人身御供はどう生きる?   作:うどん風スープパスタ

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新年あけましておめでとうございます!

そして2018年の初回から投稿が予定より遅くなってしまい、失礼いたしました。
予約投稿の日時設定を間違えたことが原因でした。
特に0時から1時の間に見に来てくださった方々には申し訳ありません。

今後、注意いたしますので、今年もよろしくお願い申し上げます。


195話 サポートチーム

 放課後

 

 ~部室~

 

「よし、今日はここまで」

『お疲れ様でした!』

 

 新学期に入って初めての部活が終わった。

 久しぶりにパルクール同好会のフルメンバーでの活動。

 和田と新井は夏休み中も真面目に自主練習をしていたらしい。

 パルクールの基礎技術もそうだが、何より体力の向上が見られた。

 

「やっぱり俺らは体を動かしてるほうがしっくりきますね」

「親にも遊び回るよりよっぽどいいとか言われたっす」

 

 確かに非行に走るより、スポーツに打ち込んだ方が健全ではあるが……

 

「二人とも、夏休みに何かあったか?」

 

 練習中に時々、集中が途切れて何かを考えているような時があった。

 責めるほどでもないが、前はもっと練習に没頭していた二人だから少し気になる。

 そう伝えると、心当たりがあるようだ。

 

「実は先輩の番組が放映された後なんすけど……柳先生がうちの店に訪ねてきたんすよ」

「柳先生? 確かサッカー部の前顧問の?」

「そうです。あの番組に俺らも少し映ってて、先生、俺らがサッカー部やめたことを知ったみたいで。先生の退職後の事を色々話したりして」

「一時不良やってたことも知られて、めちゃくちゃ怒られたっす……」

「……もしかして、サッカー部に戻りたくなったんですか?」

 

 天田が聞くと、それは違うときっぱり否定する二人。

 

「同じことを柳先生にも聞かれましたけど、やっぱりあの部に未練はありません。でもその次にサッカー嫌いになったか? って聞かれて……」

「サッカー自体は楽しかったんすよ。その日から柳先生が顧問だった頃とか思い出して」

 

 なるほど。部ではなくサッカーへの未練か。

 ……俺としては、二人がサッカーをやりたいのなら異存は無い。

 一度入部したからって、遠慮する必要はないと思う。

 けど、それを決断するのは二人だ。

 

「なら、もしまた本気でサッカーをやりたくなったら遠慮なく言ってくれ。それまではこれまで通りやっていこう。その時になって困らないように、体だけはしっかり鍛えるぞ」

「うっす!」

「よろしくお願いします!」

「わ、私も精一杯応援するからね!」

 

 話に入り込むタイミングを探っていた山岸さんも、両手でガッツポーズをしてやる気を見せている。……?

 

「山岸さん、その手に持ってるの何?」

「あ! そうそう。これ、練習が終わったらすぐ見せようと思って」

 

 片手で筒状に巻かれていたのは、雑誌のようだ。

 

「あっ、それ!」

「週刊“鶴亀”の最新刊じゃないっすか!」

「うん。朝ね、学校に来る前に寄り道しちゃった。あの雑誌にどんなことが書かれているか、気になって」

「俺も気になってたんだ。ありがとう」

 

 早速中身を見せてもらうと、

 

「んー……」

「ヒヒヒ……こうなりましたか」

「これ書いた記者さん、よくこんな記事かけましたね」

 

 “葉隠影虎君、無事の帰国”

 “堂々とした態度での受け答えは実に立派で……”

 “記者として、一人のファンとして、今後も彼の活躍を願うばかりである”

 

「悪くはないけど、ね」

「なんつーか」

「手のひら返しがヒデェっすね」

 

 あのインタビューは何だったのか。

 気持ち悪いくらいに俺を持ち上げて書かれている。

 

 これをあの矢口という男が書いたと考えると、白々しいと言うか、内容に気持ちがこもってないと言うか……文面をどこか他所から持ってきたような印象を受けるのは俺だけかな?

 

「気持ち悪いな……この雑誌」

 

 内容は良い感じに書かれているが、まだ警戒を解く気にはなれない。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 影時間

 

 ~タルタロス・4F~

 

「先輩。先輩の魔術で武器に属性ってつけられませんか?」

 

 脱出装置の前。

 帰る準備をしていたところで、天田がそんなことを聞いてくる。

 

「いきなりどうした?」

「僕の使える魔法って光と雷じゃないですか。だからここら辺のシャドウだと、先輩みたいに弱点を突けないと思って。炎の剣とか氷の剣とか、ゲームでよくある感じの武器があればもっと効率的に戦えるかと……って、ゲームっていうと不謹慎ですね」

「いや、油断になったり戦闘に問題が無ければ別に構わないだろ。俺も時々ゲームに喩えて考えるし。で、属性の付与だっけ?」

 

 以前、銃弾に付与しようとしてやめた覚えがある。

 あの時は火や雷で暴発する危険性を考えての事だったが……

 

「考えてみれば槍とか近接武器なら暴発の危険はないな……試してみるか。ちょっとそのデッキブラシ貸してくれ」

 

 結果は実験してみないとわからない。

 特殊弾を作る要領で、ドッペルゲンガーを魔法陣代わりに。

 “ティール”の代わりに“カノ”を利用し、デッキブラシに力を込める。

 

 すると……燃えた。

 

「……ごめん。失敗した」

 

 デッキブラシは力強い炎に包まれている。

 本体が燃えているわけではないようだし、これで殴れば火のダメージは与えられそうだ。

 ただし燃えている。これでは生身の天田には持てない。

 というか持って帰ることもできなくなった。

 こんなの持って帰ったら寮が火事になりそうだ。

 

「また魔法陣を改良してみるよ」

「仕方ないですね。気長に待ちます。ところでこれは……」

「……次回までに代わりを用意する」

 

 魔力切れを待って、刈り取る者が出てきてはたまらない。

 デッキブラシは置いたまま、俺達は帰ることにした。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 翌日

 

 9月9日(火)

 

 午後

 

 ~教室~

 

 昨日のホームルームでうちのクラスは文化祭で演劇をやると決まったが、今日は演目が決まった。みんなのやる気の賜物だとは思うが……

 

“変貌”

 クラスの有志によって集められた数々の台本から選ばれた一作。

 どうやら海外の古い作品を元に再構成された物語らしい。

 

 内容を読んでみたが……

 世界観は貴族制度があり、中世ヨーロッパ風。

 主人公はそんな世界の農民。

 田畑を耕して生活していたある日、村に領主の馬車がやってきて庶子だと告げられる。

 身分差があり、とても逆らえない相手に言われるがまま連れていかれ、貴族となる主人公。

 彼はまもなく、不幸によって跡取りがいなくなった家を継ぐことになってしまう。

 その後、彼には様々な思惑を持った人々が近づき、翻弄されていく。

 そして移り変わる環境。変貌する主人公の心。

 

 それらをたった30分の内に凝縮したストーリー。

 

 ……これとんでもなく難しくない?

 観客として見ているぶんには面白そうと思うが、自分たちがやるとなるとまた別の問題だ。

 

 “ハムレット”とか定番の方がまだやりやすいと思うが、定番じゃつまらない! という多数派の意見に押し負けてしまった……おまけに俺と同じ少数派は一晩明けてやや冷静になった人たちのようで、僅かに不安を抱いたようだ。

 

 この状況でやる気を失ったら、それこそ大変なことになる。

 演目は決まったことだと割り切ってフォローに回ることにした……

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 放課後

 

 ~Be Blue V~

 

 文化祭の準備はあるが、バイトもしっかりやらなければならない。

 今日は新しく、商品のPOPを書く仕事を教えてもらうことに。

 

 レイアウトの仕方など細かい点も考える必要がある。

 文字は夏休みに読んだハンドレタリングの知識を役に立て、なんとか形にしていく。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 夜

 

「お待たせしました」

「ヒヒッ、では行きましょうか」

 

 バイト終わりに江戸川先生と合流し、メールで指定された住所へ車で移動。

 

「天田はだめでしたか」

「小学生ですからねぇ……さすがに親でもない私では連れ出せません。無断で門限を破れば注意を受けるでしょうし、それで目をつけられてはたまりません。彼にも同意していただきました。今頃は寮でおとなしくしているでしょう」

 

 サポートチームとの顔合わせは、俺と江戸川先生だけで行くことになった。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 車を走らせること20分。

 俺たちは巌戸台にあるアパートに到着。

 

「“メゾン・ド・巌戸台”、ここですね」

「なんとなく変な名前……」

 

 メゾンはフランス語で建物とか館という意味がある単語だから、直訳すると“巌戸台の館”。

 間違ってはいないかもしれないが……

 

 そんなことを考えながら、階段を上る。

 待ち合わせ場所はここの角部屋から一つ手前らしい。

 部屋番号も書かれていたが、周辺把握でそれらしき人々を確認した。

 

 インターフォンを鳴らしてみれば、機敏に動く5人の動きが手に取るように分かる。

 そして扉を開けに、女性が一人接近。

 

 ん? このシルエット、覚えがある……

 

「ようこそいらっしゃいました。葉隠様、江戸川様」

「やっぱり、ハンナさん」

「おやおや……」

「詳しい話は中で。どうぞお入りください」

 

 夏休み中、散々世話になった彼女に誘われて部屋へ足を踏み入れる。

 部屋はごく普通の家具が備え付けられたアパートの一室に見えた。

 しかし室内にいた四人には少々不釣り合いかもしれない。

 

「初めまして、Mr.葉隠。Mr.江戸川。先日ご連絡させていただいた近藤・ノーマン・栄一です」

 

 握手を求めてきた彼は、江古田ぐらいの歳に見えた。

 ミドルネームが入っているからおそらく日系の方。

 物腰は柔らかく、いい人そうな雰囲気を醸し出している。

 

「お二人についてはボスから聞いています。Mr.天田は」

「残念ながら、寮を抜け出せず」

「それは残念ですが、仕方ありませんね」

 

 俺たちの自己紹介は不要らしく、サポートチームの紹介が始まる。

 

「まず彼女がキャロライン・ティペット」

「初めまして、キャロラインよ。私の担当は医療関連。Mr.葉隠のメディカルチェックや、Mr.江戸川と薬品についてのお話をさせてもらうわ。よろしくお願いね」

 

 ブロンドヘアーの彼女は髪をかきあげてウインク。

 友近が好きそうな大人の女性だ。

 

「次に、お二人もご存知とは思いますが、ハンナ・ワトソン」

「私は主にサポートチームの皆様の身の回りのお世話とお仕事の補佐を担当いたします」

 

 ハンナさんはサポートチームのサポート要員らしい。

 

「続いてバーニー・ダイアー」

「よろしく」

 

 筋骨隆々な坊主頭の男性が口にしたのは、その一言だけ。

 

「バーニーは元海兵隊員で、主な任務はキャロラインの護衛。彼女は完全な非戦闘要員ですからね。余裕があれば情報処理も手伝います。

 そして最後が、チャド・ケント。彼はジョーンズ元大佐の推薦を受けています。仕事は主に本部との連絡と各種調査」

「よろしくお願いします。Mr.葉隠。Mr.江戸川。私は陸軍の情報部に所属していました。車やヘリの運転もできます」

 

 比較的小柄で若手に見えるが、それでも俺よりは年上。

 ハンナさん以外は初対面だが、これからお世話になる。

 丁寧に挨拶をすると、笑顔が返ってきた。

 

 さらにそのままお互いの状況確認と今後の打ち合わせに入る。

 

「……なるほど」

「サポートチームの皆さんは当分こちらでの地盤を固めると」

「その通りです。我々はまだ発足したばかりの組織です。まずは拠点や必要な設備を整えることが最優先ですね。幸い資金面は潤沢、人員もボスとジョーンズ元大佐の人脈で徐々に集まるでしょう。

 あとは桐条や日本の警察組織に怪しまれないよう、少しずつそれらを運び込みます。遅くとも、来年までには万全のサポートができるように進めます」

 

 来年まではあと四ヶ月もない。

 アウェーな土地でゼロからのスタートは大変だ。

 それでも俺のTV出演のマネジメントや必要なスポーツ用品の手配はしてもらえるらしい。

 

「我々が日本に滞在する表向きの理由にもなりますからね」

「お屋敷での滞在中と同様に、なんなりとお申し付けください」

 

 近藤さんとハンナさんからありがたい言葉を頂いて、今度は俺たちの番だ。

 

 帰国後に起こったことを丁寧に伝える。

 

「……状況の移り変わりが早いですね」

「葉隠くんはいつも騒動の渦中にいますよねぇ……これはもうそういう星のもとに生まれたとしか思えませんね。ヒヒッ!」

「先生、笑えません」

「ははは。学校生活には介入できませんが、テレビやマスコミ対応についてはお任せください。それは我々のサポート範囲内です。

 しかし気になるのはストレガというグループですね、報告は受けていましたが……私としても無駄な敵対は避けるべきと考えます」

 

 ストレガの危険性は十分に分かってもらえているようだ。

 

「私も現在、敵対せず時々取引を行える関係を保っています」

 

 彼らは感情の起伏が乏しく価値観や行動理念がいまいちわからない事。

 影時間を利用した復讐屋を営むなど、人を傷つけることにためらいがない事を伝える。

 

「皆さん影時間の適性は……」

「残念ですが、我々は適性がありません。あくまでも日中のサポート活動が任務です」

「そうなると下手にストレガに手を出すのはリスクが高いですね。私が間に入るとしても、先日の件で“ブラッククラウン”と葉隠影虎の繋がりを疑われているかもしれない現状では」

「なるほど。ではストレガについては現状維持ということで……参考までに桐条グループのペルソナ使いならどうでしょう? 将来的にペルソナ使いとして覚醒することが確定している人材を知っている、とボスからは聞いていますが、引き込めませんか?」

 

 俺も考えたことはある。

 ただ、そっちもそっちで厄介ではある。

 

 まず来年の三年生。

 桐条先輩は桐条グループ総帥の一人娘。彼女だけはどうやっても引き込めそうにない。

 真田は完全に桐条側で活動していた時間が長いし、策略よりも正面突破を好むタイプ。

 荒垣先輩は情に厚く、仲間を大切にする人だ。桐条との争いになったらどう動くかが不明。

 

「この3人は桐条グループと協力でもしない限り、味方につけるのは不可能だと思います」

 

 次に二年。

 順平は原作通りなら覚醒直後に真田に拾われる。

 そして影時間の活動に特別感、優越感を覚えて特別課外活動部に入るが……

 主人公に嫉妬したり、好みの女子の前で調子に乗って、結果的に敵へ情報を流してしまう。

 秘密裏に行動するという点で不安がある。

 

 しかも順平はあれで結構、現実をちゃんと見ている。

 だからこそ劣等感を覚えて虚勢を張っているんだと、個人的に思っている。

 影時間の適性を得る前では、特別な力が眠っていると話しても疑われるだろう。

 

 岳羽さんは父親の件を仄めかせば話は聞くだろう。仲間にもなるかもしれない。

 ただし警戒心が強く、父親に関する話題では冷静な判断力に欠ける。

 父親の話題は諸刃の剣だ。

 

 山岸さんは有能だし信用もできるが、まだ気が弱く、隠し事には向いていないと思う。

 秘密は守ってくれるかもしれないが、精神的に負担をかけてしまう可能性がある。

 

 原作主人公に至っては、情報が全くなし。男か女かも現段階ではわからない。

 今できることはない。

 

 そしてアイギス……彼女は桐条グループの作った兵器なので論外。

 最後の大型シャドウを倒した後に、幾月に操られていたこともあったはずだ。

 

 最後はコロマル。……どう引き入れろと?

 

 こうして考えると、特別課外活動部って感情的になりやすい人が多くない?

 小学生の天田の方がよっぽど落ち着いてるように思えるんだけど……

 いや、天田も感情的な方か?

 

 思考が横道に逸れた。

 

「強いて言えば山岸さんと、全く未知数なコロマルが狙いかと」

「なるほど、人格面の調査が必要ですね。我々としても秘密を守れない人間を入れるのは避けたい。しかしコロマル様は犬ですか……」

「亡くなった飼い主に代わり、ずっと長鳴神社を守っている忠犬ですよ。飼い主だった方の死因にシャドウが関係しているようです」

「……そちらも一通り調べてみましょう。ひとまずは現状維持でよろしいでしょうか?」

「問題ありません」

 

 その後は苗や自作のアクセサリーに加え、タルタロスで採取できる物のサンプルを用意する約束をした後、最初の支援物資として世界的に有名な会社のスポーツウェアを受け取った。

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