人身御供はどう生きる?   作:うどん風スープパスタ

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152話 戦力確認

 夜

 

 入院中はパソコンが使えなかったため、与えられた部屋でネットサーフィン。

 要点はロイドたちが教えてくれたけれど、自分の目でも確かめたかった。

 

 ……こっちの事件についてはさすがに、ボンズさんたちから貰った以上の情報は無い。

 ただ動画サイトでワイドショーを見ていたら、俺が助けた女性がVTRに出ていて驚いた。

 

『モンスターがいたの。狼みたいで真っ黒な。私は襲われて殺されかけたわ』

『でもあなたは無事に見えますが……』

『ブラッククラウンが助けてくれたのよ。モンスターが飛び掛ってきた所に割って入ってきて、私を逃がしてくれたの』

『……このように、“モンスターを見た”と証言する方々が後を絶ちません。これについて、どう考えられますか?』

『くだらない。幻覚に決まってるでしょう。いい大人がモンスターだの何だの、冗談にしてもナンセンスだ』

『しかし近頃話題になっているブラッククラウンは実在しますよね?』

『それは認めるが、あれは何かのトリックだよ。あんな動きが人間にできるはずがない。彼女はニュース映像でも見て、幻覚の中に救いのヒーローとして登場させてしまったんだろう』

『……少々決め付けが過ぎるんじゃないかね』

 

 コメンテーター同士の舌戦が始まった……

 確認してみると、ヒーロー関連のサイトでも同様の議論が行われている。

 また妙なことになっていそうだ……

 

 あと救いのヒーローって表現、性格がわりとクズで二足歩行する豚を思い出すなぁ……

 

 日本の方は……俺の死亡説でいっぱい。

 月光館学園は一切の取材を拒否していて、今は外に情報は漏れないようだ。

 というかあちらも俺が意識不明ということ以上は知らないけど。

 先生もあんな事があったので、俺の意識が戻ったことはまだ伝えていないそうだし……

 

 現在時刻は夜の11時前。

 日本では午後1時頃になるこの時間。

 丁度いいや、連絡しよう。

 

 先生やボンズさんに許可を取り、話していい内容を確認してから電話をかける。

 数回のコール音の後、声が聞こえてきた。

 

『桐条ですが……』

「先輩、お久しぶりです。葉隠です」

『葉隠!? お前っ……目が覚めたのか?』

「はい、実は三日前に。本日退院してようやく連絡できました。これまでご心配をおかけしました」

『そうとう無茶をしたそうだな。だが、無事でよかった。こちらの話は』

「江戸川先生から聞きました。ご迷惑をおかけしています」

『こちらこそ、学校側の不手際で事態を悪化させてしまった。申し訳ない』

 

 一通りの挨拶を済ませて本題に入る。

 

「帰国についてですが、まだ治療が完全に終わったわけではないので、夏休みの終了間際になると思います。とりあえず俺の生存については公開していただいても構いません」

『そうか。承知した。ところで今はどこに宿泊している?』

「知人の家に。ただこちらでも少し問題がありまして、近いうちにここは離れるかもしれません」

『問題だと?』

「ニュースになってませんか? テキサスのホテルの集団昏倒事件。テロの疑いがあるって話なんですが……」

『なんだと!? あの町にいるのか!?』

「入院先の病院が近くにあったので。どうかしましたか?」

『いや……治安に疑問があるだけだ……』

「でしたらひとまずは問題なさそうです。近かったのは病院で、宿泊先は現場のホテルからは離れています。それにここのご家族には現役の警察官や元軍人、元ボディーガードって経歴の持ち主が集まってますから、ここは安全なほうだと思いますよ」

『そうか……ときに葉隠。入院先の病院が近かったと言ったが、そちらで妙なものを見たりはしなかったか? そんな騒ぎになっていると聞いたが』

「病院に大勢人が運ばれてきたくらいしか……俺もですけど、天田や江戸川先生。うちの両親にこっちで知り合ったご家族は誰も見てないみたいです。ただ、あるホテルに近づくにつれて、怪物を見たなどと訴える人が多くなってる傾向にありますね」

『何? どうしてお前がそんなことを』

「ほら、さっき言ったでしょう? ここのご家族の職業。噂だとしてもテロの可能性がある、なんて言われてますから、各自が同僚から情報を集めて警戒してるんですよ。

 そこから俺たちにも注意をしてくれるので……ぶっちゃけ警察の捜査情報とかが結構耳に入ってまして」

『そういうわけか』

「ちなみに日本ではどんな話になってるんですか?」

『そこはリゾート地だろう? 楽しいはずの旅行が一転悲劇に、など無責任に書きたてられているよ。君の件も合わせてな』

「そりゃまた面倒くさそうだ」

『まったくだ。情報が錯綜(さくそう)していて困る』

 

 疲れたようなため息が聞こえてくる。……ここで一発。

 

「桐条先輩、もしかして何か気になることでも?」

『どうしてそう思う?』

「雰囲気が、自分で調べて疲れたって感じだったので」

 

 彼女なら無気力症患者の大量発生に何もせずにはいられないだろう、という目算もあるけど。

 

『フッ……君の言う通りだ。大事件だからな、気になって調べていたんだがどうにも要領を得ない』

「桐条グループが世間の動向に疎いなんてこと無いでしょうし、そっちから教えてもらえないんですか?」

『アメリカにある支社を通して情報を集めてはいるが、それもニュースに出ている情報だけさ』

 

 嘘か本当か……どちらにしても話を切り出すにはチャンスか。

 

「だったら先輩、俺が調べましょうか?」

『何だと?』

「先ほど話した通り、俺は警察の捜査情報などが耳に入りやすい場所にいます。直接現場に出向いて調べるのは無理ですが、聞いたことは話せますし、そちらが聞きたいことをそれとなく聞いてみるくらいはできます。

 ……その代わりと言ってはなんですが、俺も知りたいことがありまして」

『情報交換、というわけか』

 

 先輩はしばらく考え込んでいたけれど、最終的に何が聞きたいのかと聞いてきた。

 同意と考えていいだろう。

 

「俺が知りたいのは、天田の保護者についてです」

『彼の、か……どうしてだ?』

 

 事件に巻き込まれた後の、うちの両親とのやり取りを話した。

 

「彼らにとって天田は何なんでしょうかね?」

『……』

「まぁそのあたりで色々と疑問があるので、できれば彼らについて知っておきたいな……と」

『……彼はどうしている?』

「元気ですよ。保護者同士の話があっさり終わったときは、さすがに少々暗い顔をしたようですが」

『そうか、分かった。情報をまとめておこう』

「お願いします。こちらも情報を集めます。差し支えなければ、先輩の知ってる事と聞きたいことを先に教えてもらってもいいですか? 一応こっちの警察の捜査情報ですから、あまり根掘り葉掘り聞くと怪しまれるかもしれないので、質問は必要最小限にしたいんです」

『ああ、それなら……』

 

 天田の件で注意が薄れているのか、先輩は怪しむ様子なく自分の聞きたいことを伝えてくる。さすがに影時間に関する直接的な表現は出てこないが、被害状況や目撃されたモンスターの姿など。口には出さないけど、彼女が本当に欲しい情報は察せる。

 

『最後に、“ブラッククラウン”という存在について』

「ああ……先輩ヒーローとか好きなんですか?」

『特にそういった趣味はないが、最近そちらで騒がれているのだろう? だから気になってな。私よりも明彦の方が熱を上げているが』

 

 ……簡単に想像できた。戦いたいとか言ってるんだろう。

 

『そういえば君も助けられた……と言っていいのかは分からんが、面識があったか』

「あると言えばありますが、銃撃戦の真っ只中だったんで会話はほとんどしてませんね」

『どんな奴だった?』

「と言われても、姿はニュース映像の通りピエロなので顔も分かりません。ただ体格からして男性だと思います。行為自体は違法かもしれませんが、俺たちは助けられましたし、悪人とまでは言えないかな……と。良い悪いを言ったら襲ってきた連中の方がよっぽど悪いと思うので」

『それもそうだな』

「他に質問は無いですか?」

『ああ、今のところはそれでいい』

「分かりました。それではこれに基づいて情報を集めておきます。報告はある程度情報が集まってからということで」

『頼んだ』

「頼まれました。それではまた……あ」

『どうした?』

「いえ……そっちの皆はどうしてますか? 和田とか新井とか、山岸さんとか」

『彼らも君のことは心配していたよ。他にも岳羽や伊織もな。連絡は取っていないのか?』

「下手に連絡すると迷惑になるかもしれない。とか考えてたらタイミングが……」

『フフッ、なるほどな。では彼らには私から君の無事を伝えておこうか?』

「お願いできますか?」

『そのくらいなら構わないさ。近いうちに伝えておくよ』

「ありがとうございます。それじゃまた」

 

 電話を切り、会話内容を書類にまとめる。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

「もうすぐね……」

「ああ……」

 

 夜中のリビングに皆が集まっている。

 影時間が近づいて落ち着かないようだ。

 

「ボンズさん、これ今回の会話内容と得られた情報です」

「ありがとう。参考にさせてもらうよ」

 

 作った書類を提出すると、天田が近づいてきた。

 

「先輩、準備完了です。って言っても武器と防弾ジャケットだけですけど」

 

 今日の天田には槍を持たせる。

 あまり練習もできていないが、さすがに素手では心もとない。

 という事で、知識の中で天田の武器は槍だった事を伝えた。

 槍はボンズさんがモップの柄とナイフで素早く拵えてくれた。

 

「今日のメインはペルソナだしな。影時間になる前にもう一度能力の確認でもしとくか」

 

 天田から聞いたペルソナの情報は、名前が“ネメシス”。

 アルカナは正義で光に耐性があるのは原作通り。

 だけど……

 

 アナライズで聞いたスキルを表にまとめる。

 

 

 

 

 スキル一覧

 物理攻撃スキル:

 バスタアタック(貫通属性 敵単体に中ダメージ)

 

 攻撃魔法スキル:

 ハマ(光属性 単体即死魔法)

 ハマオン(光属性 ハマの強化版)

 ジオンガ(雷属性 敵単体に中ダメージ)

 

 自動効果スキル:

 打撃見切り(打撃に対する回避率上昇)

 

 

 

 

 おおむね原作通りだけど、打撃見切りが増えている。

 これ、そもそも覚え無いはずじゃなかっただろうか?

 それにハマオンも初期から使えるスキルじゃなかったような……

 

「何か心当たりは?」

「ハマオンは知りませんけど、打撃見切りは先輩とトレーニングしてたからじゃないですか? 試合とか見てましたし……」

「それしかないよな」

 

 と言うことは……

 原作キャラも俺と同じように、トレーニングで新たにスキルを習得できると予想される。

 得意不得意に原作と同じ傾向はあるかもしれないけど、敵対する場合は要注意だな。

 

「天田の能力はまだ少ないけど、物理攻撃、魔法攻撃、将来的には回復までまんべんなく使える万能型のはずだ。単体攻撃しかできない現状は俺と同じだな。今後の成長でお互いどうなるか分からないが……気になるのはどれだけこの技が使えるか」

 

 魔法を使えば魔力を消費する。物理攻撃スキルなら体力を消費する。

 その消費に天田がどれだけ耐えられるかが問題だ。

 とりあえず今日はそれを調べることにしよう。

 

「俺がサポートするから、今日はとにかく攻撃してみろ」

「はいっ!」

「よし、それじゃあ……? アンジェリーナちゃん?」

「私も、チェック」

 

 戦力の確認がしたいようだ。

 やっておいて損はないので、確認する。

 

 彼女はペルソナが使えないので、戦い方は魔術頼り。

 しかし彼女には火、氷、風、雷、そして水の攻撃魔法。

 さらに感電や氷結、氷の鎖など、俺が使っているルーン魔術はほとんど教えた。

 豊富な魔力もあるし、攻撃のバリエーションは天田よりも多いだろう。

 ただし本人は小さな女の子。

 体力もあまり無いようで、魔法以外は戦力にはならなそうだ。

 

「アンジェリーナちゃんはボンズさんたちと、遠くから攻撃するのがいいね。もし近づかれそうになったら逃げて、うちの父さんを盾にするといい」

「おいコラ、サラッと何言ってやがる」

「ほっといても飛び込みかねないんだし、別にいいじゃない」

 

 まぁ、そんな事にならないよう考えられる対策はした。

 あとは試してみなければ分からない。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 ~影時間~

 

「……やっぱりなぁ……皆、大丈夫?」

 

 俺の問いかけに返事がぱらぱらと返ってくる。

 影時間に突入した結果、やはり天田以外も活動できていた。

 象徴化しないのは昨日だけで今日は元通り……なーんて都合の良い話はないようだ……

 記憶がある時点でまずこうなると思っていた。

 

「じゃ、始めますか。天田、表に出よう」

「はい!」

「行ってらっしゃい、天田君。虎ちゃん、気をつけるのよ」

 

 俺と天田は母さんに見送られ、表へ出る。

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