後半と言うにはあまりにもアレすぎる日常回
今日も今日とて一日が終わる。
収穫といえば亜子のアーティファクトが原作とは違っていたという部類ぐらいか。どうやって柊さんちに返しにゆけばいいんだ……。
4錠飲めば不死身になれると謳うチートなんだかピーキーなんだか判別し辛い薬事法違反っぽい麻薬染みた一品、実質3分の1しか優しさ成分が配分されていないという某家庭用常備薬には敵わないとしても、ただ死ななくなるだけにしか思えないという実情を鑑みるに使えるのか使えないのかが判別し辛いわけでもある。これ原作より弱体化してね?
そして4錠飲んで不死身になるなら5錠以上飲んだらどうなるのよ?と尋ねたところ、なんか無敵スターを取った配管工みたいな活力漲る状態で前世の自分に変身した、とかちょっと理解の追いつかない返答をもらった。というか試したのか。
要するに逆玉手箱ってことですね。蔵馬さんチーッス!
そんな風に結論付け、近いうちに魔界のオジギソウを亜子に操ってもらおうと期待しつつ自室へと戻ってみれば、先に戻っていたらしいネギ君に夕食へと誘われる。
「そらさんっ今日は外食しませんか? 僕奢りますよ!」
いや、子供に奢ってもらうとか情け無いにもほどがあるだろう。
奢りという言葉に惹かれたわけではなく偶には家族サービスでもしてやろうかという寛大な父親心を発揮した俺が手を引かれて外へ出たのだが、行き着いた先は超包子。本日の夕食は中華になるらしい。
らしいの、だが、
「おお烏丸サン、来たのかネ。今日のお奨めは桃まんに小龍包だヨ。キミたちにはサービスで特性薬膳スープもつけてあげるネ!」
―身体が温まりますよ(ニコッ―
「………………」
――なんだか愛想の好い超りんと四葉さんに出くわして、困惑中の俺であったり。
な、なんか妙に優しい気がするのは気のせいか?
「そんなことないヨ! 私たちの優しさは元から女神レベルなのは自覚しているところネ!」
―いつもと同じですよー―
とりあえず四葉さんはフキダシで喋れるようになろうよ、聞き取り辛いし。
なんだろう、何かいいことでもあったのかな。ネギ君が食事に誘うというのも珍しいし。
「とりあえず、奢ってもらわなくってもいいけどね。お奨めから戴いてもかまわない? あ、ネギ君も同じものでいいか?」
「えっ、あっ、はい」
―どうぞー―
カウンター席に並んで座り、お奨めとされた桃まんを戴く。
サービスだという薬膳スープを戴く。
小龍包と豚の角煮と青椒肉絲を戴く。
旨い。
「相変わらず美味いなぁ、四葉さんの料理は。あ、回鍋肉と麻婆茄子と蟹玉も注文していい?」
―歓んでー―
久しぶりに来てみるものだ。
上質な料理に舌鼓を打っていると、同じく注文した料理を目の前に並べられたネギ君が、なんだか呆気に取られた表情でこちらを見上げていた。食べないのなら貰うけど?
「そ、そらさんってそんなに食べるんですか?」
「少ないかな」
「いえ充分多いです。というか、そこまで食べてよくおなか壊さないですね……」
幼少期の家庭環境のお陰で食い溜めというものが出来るようになっているからね。とは言わない。食事の席だし。
が、ネギ君の台詞で超りんがビクッと身を竦めた。
……なんかあったか?
「な、なんにも無いヨ!? いやぁ! 烏丸サンは相変わらず健啖だネ!」
―見ていて惚れ惚れする食べっぷりですよね―
やはり態度のおかしな超りんを怪訝に思い、小首を傾げつつも食事を再開する。
新たに並べられた三皿に手をつけつつ、
「あとエビチリと牛のアレもお願いできるかな。あの辛いタライのやつ」
―歓んでー―
「まだ食べるんですか!?」
驚くネギ君を尻目に、数分後にドドンと目の前に積み上げられる大皿エビチリに、牛肉の塊が木製タライにゴロゴロ詰まったとんでも料理。料理は勝負だぜぇー!カカカカカ!
ひぎぃ、と呻いた悲鳴が横から聞こえた。
× × × × ×
「うわ、何してんだお前等」
「は、長谷川さーん、助けてください~!」
タライから肉の塊を小皿に取り分けつつ、ほくほくと頬張っていると夕餉を戴きに来たのかちうたんが現れた。
泣きついたネギ君を見て驚いた声を上げた、というよりは彼の正面に並んでいる料理の数々に若干引いているご様子。
「ぼ、ボク一人じゃ食べきれなくって……うぷ」
「なんで注文したんだよ……」
「気付いたら並んでたんです……」
―てへぺろ―
同じものを、と注文してしまった俺の注文と同じものをネギ君の正面にも並べてしまったらしい。四葉さんはお茶目だなぁ。
そんな四葉さんの茶目っ気に口の端を引き攣らせつつ、ネギ君の横へと座る長谷川さん。
どうでもいいがさっきから背後で注文を取っている超りんの方から視線は来るのだが、微妙に声をかけようという様子がない。なんだろう、やっぱり何かあったのか?
「まあ、夕食代浮くから貰うけど……。これ凄い量だぞ。特にタライ。……なんだこれ、肉の塊?」
「牛肉を煮たのを山椒とラー油とで味付けしたやつだよ。旨いよ?」
「ふーん」
小皿を取ってやれば、ネギ君の目の前にあるタライから少しだけ取り分けて食う。女子だし、やはり少食なのか。
「あ、美味い。なんつーか白米が欲しくなるな」
―炒飯なら作りますよ?―
「いや、いーや。
……とりあえずネギ先生は、他の皿から攻略した方がいいですよ?」
「ぐす……、そうします……」
涙を流しつつ、一人分がきちんと用意されて残っている蟹玉と青椒肉絲と回鍋肉と、大皿のエビチリの攻略に取り掛かるネギ君。
あまりの美味さに嬉し涙が止まらないご様子である。
「そらも手伝ってくれよ、あたしだけじゃ絶対食いきれないって。これ」
「ん? そうなん? じゃーちょっと多めによそってくれ」
言えばケバブの塊みたいな肉塊が、差し出した小皿にドンと乗る。
まあ食えるからいいけど。
異議を唱えないで受け取るとネギ君が小声で、
「い、いえ長谷川さん、そらさんはこれより多い量をもう食べてます……」
「え゛。……何処の禁書目録だよそれ」
呆然とこっちを見るちうたんの目には、既に空になった小皿が。旨し。
あと誰がグラトニーだ。
「そろそろデザートかな。四葉さん杏仁豆腐お願いー」
―甘味ゾーンに突入ですか?―
「ひぎゃー!?」
ネギ君が絶望的な声を上げた。
× × × × ×
結局食いきれなかったネギ君の皿をほぼ俺が平らげて、三人で杏仁豆腐に舌鼓を打つ。
甘味が別腹なのは世界の常識なので、まだ食えるんじゃねーかなどという文句は口にしない。四葉さんの料理は美味しいしね。
「一皿分だけで安心しました……」
滂沱の落涙を見せながら、胃に優しいらしいフルーツ杏仁をゆっくりと咀嚼する薬味少年。こうして表現するとえらいシュールな光景に見える。不思議。
そして三人並んで座っていると、家族の肖像みたいで微笑ましくも思う。口には出さないが。
―そうしているとご家族みたいですね―
四葉さんも同じことを思ったらしい。良かった、俺にもまだ平和な感性があったんだ、と思わず安堵した。
が、四葉さんの言葉に俺の周囲の何人かがビクンと身を竦める。なんぞ?
「よ、良し! 烏丸サンの食べっぷりに免じて今日は私の奢りとしてあげるヨ! 御代は結構ネ!」
「は? いやちゃんと払うよ。つかいきなり何言い出して、」
「わ、わぁ本当ですか超さん! さすが学生オーナーですね! 太っ腹ですー!」
「そ、そうだな! こんな大胆に優しさを見せられるやつなんてもう女神と呼ぶしかねーな! みんなで褒め称えようぜ!」
「「メ・ガ・ミ! メ・ガ・ミ!」」
唐突に起こるちうたんとネギ君の女神コール。
それに対して「ハッハッハいやいや」とまんざらでもなさそうな超りん。
周囲のお客さんたちはついてこれずに全員が困惑の表情。
なんだこのシュールな光景。
「なにネ、このシュールな光景ハ?」
「すいません超さん遅れまし――って烏丸さんっ!?」
そんなところへひょっこりと現れたのは、古菲に葉加瀬と茶々丸の三人。
クーと茶々はウェイトレスだったはずだからわかるけれど、葉加瀬は何故。
そう疑問に思う間もノータイムで、葉加瀬は深々と頭を下げた。
「もうっしわけございませんでしたぁあああああ!!!」
「――何が?」
あまりにもオーバーなリアクションに思わず思考の停止する俺がいる。
× × × × ×
「――なーるほど、茶々丸の記憶領域を覗いたってわけね」
「なんかもう本当にスイマセンとしか、知るつもりはなかったんですよ? いえ本当に」
「ふーん?」
「………………改めてモウシワケゴザイマセン」
魔法生徒としては見做されていなかった葉加瀬や超りんは俺の黒歴史を魔法先生方からは聞かされていなかったそうなのであったのだが、偶然にも茶々丸の記憶を調査していたら知ってしまったことにスゲェ罪悪感を感じていたらしい。超りんの本日の挙動の不振さの原因が、ようやく判明した。
今更誰に知られたとしてももうどーにでもなーれ♪な我が黒歴史なのだけど、気になるのは俺に対する対応ではなくて、なんで茶々丸の記憶領域を今漁ったのかという部分だ。
この世界線の茶々丸は人格形成のベクトルが原作とはまた違うあさっての方向へとメガ進化しているから、何某かの挙動不審や駆動系への不具合なんてのが引き起こされたとは到底考え難いのだが。
その疑問にはご本人様が―とはいっても今現在ロリボディに化けて三つ子になっているのをご本人と呼ぶかは甚だ疑問でもあるけどそれは置いといて―快く応えてくれた。
「ここ数日、マスターはサボタージュしているではないですか」
「うん」
「理由は風邪とかではなく、思い悩みによる寝不足です。ベッドから起き上がれないほど沈み込んでいるマスターが不憫で何か良い解決案はないかと葉加瀬と超に質問したところ、吸血鬼の真祖が寝込むことに驚いたお二方は私の記憶領域を洗い直して原因を探ろうとしたらしいのです」
「重い悩みかぁー」
体重とか? エヴァ姉は充分軽いと思うのだけど。
まあ現実逃避はさておき、明らかに俺の事情に関することじゃねーのか。
その暴露大会を参照して二人があの態度になったのを考慮に入れれば、そっちに連想できるのは割りと直通。
自己評価高すぎるかね。
「かてて加えて、マスターは暫く誰にも会いたくない、とプチ引き篭もりの鬱病患者のようです。漆黒と白銀のブリュンヒルデが一転してまるで森久保、哀れなものですね」
「お前本当にエヴァ姉の従者?」
自分のことはさておいて、こんなロボしか仕えていないエヴァ姉の周囲があまりにも不憫すぎる。何処で覚えた、プギャーと内心嘲笑っているようにしか聞こえない、そんなデレプロ仕込みの喩え方。
あと森久保バカにすんな。
「しかしそうかー、暫く会いたくないかぁ」
「何か御用でもありましたか?」
「んー、あるにはあったんだけど、まあ大丈夫か?」
明日辺りスタンド使い呼び出して別荘借りようかと思っていたのだけど、会いたくないと言っているところへわざわざ顔を出すようなKYをやる気はないし。
仕方ないから別口で、と地理条件を見出して皮算用を弾き、遠方にてウェイトレスをやっているイエローチャイナに声をかけた。
「とりあえずバカイエロー、明日の放課後に綾瀬と一緒に来い」
「ム? 手合わせアルカ?」
「おー、それでいいから」
「「マジでっ?」」
ん? なんか声がハモった?
片方はイエローだけど、もう片方は……。
「――どした、ちうたん?」
「……いや、お前が自分から古と付き合うというのも珍しいなと思ってな……。
つっても、勝負してもちょっと見ない間にすぐ負けるような結果が目に見えているけど」
「誰が負完全か」
そうなるのは少なくとも武闘会での試合形式だけだと思うぜー。……そう、だよな?
自身と古菲との実力の彼我をキチンと把握できているのか、少しだけ不安に思う今日この頃。流石にルール無用で全力(意味深)を出せば負けは無い、と思いたい俺である。
それからはほぼのんびりといつものごとく。小太郎とか月詠さんとか明日菜とかこのかとかせっちゃんとか高畑先生とかが現れてラブコメなんだかバトルものなんだか判別できない展開へと発展したけれども、こんな日常は平常運転なので割愛させていただきたく。てゆーか帰って寝る!
~某家庭用常備薬
半分が優しさで出来ているという謳い文句が有名な医薬品
実際の優しさ成分が3分の1しか配分されていないというのは意外にも有名な話
~逆玉手箱
裏浦島の無様な死
~牛の水煮・ラー油と山椒の辛味仕込みタライ仕立て
超包子では『中華の覇王』印の一品が普通にメニューに並ぶとシンジテル
~グラトニー
わたs禁書目録=大食いみたいな風潮は解せないんだよ!!!
~茶々丸朧四つ身分身の術っ!
いや三つ身だけど
以前に開発していた阿修羅モードを併用した三つの副電脳による並列操作。中身は全員茶々丸なロリ三姉妹。実験的にショートカットにしている新ボディなのだが保冷剤仕込みのミニスカチャイナで排熱対策はバッチリ
~森久保ォ!
むぅーりぃー・・・