超常的技術の使い方とか。細部を説明するわけにいかない事情もこちらは抱えているのさー。
ちうたんマジ無敵の盾。学園長限定だけど。
× × × × ×
「なんか無駄に疲れた……。アタシに謝罪させるために呼んだのか? もっと聞くことがあったようにも思えたけど……」
「まあ認識阻害の効かないのを知っていて放置していたのは事実だしな。魔法使いとしての負い目を突っついてやったから、何某かの要求も通せるかも知れんぜ?」
「それについてはありがたいけど……、お前もアタシのことを知っていて放置していた部類に入る、ってこと忘れるなよ?」
ジロリと睨まれる。
ゾクゾクするねぇ。
「それについてはまあゴメン。俺も一応こっちの部類だからねー、勝手に話すわけにいかなかったんだー」
「棒読みすぎる……! ……と言うか、それで言ったらいいんちょや運動部四人組とかに既に話が行っているのはどういうことなんだよ……」
そっちも不可抗力ですよ?
というかそう譬えに挙げると、何気に候補から外された明日菜とか図書館組の名前が挙がらないことが疑問に思える。
そもそも、ちうたんがこちらの事情を確信したのってどういう経緯だ? 原作と随分かけ離れた展開になったことを自覚している武闘会で気づいたにしては、泉井ちゃんと顔見知りだったことが気にかかるし。
あんまり突っ込んで欲しくなさそうだったので聞いちゃいないが。
学園長室から離脱して現在街中。
振り替え休日1日目の本日、まだ興奮冷めやらぬ女子部3-Aはカラオケに繰り出したとの事で何故か俺まで御呼ばれしている。
嫌な予感がビンビンするので個室に連れ込まれるとかマジで止めて欲しいのですけど。
「まあ、風営法に抵触したウチの出し物の件もあるから、これ以上児ポ法に触れるようなことになって欲しくないのも事実だしな。そっちのほうは最低限防いでやるよ」
「法に触れるような見た目はしてないはずなのに、なんでそんな心遣いが必要なんだろう」
登場人物は18歳未満です。
「ああ、いたいた。ちょっと待ってもらえるかしら」
そんな取り留めない会話での帰り道、18歳以上であるお人から声がかかる。
しずな先生である。
思わず土下座の体勢になりかけたのは仕方がないことなのである。
「あれ。どーしましたか?」
「うん、ちょっと烏丸くんに用事がね? 長谷川さんは席をはずしていてもらっても構わないかしら?」
「? まあ、別に構わないですけど……」
ちょ、待ってちうさん!置いてかないで!
「……なんか、烏丸が捨てられた子犬みたいな目で袖を掴むのですけど……」
「烏丸くん? 寂しいのはわかるけれどちょっとお話しましょうね?」
どう聞いてもOHANASHIじゃないですかやだー!
奮闘空しくちうさんは席を外し、それでも少し距離を置いて待っていてくれるちうさんマジ大天使。
ネギ君との仮契約を実行させなかったからアーティファクト手に出来てないであろうし、今度俺から代わりの何かを進呈しよう。
そんなことを決意しているとしずな先生が近づく。
ゼロ距離で寸勁とか腹パンとか?
このお人ならば出来そうだからマジで怖い。
「――手短に言うわね。貴方、このままじゃ死んでしまうわよ」
実行犯は先生ですか?
「茶化さないの。私のスタンド能力の一つに自己死で発動する逆行による未来回避があるのだけれどね、それで見てきた未来がとてつもなく最悪で……。
――簡単に言えば、貴方が死ねば日本の半分が焦土になるの」
「ナニソレコワイ」
どういう因果でそうなるんだよ。
要因として真っ先に思い浮かぶのはハチリュウの暴走だけど、俺が死んで勝手に召喚されるのか?
「そうならないために貴方を何度か警護もしたのだけど……、」
「回避しきれない、と?」
どうしたって俺が死ぬのは世界線の履行運命のようである。
誰か絶対運命回避拳を覚えてないかな。
「だから唯一試せなかったことを今回ではやってみようかな、って」
「――試せなかったこと?」
世界線を覆すために別の要因を挟み込む。
まあそれはわかるが、しずな先生でも回避できない運命なんぞどうやれば回避できるものかと、
「――貴方、今回こそは他人を受け入れなさい」
――――――――――――――――――――――――――――――。
わお。
「何度か見ていてわかったのだけれどね、貴方は自ら死に向かっている傾向があるわ。若しくは自分の命を第一にしない、軽視しすぎている傾向」
ははっ、まっさかー。
誰が死にたがりですと?
「そんなことはないのですけどね」
「一番に覆せなかった要因といったら、やっぱりそれしかないかなって思えてくるのよ。ねえ? 負完全くん?」
自分で名乗ったことなんてないのだけれど。
「それを履行するために一番は友達付き合いね。
待たせちゃってごめんなさいね、長谷川さん」
「もういいんですか?」
気がつけばちうたんが直ぐ後ろにいた。
気を取られすぎだろ、俺。いつスタンド攻撃喰らったんだよ。
「ええ、ちょっとした注意だけだから。
それじゃあ烏丸くん、今度こそ間違えないようにね?」
「……善処します」
とはいっても、俺が何かした記憶なんて俺自身にはないのだけれど。
………………みんな勝手だよな。
× × × × ×
「――変わるわよ♪」
狙い打つな、俺を。
カラオケなのだが、明日菜が倖田を歌って振り付けまでしてノリノリである。
神楽坂さんや明石さんは楽しそうなのですが和泉さんや大河内さんが肉食獣みたいな目で俺を狙っているのです。
いやだから、そっちの娘らって俺いつフラグを建てたの?
まったく記憶になくて混乱が助長するばかりなのでヘルプ。
……しずな先生、これを受け入れろと? 無理です、死んでしまいます。胃痛で。
見事に個室に連れ込まれてなんというハーレム状態、と飲み物を持ってきた店員に軽く睨まれたのが記憶に新しいが、別室に連れ込まれたネギ君の安否も若干気にかかるところ。
まああっちは一応、仮契約してないこのかとかせっちゃんとかが混じっているから彼の貞操は問題なかろうとして、こちらはストッパーがちうたんとゆえきちくらいしか居ないのがどういうことかと。
ゆえきちが来てくれたのはありがたいけどね……。
柿崎? あいつは愉しみながら俺を突き落とすタイプだ。
何処へって? 恋と言う名の奈落じゃね?(ドヤァ
「なんか上手いこと言ったみたいな顔してますね」
「いや、あんまり上手くなかったわ」
「いや、知りませんけど」
両隣にちうたんとゆえきちが居なかったら、その僅か外側に陣取っている肉食獣コンビに即座に挟み込まれていたと思うね。
防衛線がそのまま防壁になっていてもらっていて申し訳ないが。
「次ー、誰ー?」
「そろそろ烏丸くん歌ってよー」
持ち歌ねえんだよ。
倦怠ライフでも歌うか?
というか歌う人が前に出て歌うシステムはいつの間に成立してたの。
「おっと、その前に尿意だ」
「こらー、女子の前でそういうこと言うなー」
桜子大明神様には申し訳ないが生理現象はどうしようもなかろう。
そうして個室を出たところで、用も済み。
……どうしたものかと途方に暮れる。
戻ったら指定席が別の誰かに取られているとは、そこまで思考が及ばなかった。
扉の前を一回通り過ぎて確認したら座席がシャッフルされていて、明日菜&裕奈の間と亜子&アキラの間が丁度一人分空いていた。
おめーの席ねぇからー、って言われる方がまだましなのではなかろうか。
「きゃっ」「おうっ」
どうやって戻ろうかと悩んで廊下を通り過ぎていたところで、曲がり角で軽い接触事故。
「と、すまん。怪我はないか……って、あれ?」
「あ、はい、大丈夫「確か……」――え?」
見た覚えのある女の子との正面衝突であったが、思わず口に出していたので怪訝な表情で見られる。
今日俺迂闊すぎないか。
「あの、何処かで会った、っけ……?」
「あ、いや、気にしないでくれ。気のせいだから」
俺が一方的に知っているだけの少女だ。
具体的に言うならば麻帆良祭のステージにて見た三人組の一人。
というか仮にもプロのアイドルユニットだ。
だから気のせいにして通り過ぎようとしたのだけど、
「あっ! 映画で撃たれていたひとだ!」
「待て、その覚え方はどうなんだ」
確かに撃たれていたけど。
というか観ていたのかお前。
早くも目論見が崩れ去り、せめて意趣を返そうと会話を繋げる。
「へー、奇遇だねー、そっちは友達と? あ、アタシの名前、知ってる?」
「……知ってる。本田だろ?」
というか投票した。3位だったけど。
その識性を好意的なものと受け取れたらしい。彼女は嬉しそうに、やはーと微笑を浮かべてはしゃいで見せた。
「おー! 知ってたんじゃん! ファンなの?」
「それは違うわ」
「断言された!?」
が、甘い。
馬鹿め。俺が知ったことなど投票したそいつらの実情をググった程度だ。
改めて、彼女は本田未央。
ニュージェネレーションとして麻帆良祭のステージを彩り、投票によって3位になっていた一応のプロアイドルユニットメンバーの一人だ。
1位は残念ながらホモォ、なバンドだったけれど。しかもアマチュア。
麻帆良にホモ好きは多い。はっきりわかんだね。
「出来の悪い売名行為とかステマにもならねーよ。しつぼうしましたちゃんみおのふぁんやめます」
「それはみくちゃんのネタだよぉ! っていうかやっぱりファンなんじゃん!」
「そんなわけあるか。あんまり調子こいてるとエドモンドって呼ぶぞ」
「それだけは止めて!?」
なんだろう。こういう言葉遣いとか普通は初対面にはやっちゃダメなんだろうけど、コイツ相手に敬語とか死んでも使いたくない。
確か高校一年だった気がするのだけど、まったく年上に見えないのは俺が悪いのだろうか。
「――なにしてるんですか? 未央さん」
今日の俺、背後取られすぎじゃね?
なんでか気付かなかった後ろからの気配に振り向くと、誰もいなかった。
はて、声は聞こえたのだけど。
「下だよ下」
「え?」
本田が言うので再び振り向くと下のほうを指差す。
下、足元?
目線を下にもう一度背後へ。
足元ではなかったが、頭二つ分ほど低身長の少女がこちらを睨み上げていた。
なにこのちっこいの。
「お知り合いですか?」
「知り合いって言うか、顔見知りっていうか?」
「なんですか? それ?」
俺も知らねーよ。
ともあれ本田にも迎えが来たようだし、そろそろ離脱しよう。
「じゃ、俺そろそろ」
「あー、なんか引き止めたみたいでごめんねー
――なんて言うと思ったか! さっちゃん捕まえて! お前にアイドルの魅力を見せ付けてやるー!」
「えっ、えっ、な、なんなんですか!?」
「おい、無茶振りするなよ。戸惑ってるだろこの娘」
通路は塞がれているから逃げられない。というかわざわざ逃げる必要性が無いわけだけど、目前のちっこい少女に右往左往されていると踏み潰してしまいそうになるな」
「そこまで小さくないですよ!? なんなんですかこの失礼な人!?」
いかん、口に出てた。
しかし、髪が小型犬みたいに跳ねているような少女がぷんすかと怒るがあんまり怖くない。
むしろより一層犬っぽくて撫で繰り回したい衝動に駆られる。くっ、落ち着け俺の右腕!
「敵は動揺しているよ! いまだアタシらの部屋に連れ込めー!」
「いやだからなんでそうなるんですか!?」
ノリに乗っている本田が身動きの取り辛い俺の腕を背後から挟みこむ。
胸で。
――いや、意図した結果じゃなかろうけれどもさ、弾力すげぇ
「――――浮気?」
ヒィッ!?
「と、あ、お友達の方ですか? ほら未央さん、離さないと」
「えー、これからが勝負なのにー」
何を勝負するつもりだったんだ本田。
そしてそこのちっこい娘は俺の背後の誰を見上げているんだ。
……先ほど聞こえた台詞は気のせいだとシンジタイナァー。
「戻るの遅いから探しに来てみたけど、そらくんって逆ナンされるほうだったっけ?」
本田から離された俺の腕を、アキラがぐいぃと抱き寄せる。さっきよりより凄い弾力が、むしろ万力のように俺の身動きを取れなくする。
わ、モデルみたいー。と暢気な本田はいつか絶対泣かす。あ、いややっぱいいや。コイツとは二度と会いたくない。
「疫病神め……!」
「アイドルにかける台詞じゃないよそれー!?」
ドナドナされゆく俺の捨て台詞が精々胸に響いた、と信じたかった。
~ちうたんマジ無敵の盾
認識阻害とか学園結界とか総スルーだった実情を聞きたかった学園長
「馴染む、実に馴染むぞ・・・・・・! フハハハハハッ!!」と、そのとき結界が解かれてノリノリで魔王様ごっこをしていたそらを見ていたちうは実は同時にウィークポイント
学園長に負い目が無かったら負けていたのはそらのほう
~烏丸そら
そろそろオリ主として本領発揮するときじゃないかなと思う
次回辺りにすっげぇ恥ずかしい黒歴史をばらす予定
~カラオケという名のry
なにこれ、キャバクラ?
~デレプロガール参戦
じりじりと近寄ってきていましたが87話にしてようやく会話に登場。こんなんちゃんみお違う!とか、こんな輿水偽者だね!という異論は認める
そらとの相性ははっきり言って最悪です
本物のあとがきは活動報告