人身御供はどう生きる?   作:うどん風スープパスタ

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268話 総合格闘技・練習開始

翌日

 

11月11日(火)

 

昼休み

 

~教室~

 

「こんな感じでどう?」

「これ、ちょっと攻め過ぎじゃない? 可愛いけど服に合わせにくそう」

「そうかな~?」

「もうちょっと小さくて、どうせなら普段使いしやすいデザインがいい」

「普段使いねー……だったら~」

 

教室には大勢の女子が集まっている。

岳羽さんと雷ダメージ軽減アクセサリーのデザインを話し合ったが2人では決まらず。

以前、アクセサリーをデザインしていた島田さんに協力を仰いだところ……

なぜかクラス中の女子が会話に加わっていた。

 

「ねぇ葉隠君! こんなデザインってできる!?」

「こんなのは!?」

「あー……これはできるけど、こっちのは絵だとこの当たりの部分がちょっと分かりにくい。俺が作るのは銀粘土を使ったアクセサリーだから、先に型を作れば大体の物はできるよ。細かくてもちゃんと形が分かれば対応は可能だよ」

 

ルーンを刻めれば効果は発動できるし、島田さんのデザインは俺よりよほどセンスが良い。

そう感心していたら、いつの間にか製作可能か不可能かを答えるだけが俺の役目になっていた。

デザインの修行もすべきだろうか?

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

 

~鴨山ジム~

 

総合格闘技の指導を受けた!

昨日はルールブックを読みながら、反則行為や定石を頭に叩き込んだ。

そして今日はルールを意識しながら練習生の方とスパーリングを行い実力を見せた。

 

しかし、

 

「総合格闘技のルールだと、中国拳法は定石から外れた動きになりやすいのでしょうか?」

「所詮は別物だからねぇ。違いはあるよ」

 

団体ごとにルールの差もあるが、まず肘膝は使用禁止。これにより八極拳の頂肘は使えない。

“靠”という体当たりのような技は、タックルの方が寝技に繋げられるので有効だと監督は言う。

さらに夏休みにジョージさんから学んだジークンドーの蹴りによるタックルのストッピング。

これは総合でもルール違反ではないが、きっちりと対策がされている。

相手も警戒してくるから、よほど実力差があるか運がよくなければ利かない。

つまりほぼ無意味。等々……

 

確かにルール上使えない技があるのは認める。

しかし少々この監督は総合至上主義というか、他の格闘技を下に見ている感が否めない。

 

きっと悪気はないけど、これまでの経験を遠まわしに実際の試合では通用しないと言われている。そして遠まわしに100%総合、否。彼の指導したやり方への矯正を求められている。

 

……今回は指導者との折り合いのつけ方を考えなければならないかもしれない……

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

撮影後

 

~路上~

 

「……」

 

帰宅途中。

荷物を抱えて夜道を歩いていると、背後から視線と気配を感じた。

周辺把握も一定の距離を保ったままついてくる人影を感知している。

人数は3人。適当に道を曲がっても、確実に追ってくる。

 

……尾行されていると考えて間違いない。

 

明るく人気の多い道を通りながら、近藤さんに電話をかける。

 

『はい、こちら近藤です』

「葉隠です。撮影が終わりました。これから寮に帰宅しようと思っているんですが――」

 

現在の状況を報告。すると、

 

『ご心配なく。今度出演予定のバラエティー番組で、出演者をこっそり撮影する物がありまして、今日尾行すると事前に連絡を受けています』

「なら一安心ですが……これ、無視したほうがいいんでしょうか?」

『どこかの交番に駆け込んでください。尾行される方は尾行されると知らない事になっていますので、その状態で尾行に気づいたとすれば自然な行動でしょう。万が一撮影スタッフではない場合も考えるとそれが一番安全です』

 

そこらの暴漢に負ける気はしないけど、カメラの前で喧嘩するわけにもいかないしね。

ただ、番組的に大丈夫か?

 

『本当に撮影スタッフなら我々は知らぬ存ぜぬで通しましょう。知らなかったが故の不幸な事故です。それか気づかれたあちらのミスということで処理していただき、番組に関してはこちらでフォローします』

「……ひょっとして何か準備してました?」

『“尾行してこっそり撮影したい”という要望でしたが、葉隠様の能力なら尾行に気づく可能性は高いかと思っていました。本当に危険な相手に尾行された場合、葉隠様は気づくのかという疑問もあったので、何も言わず了承しましたが』

 

ドッペルゲンガーを召喚していれば“周辺把握”と“警戒”はパッシブって知ってるからな……

それがちゃんと機能するかを確かめたかったのだろう。

 

「分かりました。ではそういうことで。また後ほど」

『よろしくお願いします。私もすぐ迎えに行きますので』

 

この後、適当に飯屋の前で立ち止まるなどして空腹を演出しつつ、見つけた交番に駆け込んだ。

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

深夜

 

~廃ビル(出巣吐露威鎖亞華栖(デストロイサーカス)のアジト)・中庭~

 

集まったメンバーに軍隊格闘術と八極拳の指導を行う。

個人の長所を伸ばすにも、パンチの打ち方やキックの仕方といった基本は大切だ。

 

軍隊格闘術は米軍の元大佐から学んだ技であり、八極拳には一部の套路を改変し、より簡素かつ集団で練習しやすくした“団体訓練用八極拳”が中国の軍隊でも取り入れられている。

 

習得に時間のかかる格闘技の中でも、比較的(・・・)即効性があると思われ、また集団での訓練を前提としたこの2種の格闘技をベースに指導する事にした。

 

その上で他の格闘技から向いている、あるいは必要な技法を各個人の適性に合わせて抽出。

持てる限りの話術と実演、さらに実践を通して理解してもらう。

 

……彼らの指導はまだ始まったばかりだ!

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

影時間

 

~タルタロス・17F~

 

「出現するシャドウのデータは覚えてるな?」

「はい!」

「ワン!」

「よし! 今日は宝石集めを中心に行う! 狩って狩って狩りまくれ!」

 

奇顔の庭・アルカに入ってから、宝石を落とすシャドウが増えた。

岳羽さんのアクセサリー作りもあるので、できるだけ量を確保しておきたい。

 

目に付くシャドウを片っ端から狩りまくった!

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

帰宅後

 

~自室~

 

今日の報告を兼ねて、ロイドにメッセージと“コードキャスト”に関する実験結果を送る。

 

「残念ながら俺はプログラミングしたデータでは魔術を発動できないらしい。プログラミングの練習がてら試してみたが、暖簾に腕押しだった……と。後は……そうだ」

 

“Rune maker”をアクセサリー作りにも応用できるように、デザインや設計ができるツールもつけてもらえないだろうか? 希望として出しておこう。

 

メールにまとめて送信。

さて、バイオリンを弾いて寝よう。

 

 

……

 

…………

 

………………

 

 

次の日

 

11月12日(水)

 

放課後

 

~アクセサリーショップ・Be Blue V~

 

「あらまぁ……アメジストにマラカイト、オニキスにアクアマリン。ターコイズ(トルコ石)までこんなに沢山。ウフッ、フフフ……」

「お気に召したようで何よりです。昨日の探索は17Fから40Fまで、その先は16Fと同じく壁で封鎖されていました。一度外を経由すれば登れると思いましたが、昨夜は宝石集めを優先したので」

 

3人がかりで取り組んだおかげか、昨日は宝石が山ほど。

特に集まりやすいアメジストやマラカイトはあと少しで50を超える所だった。

 

「壁のせいで本来まだ誰も侵入しないからでしょうか? ターコイズを落とす“鋼鉄のギガス”は数が少ないのですが、それでも14個も集まりました」

「そのあたりは分からないけれど、集められるだけ集めておいて欲しいわ。ところでこっちは……?」

「宝石と同じく“ファントムメイジ”というシャドウが落とした物で、“古びたランタン”というアイテムだと思われます。銀の仮面と同じような物ですね。何かに使えないでしょうか?」

 

宝石ほどではないがこれもかなり数があるので、いくつかは八十稲羽のだいだら.にも送ってみようと思っているが……オーナー的にはどうだろう?

 

「そうね……力は感じるわ。材質的には鉄が主かしら? ……魔力の伝導率は銀の仮面に及ばないけれど、強度という面ではこちらが優れているかもしれないわ。素材の一つとしては十分アリね。ただ、問題は加工よ」

「銀粘土のようには無理ですか」

「ええ……銀粘土と似ている“粉末冶金”という技術もあるにはあるけど、それはアクセサリーとは少し違うわね。鉄をアクセサリーに加工するなら相応の鍛冶か彫金の技術が必要になると思うし……それにこの前アメリカの研究チームに調べてもらったら、仮面を銀粘土にすると魔力に対する耐久性が落ちることが分かったの」

 

仮面から切り出した銀板と、銀粘土に加工して成型した板。

2種類、同じサイズの板にアンジェリーナちゃんが魔力をこめてロイドが魔力量を観測。

比較検証を行った結果、なんと銀粘土板の耐久性は元の3分の1以下だったそうだ。

 

「銀粘土に加工する段階で一度粉末にする。さらにアクセサリーを作る焼結の段階でなくなるとはいえ“結合剤”を、言ってしまえば不純物を混ぜるわけだし、最後に焼結させるとしてもその段階で内部に歪みや密度の差ができている、それによる影響があるとか……」

 

引き続き研究中らしいが、可能なら金属を直接加工した方が完成品の強度は高まる。

そう考えて良さそうだ。

 

「葉隠君がさっき話してた“だいだら.”さん? に話を聞いてみたらどうかしら。聞いた限り、金属加工は私よりも専門家みたいだし……八十稲羽といえば、貴方が知り合った魔術師さんもいるのよね?」

「霧谷君ですね」

「私もその子が送ってきた資料に目を通したけど、ルーンと科学知識を独自に組み合わせて目的の現象を引き起こすみたい。魔術の数にも驚いたわ。随分な研究家みたいね」

 

彼はオーナーから見ても評価は高いようだ。

 

「私も私で調べてみるけど、その子にも意見を聞いたらどうかしら? 私とその子では考え方も違うと思うから」

 

宝石とアクセサリーの改良について話し合った!




11/23 11日から2・3年が修学旅行という記述を削除しました。
    
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