人身御供はどう生きる?   作:うどん風スープパスタ

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278話 悪化

「このドラマの中心となる――」

 

 ドラマの説明が続いている……

 

 それによると、ドラマの主人公は4人。

 とある進学校に入学し、縁を持った男子2名と女子2名を中心に話が広がる。

 基本的に主人公たちは競い合いの激しい校風で、クラスの内外で起こる不和や問題、

 それから後輩に対する先輩の理不尽とも戦っていくことになるようだけど……

 その過程で絆を深めた主人公やその他との恋愛要素あり。

 さらには校風についていけずドロップアウトした不良とのアクションあり。

 その他様々な要素が盛り込まれるらしい。

 

「以上が今回のドラマ。“学園★急上昇”の概要です」

 

 一通り説明が終わると質問タイム。

 それからオーディション用の薄い台本が配られ、2時間の自由時間が与えられた。

 この2時間でできるだけ台本を読み込み役作りをするもよし、休憩を取るもよし。

 

 ほとんどのアイドルはそのまま席で台本を読み始めているが、俺は近藤さんと会場を出る。

 すると同じタイミングで久慈川さんと井上マネージャーも外に出たらしい。

 

「さっきぶり。休憩か?」

「違いますー。中は空気がピリピリしてるから、集中して台本読めるところに行こうと思って。先輩は?」

「俺も似たようなものだよ」

 

 台本はもう覚えたから、どこかで何か食べながら役について考えようと思っている。

 

「お店は決まってないの? それなら、井上さん」

「うん。少し歩いた所に良いカフェがあるんですが、よければ一緒にどうですか?」

「私も台本の読みあわせとか、相手がいてくれたほうが助かるし」

 

 断る理由もないので、ありがたくご一緒させてもらうことにした!

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 1時間後

 

 ~隠れ家的カフェ~

 

 案内されたカフェは薄暗い裏路地にあり、案内がなければ絶対に来なかっただろう。

 店内は程よく明るく清潔。観葉植物が多くて自然を感じる落ち着いた内装だった。

 

 そこで久慈川さんはじっくりと本を読み。

 俺は先に読み終わった内容の要点をまとめ、説明したり。

 台本について話し合う事で内容への理解を深めた!

 

「よし! そろそろ読み合わせしよう」

「……ここでか? カフェだし」

「大丈夫だよ。ここのマスターは元劇団に所属していたそうで、寛容だから。あの会場でオーディションがある時は、担当アイドルといつもお世話になるんだ」

「文句を言う客もいないから、思いっきりやってみな」

 

 聞こえていたようで、カウンターの向こうから許可がでた。

 ありがたく、本気で読み合わせをさせていただいた!

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 ~オーディション会場~

 

 できる限りの準備を行い、時間前に会場のあるビルへ戻ってきた。

 オーディションはまずいくつかの部屋に分かれ、くじで男女のペアを作る。

 そして順番にカメラの前で台本にある男女の会話を演じる。

 結果発表は審査員が全員分の映像を見てから判断し各事務所へ、俺の場合は近藤さんに連絡が入る。

 ちなみに近藤さんや井上さん、オーディションを受けるアイドル以外は説明会場で待機だ。

 

 俺は208号室。久慈川さんも同じ部屋だったが、

 

「9番」

「あっ! 女子の9番、私です!」

 

 流石に試験のペアまで同じとはいかなかった。

 残念だが仕方がない。

 

「葉隠です。よろしくお願いします」

「こちらこそ!」

 

 なにやら番組見てます! あとネットの動画も! と興奮気味の女子と合流。

 落ち着かせてから、軽く読みあわせをしようと思っていると……

 

「あっ!」

「え? ああ……」

 

 視線の先にはくじを引く光明院君の姿があった。

 どうやら久慈川さんとペアになったらしいが……以前にも増してオーラが刺々しくなっている。

 

「なんかカンジ悪い……」

 

 テレビで見るのと違う。幻滅。とぼやく女子。

 彼女はどうやらアイドル候補生であり、アイドル好きのようだ。

 アイドル好きが高じてアイドルを目指したのかもしれない。

 

 それはそれとして、

 

「始まるまでまだ時間がある。一度読み合わせをするぞ」

「分かった」

 

 光明院には余裕がなく、久慈川さんも少々やりにくそうだ。

 台本が男女のパートに分かれている以上、俺が彼とペアになる可能性はない。

 俺はそれだけでも幸運だったのかもしれない。

 

「あっ! あっちにIDOL23の、あっちにはBunny'sの!」

 

 ……いや、これはこれでどっこいどっこいかな……

 アイドル好きは別にいいけど、ちょっと時と場合を考えようか。

 騒ぎすぎで周囲の目が痛くなってきた。

 

 オーディション前だし、俺たちも読み合わせをしよう。

 

 女性にそう提案して、集中させるためにこれまで培った表現力、演技力、交渉技術を駆使した!

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 オーディション後

 

 ~ロビー~

 

「2人ともお疲れ!」

「いかがでしたか?」

 

 別行動の近藤さんと井上さんに合流。

 手ごたえを聞かれたので、

 

「自分の力は出し切れたと思います」

「私もなんとか。でも疲れた~」

「久慈川さんは相手があれだったからな……」

「? 何か問題でも?」

 

 井上さんが聞くと同時に、周辺把握が近づいてくる彼を捕捉する。

 

「噂をすれば影みたいですよ。……久しぶり、何か用かい?」

 

 振り返って声をかけるが、光明院君は黙って渋い顔を向けるだけ。

 まっすぐこちらに向かってきたから、何か用かと思ったが、

 

「あれだな……辞めたのか? 上っ面を取り繕うの。アイドルらしからぬ顔してるぞ」

「お前には関係ないだろ。それよりお前、演技はどこで習った」

 

 口を開いたと思えば……それこそ関係ないだろうと言いたくなったが、飲み込んで答える。

 

「アメリカで少しね」

「期間は」

「指導してくれた方はすごい人なんだけど、お忙しくてね。一週間足らずだよ」

 

 その瞬間に彼のオーラが不愉快な色に染まり、なおかつ膨れ上がる。

 

 フラストレーション溜め込みすぎだろ……いつ殴りかかってきてもおかしくない。

 俺はどうとでもなるけど、光明院君は精神的にちょっとやばいかも。

 

「……ねぇ」

「ん?」

「負けねぇぞ。お前にどれだけ演技の才能があろうと、最後に勝つのは俺だッ!」

 

 言葉の内容自体はライバル宣言なのだが、怒鳴るような声では威嚇にしか見えない。

 周囲にいたアイドルや関係者も何事かとこちらを見ている。

 しかし彼は気づいていないのか、

 

「お前もだ久慈川!」

「うえっ!?」

「テレビで大々的にライバル宣言しておきながら、当の本人と仲良くお友達ごっこか。お前みたいな半端な気持ちでアイドルやってるやつには絶対負けねぇからな。覚えと」

「コラッ! 何をやってるんだ!」

「ッ!?」

「他所のアイドルと揉め事を起こすんじゃない! うちの子が失礼しました。……来なさい」

 

 矛先を変えて一方的にまくしたてたと思ったら、騒ぎを聞きつけたマネージャーに連れて行かれた。

 

 久慈川さんも周囲も、取り残されて呆然とするしかない。

 

「……な、なにあれ!? 勝手なこと言いたい放題! ムカつく~!」

「ちょ、ちょっと落ち着いて。りせ」

「久慈川様の気持ちもわからなくはありませんが……葉隠様?」

「……敵意を向けられるのは前からですけど、会うたびに無理してる感じがします。精神状態もそうですが……無理なレッスンの疲労かな? たぶん体の調子も良くはないかと」

 

 気になったので観察したら、気の流れが悪かった。

 

「アイドルとしてトップを取りたい。それは生半可な覚悟では無理だとは思います。しかし、どうしてあそこまで張り詰めているのか……?」

 

 何だ? 体の中に、いつもの痛みとは違う感覚がある。

 いつもの痛みを“力が漲って張り裂けそうな痛み”とすると、漲っていた力が急に抜けたような……コミュ関係ならリバース状態? 元から敵意を向けられて今更といえば今更だけど、放置しすぎた、って事なのかな?

 

 ……会うたびに悪くなるあの状態も気になるし、何にしてももう少し歩み寄る必要がありそうだ。まだブロークン状態でないといいが……

 

「近藤さん。Bunny's事務所、特にアイドルのサポート状況を調べてもらえませんか?」

「かしこまりました。個人的に気になることもあるので、本腰を入れて調べてみましょう」

「いつも助かります」

 

 人目も痛くなってきたし、まずは怒れる久慈川さんをなだめて昼食に向かおう。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 放課後

 

 ~アクセサリーショップ・Be Blue V~

 

 遅くなったが、岳羽さんに弱点をカバーするアクセサリーを渡す。

 

「これが例のアクセサリーね。……うん! デザイン通りでいい感じ! 効果の方は」

「それは心配ない。実際に試してみたから間違いないよ」

 

 “耐雷のブローチ”

 外見はハートを模したブローチ。

 中心部に填め込まれた宝石と、その下に仕込んだ魔法円により魔術が常時発動。

 イメージは避雷針とアース。体表に魔力の膜を張り、雷を逃がすようにルーンを組んだ。

 完全ではないが、これにより雷属性の魔法のダメージを半減させ、雷弱点によるダウンを防ぐ。

 デザインは俺のじゃないけど、センスが良い。

 控えめに言っても自信作と言える一品だ!

 

「それはそうと、そちらから何か話せる情報は?」

「んー……申し訳ないけど、まだ何もない……決まってるのは今月末までに分寮の方へ入寮ってことだけで、今は引越しの準備中。活動について詳しいことはそれが終わってからって話になってて、まだ召喚器も渡されてないの」

「機密情報と貴重品の塊だしな。仕方ないだろう。そういうことなら時期を待つよ」

「なんかツケが溜まっていくばかりで申し訳ないんだけど」

「返せるときに返してくれればいいさ。……あ、そうだ。入寮に際して1つ注意と頼みがある。俺がペルソナや影時間を知っていることと、岳羽さんと協力関係にあることは秘密にするという約束だけど、それがバレるような事を何かに書いたり、口にしないように気をつけてくれ」

「? それは当然でしょ? そういう約束だし」

「たとえ自室内であっても油断しないでくれ。あの寮、各部屋に監視用の隠しカメラがついてるから」

「監視カメラ……!? ちょっ、何よそれ!? 何で寮の部屋にそんなもの仕掛けられてんの!?」

「そんなの俺に聞かれても困る。ただ本来の流れだと岳羽さんは気が引ける様子だったけど、来年やってくる転校生をそれで監視する側に立っていたし、その後も普通に寮で生活していたぞ? ……自分の部屋にもついていると思わなかっただけか?」

「普通そんなのついてると思わないし! てか私これから引っ越すんだけど!?」

「だからこそ注意したんだけど」

「引越しが決まってから言われても遅いっつーの!!」

 

 やっぱり室内の盗撮は嫌か。ゲームでも後に一悶着あったようだし。しかしそうなると本当に本来の岳羽さんは他人の部屋を盗撮(監視)しておいて、自分の部屋には何もないと思って、能天気に生活していたのか?

 

 謎が深まるが、ここは店の中。

 オーナーが協力的とはいえ、あまり騒ぐのは得策ではない。

 怒る岳羽さんをなだめ、最終的に家具などの配置で対策をすることで決着がついた。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 深夜

 

 ~廃ビル~

 

 今日も変わらず不良たちへの指導。

 昨日は体のケアについて教えたので、人体の急所についての知識を叩き込んだ。

 皆、教える前からそこそこ詳しかったのは経験なのか?

 いつもより全体的に理解が早かった!

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 影時間

 

 ~タルタロス・43F~

 

 気の流れからシャドウの急所を見極め、狙い打つ練習をしてみた。

 結果としては、まだ集中が必要なので単独では使いづらい。

 しかし天田とコロマルのフォローがあれば十分に使えた!

 

 天田とコロマルが敵をひきつけ、俺は集中。

 うまく急所を突くとシャドウはダメージも大きいのだろう。苦しんで隙ができる。

 そこへ天田とコロマルが追撃する。

 

 単独ではまだまだ鍛錬が必要だけれど、チームで考えると良い感じではないだろうか?

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 帰宅後

 

 ~自室~

 

 アンジェリーナちゃんから先日のメールに対する返事が来ていた。

 コラボ動画は、こっちで歌った動画と音声を送り、向こうで合成して1つにするらしい。

 問題はコラボで彼女が歌いたい、と言っている曲なのだが……英語と日本語で一曲ずつ。

 

 ディズニー映画で有名な“A Whole new world”

 Kalafinaの“Storia”

 

「難易度高いな……」




影虎はオーディションを受けた!
男性アイドル“光明院光”とのコミュがリバース状態になった!
岳羽ゆかりにアクセサリーと情報を提供した!
アンジェリーナとのコラボ動画用の歌が決定した!
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