とある輝夜の時間操作《タイムオペレーション》   作:仙崎終夜

5 / 6
遅くなりましたm(_ _)m
原作で言うとだいたい1巻のちょい前あたりです。少しずつシリアスが入ってくる……。




ゆがんだ絆

統括理事会理事長の『人間』アレイスターは、窓のないビルの一室にいた。

その四角い部屋の真ん中には円筒形の生命維持装置が鎮座していて、彼はそこで逆さまに浮かんでいる。満たされた赤い液体は彼の口や鼻から体内へと浸透していき、細胞一つ一つに干渉していく。

そんな中、彼は笑っていた。

無垢な子供のような、悪意に塗れているような不可解な笑みを浮かべていた。

 

(序列第八位、時間操作(タイム・オペレーション)か)

 

一方通行(アクセラレータ)に手を出すなと言ったあの少年。

LEVEL5など軽く超えている能力を持っていた彼が、今ではその影もなく偽りの日常を送っている。

 

(アレの覚醒を待つよりも第一位を引きずり込んだ方がプランの進みようが早いか)

 

彼の視線は、虚空に浮かぶ映像に向いていた。

そこに映るのは、仲良く食事を摂っている第一位と第八位の姿。

その様子を見たアレイスターの目に、ほんの一瞬だけ怒りの色が見えた。

しかしそれはすぐになくなり、彼はコマンドを打ち込んだ。

絶対能力進化(レベルシフト)計画】

学園都市の闇がうごきだす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

輝夜と一方通行は第七学区の通学、または帰路を歩いていた。

先ほど昼食を食べ終え、寮の部屋に向かうつもりだったが、諸事情によりそうはいかなくなった。

何故なら、

 

「頼む!宿題一緒にやってくれ!!」

「「……、は?」」

 

公衆の前なのに、目の前で土下座するツンツン頭の友人に足止めをくらったからだ。

一応ツンツン頭の友人、上条当麻も同じ寮で生活しているので、『そのまま一緒に帰ればよくね?』という感じなのだが。

 

「えーっと、一方通行さんどうします?」

「ナニ急に畏まってやがる。俺は知らねェぞ」

 

早々に面倒事から逃げる一方通行に輝夜は頭を抱えた。

 

(いやわかってたよ?そう言われるのくらいわかってたよ!?でもさ、でもさ……!)

 

「俺一人に押し付けるのはよくないと思う!!」

「忙しいヤツだなァ!俺がなンで家庭教師みてェなことしなきゃならねェんだよ!」

「あのー、もしもしお二人さん?わたくしめの事を忘れないでもらいたいのですが…」

「「黙ってろ不幸野郎!」」

「八つ当たりしないでもらえます!?」

 

結局上条の宿題係を決めるのは後日となり、二人は上条と別れた。

 

「ったく、他人の世話なンつーことァ絶対やらねェからな」

「それも友達付き合いとしては大切なことなんだよ?せっかくの経験だし、ここは一方通行に任せる」

「うまく押し付けよォとしてんじゃねェぞ!?」

「なにおう!?俺は面倒だからとか面倒だからとか面倒だからとかそんな理由でお前に言ってるんじゃ無いんだからね!」

「……、ツンデレっつーヤツにでも目覚めたのか?」

「………違うと思いたい」

 

二人は今日も仲良しである。

 

「あっ、やべ忘れ物した」

「相変わらずだな…」

 

あわあわと慌て始めた輝夜は深ーいため息をつくと、

 

「先に帰っててくんない?できればお湯を沸かしていただけるととても助かる」

「チッ、まァそンくらいならやってやる」

 

口論しても二人は結局何事も無かったかのように過ごせる。それくらいまで、二人の友情は深いのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

輝夜はスタスタと忘れ物を取りに先ほどいたファミレスに足を運んでいた。忘れ物というのは学生証だ。

 

「別に無くしたら新しく発行してもらえばいいんだけどねー」

 

そうボヤきながら輝夜は目当ての学生証を取り戻し、再び歩いてきた道を引き返そうとした。

 

「ん?」

 

店から出て二十メートルほど歩くと、黒いスーツを着用したと男たちが目の前に立ちふさがった。

 

「どちらさんでしょうか?」

「君と話がしたくなっただけの者だ」

 

男達の内の一人、おそらくリーダー格のやつだろう。彼がそう答えた。

 

「いや、俺に話すことは無いんで。通してもらえます?」

「残念だが、それは無理な相談だ」

「えぇ~?」

 

いつも通りにしている輝夜だが、見るものが見れば気づいた。

結構イラついていることに。

 

「なんで通してくれないのか教えてもらってもいい?」

「君の友達、一方通行くんが今忙しいからね。それの邪魔をしないように……」

「じゃ、さいなら~」

「!?」

 

一方通行の名が出た瞬間、輝夜は能力を発動させた。目の前にいる男たちは、体感時間を止められたことに気づいていない。それもその筈。

 

書庫(バンク)にある輝夜永斗の使用能力は、発火系能力者(パイロネキスト)となっているからだ。

 

どのように人の壁をすり抜けたのかわからず戸惑う男たちを尻目に、輝夜は寮へと走る。

 

(変なこと仕込まれんなよ…!)

 

一方通行の無事(?)を祈りながら、彼は走った。

 

 

 

 

 

一方その頃、一方通行は寮の手前で、

 

「ナンだァ、テメエらは?」

 

輝夜と同じように、黒いスーツを着用したと男たちに声をかけられていた。彼の表情は絶賛不機嫌ですと言わんばかりに眉間にシワが寄っている。

 

「君に聞いて欲しいことがあってね」

 

男達の内の一人が言い出した。

 

「ハッ、生憎聞くつもりなンてねェよ。俺ァさっさと帰ってやンなきゃならねェことがあンだ。どけよ」

「輝夜永斗のことなんだがね」

「……アイツには手ェ出すンじゃねェぞ」

 

生まれて初めてできた友にして、自分を闇から引き上げた恩人。

そんな彼に手を出されるなどということは、一方通行にとって何よりも耐え難いものだ。

男はそれを完全に分かり切ったような顔をする。

 

「私達は何もしない。するとすれば、君自身になるだろうけどな」

「……どォいうことだ」

 

一方通行は、何時でもこの男たちの首を刈れるよう構えた。しかし目の前の男たちは誰も怖気づくことはない。それ以前に余裕さえある。

 

(ナニを考えてやがンだ…?)

 

目の前の男たちは構えもない。

そして、一人の男が言い出したことは、

 

「君は今の自分に、満足しているか?」

「……、はァ?」

 

完全に威勢を削がれる問いに、一方通行は思わず問い返した。

 

「君は学園都市のLEVEL5、序列第一位ということはもちろんわかっているね?」

「当たり前だ」

「序列第一位ということはどういう意味か、わかっているね?」

「ンなこと決まってンだろォが。俺がこの街で『最強』だってことだ」

本当にそうかな?(・・・・・・・・)

 

男の言葉に、一方通行はカチンときた。

彼が言い返す前に、男は続ける。

 

「君は前に、学園都市LEVEL5序列第八位である輝夜永斗くんに負けている」

「……だからなンだってンだァ?」

「わからないのか?ようするに―――」

 

男は一度呼吸を置くと、

 

君は最強などではない(・・・・・・・・・・)

 

言い切った。

今度こそ一方通行は能力を発動させ、足の裏で軽く地面を踏んだ。

それだけで、一方通行の足元の砂利が、地雷でも踏んだかのように爆発した。

男たちはとっさに両腕で顔を庇ったようだが、衝撃だけで勢い良く後ろへと吹き飛ばされていった。

 

「この程度を止められねェオマエらに、俺を否定する権利があるとでも思ってンのかァ…?」

「素晴らしい力だ」

「……!」

 

一方通行は眉をひそめ、吹き飛ばされた男の一人を見る。

おかしい、と彼は思った。

擦り傷ひとつ、見当たらない。

 

「だが、『最強』の力はそれくらいだ」

「……、よっぽど殺されてェみてェだな」

「輝夜永斗くんが憐れむのも無理がない」

「憐れむ、だと……?」

 

トドメを刺そうとした一方通行の動きが止まる。

 

「『最強』がどう足掻いても勝てる訳が無い。なんて可哀想なやつだ。『最強』という幻想にしがみついてる三下なのに、この俺の友達?笑わせるな、とでも思っているんだろうね」

「ふざけンじゃねェぞ…!」

「『最強』じゃないやつが第一位?第八位にすら敵わないやつが第一位?」

「ふざけンじゃ……!」

「見返そうとは思わないかい?見返そうとは」

「……!」

 

二回も同じことを言い、『見返す』という言葉を不自然なまでに強調して男は言った。

 

「君はあの時間操作を超える……、いや。この世の誰よりも上の『無敵』に、前人未到の絶対能力者(レベル6)になる気はないか?」

絶対能力者(レベル6)だと?」

「時間操作の彼は、君のような『力』はない。その圧倒的な『力』を持つ君が、『最強』のまま止まっていれば、いつまで経っても彼に見下されたままだろう」

 

一方通行は黙り込んだまま、ただ男を睨む。

話し続けた男はポケットから一枚の紙を取り出した。

 

「今すぐ決めろとは言わない。LEVEL6への道を歩み始めるのはいつからでもいい。じっくり考えて決めることだ」

 

そしてその紙を一方通行の手に握られているコンビニのビニール袋の中に入れた。

 

「そこに、私たちの研究所の場所が記されている。いつでも待っているよ」

 

そう言い残して男たちは立ち去った。

背が見えなくなってから、数分経っても一方通行は動かない。

 

「一方通行!」

「……、輝夜か」

 

今の彼の思考を占めるのは、ただひとつの疑問。

 

―――オマエは、本当に友達なのか……?




絶対能力者編は禁書目録編の後なんですが、時系列の改変という感じです。じゃあ禁書目録編は? となるんですが、それはおいおいと考えていこうかと(^^;

次回もお楽しみに( ´ ▽ ` )ノ
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