ネギまとかちょっと真面目に妄想してみた   作:おーり

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非常に今更な注意事項ですが、この作品を読むときは心の許容量を広く持って「なんだそれwww」と所々作者を嘲笑いつつ読了ください


『カウントダウン1・午前』

 

「……烏丸さん?」

 

「あ……?」

 

 

 

 日曜日、お嬢様にデートしようと誘われて街へと繰り出したのだが、先に出たはずのお嬢様は待ち合わせの場所には居なかった。

 代わりにというわけではないのであろうけど、待ち合わせ場所のファーストフード店にてカウンター席に座っていたのは、携帯電話を弄っている烏丸さん。何故かノーネクタイでのかじゅあるなスーツ姿を若干着崩した、無駄に格好の良い仕草であったのが目に付いてしまい私は思わず声をかけていた。

 

 

 

「せっちゃん? どしたこんなところで一人で」

 

「いえ、待ち合わせです。というか烏丸さんも一人じゃないですか」

 

「俺も待ち合わせだよ。というか、キミなんでスーツ姿なの」

 

「私はお嬢様の護衛ですから、動きやすい格好を」

 

「うん。普通に間違ってるな」

 

 

 

 何それ酷い。

 この人が私の人称をお嬢様と同じように呼ぶのはもう変更できないのかは、まあ置いとくとして。言われたからには私としても言っておきたい。

 

 

 

「そういう烏丸さんもスーツじゃないですか。何処のホストかと思いました」

 

「それ褒めてるの? 俺はこの髪になってから似合う服が無いからね。仕方なく」

 

 

 

 胡乱な目で睥睨されたが(ジト目、というやつだろうか)、続けて応えられた回答も酷い。着てくる服が無かったらスーツになるとか、一般人の感性だと先ずそうならないはずなのだとも思えるのだが。

 あと着ているスーツがスタイリッシュすぎて、益々日本人からかけ離れている気もする。少なくとも喪服とは併用出来なさそうだ。

 

 

 

「染め直したらどうですか?」

 

「髪染めに金かけるほど余裕無いんだよ俺は」

 

「……なんでその髪色に変えたんですか?」

 

「同室の奴に勝手に変えられた」

 

 

 

 なんでしょう、その不憫な話。烏丸さんってひょっとして男子部ではイジメられてるのでしょうか。

 ……あり得そうですね。あんな過去を抱えていたわけですから、迫害され続けた生き様を得ているのかもしれませんし。……私みたいに。

 

 

 

「……なんなら今度良い染料をお裾分けしましょうか?」

 

「? せっちゃんも使って……、あー」

 

 

 

 ……? 私が使っていることを疑問に思ったのでしょうけど、……なんで最後納得したような声を上げましたか?

 あれ? 私この人に自身の出生とか話しましたっけ?

 

 ふと疑問に思ったことを尋ねようとする、前に。

 

 

 

「――はい、もしもし」

 

「おま、今鳴ったぁ?」

 

 

 

 お嬢様からの電話に即対応すると烏丸さんが驚愕に目を見開いた。

 待たせるとかそんなことを、私がするはずがないでしょうに。何を驚いているのでしょうこの人。

 

 

 

『せっちゃーん、ごめんなぁ、ちょい用事が出来てもうたから、今日はそらくんにリードしてもらってええかなー?』

 

「――はい?」

 

「――は? おい待て明日菜、お前ひょっとして近くにいるんj、って切りやがったアイツ」

 

 

 

 お嬢様の得体の知れない台詞に困惑し、一瞬思考が静止する。すると烏丸さんもいつの間にか電話に出ていたのか、私みたいに困惑の声を通話相手へと向けていた。

 というか明日菜さんと待ち合わせていたのですか、この人。

 

 ――ん? 何か今妙な具合にパズルのピースが嵌まったような感覚が……?

 

 

 

「へいせっちゃん、なんか明日菜から今日せっちゃんのことエスコートしろって言われたんだけど、そちは都合つくかい?」

 

「――奇遇ですね。私もたった今お嬢様に似たようなことを言われましたよ……」

 

「「……何処で見ていやがる……」」

 

 

 

 互いに頷き、目配せして店内を見渡す。

 それらしい気配や人物は見当たらないのだが、間違いなく近くにいるはずなので早いところ見つけて問い詰めたいところなのだが。

 

 そんな私の心情を慮れるはずなのだろうに、烏丸さんは少し見渡した後ため息を一つ。

 

 

 

「ま、ぶらつけばそのうち出てくるだろ。デートしないかいせっちゃん?」

 

「――ふぅ、仕方ないですね。デート(疑似餌)しましょうか、烏丸さん」

 

「あれ、俺の想定している反応と違う」

 

 

 

 可愛かった頃のせっちゃんはどこへ逝ったの。等と失礼なことを呟きつつも、エスコートを忘れない烏丸さんに連れられてファーストフード店を出ます。

 失礼ですね、こんなに可愛いじゃないですか。

 って、こういう自画自賛はさすがにキャラじゃないですよね。自重しなくては……。

 

 なんだか誰かさんに随分と毒されていると思いつつ、囮捜査の始まりです。早くに出てこないとどうなるかわかりませんよー、私が。

 

 

 

     ×   ×   ×   ×   ×

 

 

 

「ほほー、なんだかんだ言いつつまんざらでもなさそうやなー、せっちゃんも」

「そうよねー。桜咲さんもいい加減に認めちゃえばいいのにね」

「というか、二人そろってあの格好で歩いていると下手なばかっぷるみたいや」

「スーツ姿でペアルックみたいで、お店での視線も凄かったわー。桜咲さんも目を引いてたのに、本人気づいた様子なかったわね」

「せっちゃんは『自分女捨ててますから(キリッ』みたいな部分も確かにあるんやけど、ふつーにかわぇえからなー。男装してもさすが美少女、誰や少年剣士とかいうたの!」

「すていすていこのか。居場所ばれるわよ。あの二人のことだからすぐにばれるだろうけど、せめて午前中くらいは二人っきりにして距離を縮めさせなきゃ」

「せやな。ほな変装用さんぐらすを装備して!」

「いきますか。尾行開始!」

 

 

 

     ×   ×   ×   ×   ×

 

 

 

 なんか、明日菜とこのかが徒然嘲笑っているような気配が後方から感じる。

 ビバップな浮遊を感じている気分でもあるけど視線は向けない。最悪の場合俺の仮契約カードで召喚してやろう。

 

 本日は元々明日菜にデートに誘われていたわけだけども、ひょっとしたら最初っからこのつもりでせっちゃんを連れ出したのかも知れん。このかもグルっぽい。

 最後の晩餐的な意義も掛け合わせて楽しもうかと思っていたのだが、せっちゃんにとっては富んだ苦行となってしまったことを申し訳なく思う。スマヌ。

 

 

 

「で、何処に行きますか?」

 

「んー、普通に遊ぶか。なんかもうあの二人が我慢できなくなるくらいに愉悦してやろうぜ」

 

「異論ありません」

 

 

 

 本当にこの娘せっちゃんか? なんか俺の知っている赤面娘と若干違うのだけど。

 

 

 

「しかし、二人でこの格好で、ですか?」

 

「あわよくば私服も買おうかと思ったんだけど、正直せっちゃんのセンスは当てにならないからこのままで行こうぜ」

 

「失礼ですね! というかそんなことを言うのならご自分で見定めればいいじゃないですか」

 

「独り善がりな服選びほど信用の無いものは無いんだよー」

 

 

 

 女子の目、を期待していたのだけどね。この娘はそういう部分の鑑定眼は鍛えられてないと見た。

 

 というわけで、遊びの殿堂。

 

 

 

「ゲームセンターにやってきました」

 

「誰に説明してるんですか」

 

 

 

 別名でかい貯金箱。

 金食い蟻地獄でも可。

 

 

 

「せっちゃんこういうところって来たことある? というかキミ普通に遊ぶイメージが欠片も無いよな、カラオケとかすら徃かなそう」

 

「酷い肖像権侵害を見た!? 普通に行きますよ! カラオケくらい! ついこの間も私も行ってましたし!」

 

「そなの? 俺終始別の部屋に軟禁されてたから他の面子まったく知らんかったわ」

 

「なんですかその不憫な話……!」

 

 

 

 涙ぐんで声に詰まるせっちゃん。

 哀れんだ目を辞めろ。

 

 

 

「しかし行ったとして、……何を歌ったん? 80年代歌謡曲とか? 若しくは演歌とかをコブシ聞かせているイメージが先行してるんだけど」

 

「ですからそれ普通に失礼ですってば。私だってじぇーぽっぷとか歌いますよ」

 

「(なんか、発音が……)へ、へー、どんなの?」

 

「恋愛サーキュレーションを歌いました」

 

 

 

 なにそれ聞きたい。

 ドヤ顔で胸を張るせっちゃんに一瞬萌えた。ようやく俺の知るせっちゃんに会えた気分だ。

 

 

 

「ところで、わざわざ来たということは何かお目当てのげーむでもあるんですか? アイカツですか?」

 

「真っ先になんでそれが出るの……? いや、小耳に挟んだ最新次世代型の体感ゲームが出ているって話なんだけど、」

 

 

 

 倒置法で胡乱な目をせっちゃんに向けつつも、ちょいと視線を巡らせて、人気のありそうな筐体を探す。「あっ、烏丸?」

 余計なモンを見たので視線から外す。

 

 

 

「あの、烏丸さん? 今呼ばれませんでした?」

 

「気のせいじゃ「って桜咲っ!? なんでっ!?」……ちっ」

 

「舌打ちされた!?」

 

 

 

 驚愕に目を見開くクラスメイト。

 デート中に出くわすとは、不貞ぇ野郎だ。

 

 

 

「何してんだ、織村」

 

「いやお前こそ何してんだよ!? なんだその格好!?」

 

「人の格好はどうでも良かろうに」

 

 

 

 何故か居たのは級長の織村一夏。別名をワンサマーと呼ばれる無駄イケメンで。

 確か剣道部だったはずだから、それでせっちゃんと面識があるわけか。

 ちっ、まさか休日に知り合いに出くわすとはな。せっちゃんも運が無いなぁ、などと思考していると困惑顔のせっちゃんが斜め後ろからついついと袖を引く。ナニコレ可愛い。

 

 

 

「……あの、烏丸さん。お知り合いですか?」

 

「え」

 

「え」

 

「え?」

 

 

 

 ……えっ。

 

 

 

     ×   ×   ×   ×   ×

 

 

 

「」

 

「………………ナニアレぱねぇ」

 

 

 

 さすがは空戦の第一人者と言ったところか。

 センター内の巨大ディスプレイに転写されたせっちゃんの機体がぬるぬる動く。

 

 件のゲームは『IH【インフィニット=ヘクトパスカル】』と言い、空中戦専用対戦シュミレーテッドリアリティとかなんとか。要するに己の身体能力にて機体の行動を決められるゲームであるようで。

 俺もいいところまでは行けたのだけど、元来羽根のあるカラス天狗もどきには勝てなかったらしい。空を飛ぶ程度の能力&風を操る程度の能力を得ているかのごとく、空中での姿勢制御とかが万全且つ十全なせっちゃんの前ではぬるゲーに見える。

 ちなみに名前を覚えられていなかった現在絶句のあまり息してない級長も件のゲームを遊びに来ていたらしいのだが、ランキングでいいところにいたはずの彼を軽々と追い抜いて、全国トップにすら躍り出たせっちゃんを止められるものは多分もういない。世界番付一位二位に輝いていたCharlotteとかokiuraとかをすっぱ抜いて堂々のランキング一位をsettanが獲得した。名前の打ち込みは俺だが。

 

 

 

「……楽しかったかい?」

 

「堪能しました」

 

 

 

 むふぅ、と満足そうなせったん改めせっちゃんがヘッドマウントディスプレイを頭から外し、ゲーセンにしては大仰な筐体から降りてくる。

 そりゃああれだけ動けば満足だろうよ。

 どんがどんが沸いてるギャラリーとは対照的に、webの向こうの対戦相手であったCharlotteさんは今どんな気分なのであろうか。

 

 

 

「すげー、あんな動き人間にできるんだ」

 

「あれ絶対プロだよ。もしくはその道のSPとかだよ。格好もそれだもん」

 

「いや紗南、スーツ着た人がみんなSPだったらプロデューサーとかどうなるのさ。いや云わんとすることはわかるけど」

 

「というか片方の麻帆良祭で見たよ。映画出てた」

 

「あー、麻帆良かぁ。MAHORAならしょーがない」

 

 

 

 そしてギャラリーの端っこの方からなんだか失礼な女児の声が聞こえた。

 片方って俺のことか。そして麻帆良が非常識の共通標識みたいに思われているのは若干心外。

 なんとなくわかるけど。

 

 そっちがなんとなくだが気になるのはともかくとして、せったんがある一点に目を向けている。

 気付いて見てみれば、サングラスをかけた明日菜とこのかが下手糞な変装で連れ立っており、スーツ姿の変態にナンパされている姿が目に映った。

 途端に、

 

 

 

「――そこの変態ッ!! お嬢様に何をしているかッ!!!」

 

 

 

 跳躍するせっちゃん。

 跳び越えられるギャラリーの群れ。

 何処から取り出したのか長物の得物を振りかぶり、頭に英語の頭文字の被り物をしたスーツ姿の男性(?)にせっちゃんが急襲をかけたのであった。

 

 ……とりあえず、いい笑顔で近寄ってきている店の人から逃げる準備をしなくちゃな。

 

 

 




~ビバップな浮遊感
 どんなんよ、夜咄

~恋愛サーキュレーション
 せぇーのっry

~織村一夏
 実は再登場なそらのクラスの級長
 以前にIS関係ないと表記はしたものの、正しくはISの発展しなかった並行世界のパラレルな、いわゆる一つのワンサマー
 見たところcool系美少女剣士な刹那に懸想しており、朴念仁は患っていないご様子

~IH【インフィニット=ヘクトパスカル】
 空で戦うスタイリッシュ武装ゲーム。空中戦を予め体感している刹那に隙は無かった
 開発者は実際にこんな機械を作り出して宇宙開発に乗り出したかったようだが、観測できるのに掌握できない謎の粒子が大気中に介在しており、それに邪魔をされて機体の量子変換化が成功しなかったとかなんとかいう裏話。要するに謎の粒子は魔力素のことで、原因は大体魔法使いのせい
 むしゃくしゃした開発者は最終的にゲームに変えたらしい

~okiura
 izuruも下から数えると居るってよ

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