~校舎裏~
気になることはあったものの、それはそれとして仕事もある。
今回のプロフェッショナルコーチングでは、また中国武術基金会の先生が来てくださるらしい。
一体どんな先生なのか、いつものようにカメラの前で先生を呼ぶと……
『ヤー!!!!』
「うわっ!?」
突然大勢の男性たち。
それも頭を剃り、いかにもな衣に身を包んだ僧侶系の方々が一斉に駆け上がってきた!
しかも彼らはたくさんの道具を持ち込んでいて、そのままパフォーマンスが始まる。
ある人は両手で持ったレンガを頭に叩きつけて割る。
ある人は重そうなハンマーを勢いよく振り下ろされる。
そしてまたある人は全身の各所を槍で突かれ、その部位を支えとして高く持ち上げられた。
そして一通りパフォーマンスが終わると、彼らは1人を残して一斉に去っていく……
残されたのは槍で全身を突かれていた男性。
そんな彼がそっとこちらへ近づいてくる。
「はじめまして、私は
「はじめまして、葉隠影虎です。こちらこそよろしくお願いします。呂先生。
早速ですが、今回教えていただけるのは……」
「私が教えるのは“地功拳”です」
中国語で詳しい説明を聞いてみると……
地功拳は変則的故に読みづらく、敵を巻き込めば倒れることそのものが強力な攻撃となる。急性硬膜下血腫や内臓破裂、死に繋がる転倒事故が多いことからもその威力は分かるだろう。
またその特徴的な動きが目立って見られるが、他の中国拳法や格闘技と同じく立って戦うことも考慮されている。習得は難しいが非常に有用な拳法であると呂先生は語る。
ただし、
『ここまで地功拳のメリットを説明してきたけれど、地面の上に倒れる・転げまわるという行為は修行者の体にも負担をかけ、1つ間違えば大怪我をしてしまう。それを防ぐために地功拳には高度な受身技や呼吸法。骨や皮膚まで鍛える鍛錬法。肉体の防御力を高める様々な技術が伝えられている。
君は既にかなり鍛えられているとは聞いているけれど、君の対戦相手はかなりのパワーと破壊力を持った巨漢だとも聞いている。地功拳を“正しく”学ぶことは怪我の防止に繋がるし、さらに防御力・耐久力を磨いて試合の役に立てて欲しい』
呂先生から地功拳を学ぶ。
そして対ウィリアムさんのために防御力を高める特訓が始まった!
……
…………
………………
夜
~駐車場~
「お疲れ様でした」
「近藤さんも、お疲れ様です」
撮影そのものは滞りなく終了。
解散後、速やかに合流して車に乗り込む。
「卒業式の件ですが、生徒会のお2人からも話を聞きまして、正式に引き受けることになりました。今日は大まかな内容と条件のみで、細かい部分は後日詰めるという話になっています。他に緊急の用もできてしまいましたので」
「ありがとうございました。そして緊急の用もあるのに仕事が早い。で、目高プロデューサーの言う上層部について、何か分かりましたか?」
「木島様や井上様に確認したところ、Bunny'sや久慈川様の周囲には今のところ異常なし。ただサブ課題の件はやはり彼らからしても“指示が強引で違和感がある”と。目高様から具体的に今回のサブ課題を立案した人物を教えていただけたので、そこから指示の出所を可能な限り探ります。
現時点でまだハッキリとした事は言えませんが……私個人の印象としては、愛と叡智の会が関与している可能性は高いかと」
「手口のゴリ押し感というか、妙に大胆というか。光明院君の件と似た印象を覚えますしね……一般人に見えない霊を使えるから、バレないとでも思ってるんでしょうか?」
「確かに霊や呪いは一般的にオカルト扱い。明らかな恐喝や詐欺のような事実がないとすれば法的に裁くのも難しいでしょう。愛と叡智の会は芸能界だけでなく、芸能界と切っても切れないテレビ局、そして出版業界にも手を伸ばしているようですから、そちらの権力もあるのかもしれませんね」
テレビと雑誌、下手をしたらほとんどマスコミ全体に影響力があると言うことになる。
何があってももみ消せる自信があるのか?
いや、人を操って実行犯に仕立てられるなら、どんなに捕まっても構わない……?
「そういえば、仮に愛と叡智の会が関与していたとして、何が目的なんでしょうか?」
光明院君の件を邪魔したことに気づいているなら、警告かとも思った。
だが、それでセンター試験を受けさせるなんて、回りくどい上に弱い。
邪魔をするなと脅しをかけるなら、もっと直接的な手段がいくらでもある。
それこそ操った第三者にやらせれば手を汚すこともないだろう。
だいたい光明院君の件にしても、彼を追い詰めてどうするつもりだったのか?
生徒1人分の月謝を増やすためにしては大掛かり過ぎる。
おまけに学習塾の名前を出して警戒させようとしているなら、連中は最低でも“俺たちが山根の経歴や学習塾との関係まで把握している”ということまで把握していることになる。
「その可能性は?」
「相手が我々と同じく常識外の力を使う以上、絶対とは言い切れません。しかし情報管理は徹底していますし、調査を担当する人員には定時連絡と定期的な精神鑑定。葉隠様が作った護符の携帯も義務付けてあります。そう簡単にこちらの情報が漏れるとも思えません。光明院君と山根に憑いていた霊の除霊なら、露見している可能性もありますが」
「そうなると注意が必要なのは、勉強を口実にして“塾に誘われた時”。もしくは“塾から誰かが派遣されてきた時”ですかね?」
「それが……私もその可能性を考えて目高プロデューサーに聞いたところ、申し込み手続きは必要情報さえ伝えれば塾の方で処理すると。また、試験当日は問題をスタッフさんが預かり、月光館学園で教室を1つ借りて試験を行うそうで……我々と例の塾が直接関わることはなさそうです」
「直接関わってこない? 人が送り込まれることも?」
「ええ、今のところは。ひとまず警戒を強めて情報を待ちましょう」
そうなると本当に何が目的なんだか……
緊急用に外見を人や動物にした召喚シャドウでも作っておこうか……
「いい案ですね、防犯用にも工作用にも。できますか?」
「霧谷君のおかげで能力が全体的に向上しましたからね。当然シャドウ召喚も強化されているので、テンプレートさえできていればある程度複雑な姿にもできそうです。大量生産しつつ変化もつけるとなると無理が出るでしょうけどね。
たとえば……黒服に黒サングラス、耳に通信用のイヤフォン。要人警護のSP風で“エージェント”なんてどうでしょう?」
モデルは映画“マトリックス”のエージェント・スミス。
ほかにパッと思いつくのは映画繋がりで“ターミネーター”とか。
その後、Be Blue Vに着くまで俺たちは緊急用シャドウについて話し合った。
……
…………
………………
夜
~アクセサリーショップ・Be Blue V~
「最初に言っとくと、“幽霊=怖い”っていうのは間違いだ。もちろんヤバイ奴とか迷惑なやつもいるけど、霊の中には守ってくれる“守護霊”や才能を導いてくれる“指導霊”。あとは“背後霊”とかも悪く言われることが多いけど、実は守ってたりもするんだ」
「そうなんだ……」
久慈川さんと合流し、近く行われる心霊ロケに向けての勉強をした!
棚倉さんの話は霊の種類、主に危険のない霊についての話。
おかげでまた少し、久慈川さんの恐怖も薄れたらしい。
俺も音楽ではトキコさんにお世話になっている。
出会いは少々アレだったけど、今日の話は非常に納得できて有意義だった。
!! 直接話したわけじゃないのに……トキコさんとのコミュがちょっと上がった!
……
…………
………………
深夜
~自室~
「……」
本部の物質研究者、エイミーさんから送られてきたデータを頭に叩き込み、さらに熟読。
内容は主に以前サンプルとして送っていた、“古びたランタン”について。
主成分は鉄。それ以外に含有されている金属、その割合、量、etc……とにかく細かい。
含まれている物質それぞれについて、専門的な説明も依頼していたため、情報量は膨大だ。
それでもアナライズを活用することで、何とか理解できるようになる。
これでまた1つ、実験の準備が整った。
……
…………
………………
影時間
~タルタロス・33F~
黒スーツとサングラスを身に着けた、まったく同じ顔の男たちが道に広がり歩いていく。
統率された行進の先にいたシャドウは、数の暴力で駆逐される。
対人&身辺警護用シャドウ・“エージェント”
与えたスキルは警戒、体術の心得、吸魂、変声の4つ。
影時間だけなら邪気の左手も与えられたけれど、日中行動可能にするとこの4つが限界。
できればさらに召喚も加えて、エネルギー吸収からのエージェント召喚。
その繰り返しで映画の100人スミスを見たかったのだけれど、まだ実現には遠い。
体術の心得や吸魂は1つのスキルで実質2つ分。能力が向上していてもコストが重かった。
しかし体術の心得だけでも、この階層のシャドウを倒せるので護衛として問題ないだろう。
さて、もうそろそろ……
「古びたランタンは集まった。エントランスに戻ろう」
『Sir,Yes,Sir』
シャドウを集めてエントランスへ移動する。
ちなみに変声スキルをシャドウに与えると、命令すれば言葉を話させることができるらしい。
会話はできないが、変声スキルにそんな効果があると今日はじめて知った。
……
…………
………………
~エントランス~
「材料の古びたランタン、よし。魔法陣、じゃなくて
事前に描いた錬成陣の中央へ古びたランタンを1つ置く。
今日の実験は、“鋼の錬金術師”の錬金術をルーン魔術で再現すること。
これは先日ドッペルゲンガーからもたらされた可能性の1つ。
錬金術の工程は理解(Understanding)・分解(Disassembly)・再構築(Rebuilding)だ。
ルーンに置き換えた3つの要素を円の中に描いた正三角形の頂点へ配置。
中心に据えるのは
サンプルを分析したデータ、叩き込んだ知識を基にして。
質量保存の法則に基づいて、複雑な計算もアナライズを活用してクリア。
ルーンの力で式を実行すれば?
……手順を確認し、成功を思い浮かべて、錬成陣へそっと魔力を流す。
すると、
「……」
魔力を込めて数秒後。
アニメで見たような輝きは無かった。
しかし、サラリ……と微かな音をたててランタンが崩れる。
まるで最初から砂でできていたように、微細な粒子へ
それは再び中心へと集まり、やがて3膳の箸へと変化した!
「っし! 成功!」
陣の上には金属製の箸が3膳と、散らばる微細な粒子。
今回の構築式で使ったのはランタンの鉄の部分だ。
ランタンを構成していた材質のうち、一般的な鉄以外の部分はそのままなのだろう。
「とりあえず形状変化には成功、と。サンプルとして送らなきゃ」
複数の物質から何かを合成することはまた別として……少なくとも金属加工ができた。
アクセサリー作り、ひいてはアイテム作りの役に立ちそうだ!
影虎は地功拳を学ぶ事になった!
サブ課題への違和感が強まった!
トキコさんとのコミュが上がった!
影虎は古びたランタンを始めとした物質の勉強をした!
影虎は新たな召喚シャドウ“エージェント”を作り上げた!
影虎は新たに“錬金術(金属加工・形状変化)”が使えるようになった!