人身御供はどう生きる?   作:うどん風スープパスタ

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新年明けましておめでとうございます。


283話 忘れた頃に

 夜

 

 ~アクセサリーショップ“Be Blue V” 地下倉庫~

 

「また災難だったわね。貴方も一緒にお掃除した方々も」

「ははは……今日が土曜日で良かったです」

 

 事故物件の清掃後。

 最寄りのシャワー付きコインランドリーで体と服を洗い、そのままバイトに出勤。

 すると憑かれてはいないけれど、良くないエネルギーが体に残っていたらしい。

 オーナーに速攻で気づかれ、事情を説明しながらお祓いを受けることになった。

 

 お祓い用の護符の作り方を学んだ!

 そして“疲労”が回復した!

 

 どうやら感じていた疲労の原因は、あの物件の霊が放つエネルギーだったようだ。

 

「でもある意味幸運だったのかもしれないわ」

「そうですか?」

「私はその霊を見てないけど、憑かれてないからその程度の疲労で済んだことは分かるわ。本当に憑かれていたらもっと酷い体調になっていたはず。他の人も憑かれたまま気づかずに放置されていたらどうなっていたことか。貴方はここで慣れていて、他の方はそんな貴方が同行していてよかったじゃない」

 

 確かにそうでない場合は想像したくないな……

 今回の仕事では得た物もあったし、ポジティブに考えよう!

 

「で、その得た物がコレなわけね。確かに掃除の手際が格別に良くなってるわ」

 

 オーナーの視線の先では、ピクミン(召喚シャドウ)たちが片づけを進めている。

 手に入れたばかりの“整理整頓の心得”と“清掃の心得”を与えたところ、圧倒的な効率化。

 さらにいちいち指示を出さなくてもやり方が分かっているように、勝手に動くようになった。

 

 戦闘にはまったく使えないが、日常生活では大助かり。

 何なら社長さんのように清掃業者を始めたら、儲けられるかもしれない。

 使うのはシャドウを作るエネルギーだけだし、実質的に人件費ゼロ。

 人型で外見を作りこめば怪しまれることの無い清掃作業員も作れるだろう。

 戦闘用にも敵への状態異常付着率を上げる“不浄の手”が手に入っている。

 

「成果を考えれば大儲けですね。……?」

 

 オーナーの反応がない。と思って見ると、シャドウを眺めながら何かを考えているみたいだ。

 

「オーナー?」

「……葉隠君。話が変わるけど、前にスキルカードの研究も任せてもらったじゃない?」

「ありましたね。エネルギー回収の方に熱中して忘れてましたけど」

 

 神社でコピー可能だから相対的に重要度が下がるし、そもそもカードの供給がストレガ頼み。

 最近はそもそも遭遇しないしな……

 

「私も同じ。成果も出せていないのだけれど……このシャドウを見ていて思ったの。貴方、このシャドウたちに“スキルを与えている”のよね? それがヒントにならないかしら?」

「!?」

 

 目から鱗だった。

 確かに俺はシャドウにスキルを与えている。それも与えるスキルは選択可能。

 与えられるスキルの数に制限はあるが、スキルを与えること自体は問題なくできている。

 

 ペルソナ使いにスキルを与えるスキルカード。

 シャドウにスキルを与える俺。

 近いといえば近い……か?

 

「シャドウにスキルを与えるのって、具体的にどうやるの?」

「シャドウには……なんというか、感覚的に。気と魔力とMAGを練り合わせて形を作るときに、こう……与えたいスキルのことを考えてグッ! と?」

 

 自分で言ってて意味不明だ。

 しかしどうしても言葉が出てこない……

 召喚は元々ルサンチマンが暴走した時、どさくさ紛れに身についたスキルだしなぁ……

 

「……もしかしたらそれがポイントかもしれないわね」

「と、言うと?」

「スキルに関する“理解度”、そして他人に対する“伝達力”よ。スキルカードは手に持つと中にあるスキルが“分かる”のよね? スキルカードというのは、スキルという能力、あるいは技の使い方をペルソナ使いに“理解させる”物と言えないかしら?

 例えば私たちの扱うルーン魔術。私たちはこれまでに色々とお互いの魔術を交換したわよね?」

 

 その通りだ。

 

 例を挙げるなら……俺が霊に対抗する護符の類はオーナーから教わったままのルーンを使っているし、オーナーがエネルギー回収計画のために作ってくれたアクセサリーには、俺が作り実験で使っていたルーンが使われていた。

 

「魔術は魔力を用いて何らかの事象を起こす(すべ)。独自に作り出した魔術であってもその術、方法、魔力の使い方を教えれば他の術者でも使用可能。いわゆる師匠と弟子の関係では当たり前のことだし、私たちも意識せずとも実証してきたことよ。

 ペルソナやシャドウも同じ魔力を扱うのだし、本質的にはそれと同じなんじゃないかしら?」

「……魔術師に魔術という魔力の使い方があるのと同様に、ペルソナ使いにはペルソナ使いの魔力の使い方がある? なら、スキルカードは力の“取扱説明書”?」

 

 召喚シャドウにスキルを与える時に、そんなことを考えたことはなかった。

 だけど……当たっている気がする。

 俺自身、様々な人や本から技術や役立つことを学んでスキルを手に入れてきた。

 

「学校の勉強もそんな感じですよね。自分ではわかっていても、それを他人に教えるとなると難しかったり、分かっていると思っていたのに分かっていなかったり……」

 

 召喚シャドウは自分のエネルギーと意思を混ぜて、そこに自分のスキルを入れる。

 言ってしまえば自分の分身?

 なんとなく与えられていたのも、説明不要な自分の中だけで完結できるから?

 ならそれを他人でも理解できるよう具体的に伝達できれば?

 

 ……部分的に既にやっていたことだ。

 天田に教えた格闘技や槍の扱い。最近では不良グループへの指導も該当するだろう。

 

「その話は聞いているわ。それらをもっと洗練して、魔術によってスキルの使用方法を一瞬でインストールする……そういう術を作れたら、それはスキルカードかそれに近い物になるのではないかしら?」

「もしそれが可能だとしたら」

 

 

 俺が必死で身に着けた物からそうでない物まで。

 多量のスキルを自由にカード化して天田やコロマルを強化できるかもしれない!

 いや、それだけでなく与えるスキルを研究すれば、召喚シャドウの強化にも繋がる気がする!

 

「研究する価値はありますね」

 

 術の開発もそうだけど、もっと“表現力”と“伝達力”を鍛えよう。

 一度スキルの使用方法を見直して、可能な限り分かりやすくまとめてみようか?

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 深夜

 

 ~廃ビル~

 

 今日も練習……と思って不良の集まるアジトへ向かうと、

 

「うう……」

「くそっ!」

「「「……」」」

 

 見知らぬ男5人が捕まっていた。

 

「何事?」

「こいつらアジトの周りを探ってたんだ。グルグルと何週もな。最初は金流会の手下かと思ったんだが……おい」

 

 鬼瓦が男たちに話せと指示した。

 すると、

 

「……最近噂のアンタを倒せば名が上がると思って」

「そんで、金流会に良い待遇で入れてもらおうと……」

 

 彼らは腕に自信があったらしく、5人で俺1人を囲めば勝算があると思ったらしい。

 対複数人での喧嘩は何度もやっていると有名なはずだが、そこは自分たちは他と違うと。

 こうして俺に会う前に捕まっている時点でまず危険はないと思うが、問題はそこじゃない。

 

「鬼瓦。俺を倒せば、そいつは金流会で優遇されるのか?」

「まぁ、多少はあると思うぞ。連中の方針は“金と力”だし、連中のメンツもある。普通の不良なら報復すればいいが、アンタの場合は最初からかなりの人手を集めた上で負けた。もう一度やり合っても、下手すりゃ恥の上塗りになりかねねぇと思って警戒してるんだろう。じゃなきゃ俺たちはとっくに抗争の真っ最中さ」

 

 金流会の理想は自分たちの手で俺を倒すことだけど、鬼瓦の言ったようなリスクがある。

 なら俺を勝手に倒してくれた奴を引き込んで、自分の所のメンバーが倒したことにしてもいい。

 

「結局の所、連中にとって一番大事なのは“他より優位に立つこと”と“儲けられること”らしいしな……それさえできれば妥協もするし、本当にアンタを倒した奴なら優遇するだろうさ」

 

 だとしたら、今後こういう奴らが出てくる可能性も?

 

「そんなバカ共は多くないと思うが、否定できないのがこの辺なんだよな」

「戦国時代かよ」

 

 いつも思うが、順平の“漫画みたいに荒れてる”って表現は的確なんだな……

 とにかく注意をしておく必要はありそうだ。

 こちら側の情報に関して俺は詳しくないので、鬼瓦たちを頼らせてもらおう。

 

「仕方ねぇな。ならうちのチームとクレイジースタッブスにも連絡しとく。些細なことでも何か聞いたら教えろってな。あとこいつらはどうするよ?」

 

 捕まった5人か……

 

「特にやってほしいことはないね。俺が目的でも実際迷惑掛けられたのはそっちだし、好きにしたらいい」

「そうか。なら当分パシリに使わせてもらうぜ。人数が増えた分、パシリの仕事も増えててな」

 

 なんだかんだで総数は100人超えてるもんな……まるで親父の後を追っているようだ……

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 翌日

 

 11月23日(日)

 

 朝

 

 ~辰巳スポーツ会館~

 

「!」

 

 体操の練習中。

 何の前触れもなくスキルが身に付いた。

 

 “重心把握”

 

 確かにバランスを気にしながら動いていたが……

 とりあえずバランスを取るのがこれまでよりも楽になったのは分かる。

 これならより自由に、安定して体を動かせそうだ。

 応用すれば投げ技の補助にも有効だろう。

 

 ひとまず練習を続けながら、スキルの効果を把握しよう。

 

 

 ……体操のクオリティーが上がった!

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 昼前

 

 ~Craze動画事務所~

 

「本日はよろしくお願いします」

『よろしくお願いします!』

「はーい、皆よろしくっ!」

 

 コラボ企画第3段、商品紹介。

 これは妊娠発覚により一時的に旅動画を休止している動画投稿者、又旅さんの新コーナー。

 最新のアイテムや珍しいアイテムを探しては日々紹介している。

 今回はその撮影に参加させてもらう俺に加えて、

 

「いやー、楽しみですな~」

「カメラすげー……つかテレビとの違いがわかんねー」

「だよなー」

「あんたら、はしゃぎすぎて迷惑にならないようにね!」

 

 友近、宮本、順平。そのお目付け役の西脇さんに、山岸さんと天田も見学に来ている。

 

「それじゃ見学の皆は私についてきてもらって、葉隠君は衣装に着替えてきてね!」

 

 ということで、案内された部屋で着替え。

 与えられた衣装は……料理人(洋食)のコスプレだ。

 今日取り扱う商品は調理器具で、実際に料理に使ってみせるからその関係だろう。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 撮影本番

 

 ~事務所内のキッチンスタジオ~

 

「さ! じゃあ実際に使ってみようと思います、が! 今日はせっかくのコラボなので、葉隠君に実際にお料理をしてもらいます! さて葉隠シェフ、本日のメニューは?」

「はい! 本日は食べていただく又旅さんが妊娠中とのことで、事前に食べたいもの、食べられるものを聞かせていただいたところ……」

 

 出てきた候補が1、ステーキ。2、焼肉。3、カツ丼。

 と、思いのほかガッツリ食べられているようだった。

 妊娠中はつわりで物が食べられない、という話を聞くが、彼女はそうでないようで良かった。

 しかしもちろん、人によってはそういう人もいると思うので、

 

「又旅さんの希望を聞き入れて肉料理。でも少しでも食べやすくなるようにと考えまして、赤ちゃんにも安心な“サッパリ系特製和風魚肉ハンバーグ”を作りたいと思います!」

 

 さらに主食は栄養と食物繊維が豊富な“胚芽米”。

 副菜として“ほうれん草の胡麻和え”に、体の温まる“大根スープ”。

 お好みで“納豆”も付ける。

 

 

 女性。特に妊婦さんが起こしやすい貧血や便秘を改善するために、鉄分と食物繊維が豊富。さらに葉酸、カルシウム、DHAやEPAなどのオメガ脂肪酸にビタミンKなど、赤ちゃんの生育を助け、先天性の疾患のリスクを低減させる効果のある栄養素をしっかりと取れるように工夫を加えた。

 

 さらに、

 

「また今回使う出汁はカツオとシイタケで取ったお出汁。昆布には“ヨウ素”という人体には必要な栄養素が多く含まれているのですが、摂りすぎは赤ちゃんの甲状腺機能を低下させると言われているので今回は控えます」

「魚肉ハンバーグには市販の鯖の水煮缶が個人的なオススメ。魚は妊婦さんにとって必要なたんぱく質、DHA、カルシウムなどを豊富に含む良質な栄養源です。

 ただし注意したいのが水銀。有害な金属として有名ですね。普通に売られている魚ならまず問題なく、水銀濃度が高いとされている種類の魚も食べ過ぎなければ健康に影響はないそうですが、赤ちゃんのためには気をつけたいところ。その点鯖はメチル水銀濃度の低い魚の1種で、缶詰ならお手軽で保存も利きます」

 

 合間には摂取に注意すべき物の事も付け加えつつ作業。そして、

 

 “妊婦さんを応援する和風ハンバーグセット”

 

 が完成した! さっそく又旅さんに試食をお願いしてみる。

 

「いただきまーす。メインのハンバーグから……! 美味しい!」

 

 さらにスープや胡麻和え、ご飯も食べ進めていく彼女。

 出来は上々のようだ!

 

「なんだろう、複数の料理なのにこの一体感?」

「そのままでも食べられるように加工してある水煮缶の汁を、ハンバーグソースやスープにも使っています。水煮缶の汁に溶け出した旨味と塩分を活かせば、調味で新たに加える塩分を削減できますよ」

「そこまで計算してのサバ缶利用、御見それ致しましたっ! 画面の前の皆も一度作ってみるといいかもよ?」

 

 そして締めの挨拶をして、撮影は終わる。

 

「お疲れ様でした!」

『お疲れ様!』

 

 さーてお昼なんだけど、

 

「……今日の昼食は全員コレかな」

 

 次の撮影で働いてもらうためにも、もう一仕事しますか……

 作った料理を美味しいといって食べてもらえるのは嬉しいしな。

 

 見学者と撮影スタッフ全員分のハンバーグセットを作ることになった!

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