午後
~Craze動画事務所~
「ステージのセトリはこれで決定ね?」
「楽曲は俺が参加できる場合とできない場合で一部変更になるけど、大体は共通になってる」
「このくらいなら特に問題ないよね」
「私もこの歌、好き……」
「問題はこの空白部分だな……」
「大丈夫よジョージ。少しトークして、その場で話に出たり、ネットでリクエストがあったりした曲を演奏したりするだけです」
「つまりアドリブの部分があるわけだな」
「その不安は分かりますが、その辺は又旅さんとか司会の方がフォローしてくれますよ。もちろん俺も参加できる状態ならフォローしますから」
「それより決まっている曲の方を練習しましょう!」
スタジオを借りて、Cステージに向けての合同練習を行った!
……
…………
………………
深夜
~超人プロジェクト日本支部~
大変なことになった……いや、ガチで。
「お待たせいたしました。葉隠様」
「何かあったのかい?」
「近藤さん。Mr.コールドマン。突然呼び出してすみません。実は……先ほどヤクザの事務所を爆破してきました」
「……どういうことでしょう?」
「もっと詳しく説明してくれたまえ」
話は数時間前にさかのぼる。
俺は安藤家とCステージに向けての練習が一段落し、一度帰ってから不良グループの様子を見に行った。
すると金流会のボスが俺を探してアジトを訪ねてきていて、話を聞くと任せていた店の準備に横やりが入ったらしい。
なんでも……
現在のボスに自由に命令できるのならば、お前がボスだろう?
トップが変わるのは別に構わないが、変わったのなら一言挨拶に来るのが筋だろう?
と、金龍会のバックについていたヤクザが俺を呼び出してきたらしい。
ボスが言うには俺が要求した店に関して、法的な問題を解決するための手段は、もともとヤクザから教わっていた為、そちらから話が回ったようだとのこと。
それを聞いた俺は、
「そういうことならいいだろう」
と、もはや特に恐れる必要性すら感じず、そのまま呼び出してきたヤクザに
「その
「いや……呼び出された先でも多少は暴れましたけど、爆破したのはそこと敵対関係にあるヤクザの事務所です。なんというか、呼び出した事務所への警告と、利益提供という感じで。邪魔をしなければ、機嫌がよければ手も貸してやるよと」
ちなみに襲撃の前後ではペルソナの能力を全力で使い、事務所までにすれ違った人の顔から適当なモンタージュを作成。服や靴も同じように変えて、まったくの別人を装った。
また、脱出時には転移魔法で飛べる限り遠くに移動している。これで監視カメラの映像から足がつくことはないだろう。
あとは当のヤクザと金流会のボスが口を割らなければ、完全犯罪の成立だ。
最終的に、どちらも心底俺を敵に回したくない、という感じになっていたので大丈夫だろう。万が一連中から警察にタレコミがあったとしても、俺がヒソカという顔を捨てればいいだけの話だ。まったく問題はない。
「という感じで……裏の顔の時は行動が派手に、そして制御が利かなくなってます。死人を出さなかったのが不幸中の幸いです」
「確認しました。既にニュースになっていますね。わざわざ現場にいた全員を行動不能になるまで痛めつけ、事務所から放り出した上での爆破事件となっていますね」
「ふむ……一度話してみたいね」
「話す、ですか? Mr.コールドマン」
「ああ、そこまで勝手に動くのならば別人格、当の本人にも意思があるだろう? それなら周囲の安全を確保する必要はあるけど、対話を試みてもいいと思うし、僕は話してみたい。
少なくとも我々に君を害したり邪魔をする意思はないし、違法行為も今更追及する気はないから大丈夫じゃないかな? まぁ、違法な活動は“葉隠影虎”が犯罪に関与しているとバレないように、気をつけてやってくれたまえ」
「なるほど……確かに」
「まぁ、今は年末の試合に集中したまえ。我々の方でも対策を考えておこう」
「ありがとうございます。……!」
Mr.コールドマンに別人格について相談した!
正義のコミュがちょっと上がった!
……
…………
………………
影時間
~タルタロス・15F~
タフなウィリアムさんを倒すには、生半可な攻撃では通用しないだろう。
オーロラの壁を殴りながら、効果的な技を考えていく……
……
…………
………………
12月17日(水)
朝
~男子寮・食堂~
「こえー……ヤクザの抗争か?」
「爆破までするのかよ」
「しかもただの爆破じゃなくて、自爆らしいぜ。爆発するまで犯人は逃げなかったって」
「え? でも死者0だったんだろ?」
「ネットニュースの方で、襲撃した犯人は逃げないで、そのまま爆発が起こったって書いてたぜ? 死体は見つかってないらしいけど」
昨夜の話がニュースになっている。
だが捜査は一向に進んでいないようだ。
……
…………
………………
午後
~レンタルスタジオ~
「お待たせー!」
「今日はよろしくお願いします!」
安藤家の皆とCステージに備えての練習をしていると、仕事終わりの久慈川さんと井上さんも合流。
「いらっしゃーい。リセ、早速だけど準備はいいかしら?」
「もっちろん! 撮影する曲のデータは貰ってたし、予習はばっちりだよ!」
「OK! タイガー、ステージの準備は?」
「こっちも問題ない。突貫工事で背景の書き割りも用意してもらったし、セットの交換は俺の召喚シャドウで対応できる。ロイドの方は?」
「音響も準備できてるよ!」
「衣装も一応、それらしいのを借りてきたわ!」
「なら着替えて始めましょうか。撮影は近藤さんと井上さん、外から見ておかしいところがあれば、指摘してください」
「かしこまりました!」
「了解!」
以前、ノリで相談していた久慈川さんと安藤家、そして俺のコラボ動画を撮影した!
……
…………
………………
夜
~アクセサリーショップ・Be Blue V~
昨夜の件で横槍を入れてきたヤクザもおとなしくなったので、リサイクルショップの経営に問題はなくなった。ということで、
「あら、 あなた達すごいのね。とっても頼りになるわ」
「うっす!」
「あざっす!」
オーナーの店の終業後。
就職希望の不良達を連れて行き、地下倉庫に貯められたゴミを回収した!
……
…………
………………
12月18日(木)
夕方
~男子寮・自室~
午前中は期末試験、午後からはCステージの練習を行なって帰宅。
夕食まで時間があるので、真田からもらったDVDを見ることにする。
……
画面に映るプロボクサーの動きは確かに参考になる。
その中でも興味を引いたのは、
「“アリ・シャッフル”……リズミカルに、踊るように。変化をつけて相手に動きを読ませず、それでいて自由に回避行動を取れるようにすれば……」
ウィリアムさんの攻撃は一発一発が強烈だからな……
試合の対策を考えながら、体も休めた!
……
…………
………………
12月19日(金)
昼
~教室~
『終わったー!』
試験期間、最後のテストが終了した。
解放的な空気がクラス中に満ちている。
「やっほー、お疲れー」
「ああ、島田さん。お疲れ。どうだった?」
「おかげさまで、わりとよさげ。ま、赤点の心配はいらないね」
「それはよかった」
「で、本題なんだけどー、試験も終わったことだし、軽く打ち上げでもやらない?」
「打ち上げか……うん、いいんじゃないかな?」
「本当? 試合の準備で忙しくない?」
「それなら大丈夫。本番までは、体調を整えるのがメインだし、そんなに激しい練習はしないから」
「オッケー! なら月曜は予定空いてる? 葉隠君が問題なければ、来週22日の月曜でって話になってるんだけど」
「問題ないけど、土日じゃなくていいのか?」
「うん。来週の月曜にできるなら月曜がいいかなって。だって来週の月曜ってもう終業式でしょ?」
「あ、そうか! 俺の試合がクリスマスイブで、学校はその前に終わるもんな」
「そう。それに葉隠くんの試合前で応援パーティーを兼ねてっていうのと、あと12月22日って山岸さんの誕生日なんだよね」
「え、マジで!?」
「あー、やっぱ葉隠君も知らなかったんだ。山岸さんってあんまり自己主張しないからね……私もつい3日前ぐらいに知ったんだよ。ってことで、当日は山岸さんの誕生日パーティーも兼ねます。詳細は後でまとめてメールするけど、プレゼントの用意は忘れないようにね!」
「色々とお世話になってるしな。了解した」
みんなとパーティーをする約束をした!
山岸さんへの誕生日プレゼントは何がいいだろうか……
……
…………
………………
影時間
~タルタロス・15F~
呼吸を整え気の動きに集中する。
気の使い方、その良し悪しは試合の勝敗に大きく影響を与えるだろう。
……
…………
………………
12月20日(土)
朝
~男子寮・自室~
みんな試合前の俺に気を使ってくれているようで、誰にも声をかけられなかった。
少し寂しいが、食後は瞑想の後、試合に備えよう。
……
…………
………………
昼
~巌戸台商店街~
気分転換にぶらりと散歩をしつつ、山岸さんへのプレゼントを探そうと思って商店街にやってきた。
冬の空気が肌寒いけれど、買い物客がそれなりにいて、商店街は賑わっている。
「毎度ー! たこ焼き安いよー!」
「おっ」
“たこ焼きオクトパシー”
そういえば俺が山岸さんと出会ったのもこの辺りだったな。
それにもう少し行くと、マジックショップ“浮雲”。
占いを始めた頃にお世話になった、小さな手品専門店。
そこを見つけてくれたのも山岸さんだった。
“古本屋・本の虫”に一緒に行ったこともあったな……ん。
本の虫のことを考えていたら、腹の虫が鳴った。
久しぶりにおじさんの店に行ってみるか。
……
…………
………………
~鍋島ラーメン“はがくれ”~
「いらっしゃい!」
「トロ肉醤油ラーメン1つ、特盛で」
「ご注文ありがとうございます!」
おじさんは……カウンターにいないようだ。
しかし、よく見ると四人掛けのテーブル席に知っている顔が2人。
「文吉お爺さん。光子お婆さん」
「おや! 虎ちゃんじゃないか!」
「まぁまぁ、あなたもここでお昼ご飯?」
「それなら一緒に食べなさい、さぁ座って!」
「では、失礼させてもらいますね」
文吉お爺さんの隣に着席。ラーメンが来るまで話をしていると、どうやら2人は先ほどまでお店のリフォーム業者と打ち合わせがあり、疲れたのでここで昼食を済ませて帰るつもりだったそうだ。
「そういえば虎ちゃんはもうすぐ試合じゃろ?」
「頑張ってちょうだいね」
2人も当然のように試合のことを知っていて、応援してくれた!
さらにチャーハンと餃子までご馳走していただいた!