人身御供はどう生きる?   作:うどん風スープパスタ

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213話 発展途上

 夕方

 

 ~巌戸台・ワイルダックバーガー~

 

 巌戸台のゲームセンターで遊んだ後、食事をして帰ることになった。

 

「いらっしゃいませ」

「よっしゃ、何食う? 俺腹減ったからガッツリいこうと思うんだけど……あ、照り焼きいいじゃん! 照り焼きバーガー二つと、ポテトのM一つ。ナゲット五個入りお願いしまーす」

「かしこまりました」

「影虎は?」

「……俺は、あれにする」

 

 天井付近から垂れ下がる広告を指差す。

 

 もっとたくさん食べたいな~……お客様のそんな言葉にお答えした新商品。

 大きさは何と“ビッグダックバーガー”の5倍! その名も“オメガダックバーガー”!!

 満を持しての販売開始!!

 

「……え、マジ?」

「オメガダックバーガーでよろしいのですか?」

「お願いします」

 

 注文すると、店員さんが本気で? という顔をして確認してきた。

 後ろに並ぶ客もざわめく。カウンターの中の調理場もざわめく。

 客はともかく、店員さんは自分が売ってるのにその反応はないんじゃないか……?

 

「以上でよろしいですか?」

「あとポテトのLサイズを二つと、アップルパイ一つ。飲み物は“剛健美茶”、これもLサイズで」

「かしこまりました。お席へお持ちしますのでこちらの番号札を持ってお待ちください」

 

 会計をすませて適当な席へ移動。

 すると座った矢先に順平から驚きの声が出た。

 

「まさか本当にオメガダックバーガーを注文するとは思わなかったぜ……結構食うのは知ってたけどさ、食えるのか?」

「多分問題ないと思う」

 

 ビッグダックバーガーが普通のバーガーの倍。

 その5倍だとバーガー10個分になるネタ商品だけど……

 アメリカでの大食いチャレンジ、さらにこの間も定食を三つ食べた事を話す。

 

「いつのまにか影虎がフードファイターに……そういえば影虎ってこういうファーストフードとか食べるのか? てか、食べていいのか? ほら、スポーツマンとして体に気を使ったり、栄養バランスの管理とか」

「気にするほどの制限は無いよ。まあファーストフードばっかりは良くないし、外食は“わかつ”とか“はがくれ”を利用することが多いけど。たまにはいいと思うし。昨日なんか江戸川先生からも薦められたからね」

「? どういうこと?」

 

 それは文化祭の後のこと、調べてみると8%だった体脂肪率が、5%まで落ちていた。

 

「マジで? 大丈夫なのか?」

「プロの格闘家とかボディービルダーだと、大会中はもっと絞るらしいよ。俺も今のところ体調がおかしいとは思わないし、体脂肪の問題は今に始まったことじゃないし。ただこの前は演劇とダンスの練習でハードだったなー、って感じがするだけ」

 

 ただし現状、俺は意図せず痩せている。

 つまり体脂肪率をコントロール出来ていない。

 それが先生方の懸念の一つになっている。

 

「仕事の事もあるし、もしかしたら年末あたりにまたアメリカに行って、データ収集を兼ねた診察を受けるかもしれない。だけど当面はこういうものも食べてみたらどうかと」

 

 体に必要な栄養素を寮の食事とサプリメントでしっかり摂った上で、カロリーの高いファーストフードも食べる、と言うことであれば直ちに問題はないだろう。ということだ。

 

「つまりはとにかく食え、ってことで」

「へー、んじゃこれからも誘っていいんだな」

「もちろんだよ」

 

 順平は安心したようだ。

 それはつまり俺の体調を案じていてくれたと言うこと。

 順平との絆を感じる。

 

「そういえば順平、懐具合は大丈夫なのか?」

 

 今日はゲームセンターでだいぶ散財したように見えたけど……

 

「おう! 今のオレッチはリッチだからな! ほら、夏休み前にバイト紹介してもらったじゃん?」

 

 ……そういえば。

 岳羽さんや山岸さんにバイトを紹介した時、順平たちにも出来る限り紹介したんだっけ。

 

「あったな、そんな事も。いくつか紹介したよな? 結局どこで何やったんだ?」

「巌戸台博物館の雑用スタッフ。ガッツリ稼いで夏休みは女の子とエンジョイ! って思ってたんだけどさ~……」

 

 黙って愚痴を聞いていると、すぐに分かった。

 

「一緒にエンジョイしてくれる女の子が見つからず、空っぽの予定にバイトを入れた結果、稼いだバイト代を使う機会も無くて丸々残ってる。ってことか」

「おかげであの博物館のこと、かなり詳しくなっちまったぜ……しかも最後の方はバイトリーダーとか頼まれたしな」

「夏休みのバイトで?」

 

 経験短いだろうに、よくそこまで出世したな。

 そう言うと、順平は呆れたように否定する。

 

「一緒にバイトしてた人たちが、一気に辞めちまっただけなんだよ」

「そりゃまたどうして?」

「仕事中に原因不明の変な物音がする、って噂が流れただけなんだけどな? ほら、博物館って古い物が大量にあるわけじゃん? なんか幽霊とかそんな話になっててさ」

「……また幽霊か。なんか最近多いなぁ、その手の話」

「そういや学校でもつい最近あったよな。あれはリアルな話らしいけど、こっちのはタダの噂っつーか、都合よく辞める理由に使ったんだろ。辞めた人、館長の話がうぜーうぜーってしょっちゅう言ってたし。オレッチ、誰よりもシフト入れてたけど幽霊なんか一回も見てねーしな」

 

 ああ……あの館長の話は確かに長かった……

 

「お待たせいたしました! “オメガダックバーガー”のお客様」

 

 おっ、注文していたバーガーが届いた。

 

「ありがとうございます」

「実際に見るとまたスゲーな……」

 

 トレーの半分以上を巨大なバーガーが覆い隠している。

 これは食べ応えがありそうだ!

 

「さて、食うか」

「おう! ところで何の話してたっけ? バーガーの印象で吹っ飛んだわ」

 

 順平と馬鹿な話をしながら、“オメガダックバーガー”を食べた!

 ……味は普通のバーガーと変わりなかった。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 影時間

 

 ~長鳴神社~

 

「なるほど、こんな感じか」

 

 神社の警備中。

 シャドウが来ないとやる事がないので、負担にならない程度に魔術の研究と開発を行った。

 

 

 ・ルーン魔術研究記録

 記録日時:10月22日影時間

 

 今日のテーマは“全体(複数の対象)に効果のある魔術”。

 

 先日の文化祭の最中、

 味方全体の攻撃力を上昇させる“マハタルカジャ”

 味方全体の恐怖・混乱・動揺を回復させる“メパトラ”

 上記2つの魔法を習得。

 

 この二つを使用した感覚と魔力の流れを参考に、実験を行った結果をまとめる。

 

 

 1.魔術の改良(広範囲化)

 必要なのは3つの要素。

 1つは単体に効果を及ぼす魔術のルーン。

 もう1つは“ハガル”のルーン。

 最後の1つは単体よりも多くの魔力。

 

 この3つで……

 魔術のルーンで効果を定義する。

 嵐という意味のある“ハガル”で効果を広範囲に拡散させる。

 拡散による効果の減衰を抑えるためのを魔力を追加する。

 この手順を踏んだ結果、魔術の効果範囲を広げることに成功した。

 

 

 2.対象設定(敵味方の区別)

 1で魔術の効果範囲を広げることには成功したが、そのままでは対象を選択できない。

 コロ丸を敵役に、強化魔術で実験したところ、味方と敵の両方を(・・・)強化した。

 このままでは補助魔法は相手も強化し、攻撃魔法は味方をも傷つけてしまう。

 よって敵味方を区別し、対象を選択できるようにすることが必要となる。

 

 この問題を解決するため、最終的に組み込んだのは“ティール”と“エオロー”のルーン。

 

 ティールは勝利を意味し、敵対者へ魔術の矛先を向ける。

 エオローは仲間を意味し、自らと協力する仲間へ魔術を向ける。

 

 また、この二つのルーンは奇しくもそれぞれ“矢印↑”と、アルファベットのIとYを重ねた形、つまり“先端を反転させた矢印”にも見える。偶然か? 意味と形状に整合性があるように感じて不思議だ。

 

 

 3.新魔術

 1と2により、単体魔術の全体化に成功。

 強化の魔術を一度に味方全体にかけられるルーンが開発された。

 また実験に成功した際、新たに“マハスクカジャ”と“マハラクカジャ”を習得した。

 

 以前もこんなことがあった気がする……

 魔術の開発に成功すると、同じ効果の魔法が手に入るのだろうか?

 正直、開発に成功した後に習得できてもありがたみが半減するんだけど……

 習得できるだけマシか。

 

 それにしても今日の実験はスムーズだった。

 参考になる魔法を習得済みだったことも大きいけど……

 なんとなくルーン魔術への理解が深まってきた気がした!

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 翌日

 

 9月23日(火)

 

 放課後

 

 ~アクセサリーショップ・Be Blue V~

 

「ウフフフ……魔術師としても順調に成長しているのね」

 

 奥で商品のポップを書きながら、昨夜の研究結果を話すと、オーナーは笑い始めた。

 

「楽しそうですね」

「人が成長していく姿を見るのは楽しいものよ。それで……目的とルーンが一致する感覚に気づけたのよね? その感覚を大切にして、ルーンへの理解を深めていけば、よりルーンの力を引き出すこともできるようになるわ」

「あの感覚を大事に」

「そう。ルーン魔術には象徴的なルーンを組み合わせる“バインドルーン”、ルーン文字をアルファベットに対応させて書き記す“記述式”、そしてかつてはルーン文字を発音することで魔術を発動する、“ガルドル(呪歌)”という魔術も存在したと言われているわ。

 私達が使うのはバインドルーンと記述式だけど……それでも、違う方法でも魔術は効果を発揮する。それは分かっているわよね?」

「改めて考えたことはありませんでしたが……バインドルーンは抽象的なイメージの組み合わせですし、記述式はそもそも別の文字にいったん置き換えたりしていますよね」

 

 オーナーは笑顔で頷いてくれた。

 

「大切なのは“概念”よ。使用者が目的である概念を明確に定義して、ルーンに込める。それさえできれば、描くでも、書き記すでも、発音するでも魔術が効果を発揮するの。難しく考える必要はないから、自分の中で作ったルーンが“しっくりきた”と感じたら素晴らしい事だと思って、大切にしてちょうだい。それを積み重ねるごとにあなたは成長していくわ」

 

 頭で理解するより先に、実感のようなものが湧き上がってくる。

 ……アドバイスを受けて、ルーン魔術への理解が深まった!

 

 「ところで話が変わるのだけれど……この前の件。ゆかりちゃんにアクセサリーの作り方を教える話だけど、明日の閉店後でいいかしら?」

 

 明日の夜か。スケジュールは空いている。

 

「なら明日の夜にしましょう。ビーズアクセサリーの準備をしておくわね」

「ありがとうございます。よろしくお願いします」

 

 ……それにしても、岳羽さんは何を考えてるんだろう?

 あの時は演劇やダンスの事があったからか、あまり気にならなかったけど……

 今思い出すと、話を持ちかけた時の彼女のオーラが気にかかった。

 

「その事だけど、大体予想はつくわ」

「何か心当たりが?」

「たまに相談される内容よ、きっと……とりあえず、彼女の事は私に任せて頂戴。何かあった後のフォローだけお願いして良いかしら」

「もちろんです。ただ何かあった場合とは? あと、どんなフォローを?」

「それは知らない方がいいと思うわ。まだ確定じゃないし、知っていると逆に話を聞いてもらえなくなるかもしれないから」

「……承知しました」

 

 この件はオーナーにお任せしよう。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 夜

 

 ~ポロニアンモール~

 

 バイトが終わり、店を出てまもなく携帯が鳴る。

 

「はいもしもし。近藤さん? どうしました?」

 

 ……どうやら連絡事項があるようだ。路地裏へ行こう。

 

『目高様からスタジオでの撮影と次回の課題について、軽く打ち合わせをしたいとの申し入れがありました。明後日の夜7時頃を希望されていますが、ご予定は』

「問題ありません。よろしくお願いします」

『かしこまりました。それからもう一件、ネットでの評判なのですが……』

 

 何か問題が?

 

『色々と話題になってはいますが、葉隠様については想定の範囲内です。しかし、話題が江戸川様にまで波及しているようでして……』

「江戸川先生に?」

 

 詳しく話を聞くと、俺が所属する部活の顧問であることに加え、なぜか文化祭で売り出したカレーやカレーパンがじわじわと話題になり始めているらしい……

 

『カレーパンについては葉隠様が商品開発に協力したという話から、広がっているようです』

「いったいどこからそういう話は漏れるんでしょうか……」

『昨今は携帯電話の普及と多機能化が激しいですからね。一人一人がスパイツールを持ち歩いているようなものですよ。葉隠様ほどの話題にはならないと思いますが、念のため観察を行います。何かお気づきになりましたらご連絡を』

「わかりました。ありがとうございます」

 

 ……また変な話になってきた。

 いつもながら、状況の変化が読めない……




影虎はワイルダックバーガーで大食いチャレンジをした!
順平から博物館の噂を聞いた!
影虎はルーン魔術の実験を行った!
“マハスクカジャ”と“マハラクカジャ”を習得した!
江戸川のカレーが話題になっているようだ!
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