人身御供はどう生きる?   作:うどん風スープパスタ

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314話 友達紹介

 ~某ホテル~

 

 撮影スタッフさんたちと別れ、アメリカチームが滞在する高級ホテルへ移動。

 一泊百万円以上。トイレやお風呂は当然別。なぜか螺旋階段に2階までついている。

 

 ウィリアムさんたちがそれぞれ自分の部屋で荷物を整理している間、信じられないほど豪華なスイートルームのリビングで、Mr.コールドマンが皆を代表して色々と教えてくれることになった。

 

「まずは何から話そうか?」

 

 聞きたいことはたくさんある。

 順番にウィリアムさんの変化から聞いてみよう。

 

「一言で言うとペルソナの影響だね。報告では君も色々と体に変化が起きているだろう?」

「確かに。それが彼にも?」

「彼だけじゃなく、ペルソナ使いには共通して体力や運動能力の向上が見られる。向上率には個人差はあるが……ウィリアム君は足が元通り以上に動くと話していた。格闘家として再起は可能でも、僅かな違和感はあったのだろうね。他の皆もペルソナを得てから健康になったと感じるそうだ。

 我々はこの現象を、ペルソナ使いが影時間での活動や戦闘に適応できるように、無意識下で肉体を調整(・・・・・・・・・・)しているのではないかと考えている」

 

 なるほど……ん? そういえば、

 

「ウィリアムさんのインパクトが強くて霞んでましたが、ボンズさんも前より力強くなった気がするんですが」

「ああ、その報告は聞いていなかったか……夏に入手した黄昏の羽根の調査中に覚醒してね、今では彼もペルソナ使いだ。

 ペルソナの名前は“ヘーリオス”、アルカナは“太陽”なんだが……外見が完全に戦車でね、夏に君の父、龍斗が一時覚醒させた“イダテン”に続く、2例目の乗り物形のペルソナさ」

「ボンズさんまでペルソナ使いに……」

「そのことだが、新しいペルソナ使いは彼だけじゃない。保護していた夏の事件の被害者から、覚醒した者が1人。ペルソナは使えないが影時間を知覚できる者がさらに3人発見されている。今は全員、我々の一員として働いてくれているよ」

「色々とやっていると聞いていましたが、まさかそんなに適性のある人が増えていたとは……」

「ああ、日本に伝わっているのは全体の、ほんの一部だろう。すまないね、基本的に秘密裏に物事を進めているものだから。特に研究部門ではかなりの成果が出ていてね……残念なことにデータを盗んで自分のものにしようとした人間が早くも出てしまった。だから情報管理を厳にしているんだ」

「要請した情報に就いては開示していただいているので、今のところ困ってはいませんが、

 話せるものは話してもらいたいですね。あとそのデータを盗もうとした人は? 問題は?」

「件の研究員は不審な気配を察知した同僚が現行犯で捕まえた。データは無事。研究員は問題がないように“処分”した。もちろん生きてはいるが、今後我々の研究に携わることはないだろうし、外部に情報を漏らす事もないだろう。そこは安心してくれたまえ。

 そしてもちろん君には研究成果を開示する。この日本滞在中にエイミー女史から説明を受けてくれたまえ。技術的な話は彼女の方が適任だからね」

「ありがとうございます。では、次に……なんでエリザベータさんが一緒に?」

「次の映画の舞台が日本らしくてね。撮影が終わるまでは日本を拠点にすることになったらしい。たまたま私が日本に行くと話したら、ついでに乗せて行けと言われたのさ。空港でも言ったけれど、この件について私は何もしていない。君の言う“コミュ”の影響ではないかと考えているが、そこのところどうかね?」

 

 俺とのコミュがあるせいで彼女が日本に来ることになった可能性……

 

「ないとは言えませんが……関係を証明する手立てはないですね」

「確かに。客観的に見れば偶然が重なった結果だが、君の事情を知る身としては……今考えても仕方のないことか。それよりコミュは我々との間にもあるそうだね?」

「確かに感じます」

 

 アメリカの人が関わっているコミュは4つ。

 

 まず、アメリカチーム全体で“太陽”。そして個別に、エリザベータさんの“女帝”、Mr.コールドマンの“正義”、アンジェリーナちゃんの“死神”だ。

 

「私が正義か……選ばれる基準は何なのかが気になるが、それよりも絆、双方の関係が力になるのならば、お互いが近くにいた方が何かと便利だろう?」

 

 メールのやり取りでも力が強まったこともあるけれど、確かに会えるなら会えた方がコミュは上がりやすいかもしれない。しかしそれをなぜ今?

 

「それはだね……」

 

 Mr.コールドマンから、様々な思惑を含んだ話を聞く……

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 放課後

 

 ~部室~

 

「というわけで、やってきました」

『どういうワケ!?』

 

 アメリカから来た10人を連れて、勉強会中の部室へやってきた。

 

「アメリカから友人来た。皆に紹介したい。あと今度日本の学校に通うことを検討しているから、学校を見学したい。OK?」

「なんで片言なのよ……」

「事前に連絡を受けた時にOKはしたが、まさかコールドマン氏まで一緒とは」

「初めまして、ミス桐条。君のお父様には何度かお会いしたことがあるよ」

「お会いできて光栄です。ミスター」

「なんだか珍しい光景。あの桐条先輩が畏まってるぜ。それにコールドマンさんって穏やかそうな人だな。俺もっと頑固そうだったり怖そうな人かと思ってたぜ」

「ははは、若い頃は君の想像通りだよ。あの頃は私も尖っていたから」

「うぉっ!? 聞こえてた……」

「馬鹿ミヤ! 初対面で失礼しました!」

「いいんだよ、Ms.宮脇」

「ありがとうございます。って私のこと」

「お友達の話、タイガーから聞いてマース」

 

 そう言いながら前に出たカレンさん。

 3児の母とは思えないスタイルと美貌にほとんどの男女が息を呑むのが分かった。

 

「……スッゲー美人」

「順平さん、鼻の下が伸びてますよ」

「いやいや天田少年! これはむりからぬことでしょう!」

「は、ハロー! マイネームイズトモチカ! えっと、よろしくおねがいします美人のお姉さん!」

 

 順平はともかく、友近……その度胸は買うけど、その勢いに相手は面食らっているぞ?

 あと日本の女子の目が一瞬で冷え込んだことに気づけ!

 いや、気づかないほうが幸せか……?

 

「ぷっ、アハハ! 私みたいなオバサンに美人、言ってくれる良い子デスネー」

「えっ!?」

 

 笑いながら友近にハグをするカレンさん。

 アメリカでは挨拶程度なんだろうけど……オーラを見るに確信犯か。

 

「……」

「……」

「ちょっ、ともちー、友近君!? 岩崎さん──」

「何だよ順平、理緒は」

「とSPみたいな人がめっちゃ睨んでるぞ!?」

「どうでも、って、SP? ……えっ」

 

 目が合う2人。

 ジョージさんは相変わらずのスーツにサングラス。

 間違えるのも無理はないが……

 

「あー、友近? カレンさん、既婚者だぞ。あとそのSPみたいな人が旦那さんのジョージさん」

「あっ」

「ともちー、やばくね?」

「アハハハ! 大丈夫デース。ハグは挨拶! ジョージも睨んでいるわけではありません。ただのジェラシーね。私が若い子の方にいくと思って心配しましたか?」

「…………」

「やめんか、いい歳をして恥ずかしい」

『若い子を弄ぶんじゃないの』

 

 無言の夫に絡んでいくカレンさん。

 そのいちゃつき具合に、ボンズさんとアメリアさんから掣肘が入った。

 そして友近は……

 

「……」

「燃え尽きてる……」

「ごめんなさいね、うちのママが」

「えっ! ううん! いいよ、友近の自業自得……だから」

「ううん。明らかに悪ノリしてたから……あ、ごめんなさい。私はエレナね。エレナ・安藤」

 

 今度はエレナが岩崎さんに声をかけ、女子の輪に入っていく。

 

「でもあれは無理もないかな~、エレナのお母さんって凄く美人だし」

「あれで3児の母とか信じらんないよね」

「本当、20歳前半って言われても信じちゃうかも」

「あ~、そういうの本人に言わないでよ。最近うちのママ、エドガワが作った薬で肌の調子が若返ったからって調子に乗りすぎなのよ」

「え゛っ?」

「今、江戸川の薬って言った?」

「言ったけど……そういえばエドガワはこの学校で先生やってるのよね? 今日もいるかしら」

「えっ、マジでうちの学校の江戸川なの!? その薬!?」

 

 島田さん、岳羽さん、山岸さん。高城さんに西脇さんまで、皆驚いている。

 江戸川先生の薬は評価が低すぎる……

 

「っと、天田? どうした?」

「先輩、そろそろ話を戻したほうがいいんじゃないんですか? じゃないと僕が延々通訳させられます」

 

 天田の視線の先を見ると、和田と新井にウィリアムさんの3人が、それぞれ自国語で話して通じていないようだった。

 

「ああ、そうだな……皆注目ー!」

 

 部室中の視線が俺に集まる。

 

「話を戻すが、来年からエレナ、ロイド、アンジェリーナの三人が日本の学校に通うことを検討している。そこで皆には手分けして、それぞれ小等部、中等部、高等部の案内をして、色々と教えてあげてほしいんだ。申し訳ないことに俺はこの後、いつものようにアフタースクールコーチングの撮影があるから」

「ふーん。ま、そういうことならいいんじゃね? な、皆」

「おう! 丁度勉強にも一息入れたかったとこだしな!」

 

 そういうタイミングも狙っていたが、ノリのいい順平に宮本も乗ってくれた。

 さらにMr.コールドマンの登場と話術も駆使し、試験前だけど少しはいいかなという空気に誘導。

 

 最後に、とどめのひと押し。

 

『アンジェリーナ、彼女たちが案内してくれるってさ』

「……あり、がと……お姉様?」

『!!』

 

 女子の心に万能属性のダメージ!

 

「なにこのかわいいいきもの」

「これは断れないわ……」

「お姉様……たまにそう呼んでくる者もいるが、年少者に言われるのとはやはり違うな」

 

 アンジェリーナは島田さん、高城さん、そして桐条先輩すら魅了したようだ。

 少数派かつお世辞にも勉強好きとは言えない男子たちは元から案内に乗り気。

 もはや案内をする、ということは決定事項になった!

 

 そうと決まれば小等部、中等部、高等部チームに分かれて見学してもらう。

 

 これでひとまず俺は任務完了(・・・・)

 

 あとは()に向けての仕込みをしておかないと……

 アメリカチームの合流は頼りになるし嬉しいが、これまでとは別の方向で忙しくなりそうだ。




Mr.コールドマンから話を聞いた!
影虎はアメリカチームを学校に連れて行った!
アメリカチームは影虎の友人と接触した!
影虎は何かの任務を受けていたようだ……

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