人身御供はどう生きる?   作:うどん風スープパスタ

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115話 成果物その1

 ~アクセサリーショップ Be Blue V~

 

「お疲れ様です」

「葉隠君、お疲れ様。学校の子が面接に来てるよ」

「そういえば今日でしたね、集団面接」

「うん、ちょうど話してるところ」

 

 さて、誰が入ってくるだろう? 気になるが、着替えて仕事を始める。

 

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 

「またよろしくお願いね」

「ありがとうございます。またのお越しをお待ちしてます」

 

 最近、お客様が増えた。

 店に来る人の数もそうだが、占いのお客様も増えている。

 

 以前、取材を受けた雑誌が出たらしい。

 この雑誌のお店ってここですよね? と尋ねられた時は驚いた。

 すっかり忘れてたから。

 

 マイナーな雑誌だけに、読んできた人はそれほど多くない。

 しかし、記者のコメントで俺の占いが取り上げられていた。

 それもべた褒めとまではいかないが、かなり持ち上げる感じで。

 どうやら彼は、あの彼女とうまくいってるようだ。

 幸せになってるのは喜ばしい。

 しかし、ちょっと私情が入り過ぎてないかな……おっ。

 

「面接、終わったんでしょうか?」

「みたいだね」

 

 店の奥が騒がしくなって、しばらくすると見慣れた人影が見えてきた。

 

「お疲れー」

「葉隠君! いたの?」

「今日はシフトだったからね」

「ちゃんと仕事してる~?」

「当たり前だ! で? どうなの?」

 

 面接を受けていたのは岳羽さん、山岸さん、島田さんの三人のようだ。

 

「私と島田さんが採用ってことになった」

「えっ?」

 

 岳羽さんと島田さん? なら、山岸さんは?

 

「おやおや、葉隠君は山ちゃんと一緒じゃなくてがっかりなのかにゃ?」

「……少なくとも島田さんよりは……」

「言い方! んもー、ジョークに厳しいよ」

「あらあら。仲が良いところに失礼するわね。ちょっと男手を貸してちょうだいな」

「オーナー、すぐ行きます」

 

 奥へ入ると、応接室の方で手招きをしていたので中へ。

 

「いくつか話があるのだけれど、まず新人の採用は岳羽さんと島田さんに決めたわ。新人研修なんだけど、葉隠君にもお願いできるかしら?」

「もちろんです」

「よかった、それじゃ旅行まで一緒になるようにシフトを組むわね。それから山岸さんの件だけど、こちらは不採用にしてマスターのところで面倒を見てもらうことにしたの」

「ということはシャガールに?」

「ええ……江戸川さんから話を聞いて、今日は面接を口実に観察して見たのだけれど……あの子は“自然魔術”の方が向いていそうなの」

「ダウジングやハーブなど……おかしな料理を作るのも?」

「私たちはそう見ているわ。マスターにはペルソナの事を知らせてないけれど、彼は自然魔術のスペシャリストよ。本人も才能のある子は歓迎といっていたし、信頼もできるから」

 

 自然魔術の指導が目的なら、オーナー以上の適任者だったわけか。

 さらに岳羽さんと島田さんはアクセサリーの知識が豊富で、センスも悪くない。

 二人は即戦力になると見込まれた。納得の理由だ。

 

「それから最後に……これよ」

 

 ポケットから無造作に取り出された水晶玉。つまみ上げて光にかざすと、米粒より小さなルーン文字がびっしりと刻まれている。さらにかなりのエネルギーを……。ジェム、いや、どちらかと言うと宝玉輪に近い気がする。

 

「その通りよ。貴方から預かった宝玉輪を参考に作ってみたの」

「再現できたんですか!?」

 

 その質問に、オーナーは“一部”と答えた。

 

「これに貴方から聞いていたほどの回復力はないわ。せいぜい一人の体力を回復させるのが限度でしょう。それに、ジェムや宝玉輪のように特別な効果を発揮するような物じゃないの」

 

 ジェムや宝玉輪には、共通点が二つある。

 まず一つは強いエネルギーを蓄えている石であること。

 もう一つはエネルギーを消費して、魔術的な効果を発揮できること。

 

 オーナーが言うにはこの水晶玉は、エネルギーを蓄えているが本物ほど強くはない。

 そして魔術を発動できるわけでもないらしい。

 

「でも回復できるんですよね?」

「たとえるなら充電式の電池かしら? 私のヒーリングと同じよ」

「ヒーリング……そうか、最初から治療用のエネルギーを込めておき、必要な時に体に戻す……ですか?」

「そういうことね」

「十分使えますよ! 俺は一人で行動してますから、問題もありません」

 

 それに回復やジェムではなく、“予備のエネルギー”という視点は見落としていた。

 これが可能であれば、消耗の激しい記述式のルーン魔術も、準備をすれば楽に使えるかもしれない。

 

「そう簡単でもないわ。これ一つ分のエネルギーを溜めるのに約二週間。無理をすればもっと早くできるけど……長期的に見たら効率が悪いもの」

「俺には作れませんか? 回復が早いので、少しずつ溜めていくとか」

 

 聞いてみたが、残念ながらまだ無理だそうだ。普通の石で効果のあるアクセサリーを作れるようになれば可能らしいので、引き続き訓練しかないだろう。とりあえず可能性は広がった。

 

 

「そうだ、俺からも聞きたいことが一つ。実は……」

 

 人の周りに色が見えるようになったことを伝えると

 

「あっ、今オーナーに黄色い煙みたいなものが見えます」

「ウフフフ……本格的に霊感とかそっちの方面が目覚めてきたみたいね。誰にでも見えるのかしら? 見え過ぎて目が痛いとか、体調が悪くなることは?」

「体調不良は別に。見えるのもオーナーとさっき話しただけです」

「だったら心配はいらないと思うわ。おそらく……貴方は人の感情をオーラの色で見ているのでしょう。まだ親しい人か、相当強い感情の持ち主しか見えないみたいだけど」

「感情……」

「よくいるでしょう? 霊視だとか、オーラを見てその人のことを診断する霊能力者とか。あれって嘘じゃないのよ。インチキで商売をしている人がいるのは否定しないけど……でも本当に力がある人だっているの。貴方もそうなりかけているわ。

私から見て、貴方の成長はかなり早い……それだけ変化に戸惑うかもしれないけれど、生活に支障が無いうちから気にすることはないわ。ただ貴方の成長に伴って、新しい世界が見えてきただけ。それを一つずつ受け入れていきなさい。

あ、でも後でいくつか護符の作り方を教えましょう。……寂しがって見える人にちょっかいかける霊もたまにいるから。基本的にはいつも通りでいいけど、悪霊が憑いてきたら使いなさい」

 

 オーナーの説明を受け、安心したところで奨学金のことを思い出した。

 

「十五万円、確かに受け取ったわ。残りはあと二十一万円ね。頑張って」

 

 気持ちを新たに、仕事に戻ることにした。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 夜

 

 ~地下闘技場~

 

『そこまで!! 勝者! ヒソカーー!!!』

『ウォオオオオオ!!』

『Boooooo!!!!』

『キャーー!!』

『いいかげんに死ねー!!!』

 

 レフェリーの宣言後、歓声が響く中でチケットを受け取り、リングを降りる。

 ここにもだいぶ通い慣れたし名も売れた。

 ファイトマネーをもらうため、受付の列に並ぶと噂話が聞こえてくる。

 

「なぁ、あれヒソカだよな」

「金の受け取りだろ? あの試合なら相当貰えるんだろうな……」

「おい、間違っても奪おうなんて思うなよ。殺されるぞ」

「バーカ、んな無謀なことすっかよ」

「だよなぁ……あいつもう何連勝だ?」

「さぁ? 見かけるようになってそんな長くないけど、一試合が濃いからな」

「ねぇねぇ、あのお兄さんの話? ちょっと詳しく聞かせてよ。濃いってどういうこと?」

「あ? なんだ、久しぶりだなねーちゃん」

「金持ちのボンボン捕まえて遊んでたんだけどさ、不細工だし付き合いきれなくなって別れてきたの。久しぶりに顔出したら、すっげー良い顔の男がいんじゃん」

「やめとけよ。あいつ最近出てきたんだけどさ、クラッシャー・トミーの挑発に乗ったデビュー戦以来、不利なハンデマッチばかり続ける命知らずだぜ? いかれてるよ」

「流石に最初はタイマンで相手だけ武器あり、くらいだったんだけどな。今じゃ一対複数武器ありが当たり前だ。さっきなんか一度やられた奴らが七人も集まって、リベンジマッチ申し込んだんだぜ? 素手の一人に武器まで使う徹底ぶり」

「それを二つ返事で受けて、まともな攻撃受けずにぶっ飛ばす奴だけどな……リング狭くなるからだろうけど、コーナーとかロープの上をポンポン飛ぶわ走るわ、めちゃくちゃな避け方するしなぁ」

「うわっ、負けた奴らはずかしー。てかそれフツーにすごくない? そんな試合してんなら相当金持ってるっしょ。むしろこれからも稼げるっしょ。イケメンで金持ちとか最高じゃん!」

「試合見てる分には面白いけど。近づくのはな……」

「それにさ、あいつヤバイ連中と付き合ってるらしいぜ? バーテンから聞いたんだけどよ……あいつにここ紹介したの、“上半身裸の男”なんだってさ」

「え。それマジ? うわ~……! ねぇ、あの人こっち見てんだけど……」

「げっ!? やべぇ。聞こえてた?」

「俺、ちょっと帰るわ」

「お、俺も!」

「あはは……あたしも帰ろっと……」

 

 三人はそそくさと階段に消えた。

 ずいぶんな話が流れてるな……

 試合内容は事実だが、そこまで誰彼かまわず襲いはしないというのに。

 ネタ元の変態じゃないんだから。

 

 まぁ、列が進んだのでよしとしよう。

 チケットを換金し、ファイトマネーの十五万四千六百円を受け取った。

 

「ヒソカ様、少々よろしいでしょうか?」

 

 受付の女性が話しかけてきた。

 

「何か?」

「二階席でご友人がお待ちです。換金にきたら伝えてくれと頼まれました」

「友人?」

 

 中二階…………ああ、なるほど。

 

「ありがとう」

 

 礼を言って、中二階へ向かう。

 

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 

 ~中二階~

 

「やぁ。よく分かったね」

「貴方にここを紹介したのは私ですよ? 知人が来ているかを尋ねれば、なんと名乗っているかくらいは分かります。私たちはそれなりに有名でしてね」

「どう有名かは、一目で分かるな」

 

 タカヤ、ジン、チドリが四人がけの席についている。

 周りの席は空席のまま、誰も近づこうとしない。

 

「この方が商談にも都合がええわ」

「ん? 確かに君たちに連絡をとったが、予定はもう少し後ではなかったか?」

「そう。だけど貴方を見てみようという話になった」

「こんなに早くお金が用意できたのなら、ここを利用したと思いましてね。お金を取りに行くというのなら待ちますよ。私たちが勝手に来たのも事実ですから」

「それには及ばない」

 

 約束の時刻までここで時間をつぶすつもりだったから、用意はある。

 

 服の中から札束の入った封筒を取り出し、テーブルに置いた。

 ジンが中身を改めて良いかを目で聞いてきたので、軽くうなずく。

 

「……ちょうどやな。ほなこいつが例のものや。まいどあり」

 

 こちらも封筒を受け取った。中身は……間違いない。

 

「良い買い物をした。次もあると思っていいのか?」

「いつ手に入るかは分からんが、探しといたる」

「頼む」

「……その顔は本物?」

「違和感があるかね?」

「見た目は完全に人間よ。違和感もないわ。でも、いつもと同じ気配が少し。生身とは思えない」

 

 なるほど、チドリには隠しきれていないか。

 

「それも貴方の能力ですか」

「変形能力の応用さ。他に表面の色を変える能力も使っているが……」

 

 左手の甲を右手でこすり、蜘蛛の図形を浮かび上がらせて見せる。

 

「こんなところに来るんだ。保険の一つ二つはかけておくさ」

「なんとまぁ。我々の仲間になっていただければ、本当に仕事が捗りそうだ」

「悪いがここで十分だ」

「ふふふ……やる気になればいつでも紹介しましょう。しかし、あまり勝ちすぎると相手がいなくなりますよ」

「その時はその時さ。それに八月は仕事の都合でこの街を離れなければならなくてね。間隔を空けてほとぼりを冷ますよ」

 

 タカヤがそうですか、と一言。

 それっきり話題がなくなった俺は一声かけ、飲み物の代金を置いて帰ることにした。

 

「そろそろ失礼するよ、もう十二時が近い」

「今日も行くのですね」

「ああ、しばらく行けなくなるからな。カードは早速使わせてもらう」

「そうですか。では、お気をつけて」

 

 

 さて、タルタロスに行くとしよう。




岳羽、島田がBe Blue Vに採用された!
山岸はシャガールで働くことになった!
影虎の霊感がめざめ始めた!
影虎は護符の作り方を学んだ!


新人バイトの雇用人数と、バイト先の同僚になるキャラ
決めるためにサイコロ振ったら、山岸が落ちちゃいました。
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