ISの方がシリアス寄りだからこっちはギャグ主体で行こうと決めました(^^;
それでは若干シリアス入ってる回どうぞ~(笑)
翌日。
「おーい、一方通行と輝夜~!」
「あァ?」
「ん?」
二人の少年、一方通行と輝夜永斗は背後から呼び止められた声に振り向いた。その声の発生元は、不幸少年もとい上条当麻だった。
「なんだ、ただのウニか」
「ウニってのは陸上でも生活できンのか、進化したなァ」
「二人揃って酷くないですか!?つーかウニって頭のこと言ってんだろ!」
「「それが何か?」」
ハモって返事をされうなだれるウニもとい上条は、早くも気を取り直したようで、
「ところで二人ともこれから暇?」
「オマエ、打たれ強いやつだな」
「俺は何も無いけど、一方通行は?」
「ン、悪ィが俺は用事がある」
輝夜が一方通行に聞くと、彼は少し目をそらしてそう答えた。輝夜はその反応に目を細めたが何も言わず、
「あらー、そりゃ残念」
「すまねェな」
「残念だな……。でも用事なら仕方ないな」
上条はそう言ったあと、輝夜にボーリングに行こうと誘ってきた。彼は了承の返事をすると、一方通行の顔をチラッと見た。
そこには、いつもと変わらない一方通行がいる。だが、ほんの少しだけ、その表情には影が差していた。
◇□◇□◇□◇□◇
一方通行は輝夜と上条と別れた後、昨夜謎の男に渡された紙に書かれた研究所に向かった。
――輝夜永斗くんが憐れむのも無理がない
「……チッ」
あの男の言っていた言葉が蘇る。
輝夜の様子からは、そんな感情は見られなかった。
――『最強』じゃないやつが第一位?第八位にすら敵わないやつが第一位?
確かにその通りだ。
一方通行は一度、輝夜から(ただの喧嘩とはいえ)負けた。それに関して、今までどうと思ったことはない。ただの喧嘩だからと、気にしないでいた。
だというのに、
――見返そうとは思わないかい?見返そうとは
そうこう考えているうちに目的地の研究所に着いた一方通行は、白衣を着た研究者に案内された。
その者の態度は歓迎そのもので、この先得られるであろう成果に涎を垂らしているようだった。
「今回君にやってもらうことは簡単なことだ」
「……」
「二万通りの戦闘を行ってもらう」
「はァ?二万通りだと?」
「まぁ最後まで聞きたまえ」
詳しく説明を受けたところこれから行う絶対能力進化計画とは、『樹形図の設計者』が導き出した二万通りの戦闘を行うというものらしい。そう聞かされながら歩き一方通行は、
(二万通りってことは、何年かかるンだよ……)
そして、たどり着いたのは一枚のドアの前。
金属性のそれが横にスライドした瞬間、一方通行の視界に壮大な情景が飛び込んだ。
「!?」
「これらが、君の相手となる人形だよ」
そこにあったのは、無数の培養器。
円柱状で液体に満たされたそれ一台の中に浮かんでいるのは、一人の少女。
年齢は一方通行よりも少し下ほどと思われる少女たちは、まさしく生まれたままの姿で創り出されていた。
「驚いたかい?さすがにクローンとまでは、予想していなかっただろう?」
学園都市に未だ誕生していない絶対能力者の領域を開拓するには、それ相応に、過去に類を見ない質と量の『材料』が求められるとは予想していたが、生物の倫理をここまで崩壊させたことは想定を完全に裏切っていた。
「――ハハッ」
思わず笑いがこぼれでた。
「あははぎゃはあははははッ!イイねイイね最っ高にイイねェ!研究者ってとこの騒ぎじゃねェぞこれはァ!?」
口を開け、歯と歯茎を露わにして愉快に悦楽に浸る彼を、研究者達は狂喜の笑みを浮かべ眺めていた。
◇□◇□◇□◇□◇
「うだー……」
「声に出してうだーって言うヤツ初めて見たわ」
一方通行が実験内容を知った頃、輝夜は上条らクラスの三馬鹿とボーリングを終え、三馬鹿のうち上条以外の二人は、
「二次会と洒落こもうぜぃ!」
「合コンか!?合コンやな!?よっしゃ行くでー!今夜はパレードや!!」
などと手に負えない始末で、輝夜と上条は気づかれないように出てきたのだ。
そしてその帰り道の途中、路上にポツンと立つジュースの自販機に寄っていた。
「喉乾いた」
「……、上条くん。お金はあるのかい?」
「ボーリングで全部巻き上げられました……」
学生らしからぬ(大人になってもしちゃダメ)賭けボーリングをし、上条は見事に最下位を獲得した。無駄な負けず嫌い精神で数ゲームした結果、全額巻き上げられたのである。
「……(ウルウル」
「男の涙目って気持ち悪いからやめろ。……、わーったよ!!買うよ買えばいいんでしょ!?」
「ありがとうございますありがとうございます!!」
「ここで土下座するなぁ!!」
たかが百円(されど百円と上条は言う)のジュースのために土下座された輝夜は、千円札を自販機に滑り込ませた。
「……」
「……」
「「…………」」
待つこと数秒。
自販機、応答なし。
「……、なぁ上条」
「……、なんでせうか輝夜様」
「これ、壊れてる?」
「たぶん、壊れてる」
頬をヒクヒクさせながら、とりあえず輝夜はお釣りのレバーを動かす。
だが、反応がない。
ガチャガチャ!!と何度も動かすも、やはり反応がない。
「……」
「か、輝夜くーん……?」
「上条……」
「はいッ!!」
「セリフ、借りる」
「どうぞッ!!」
スー……、ハー……
輝夜が呼吸を整えているうちに、上条は耳を塞いだ。
そして、
「不幸だぁぁあああああああああ!!!」
「ちょちょちょッ!?自販機蹴るな蹴ったら警報なるって!!」
「うるせぇ!!野口さんの恨みを思い知れぇぇ!!」
「ぎゃー!!自販機ダメだからって上条さんを蹴らないでー!!」
ある意味混沌と化した自販機の前。
そんな、やかましく騒ぐ二人の耳に、カツっと革靴の足音が聞こえた。
「ちょろっとー。自販機の前で騒いでんじゃないわよ。ジュース買わないならどくどく。こちとら一刻でも早く水分補給しないとやってらんないんだから」
と、いきなり声をかけられたと思ったら、女の子の柔らかい手が騒ぐ二人の腕を掴んでぐぐーっと自販機の横に引っ張った。若干ドキリとしたらしい上条は動きを止めたが、野口さんの恨みを果たせぬままズラされた輝夜は、
「うがー!!せめて一撃ぃぃ!!」
「やっかましいわッ!!」
少女が怒鳴った瞬間、その茶色い前髪から青白い火花がパチンと散った。
ゲッ!? と何かを感じたらしい上条は右手を突き出し、怒り狂った輝夜は周囲の時間の流れを止めた。
少女の額から角が生えるように青白い雷撃の槍が、二人に目がけて光の速度で襲いかかった。
伸びた雷撃の槍のうち、一本は上条の右手に打ち消され、もう一本は家具の目の前でピタリと動きを止めた。
「あっぶねぇな御坂!!」
「……、いやあのー。アンタは別にいいんだけど、お隣さんは――」
「御坂……?あっ、まさか常盤台の正露丸か!?」
「常盤台の『超電磁砲』よ!!」
再び(今度は輝夜のみ)放たれた雷撃の槍は、これまた同じように輝夜の目の前でピタリと動きを止めた。
「だぁーもうアンタもその馬鹿と同じ体質なのかぁぁ!!」
「そこの不幸馬鹿と一緒にすんじゃねぇぇ!!」
「なんで二人から馬鹿馬鹿言われなきゃならないんですかぁぁ!!」
◆■五分後■◆
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「ちょっと御坂さーん!?上条さんに向かっての態度と全然違ってないですかー!?」
「あー、えーと……うん。そんな真剣に謝らなくていいから頭あげて。マジでホントやめて周り(主に御坂美琴ファンから)の視線が痛いから」
輝夜の目の前で少女、御坂美琴はこれ以上ないほど真剣に土下座していた。
「いえそんなわけにはいきません!!輝夜先輩にはかなりお世話になりましたし今回の件といいなんとお詫びしたらいいか……」
「やめてー!ホントもういいから許すも何も逆に許してー!」
◆■さらに五分後■◆
ようやく三人とも落ち着くと、事の次第を話した。
「要するに、輝夜先輩から奢ってもらおうとしたアンタが悪いってことね」
「反論できないしまったくもってその通りだから文句も言えない……。不幸だ……」
「それより御坂。お前この自販機でジュース買おうとしてたようだけど、どうやるつもりだったんだ?」
「ふふーん、裏技があるんですよ。お金入れなくってもジュースが出てくる裏技が」
その言葉ですべてを理解した輝夜は、あーぁ、と空を仰いだ。理解出来ていない上条は目を瞬かせている。
美琴は自販機の前で軽くステップを踏むと、
「輝夜先輩の持っていた野口さんの恨みぃぃ!!」
ちぇいさーっ! という叫びとともに、自販機の側面に上段蹴りを叩き込んだ。
すると、自販機の中でガタゴトと何かが落下する音が響き、取り出し口から缶ジュースが出てきた。
「こんな感じ――ってどうしたの?」
「「ナンデモアリマセンオジョ-サマ」」
輝夜と上条にとって御坂美琴と関わるのは、あらゆる方面から疲労という名の攻撃に晒される気分になるものであるということに、この日はじめて気づいた。
久しぶりの更新でしたが……、おーいインなんとかさんどこ行ったー?
感想お待ちしてます(^^;