人身御供はどう生きる?   作:うどん風スープパスタ

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240話 初めての公欠

 夜

 

 ~鍋島ラーメン“はがくれ”~

 

「叔父さん、はがくれ丼とトロ肉しょうゆラーメン。チャーハン大盛りと餃子一皿お願い。和田、新井、お前らは?」

「俺もはがくれ丼と餃子お願いします!」

「俺はトロ肉しょうゆラーメンに味玉1つ追加で、あと半チャーハンも!」

「あいよっ!」

 

 八極拳の撮影が一段落ついたので、ちょっとした打ち上げを兼ねて、最近会っていなかった和田と新井を誘ってみた。

 

「で、どうよ最近。文化祭実行委員になったとは聞いていたけど」

「もう、超忙しいっス!」

「朝から晩までこき使われっぱなしで。実行委員っつーよりパシリですって」

 

 聞けば2人のクラスにはもう1人実行委員がいるらしく、クラスメイトの取りまとめや頭脳労働は殆どその子の担当。その代わり2人は各所への連絡役や資材の調達・運搬などの体力仕事に専念しているようだ。

 

 ……言っちゃ悪いが、確かにこいつら頭脳労働には不向きだしなぁ……クラスメイトのとりまとめにしても、うちの部に入るまで不良やってた事を考えると反発も出そうだし……適材適所に思える。

 

 というかそのもう1人もそれはそれで大変そうだ。

 

「まぁ、1人だけ楽してる訳じゃないっスね。いつも通りな気もしますけど」

「いつも通り?」

「もう1人って矢場なんです」

「あの剣道部の?」

 

 中等部で桐条先輩のポジションにいる、爽やかイケメンな僕っ娘を思い出した。

 なるほど、彼女なら頼りにされたり人をまとめるのはいつもの事か。

 なんとなく分かる気がする。

 

 ただ普段から頼られている分、他の人も頼みやすい人として彼女を見ているかもしれない。

 

「忙しすぎて潰れないように、気をつけといてやれよ」

「「ウッス!」」

「はがくれ丼2つにラーメン2つ、餃子2皿、チャーハン大盛りと半チャーハンお待ち!」

 

 おっと来た来た、さぁ食おう。

 

 そして料理に箸をつけたところで、 新井が思い出したように口を開く。

 

「そうだ兄貴、一つ相談があるんですけど」

「? どうした急に改まって」

「文化祭の実行委員ってイベントの企画や手配もするんす。その会議で、兄貴に高等部の文化祭でやったようなステージをお願いできないかって話が出てて」

「……俺の?」

「あー、そういや出てたっスね。最近何かと話題ですし、兄貴のダンス間近で見た生徒も結構いて、盛り上がるんじゃねーかって」

「へー……」

 

 文化祭のステージか……

 大量のエネルギーを回収する計画を実験するにはいい機会だ。

 タルタロス探索も再開したから、素材も集まり始めている。

 ただ中等部とはいえ月光館学園、桐条グループのお膝元というのは不安要素だ……

 後は、ダンスのレパートリーがない。前のやつか、後は適当にアイドルのコピーぐらい。

 近藤さんに頼めば何か用意してもらえるかな……?

 

「俺らとしては前のでも十分っス」

「コピーでも全然大丈夫です、文化祭のステージはそんなんばかりなんで」

 

 ああ、さすがに完全オリジナルの曲を弾いたり踊ったりする生徒はそんなにいないか。

 

「わかった。スケジュールとか、ちょっと色々聞いてみるよ。具体的な日付はいつ?」

「あざっス。11月の8日と9日っス」

「8日と9日ね、了解。そういえばクラスの出し物は?」

「うちのクラスはありきたりですけど、喫茶店っすね」

「そういや江戸川先生のカレーがどうとか、誰かが話していたような……」

 

 後輩2人と談笑しながら食事を楽しんだ!

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 深夜

 

 ~自室~

 

 近藤さんから連絡が来た。

 

「アフタースクールコーチングは、今月中にもう一本だけ練習風景の撮影。スタジオ撮影は11月の2日に、八極拳と合わせて2本撮りですね。了解です」

『次の練習が今月の24日からの予定、明日は放課後にアルバイト。明後日は……授業を休めば1日時間があります。例の手紙の送り主との面会も可能だと考えますが、いかがいたしますか?』

 

 あの件、結局どうなんだろう?

 

『調査を致しましたが、手紙に書かれていた情報に偽りはないようですね』

 

 書かれていた住所に人を派遣して、霧谷という表札がかけられていることを確認したようだ。

 

 八十稲羽市……ペルソナ4の舞台となる街……相手の目的は不明。怪しくもあるけれど……

 

「……いい機会ですし、先方の都合が良ければ行ってみましょうか。日帰りもできますよね?」

『問題ありません。車の用意を整えておきます』

 

 よし、俺も中村さんに確認のメールを送ろう。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 影時間

 

 ~タルタロス・エントランス~

 

「――というわけで。もしかしたら来月、エネルギー回収計画を実行するかもしれないし、明日は探索ができないかもしれない」

「じゃあ今日はしっかり素材集めなきゃですね。頑張りましょう!」

「ワンッ!!」

 

 三人でタルタロスの素材集めに勤しんだ!!

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 翌日

 

 10月22日(水)

 

 昼休み

 

「というわけで……」

 

 順平たちに明日は仕事の都合で欠席すること。

 この先は欠席が少し増えることを伝えた。

 

「いよいよ、って感じだな!」

「入学当初の影虎からは考えられないな」

「そういう事なら任しとけ! 休み分のノートとか、オレッチがしっかり取っといてやるから。……その代わり、テスト前は頼むぜ?」

 

 順平……普段からきっちりノートとってるような人は、テスト前に慌てなくてもいいんじゃない?

 

「グハッ!? オレッチ、精神的に大ダメージ……」

「無理せず暇なときに、遊びに行くなり適当に付き合ってくれればいいさ。学生生活のほうも楽しみたいしね」

「ん、まぁその方が俺も楽か。なら暇なときは遠慮なく誘っちゃうぜ?」

「そこは頑張るとこじゃないの? って、言っても無駄か……ま、ノートとかは私たちが協力してあげるよ」

「ありがとう西脇さん。頼りにさせてもらうよ」

 

 特に授業中、先生方の雑談や豆知識に注意しておいてもらうようお願いする。

 教科書に載っていない、先生の変化球な問題が点を落とす一番の不安要素だ。

 

「お礼も期待してるよ~?」

「あっ、私はおいしい料理がいいな!」

 

 西脇さんを筆頭に、島田さんと高城さん。

 女子チームが頷いてくれたので少し安心だ。

 

 クラスメイトの協力を得た!!

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 放課後

 

 ~部室~

 

「問題なさそうだね」

「私から見ても問題ない」

「じゃあこれにいつもの編集をして、夜に投稿ということで」

 

 試験前に撮影した動画への質問をまとめた解説動画。

 そして応援コメントへのお礼の動画を撮影した!

 

「すまないな、気を使ってもらって」

「物のついでですよ。鶴亀の記事が偏っているのは分かっていますから」

 

 お礼の動画には、“無事に成績を維持したこと”、“疑いが無事に晴れたこと”、そして“厳しい監視は行われたが、それが疑いを払拭して俺の無実を揺ぎないものにした”という内容を含めてある。

 

 視聴者に俺があの件についてどうとも思っていないことを理解してもらい、学園が厳しい対応をすることで偏見の目から守った……という風に解釈してもらえれば、騒ぎも徐々に収まっていくかもしれない。

 

 ……もちろん、ただ疑っただけの上層部の誰かが下手なことをしなければの話だが。

 

「その点に関しては対策を打っている。あまり大きな声では言えないが……近いうちに理事会の顔ぶれが一部変わるはずだ」

「それって……」

「山岸さん、深く聞かないでおこう」

 

 学園上層部のことは、そっとしておこう。

 

 ところで今後の撮影だけど、内容はどうしようか?

 俺としては今後も動画投稿は続けていきたい。

 

「このまま勉強動画を続けるのは?」

「もちろんそれも可能だけど、それだけだとつまらなくないかな?」

 

 試験期間は終わったし……そもそもあれって、

 『熱意が風化しないうちに早く始めたい、だけどできるだけ学校から文句は言われたくない。』っていうのが勉強動画にした理由の一つだったしな。

 

「そういえば元々はダンスの話をしていたんだっけ」

 

 今後の動画に関する会議を行った!

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 翌日

 

 朝

 

 ~車内~

 

 昨夜、中村さんを通して例の“霧谷長船”と名乗る苗の生産者から、歓迎するとのお言葉を頂いた。そのため今日は朝から久々に会ったチャドさん(元・米陸軍情報部所属)が運転する車にゆられ、人生初の八十稲羽市へ向かっている。ペルソナ4の舞台と考えると、やや緊張するが……

 

「葉隠様、次はこちらに回答をお願いします」

 

 移動中、近藤さんから様々なアンケートやインタビューへの回答を頼まれた。

 テレビ番組だけでなく、サポートチームが認めた雑誌のものだそうだ。

 今後はこういった隙間時間に、ちょっとした作業を行うことも増えてくるようだ。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 そして数時間後……

 

「Mr.葉隠、ナビによるともうすぐ八十稲羽に着くみたいですよ」

「案外近かったんですね」

「沖奈市までは高速道路がありましたから。道がもっと空いていれば、もっと早く着きましたよ」

 

 日本は道が狭くて車が多い、と大きなリアクションで語るチャドさん。

 無理もない。と言うか、俺からするとアメリカの方が広すぎる。

 

「ところで手紙の主との……約束の時間までだいぶありますね」

 

 近藤さんの言う通り、適当な所で時間を潰すことになりそうだ。

 

 と言っても八十稲羽では商店街、神社、川の土手、高台。

 そんなところしか思い浮かばない。

 一泊するなら天城屋旅館に泊まっても……ん? 待てよ?

 天城屋旅館って宿泊しなくても温泉に入るだけならできるんだっけ?

 ……記憶がはっきりしない。

 

「その辺の店で聞けば分かるのでは? ここらじゃ有名な旅館なんでしょう?」

「それもそうですね」

「時間もありますし、のんびり散策しても良いと思いますよ」

 

 こんな感じでのんびりと話し合った結果……

 

 商店街に近いどこかで駐車場を探し、歩いて商店街を散策。

 “だいだら.”や“四目内書店”に立ち寄りつつ“愛家”を目指す。

 親戚の中村さんに挨拶して、天城屋旅館の情報を聞いて温泉に入れるようなら向かう。

 もし入れないのなら適当に……と、割と行き当たりばったりな計画が立った。

 

「今頃みんな勉強してる時間帯なのにな……」

「ふふふ、たまには息抜きも必要ですよ」

 

 近藤さんが上手く芸能活動を理由にしてくれたため、学校は公欠扱いになっている。

 しかし実際はほぼサボタージュ。

 背徳感と開放感を同時に感じた!




影虎は和田と新井を呼んで打ち上げをした!
文化祭のステージについて相談された!
八十稲羽市を訪れることが、唐突に決定した!
欠席中の授業について、クラスメイトの協力を得た!
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