でもそれを言い出したらこれまでも暴走したのは多量にあったから『今更かよ』と言われることも必至
広げた風呂敷を畳むには避けては通れないこともあり・・・・・・、若干のシリアス雑じりの88話、渋々更新します
・・・・・・精々笑い飛ばしてやってくださいm(_ _)m
麻帆良祭振り替え休日・二日目
昨日のカラオケで罰ゲームと称してSHAZNAのVirginを延々と歌わされた俺なのだが、何故か本日も彼女らに同行している。といっても魔法バレしているいつもの面子のみなのであるけど。
場所は図書館島の最深部、ワイバーンの守る深奥へと連れてこられる俺がいた。
ナマモノの、かつ自分で製作したわけでないドラゴンとか初めて見たわ。やっぱ漫画とは違うなー。神威召喚的な飛竜と比べると、どうしても見劣りするイメージは抜け切れないのだけれど。
……いや、なんでだよ。
正直言って、俺の方からは此処には全く用がない。
アルビレオ・イマに会う用事も気もないというのに、何故連れてこられたのかが理解できない。
どうもネギ君は雪広とかの仮契約ガールズと先に行っているらしいが、それで俺まで呼び出すというのはどういう用件なのだろうか。
「なんかね、アルがあんたも呼びなさいって」
「嫌な予感しかしないから帰っていい?」
先に行っているネギ君と仮契約ガールズの雪広・宮崎・早乙女・ゆえきち・佐々木、それに付き添っているらしいこのか&せっちゃん&古菲&エヴァ姉には悪いけれど、こちとら特に英雄様とのお茶会とか必要ないでござる。
このままさぼって超包子にでも行って飲茶しようぜ。奢るからさ。
「いや、さすがに約束破るのは駄目でしょ」
「約束とかしてねーよ、今日一日くらいはゆっくりとしていたいな」
それはとても素敵だな、って。
連れ立っている裕奈の言葉に、休日のお父さんみたいな返答で駄目人間宣言してみる。
ちなみにこちらと連れ立っているのは、明日菜を筆頭に裕奈・アキラ・亜子の俺の仮契約従者と茶々丸・ちうたんの実は接点が未だ碌に無いらしいネームレスコンビ、の合わせて7人。
長瀬・朝倉は不参加らしいが、逃げられるというならば俺も逃げたい。朝倉はハブにされた感が菱々感じるけれどそこはまあ置いといて。
「アルー、来たわよー」
気軽にすったかと軽快な足取りで、瀑布の飛沫が飛び交う中を歩み行く明日菜。
蟠桃の根がマングローブの森のように絡み合い、その隙間をナイアガラのように滝が縫って流れる圧倒されるほどの神秘的な情景の空間なはずなのだが、軽快さのお陰でアルビレオの演出が泣いている姿を幻視した。
そのまま本棚の部屋を素通りし、通り抜けると瀑布を背景にした空中庭園のような茶会場へと歩み出る。
「じゃ! 僕ちょっと行ってきます!」
何処へだ。
「お待ちくださいネギ先生っ、さすがに今からイギリスまで行くには――!」
「が、がっこうとか、授業とかー!」
「魔法の国とか少年心をくすぐるフレーズだけどちょっとまってよネギくーん!」
佐々木ぃ、性別っ。
どうやら本国へまたもや行こうとしているらしいネギ少年。そういえばあの子密入国した実績があったわ。
止めようとするのも納得の中、俺はひっそりとテーブルへと腰掛ける。え、お前いつからいたの?まあいいや作戦を敢行して騒ぎの内容を把握しようとしていた。
「いや、普通に見てわかりますから」
「ちっ、せっちゃんの愛の前には隠れ切れなかったか」
「あ、ああああい!?愛とかそういうのはありませんからっ!!!」
相変わらずからかい甲斐あるなぁ半デコは。
力いっぱい否定されて少しだけブロークンだけど意外とその発言が癒しである。
俺マゾじゃないはずなのだけど。
「せっちゃんの愛しません宣言はさておいてなんの騒ぎ?」
「クウネルさんのアーティファクトは他人の記憶を完全コピーできるものやった
それによるとネギ君のお父さんがまだ生きとることが判明
手がかりは魔法界にある
いてもたってもいられないネギ君がその足でイギリスへ行こうとするのを止める
↑イマココ」
「おK、把握」
止める人材が多分にいるのでのほほんとしていたのであろうこのかに、さりげなしに事情を聞いた。
どうしたって父親を探さずにいられないのは彼が彼であるための絶対条件なのかもしれないが、猪突猛進な部分はこの半年では結局改善されなかったらしい。
ところで武闘会では結局演出しなかった『ナギの遺言(笑)』とかを披露したのだろうか。あれをネギに見せるためだけに原作では反則で勝ち上がっていったらしいというんだから、他の参加者は涙目であるわけで。
ナギもナギで育児放棄宣言とも取れる内容しか残さないというのもどうなのかと、
「おや、来ていたのですね。ようこそ、お待ちしていましたよ?」
益体も無い意見でもない思考をぼーっと流しているとアルビレオに気付かれる。
しかしその声音が聞いた覚えのあるような、ある意味聞きたくないような、そんな女性のもの。
それに気付いたのか全員がアルビレオのほうを、つまりは俺の背後を視界に入れた。
「あれ? クウネルさん? その人誰なん?」
「また悪趣味な……、貴様は女装趣味もあったのか?」
「きれいな人ですけど……。あの、失礼ですけど他人の人生を盗み見るとか正直趣味としては応援できないのですが……」
フルボッコにされながらも背後から移動する気配がない。
一体何者なんだー、と思いつつも振り返り――、
―――――――――――――――、
――絶句した。
「歓迎しますよ、烏丸『イソラ』くん」
……本名まで把握している。が、それ以上にその外見に釘付けとなる。
俺の母じゃねーか……。
「か、烏丸? 今にも人を殺しそうな目してるぞ……?」
長谷川に諌められているが、そんなこと今の俺には些事でしかない。
× × × × ×
千束恩寿の犯した罪は非情に重い。
学生であった烏丸千歳を手篭めにし、呪式核として最適な資質を用意するためだけに彼女を連れ去った。
身篭った『子』を堕ろせなくなる程度まで監禁し麻帆良へと放置。
その際に一般人で、しかも子供でしかなかった千歳に抗う術は無く、麻帆良の認識阻害に馴染むように上書きした認識阻害の呪式を組み込まれた。
故に、彼女は出産から育児まで、麻帆良にいながらにして強制的に行動させられ、他の魔法教師に見つかることなく『子』は造られた。
呪式と認識阻害によって麻帆良から逃げることもできないままに、烏丸千歳は密かに命を育んだ。
烏丸千歳はただの被害者ではなかった。
いくら呪を組み込まれたからといって行動を全て制御できるわけではない。
産み落とすことを強制された千歳が最初に行ったのは、産み落とした自身の子供を殺そうとしたことだった。
欠片も好意を抱いていない男に無理矢理孕ませられた子供は、彼女にとって害悪でしかない。
産声を上げる前に喉を潰す。
出産で力の抜けた自身に鞭を打ち鈍器を抱えて叩きつけた。
その存在を根本から憎み、恨み、嫌悪し、自身から別け出でたことすら忘却してしまいたかった。
烏丸千歳は弱かった。
だから己を守るために徹底的に拒絶した。
子はしかし、それでも生きていた。
産み落とされると同時に発現した不可視のエネルギーは彼自身を守るために実体化し、潰された喉を押し広げて呼吸をし、叩きつけられた鈍器を受け止めて弾き返した。
全ては生存本能と、当時から自己を認識していた前世があった故の相乗効果。
生き延びられたことは奇跡に近いが、生き延びなければ彼は存在できない。
死にたくなかった彼は、必死で自分を守った。
ただそれだけだった。
命銘は父の恩寿がつけた。
意味は他者を呪うため。
日本の古典文学の怨霊の名前だ。
連動して腹違いの兄にも『物語』を絡ませて『呪式』を組み込むための命銘をした。
鋳止まれ、疎まれ、蔑まれ、ただの道具に成り下がるように名づけられた。
怨めと、呪えと、世を儚めと、到底『親』が『子』に望むことではない感情を一身に受けて、『烏丸イソラ』は世に生まれ出でた。
『子』を殺せなかった千歳は、それでも諦めなかった。
嫌悪するそれを殺せないとわかったならば、徹底的に放置した。
餌を与えず、身を整えず、衣を剥ぎ取り、雨風に晒した。
捨てることは出来なかった。
しかしそれは呪式の強制力によるもので、仕方なく自身の住むアパートの窓の外へ。
ベランダの端が彼の住処だ。
要らなくなった箱で囲い、外から最低限見えないようにして。
麻帆良の認識阻害が働いていようと、“そんなもの”が自分の部屋に関係していると周囲から思われるのを忌避した千歳は、彼のことを徹底的に隠蔽した。
認識阻害は上手く働き、彼は誰にも気付かれること無く麻帆良に棲んでいた。
それでも彼は死ぬことは無かった。
食事を与えられず、衣服を与えられず、雨風を凌ぎ難く住処を用意させられて、身動きも取れず。
それでも生きていたのは、不可視のエネルギーを活用したからだ。
『それ』は人型に変化し、生き延びるために必要な応用を働かせ、前世の記憶から必死に知識を活用した。
隣室や階下の住人がいない時期を見計らって食料を拾ってこさせ、消化しやすく自身で磨り潰して啜って生き延びた。
拾えた物資はごくわずかであったりもしたが、少しづつ少しづつ、最低限生きるために必死で食い繋いだ。
身動きできない己に代わって動いてくれるそれが『スタンド』であったことに気付いたのは、住処を快適にしたかったときだった。
隣室から出た古新聞に包まって、温度を欲しがったときには『それ』は既に能力を発動させていた。
書き込まれた文字で暖を取る。
物質に概念を埋め込めるスタンド。
それからはより一層能力を活用した。
時には土に栄養と味を書き込んで食い繋ぐこともあった。
放置して一年経った『子』がまだ生きていたことを知り、千歳は尚更『彼』が恐ろしくなった。
逃げることも殺すことも出来ないそれが、自分に復讐する可能性に思い至ったのだ。
嫌々ながら世話をする。
殺されたくないし、これ以上傷つきたくなかった。
それを『彼』も把握していたのか、スタンドで彼女を攻撃することは決してなかった。
彼もまた、彼女が被害者であることを理解していた。
何より、これまで以上に酷い生活を強いられるわけではないと理解できたから、彼女を排除するような真似をしようとは思わなかった。
千歳は危害を加えられないことを理解した。
しかしそれでも、彼に対する嫌悪は薄れることはなかった。
得体の知れない生き物でしかない彼を受け入れることは、彼女には絶対に出来ないことであった。
そうして彼らのコミュニケーションは始まった。
死ね。
消え去れ。
生まれてくるべきじゃなかった。
生まなければ良かった。
そんなニュアンスの言葉ばかり浴びせられ、彼は5年育まれた。
徹底的に嫌悪する彼女の拒絶に、彼はさすがに辟易していた。
いくら前世があり、自己と人格が既に形成されているからといって、一律の言葉ばかり浴びせられればどうあっても歪む。
そうして彼は心を閉ざし、彼の望むままに精神的な障壁が形成された。
皮肉にも、恩寿の用意した呪式核としての機能は上手く働いて、自身から生み出す膨大な魔力はほとんどが障壁へと転化するように成長した。
それが良かったのか悪かったのかは、誰かに判別される事柄ではない。
頃合を見計らって『彼』を『回収』に来た千束恩寿は、反撃に出た彼自身によってあっさりと返り討ちとされた。
一番に働いたのは当然ながら不可視のスタンド技術。
腕を圧し折り、脚を踏み砕き、抱えている術式核を徹底的に無力化して、齢6つにて侵入者である恩寿を撃退した。
その際に彼は真祖の吸血鬼と出会い、目をつけられる。
初めての友人がこれである、つくづく運が無い。
しかしながら、長年母を悩ませていた呪いの大本を撃破できたことは朗報である。
意気揚々と自宅へと帰った彼に待ち受けていたものは、誰も残っていないアパートの一室であった。
待てど暮らせど誰かが帰宅する様子はまったくなく、一週間経ってようやく彼女は麻帆良から逃げ出したのだと思い至ることが出来た。
彼女の行動を縛る呪はもう無い。
それならば嫌悪している怪物といつまでも一緒にいる道理も無い。
納得がいった彼は、とりあえず部屋を出ることにした。
麻帆良にいる意味などとっくに無かったが、初めて出来た友人には最低限の挨拶をしておきたい。
それが逗留の始まりであった。
× × × × ×
元の姿へと戻り、平身低頭で謝罪するアルビレオ・イマに胡乱な目を向けつつも、内心では“帰りたいでござる”の嵐が大フィーバー。
何が悲しくて自身の黒歴史を滔々と語られて謝罪されなくてはならんのか。麻帆良にいながらにしてネグレクトと精神的虐待を防げなかったことに対する申し訳なさが表立ったらしいが、それでも状況を理解できなかった周囲の娘らにまで教えてあげる道理は無くね?
「か、烏丸さんに、そんな過去が……」
「なんで、なんでそんな酷い目にあわなならんの……? そらくんが何をしたっていうんよ……」
言葉にするこのかとかネギ君ならまだ良いほうなのだけどな、涙浮かべてじんわりと視線を向ける女子共、オマエラ止めろその哀れみの目。
同情とか必要ねえから。
もう終わったことだから。
……と言うか、自分の暗い過去を語るとかって何処の“ぼくのかんがえたかっこいいしゅじんこう”だよ!?
男の黒歴史をひけらかすとか! 今時わざわざやるとか! 拷問にしても度が過ぎてるしぃ!
暴露大会とかやめたげてよぉ!?
多分だけど、事件を解析し切れなかった部分を補足するために俺の母の記憶を拾得したんだろうな。で、その外見から俺に起こった事柄を全部知っていますよ、という最初のジャブなのだろうが……。
あの人をわざわざ探し出して何かしようという考えは俺には無いから良いようなものの、普通ならそのジャブに逆上して刺されて(クロスカウンターして)もおかしくないレベル。
謝罪しているように見せかけた魔法使いの自己満足だろ、これ。
前世持ちという事実はさておいてエヴァ姉にも語っていなかった詳細を、わざわざ話すことでもないから墓場まで抱えてゆく所存だったのに。アクロバティックな方法で内情を調査されて全貌を語られるとか、富んだダークホースがいたものである。
つーかいい加減にその視線止めて。マジで。
「……で、その千歳さん? とかいう人はどうしたわけですか?」
同情する視線から一転、怒気すら醸す迫力を滲ませつつアキラが尋ねた。
アルビレオが応えるのかと思ったが、俺からの返答が無いお陰でだんまりのご様子。
胡乱な目は彼から外せないまま、俺が答える。
「どうしたとか応える必要性ないっすよ。別に何処で何をしていても関係ないですし、こちらのことを忘れて平穏に暮らして、二度とかかわりが無ければ言うことはないんですし。だから余計なことは云わんでくださいな」
「――っ、善処します」
謝罪を受け入れるとも言わない俺の言葉に意思を汲み取ったのか、息を呑む古本さん。
ところでこの人どうやって母の記憶を補完したのだろうか。いや、原作でも当時麻帆良に『来ていなかったはず』のアーニャをコピっていたから、この人は麻帆良から出られないというわけじゃないんだろうな、きっと。
どうでもいいことを考えつつ、未だに視線の定まらない女子らに情報を小出しに口を開く。
「そのあとは児童養護施設のお世話になって、エヴァ姉とは何度か交流があって、つながりで学園長に戸籍を確保してもらって、名前は名付け親が一度しか呼んだことが無かったから拒否。命名を削って今に至る。面白くも無い、世の何処かには有り得そうな不幸の一例だ。だからもう気にかけてんじゃねー」
そもそもが本人が一番気にしてないのに、余計な同情とか本気で要らん。
そんな俺の言葉に明日菜が、声音を努めて明るく口を開いた。
「でも、そこからエヴァちゃんがそらを救ってあげたっていうことなんでしょ? 優しいところあるじゃんエヴァちゃん」
「考えたりねえな明日菜は。エヴァ姉だぞ? あくのまほうつかいだぞ? 物珍しい稀少品を見つけて面白がっていただけだって」
「「「ちょ」」」
何人かが俺の台詞に待ったをかけたけど。
だって現にエヴァ姉ちょっと気まずそうにしてるもの。これで強ち間違いじゃない気がするなぁ。
しかしながら、お陰で面白いもの(魔法)に出会えて持ち札の幅をスタンドだけに留まらせなく広げられたのは事実。
その点はしっかりと感謝しているのですよ? マジでね。
だから、言葉にする。
「それでも感謝はしてるさ。出会えなかったら人生が無味乾燥であったのは間違いないしな。
愛してるぜー、エヴァ姉」
………………誰か何か言えよ。
~Virgin
サビにてひたすらに、愛してる、とか、好きだから、とか、そばにいて、とか連呼する歌。中学生に歌わせるには羞恥心が天元突破
5回も繰り返した暁にはハイライトが消えていた
~烏丸千歳
土属性の会長がイメージなのではなくて、あえて言うならば銀河天使的な6人目のいらない娘
似ているというだけでご本人とはまったく関係性はないはず
~烏丸イソラ
随分前に出した腹違いの兄の名前が伏線
出典は雨月物語
~障壁の真実
実は神の特典じゃなかったATフィールド
そのまま心の壁でしたというオチ
~黒歴史暴露
オリ主ならば一度は通る道
かっこよさげな雰囲気醸して「俺の手は罪だらけだ・・・」とか呟く銀髪が俺の中では一番印象深い
精々笑い飛ばすのが正しい対処法
~手札・持ち札・切り札・鬼札
その結果がこれだよ!
資質があったのか少年はマッドな科学者もどきへとジョブチェンジしました
・・・胃の辺りがきりきり傷む・・・
イジメとか虐待とかの描写をこれだけ書くだけでこのとおりのメンタルです
ともあれ風呂敷を畳む前準備はようやく終了
あとは残り十話ほどに収まる程度に突っ切ります