人身御供はどう生きる?   作:うどん風スープパスタ

303 / 338
302話 近況報告

 12月2日(火)

 

 朝

 

 ~職員室前~ 

 

 入り口のドアに、

 

 “試験前のため生徒の入室制限中”

 “用のある生徒は扉を開けてその場から声をかけること”

 

 という札がかけられている。

 

「失礼します。宮原先生はいらっしゃいますか?」

「ん~? 誰かと思えば1年の葉隠じゃないか。宮原先生だね? ちょっと待ってな」

 

 化学の大西先生。

 メガネを拭いていたようで、一瞬誰だか分からなかった。

 

 しばらく待つと、先生が戻ってくるが……宮原先生の姿はない。

 

「悪いけど宮原先生はどこか行ってるみたいだ」

「そうでしたか」

「伝言ですむ用件なら伝えておくよ?」

 

 どうしようか……

 

「少し長くなってしまいますが、大丈夫ですか?」

「授業までに終わるならいいよ。今は手が空いているからね」

 

 ありがたいお言葉をいただけたので、簡潔に昨日のサブ課題について説明。

 

「1年生に志望校T大でセンター模試A判定とは、また無茶な課題を出されたもんだね」

 

 大西先生は驚きを通り越して呆れた様子だが、無理もない。

 職業柄、毎年苦労している多くの生徒を見ているのだろう。

 

「みっちり勉強した2,3年生でも、泣く泣く志望校を変えざるを得ない時もある。それを2週間でなんて、ハッキリ言って無謀だよ。無謀」

「難しいことは重々承知しています。しかし、与えられた以上は全力で取り組むしかないので。少しでも可能性を高めるために、先生方のお力を貸していただければと」

「芸能人ってのも難儀だねぇ……まぁいいけど、具体的に何をしてほしいんだい?」

「情報を」

 

 課題達成のために、俺はいったい何をすべきなのか?

 もちろん勉強ではあるが、俺には2週間しか時間がない。

 より効率的に、無駄を省いて勉強するしかない。

 そのためには試験のポイントや対策をよく知らなくてはならない。

 そして毎年生徒を送り出している学校には、長年蓄積したデータがあるはずだ。

 

「月光館学園が2,3年生用に用意しているセンター試験対策、T大入試に関する情報を。あとは2,3年生用の教科書や資料集も予備があれば貸していただけると助かります」

「堅実かつ王道だね。分かった。とりあえず宮原先生には伝えとくし、他の先生方にも声をかけてみるよ。……教えていいんだよね?」

「はい。今回のサブ課題は外部に秘密にしなくても良いことになっていますから」

 

 先生方に協力を求めるのはもちろん。

 上級生に協力を求めてもいいし、同級生に事情を話し邪魔をしないよう頼むというのもアリ。

 とにかく勉強して結果を出すことを目指せということらしい。

 目高プロデューサーも話していたが、テレビとしての面白さを度外視している気がする。

 

 企画なのに……とは思うが、ルールがそうなら俺は自由に最大効率を求めるだけだ。

 

「じゃあ伝えとくよ。それから教科書や資料集は図書室に全教科全学年分あるはずだから、そっちで借りるといいよ」

「ありがとうございます! よろしくお願いします」

 

 お礼を伝えて、教室へ戻る。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 昼休み

 

 ~図書室~

 

 静かに利用するのが常識だと思うが、図書室は思いのほか騒がしかった。

 もちろん大声で叫ぶような人はいない。

 しかし試験前のため利用者が多く、本をめくる音や椅子の音といった些細な音も多くなる。

 そして何よりも……

 

「ねぇ見て、あの子」

「あの子って、1年の葉隠君だよね?」

「そうだけど、持ってる教科書も見て」

「教科書? ……あれ? 何で私らと同じ2年の教科書読んでるの? 積み上げてる方には3年の教科書もあるし。つか読むの速っ、アレ頭に入ってるの?」

「それがさー、聞いた話だと……」

「……うっそ、1年でセンター模試?」

「らしいよ。将来のために1年で受ける子は他にもいるらしいけど、葉隠君は企画で、しかも準備期間がたった2週間なんだって」

「うっわ、かわいそ~……つか試験期間と丸かぶりじゃん、勉強できんの?」

「次の試験はもう余裕としても、あたしなら絶対嫌だわ」

 

 このように、俺のサブ課題の件が早くも広まっていて、小声で噂されている。

 あまり居心地の良い空間ではないので、早く記憶して話しかけられる前に立ち去ろう。

 

 それからさらに集中し、2,3年の教科書と資料集を一気に記憶した。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 放課後

 

 ~部室~

 

 昨日と同じく、勉強会メンバーが全員集合。

 もう聞いているとは思うが、改めて皆にはサブ課題の件を説明しておく。

 

「――というわけだ」

「噂は聞いてたし、もう散々言われたと思うけど、大変だね。そうとしか言葉が出ないよ」

 

 島田さんの言葉に皆も同意している。

 

「正直俺も色々と思うことはあるんだけど、テレビ局のお偉いさんの指示らしくてな……断ると最悪の場合、俺は良くてもお世話になってるプロデューサーが“干される”なんてことにもなりかねないらしい」

「うへぇ……」

「権力者による横暴か……ままあること、とも言えるが……私も気をつけねばな……」

「学校の試験勉強と平行してセンター模試対策もやっていくんで、皆にもご協力お願いします。

 あと、今度そのお世話になってるプロデューサーが勉強会の様子を撮りたいって言ってるんだけど、皆はカメラNGだったりする? ダメならダメで気軽に言ってほしい。まだ最低でも数日は先のことだから、スケジュール調整もできるし」

「つーか、俺ら世話になってて大丈夫なのか……?」

「今更だろう。いや、せっかくだから何か奢ってもらうか」

「そのくらいなら全然いいぜ! ……常識的な範囲でな」

「順平、なんかセコい」

「ゆかりっち酷い! てか影虎の食事量考えたら仕方ないじゃん!」

 

 相変わらずの順平から笑いが広がり、暗い話題が払拭される。

 しばらく笑って、皆と勉強を行った。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 夕方

 

 ~校舎裏~

 

『話には聞いていたが……』

 

 呂先生による地功拳の指導は、彼の予想をはるかに超えてスムーズに進んでいる。

 

 俺の感想としてはアクロバティックな動きの格闘技はカポエイラで慣れていた。

 肉体の耐久力は空手の鍛錬に似たようなものを感じた。

 加えてこれまでの経験だろうか?

 初めての拳法なのに、驚くほどに体に染み込んでいくように感じる……

 

 地功拳の基本動作と基礎鍛錬を習得した!

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 夜

 

 ~ポロニアンモール~

 

 Be Blue Vでの心霊ロケに向けた勉強会の帰り道。

 今日は仕事の都合で久慈川さんが不参加。

 それを見た岳羽さんから珍しく、途中まで一緒に帰ろうと声をかけられた。

 

 どうやら何か話したいことがあったらしいが……

 

「お邪魔をしたようで、申し訳ありません」

「お邪魔とか別にそんな。人に聞かれて困るような事とか、これっぽっちもないですから」

 

 先日のサブ課題の件を警戒して、なるべく単独行動は避ける。

 ということで、今夜は近藤さんが迎えに来ていた。

 

「申し訳ないですが、見失わない程度に少し距離を置いてもらえますか」

「ちょ、何言ってんの葉隠君」

「かしこまりました」

 

 近藤さんは俺の意図を察して、少し離れて後をついてきてくれる。

 さらに盗聴防止の魔術を使用。

 

「近藤さんはプライベートにちゃんと配慮してくださるから。それより影時間に関する話でしょう?」

「あ、うん、やっぱ分かる?」

「少なくともデートとか色気のある話で声をかけられる覚えはないからね」

「あたりまえだっつーの」

「だとしたら影時間の話しかない。で、何があった?」

 

 改めて聞くと、彼女はため息を吐いて簡潔に話した。

 

「先週から影時間を感じるようになったのと、昨日は巌戸台分寮への引越しが終わって、桐条先輩から私専用の召喚器を渡された」

「へぇ……銃の形で怖いと思うけど、使ってみたか?」

「使ってみた。やっぱ怖かったけど、事前に教えてもらってたからなんとかね。てか、逆に教えてもらってなかったらまだ無理だったかも……桐条先輩から事前にその辺の説明なかったからさ。もう少し情報共有しろっての」

「ははは……」

 

 桐条先輩の秘密主義には不満があるようだけれど、愚痴ばかりでは時間がなくなる。

 結局ペルソナは召喚できたんだろうか?

 

「そうだった。召喚は成功で、葉隠君の言った通り“イオ”だったよ。能力も弱点も、全部情報通り。先輩たちには褒められた。初日で成功させたし、回復が得意なタイプは心強いって。あとは攻撃魔法も2人とは違う属性だから、戦略の幅が広がるって」

「戦略以前にまだ人が少ないと思うけど、それでも1人増えただけマシか」

「人数の少なさについては、うん。先輩たちもぼやいてた。先輩たちの目的はやっぱりタルタロスの攻略だけど、まだ危ないから行かない。せめてシンジが戻ってきてくれれば……だって。荒垣さんもペルソナ使いだったらしいね」

「ペルソナの名前は“カストール”。物理に特化したパワータイプのペルソナだ。味方なら心強いぞ」

「情報持ってたんだ」

「それなりには。心配しなくても仲間はじきに揃うから、岳羽さんは仲間についてあまり聞かない方がいいと思う。知りすぎていると逆に怪しまれるかもしれない。そもそもまだあちらが把握すらしてない人もいるから」

「なるほどね。了解。あとは……そうそう、真田先輩が今日から影時間に強化訓練やるみたい」

 

 強化訓練?

 真田は元々影時間にランニングとかトレーニングをしていたはずだけど、それとは別に?

 

「ほら、影時間って普段より疲れるじゃない?」

「そうらしいな」

「そんな環境でさらに戦闘もとなると、もっと体力の消耗が激しくなる。だからそれに耐えて戦えるようにって事みたい。ただ結局のところやる事は普通のトレーニング。っていうか機械とか止まっちゃうからそれしかできないらしいけど。……最近の状況はこんな感じ。また何かあったら教えるよ」

「情報ありがとう。代わりに何か知りたい情報はあるか?」

「回復魔法について教えてもらえる? 先輩たちに期待されてるし、自分の得意分野みたいだし、何より安全のために知っておきたいの」

「了解。入手しやすい回復アイテムもあるから、それも併せて教えよう」

 

 岳羽さんと情報交換をした!




影虎は教職員に協力を求めた!
影虎のサブ課題が噂になった!
影虎は全学年の教科書・資料集を暗記した!
影虎は勉強した!
影虎は地功拳の基礎を習得した!
影虎は岳羽と情報交換を行った!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。