ネギまとかちょっと真面目に妄想してみた   作:おーり

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あくろばてぃっくシンデレラ劇場【変則版】


『カウントダウン1・午後』

 

「カワイイボクが行きますよっ! 此処でドロー4ですっ!」

 

「残念読んでた。ドロー2」

「ふ、ふひ……、ドロー2……」

「え、えと、ドロー4で……」

「それじゃああたしもドロー2」

「甘いっ! ドロー2だよっ!」

 

「えっ、ちょ、えええっ!?」

 

 

 

 円環は流れるように、俺の直前まで次々と手札(カード)が切られてゆく。輿水から双葉へ、双葉から星へ、星から白坂へ、白坂から神谷さんへ、神谷さんから三好へ、三好から烏丸へ。

 そんな俺に捨てられた仔犬のように潤んだ瞳で見上げてくる輿水。俺が出したら当然の如くこの怒涛の連打を自身が受ける破目になってしまうのであろうから、こんなところで『カワイイ力(可愛いぢから)』とやらを発揮してしまうのも納得なのであるがさて、そこで俺の取れる行動というものも当然の如く狭められてしまうのである。

 

 

 

「――ドロー4×2だ」

 

「其処は手心を加えるべきじゃないですかねぇっ!?」

 

 

 

 輿水が途端に逆切れした。

 怖いわー、突然切れる昨今の若者マジ怖いわー。

 

 

 

「良いから引けよ。合わせて、ひのふの……24枚?」

「うあーん、これがまたスカカードばっかり……」

「色は、青で良いかな」

「えっ、ちょ、青色なんでか無いんですけど!?」

「そう。じゃあはい」

「引けと!?」

 

 

 

 難癖つける輿水に山札を指差すと泣き崩れる。

 ゲーム(勝負)はいつでも全力全開だよ!

 

 

 

「や、やった、ありましたよ! 8があったので別色に変えます! 此処で一気に枚数消費! 色は赤です!」

 

「んー、じゃあリバースを3枚。色は青」

 

「いやあああああああああ!?」

 

 

 

 双葉の容赦の無い追撃が輿水の精神力をガリガリ削る。この幼女マジ怖ぇ。

 そんな愉しいUNOに勤しんでいるところへ、扉の開く音が耳に届く。

 

 

 

「闇に呑まれよ!(お疲れ様です!)」

「おつかれさまですー」

「やみのまー」

「あれ? お客さん?」

 

 

 

 奇抜な挨拶と共に4人ほどの女性が入ってきた。

 その中には知った顔も。

 件の知った顔は、俺の姿を見つけて一瞬思考が静止したかのように、

 

 

 

「……なんで居るの?」

「え、未央知ってる人?」

 

 

 

 開口一番に失礼なことをぬかしてきたのであった。

 

 

 

「あー。ちょっとした事情?」

 

「ゲーセンでプロデューサーがスカウトしたんだよ」

 

「えっ、キミアイドルになるの? 男子だよね?」

 

 

 

 その場に居合わせていた双葉が端的に説明すると、即食いついてくるエドモンド(本田)。説明するのならば端折らずに細部までやって欲しいなぁ……。

 

 

 

「スカウトされたのは俺じゃないし、アイドルにもなる気はありません。今は所用で待機みたいなもんだよ」

 

 

 

 午前中の話になるのであるが。

 頭にPの被り物をした不審人物に目を付けられた明日菜とこのかに危機感を抱いたせっちゃんが突貫。

→寸前まで注目を集めていた彼女が暴れだしたことによりゲーセンに居られなくなり逃走。

→何故か一緒に逃走していた被り物のPがせっちゃんにも目をつけてアイドルやってみない?と交渉。

→興味はあるお三方の暇つぶしの保護者みたいなたち位置で俺まで付いてゆく羽目になる。

→真っ当な事務所であることをアピールするために見学会開始。俺は初めから興味が無いのでパスすると待機で放置される。

→半分やさぐれた気持ちで事務所に居るととある机の下から謎の歌声が以下略。

 

 

 

「――そうしてなんやかんやの後に意気投合した手持ち無沙汰ーズの俺たちはこうしてUNOに興じて輿水を苛めて遊んでいたっていうわけだ」

 

「ちょっと!? 今聞き捨てならないことを聞きましたよ!?」

 

「ヤベっバレタ、ニゲロー!」

 

 

 

 わー!と蜘蛛の娘を散らすかのように、思い思いにはしゃぎ出す無垢な子供たち。

 輿水はむきー!と口の割りに逃げなかった俺にぽかぽかとぐるぐるぱんちを噛ましてくる。おお痒い痒い。

 

 そんな俺たちの有様を見て、本田を初めとするお嬢様方4名は呆れたような声を上げた。

 

 

 

「……あー、まあ、無害なら別にいっか」

「良くないですよ!?」

 

「それよりよく輝子ちゃんと気があいましたねー」

「スルーされた!? ねえちょっと!?」

 

「あやつとは我と似た魔力を感じる……(な、なんだか妙な親近感を覚えます)」

「スイマセン神崎さんの言っている意味がわからないので処理しきれないんですけど」

 

「きっと奈緒が間に立ったんじゃないかな」

「お願いですから誰か反応してください……」

 

 

 

 ニュージェネレーション+1に口々にスルーされて輿水のライフはとっくにゼロである。

 ぽかぽかあたっくも鳴りを潜め、そのまま俺の胸で泣き出すちっちゃい娘。

 

 

 

「お前ら輿水のこと苛めるの止めろよ!」

 

「今 日 一 番 の お 前 が 言 う な で す よ お ぉ ぉ ぉ っ ! ! ! 」

 

 

 

     ×   ×   ×   ×   ×

 

 

 

「いやー、遊んだ遊んだ」

「事務所で遊ぶのってどうなのと言いたいのですが。それは」

 

 

 

 神崎ちゃんとやらに微妙に期待したような目を向けられつつ、渋谷さんとか島村さんとか本田とかに応援してますとエールを送り、仕事ということで現れた180はありそうな大柄な美少女に小脇に抱えられた双葉が拉致られるのを目撃した少年Sはあまりの展開に暫く思考が追いつかなかったり。あれが噂のきらりんぱわー(物理)、か……。

 そんなこんなで遊んでいた面子が用事とか帰宅とかで次々と事務所から去ってゆく中で、暇があるらしき神谷さんと俺だけとなってる現状。未だに俺の連れであるお三方は事務所へ戻ってこない。待ち惚けである。にょわー……。

 

 ともあれ、実際神谷さんには頭が上がらない。

 渋谷さんの見越した通り、机の下のキノ娘とその悲鳴で爛々とした表情で隣室から飛び出してきたキタロー娘に挟まれて逃げ場が無い状況下で、一緒に部屋から抜け出てきた神谷さんと少なくとも顔見知りの輿水が緩衝材になったお陰で、恐らくはあんまり警戒されなかったのであろうとは思われるわけで。

 さすがに顔合わせ初で素である髪と肌に驚かれて、キメ台詞を要求されたのは頂けなかったが。キメ台詞とか俺持ってねーよ。これコスプレじゃねーよ。

 しかし、部屋から抜け出た後の二人からの感謝の言葉は一体なんだったのだろーか。

 

 

 

「プ ロ デ ュ ー サ ー ッ ! ! !」

 

 

 

 小首を傾げているとそんな怒鳴り声が事務所に響く。

 怪訝に思い、関係ないのに振り返れば、少女的な全力の威力で入り口をドバンと蹴破ってきた、ろりーたでばにーな小学生くらいの女児が怒りの怪鳥蹴りを俺目掛けて――って、おい。

 

 

 

「待て待て。なんで俺目掛けた貴様」

「!? は、はなせーっ!?」

 

「跳び蹴りの着地点を予測して手掴みでバニー姿の女子小学生を逆さ吊りにする贋作師……っ!?」

 

 

 

 ソファの向かいに座った神谷さんがなんか失礼なこと言ってる。

 俺は攻撃に対して対処しただけであるから、俺は悪くないよ、多分。うん。

 

 

 

「プロデューサーの仕業だろー!? なんだよこの格好! かっこいいのにするって約束じゃんかよ!?」

「お待ち女児。俺お前のプロデューサー違う」

「………………え、誰?」

 

 

 

 先ずは謝れ。

 

 

 

「晴、そちらお客さん。というかなんで間違えた?」

 

「えっ、事務所でスーツ着てるからてっきり中の人かと……」

 

「「中の人なんていないっ!」」

 

 

 

 神谷さんと声がはもる。

 思わず見合わす俺たち。

 ……わかってるねぇ。

 

 

 

「いやそのりくつはおかしい。……っていうか下ろしてください。あと突然蹴りいれちゃってごめんなさい……」

「うむ、素直に謝ったから許す」

 

 

 

 くるり、と反転させてひざの上に着座させる。

 されるがままに俺の上に座り込んだ晴ちゃんとやらは、何をされたのかわかってないご様子であったり。

 

 

 

「すげぇー、やっぱあんた贋作師だろ。なあなあ、キメ台詞言ってくれよー」

「ええー、じゃあちょっとだけ。――俺に勝てるのは、俺だけだ」

「それ違う人だよ!」

 

 

 

 どっ、と互いに笑う。

 いやでも俺の元の髪色黒だったし、これ間違ってなくね?

 

 

 

「え、えーと……、とりあえず、本当に誰?」

「あー、晴にはまだわからなかったかー。えっとな、黒子のバスケっていう漫画があってね、」

「そっちじゃなくって! この人! あと俺降りていい!?」

 

 

 

 あー降りちゃうのかー。

 ふわふわロリバニーとか何気に最高なのだが。

 

 

 

「ざ、残念そうな顔してる……。え、俺降りちゃ駄目なの……?」

「とりあえず新しいアイドル候補の付き添いの人。名前は烏丸くん、だっけ?」

「あんまり居座る予定無いけど名前だけでも覚えて行ってね。あとゆっくりしていってね!」

「最後の台詞は多分今の状況を言ってるんだよな……」

 

 

 

 律儀に降りない晴ちゃんとやらきゃわわ。

 

 

 

「えーと、結城晴です。アイドルやり始め、みたいな……?」

「その格好は?」

「なんか、写真撮るからってこの衣装で……」

 

 

 

 おおう、不満顔。

 思い出してしまったらしく、ひざの上で膨れて俯く小学生女児。

 お? 神谷さんからアイコンタクト。

 何とかしろ? 了解。

 

 

 

「しかしさっきのはいいキックだったなー。こりゃ将来有望なサッカー選手になれんじゃね?」

「おい、なんでそこ突付いた」

 

 

 

 神谷さんのツッコミはいりまーす。

 

 

 

「……そ、そっかな?」

 

 

 

 あ、あれー?

 意外な好評価に反応した晴ちゃん。ちょっと振り向きそうな首の仕草が衣装と相俟ってとってもせくしぃ。

 しかしそこに神谷さんのアイコンタクトが!

 続行? 了解。

 

 

 

「おう。俺サッカーしてるから。そういうこと割とわかるよー」

「マジ? 俺もしてるんだけど――」

 

 

 

 半分くらい嘘と本音とを混じらせて小学生を宥める。

 そんなちょっとだけ犯罪臭のするお仕事で、待機の時間は潰れていった。

 

 

 

     ×   ×   ×   ×   ×

 

 

 

「うお、せっちゃんかわいい!」

「かっ開口一番に何を口走ってるんですかっ!?」

 

 

 

 帰ってきたせっちゃんは見学だけでなく何某かの体験学習でもしてきたのか、誰かのステージ衣装みたいなものを着てがっつりおめかしして戻ってきていたのである。

 俺がそれに反応するのは当然の理屈。

 

 

 

「せやろせやろー? うちらも着せてもろたけど、やっぱりせっちゃんの可愛さをそらくんに見せんのは間違っとる思うてなー」

「とりあえず桜咲さんだけ衣装のまま連れてきました。もう今日はこのまま帰る勢いで」

「え? それ着てっていいの?」

 

「いいわけないでしょう!?」

 

 

 

 俺たちのボケ倒しに赤面したせっちゃんのツッコミが冴え渡る。

 そんな俺たちに近寄ってくる、被り物P。

 

 

 

「いやあやっぱり私の目に狂いはなかったなぁ。本当にアイドルやらないの? 勿体無い」

「やりません! 私は忙しいんです!」

 

 

 

 全員に尋ねたのだろうが、せっちゃんが代表してお断りの返事をした。

 ところで俺はそんな変態に一つ話があるわけで。

 

 

 

「なあそこのPヘッド、ちょっと質問があるのだけど」

「ん? なんだい?」

 

「――結城晴、というアイドル見習いに会ったんだけど。あの衣装はお前が選んだのか?」

「そうだが?」

 

「――せっちゃんの衣装は誰が選んだ?」

「私だが?」

 

「――あなたが、神か……っ!」

 

「何言ってるんですか貴方は」

 

 

 

 がっしりと神に向かって握手を要求する俺に、せっちゃんの冷徹なツッコミが突貫した。

 

 いやだって仕方なかろうよ!

 赤面せっちゃんを復活させた男だよ! これを神といわずして何を言うべきなのか!」

「口に出てますよ! あと神扱いしてるのに扱いがぞんざい過ぎです!」

 

 

 

 何はともあれ、この出会いが後のアイドル業界を巻き込んだ『桜咲せつな』のシンデレラストーリーの幕開けと「なりませんよ!!!」




~UNO
 ローカルルールかも知れんけど同じカードならば色違いでも一緒に出せる。今回は更にそれを変則させたドロー4の二枚同時出し。鬼かと

~謎の歌声
 きーのこのこのこぼっちのこー……ふひひ

~キメ台詞
 「別に、倒してしまっても構わないのだろう?」
 「――僕は悪くない」
 前者は対前川。後者は対輿水
 もっと早くにそらがこの事務所に関わっていたらそんな非情な展開が待っていたはず。どちらにしろ輿水涙目待ったナシ!さすがは腹パン要員だぜ!

~部屋から抜け出て感謝
 隣室ではホラー映画鑑賞会の真っ最中でした

~晴ちゃんきゃわわ
 おっきなおともだちが全力で大興奮するほわいとでばにーでふわふわな晴ちゃんの画像はググると割と直ぐに出てきます。マジで

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