人身御供はどう生きる?   作:うどん風スープパスタ

298 / 338
297話 念願の……!

 起爆札の実験を終えて、次が今日の実験のメイン。そして俺が前々から知りたかった、“封印系”の術だ。霧谷君から受け取ったデータにはさわりとして、対象の力を封印して行動を一部制限する術が載っていた。

 

 さっそく次に見つけたシャドウで、簡易版から試してみようと思う。

 

「封印に簡易版とか複雑なのとかあるんですか?」

「俺も資料を読んだだけだけど、実際の封印に関わる部分と封印を補助して強化するような術式があるとする。そこには封印を成立させるための条件があって、逆にその条件をどうにかして崩してしまえば封印を解くこともできてしまう。それをさせないためのダミーやトラップなんかの妨害工作用の術式を組み込んでいくと、術者の魔力や術の制御能力といった力量が足りる限りどこまでも複雑化はできるんだそうだ。

 で、元々封印用の術はあったんだけど、初心者の俺がいきなりそれを使うには複雑だし魔力も多く使うから難易度が高いということで……補助や強化も他人からの解除への対策なんかも一切省いて、封印に必要最低限の内容をまとめた、効果は低いけど簡単で魔力も少なくて良い練習用の術をわざわざ用意してくれたみたいなんだよ。それが簡易版」

 

 ちなみに資料では封印の理屈が簡易版の“魔封じ”を例にざっくり説明されていた……

 

 魔術を使える魔術師(シャドウ)は魔力を持っています。

 魔術を使うための道具や方法は色々ありますが、術は魔力を使って発動します。

 つまり何らかの方法で魔力を使えなくなれば、魔術も扱えなくなります。

 そして相手の魔力に干渉し、魔力の使用や制御能力を阻害する術が魔封じです。

 ちなみに相手の魔力への干渉は、気功治療に近いイメージで。

 葉隠さんはエネルギーの扱いに長けているようなので、感覚を掴むのは難しくないと思います。

 

 注意!

 魔力のコントロールを阻害する方法は幅広い相手に使えて便利だと思いますが、敵対した相手の魔法を封じる方法はそれだけではありません。相手の体調を崩す術などで魔術を使用できないレベルまで集中力を乱す。極端な例を出すと魔力を使わず殴りかかって妨害することも相手と状況によっては可能です。

 

 封印について考えるときは固定観念に囚われず、相手をいかに抑え込むかを念頭に置くと良いでしょう。

 

「だそうだ」

「ワウン……?」

「殴りかかるのは封印なのかって? ……それが固定観念なんじゃないか? それに封印を守る機能と考えればアリじゃない?」

「あっ! 何かの封印を解こうとすると強敵との戦闘が始まるパターンってよくありますよね」

「そんな仕掛けができるのはもう少し先のことだろうけどな……おっ! シャドウが来たぞ!」

 

 それから実際に簡易版の封印魔術3種を使ってみたところ……

 

 ペルソナの魔法として“マカジャマ“、“ナイアーム”、“スケアクロウ”を習得した!

 

 効果はそれぞれ、マカジャマが“魔封じ”で魔法スキルと魔術の使用不能。

 ナイアームが“力封じ”で物理攻撃の威力半減、物理攻撃スキルの使用不能。

 最後にスケアクロウは“速封じ”。動きが著しく遅くなり、回避と逃走不可、攻撃の命中率低下。

 

 天田とコロ丸にも体験してもらったところ、

 

「なんですかこれ……すごく、力が抜けるっていうか、体が重いです」

「ワグゥウ……」

「なるほどな。体内の気が術で抑え込まれて、普段の体の力が発揮できないんだ。これが力封じと速封じか」

「先輩、これ早めに解いてもらえません?」

「ワンッ!」

「今敵が来たらヤバイと。了解」

 

 ある程度観察もしたし、解除用の魔術で封印を解く。

 あっ、今度は“クロズディ”って魔法スキルを習得した。

 

 ……いつも思うけど、ドッペルゲンガーのスキルって大半が“同じ効果の術・あるいは技が使えるようになってから(・・・・・)習得”するんだよな……まぁ魔法にはルーンがいらないというメリットもあるし、魔術は魔術で自由度が高いからこそ工夫ができるんだけどね。

 

 残念な面よりも良い面に目を向けて、さらに俺は実験を続けた……

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 11月30日(日)

 

 午前

 

 ~テレビ局~

 

「今は槍が中心で、槍と関係の深い八極拳と形意拳も教えてもらっています」

「武器を落としたら戦えない、なんてことでは生き残れませんからね」

「君ら何と戦っとんねん!」

 

 天田とアフタースクールコーチングのスタジオ撮影に参加した!

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 午後

 

 ~都内・ドラマ撮影現場~

 

 今日は例のドラマの撮影初日、なんだけれど……

 

「撮影は都内……確かに」

 

 都内であることに間違いはない。

 しかし、よりにもよってこの学校の校舎を借りての撮影かぁ……

 

 目の前にある校門には、大きく“私立秀尽学園(・・・・)”と学校名が掲げられている。

 

 この門構え。その先に見える校舎。

 ……間違いなくペルソナ5の舞台じゃないか!!

 

「葉隠様、やはりここが以前の通達に含まれていた」

「関係者は誰もいないと思いますけど、場所は間違いないでしょう」

 

 思わぬところでペルソナ5の舞台に踏み込むことになった。

 そのせいか? なんだかこの撮影……何かが起こりそうな予感がする!

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

「葉隠君入られまーす!」

「おはようございます!」

 

 スタッフさんに出演者の皆さんが集まるスペースに案内していただいた。

 挨拶をすると、あちらこちらから声が返ってくる。

 

「おはようございます」

「おっはー葉隠君」

「おはようございます。今日もよろしくお願いします」

 

 芸能界にもだいぶ慣れて、それなりに顔を合わせる機会の多いIDOL23の皆さんとは少し雑談をしたりもする。しかし今日はなんだか皆さんいつもよりも緊張気味なようだ。

 

「さすがにね」

「今日の仕事は大きいからさー」

「葉隠くんはいつも通りですごいね」

「どうしてそんなに落ち着いてられるんですか?」

「やっぱり慣れですかね……? 芸歴は皆さんより短いと思いますけど、そのぶんどんな仕事も現場も新鮮と言うか、色々ととりあえずやってみる感じの体当たりな仕事も多いですから」

「あー」

「葉隠君の場合はね……」

「ある意味いつも通りってことかー」

「後は格闘技でも冷静でいることが大切ですし」

「納得納得」

「お話中すみません、先輩方」

「おっと、呼ばれちゃった」

「また後でねー」

 

 不安そうな後輩に呼ばれ、先輩メンバーが相談に乗りながら去っていく。

 すると入れ替わりに久慈川さんと、Bunny'sの磯ッチに引きずられた光明院君がやってきた。

 

「おっすー虎、お疲れー」

「先輩おはよう! ほら、光明院君も」

「……よう」

「和解したんならもっと素直になれよ光~」

「うっせぇな!」

「ははは……おはよう、三人とも」

 

 久慈川さんはいつも通り。

 光明院君は先日のことが気恥ずかしい様子。

 それを磯ッチが無理やり引きずってきたのだろう。

 

「皆早いな? 初日だから俺たちもそれなりに早く来たつもりだったんだけど」

「お仕事の規模が規模だからね」

「やっぱりそうか」

「そりゃーアイドル業界一丸となっての特大プロジェクトだもんな」

「世間からの注目も桁違いだし、誰もちょっとしたミスでチャンスをふいにはしたくないだろ。念入りに準備もしたいし、早く来てる分には遅刻の心配もないし」

 

 普通の仕事でも遅刻は問題だけど、この業界だともっと大目玉だしな……あ、そういえば、

 

「今日はなんか、初めて見る子が多くない?」

 

 しばらく見ていて気づいた。Bunny'sにもIDOL23にも、いつものメンバー以外の姿がある。有名どころ以外の事務所に所属するアイドルも来ているらしいけど、それにしては距離が近い。

 

「? 聞いてないのかよ」

「聞いてないって何が?」

「あー……そういや虎んとこは虎1人だもんな。説明されてないんじゃね?」

「先輩。あの子たちはそれぞれの事務所のアイドル候補生だよ」

「候補生?」

「うん。各事務所のスクールとかでレッスンをしてる、まだアイドルに成れてない子たち。アイドル業界が全体で協力してる企画だし、後進の育成にも力を入れようってことで人数制限はあるけど見学が許されてるの。うちの事務所からも何人か来てるよ」

「へー、じゃあ“真下かなみ”さんとかも来てるのか?」

「ふぇっ? 先輩、かなみのこと知ってるの?」

「あっ」

 

 思わず言ってしまったが、直接の面識はない。

 

「久慈川さんの後にデビューして、次に売れるアイドルとして知ってる」

「なんだそれ? タクラプロで久慈川の後ってまだいないし、売れるかなんてわからないだろ」

「だから未来の話。先輩いつも突然そういうこと言うの。……でも先輩がそういうこと言って今のところハズレてないんだよね……」

「うっそマジで!? マジ預言? 俺も占ってくれよ」

「いいけど売れないって出たら磯ッチはどうする?」

「えっ、売れねーの?」

「いや、それは占ってみなきゃわかんないし、たとえ結果が悪くても努力次第で改善もできるだろうけど」

「私の事は占わなくても色々言ってるのに?」

「あー……それは何と言うか……ごくたまに占わなくてもいいというか、意識しなくても見えるというか、人によっては元々知っていたように情報が思い浮かぶ相手もいるんだよ。久慈川さんと真下さんはそのタイプ」

「ふーん? 喜んでいいのかな?」

 

 話を変えよう……

 

「でもそうか見学か……許可されるなら天田を連れてきても良かったかもな」

「誰だそれ?」

「……もしかして前にうちの事務所見学に来てた小学生か?」

 

 おっと、光明院君覚えてたのか。

 

「そうそう。部活の後輩なんだけど、さっきまで俺と一緒にアフタースクールコーチングの撮影に参加してたんだよ」

「えっ! 私一度会ったことあるけど、天田君も芸能界入りするの?」

「本格的にやるかどうかは分からない。とりあえず番組が単調で面白みが薄くならないように、プロデューサーのテコ入れってことで一度参加してもらったんだけど、撮影中の雰囲気やプロデューサーの反応も悪くなさそうなんだ。本人も楽しんでやってたし」

「まぁ、素質はあるんじゃねぇの」

「おっ? 光がそこまで言う子なのか」

「別に。木島プロデューサーがスカウトしたなら最低限は何かあるんだろって話だよ。それにほら、最近は“アレ”だし」

「あー」

「アレかぁ……」

「アレ? 何だアレって」

 

 3人だけ理解していないで説明して欲しい。

 

「えっ、先輩知らないの? 今芸能界では空前の“素人ブーム”が来てる! って噂だよ?」

「なんじゃそら……素人がブームなの?」

「むしろなんで虎が知らないんだよ」

「お前が火付け役だろ?」

「俺が!?」

「昔からクイズ番組とか素人さん参加型の番組は一定の需要があったらしいし、最近は動画サイトも一般的になってきたのもあるかも、って井上さんが話してたよ」

「木島プロデューサーも似たようなこと言ってたな……“今でこそ一流アイドルグループのIDOL23も、元々は素人からのオーディションで選ばれたメンバーがレッスンを受けて少しずつ成長していく姿を売りにしていた。視聴者は型にはまらない意外性や同じ素人的存在との共感を求めているのか”……とかなんとか」

「で、今ブームが来てる原因は何かといえば、やっぱ虎じゃね? なんと言っても今年テレビを散々騒がせた素人なんだし」

「否定はできないな……」

「とにかくそういうわけだから、本人や先輩たちが断らないなら出演依頼は今後もあると思うな。なんと言ってもブームを起こした張本人とその弟子みたいな位置にいるんだし」

「……改めて近藤さんと話し合ってみるよ」

 

 知らないうちに謎のブームを生んでいた……




影虎はようやく封印系の術の知識を得た!
新たに“マカジャマ”“ナイアーム”“スケアクロウ”“クロズディ”を習得した!
影虎と天田はアフタースクールコーチングのスタジオ撮影を行った!
影虎はドラマ撮影の初日を迎え……秀尽学園を訪れた!
影虎は撮影前に共演者と交流した!
謎のブームの存在を知った!


※新魔法スキルまとめ
マカジャマ  魔封じ ステータスの魔力半減、魔法スキルの使用不能。
ナイアーム  力封じ 物理攻撃の威力半減、物理攻撃スキルの使用不能。
スケアクロウ 速封じ 回避と逃走不能、動きが著しく遅くなる。攻撃の命中率低下。
クロズディ  封印解除
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。