人身御供はどう生きる?   作:うどん風スープパスタ

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327話

 午後

 

 ~Craze動画事務所~

 

「ステージのセトリはこれで決定ね?」

「楽曲は俺が参加できる場合とできない場合で一部変更になるけど、大体は共通になってる」

「このくらいなら特に問題ないよね」

「私もこの歌、好き……」

「問題はこの空白部分だな……」

「大丈夫よジョージ。少しトークして、その場で話に出たり、ネットでリクエストがあったりした曲を演奏したりするだけです」

「つまりアドリブの部分があるわけだな」

「その不安は分かりますが、その辺は又旅さんとか司会の方がフォローしてくれますよ。もちろん俺も参加できる状態ならフォローしますから」

「それより決まっている曲の方を練習しましょう!」

 

 スタジオを借りて、Cステージに向けての合同練習を行った!

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 深夜

 

 ~超人プロジェクト日本支部~

 

 大変なことになった……いや、ガチで。

 

「お待たせいたしました。葉隠様」

「何かあったのかい?」

「近藤さん。Mr.コールドマン。突然呼び出してすみません。実は……先ほどヤクザの事務所を爆破してきました」

「……どういうことでしょう?」

「もっと詳しく説明してくれたまえ」

 

 話は数時間前にさかのぼる。

 

 俺は安藤家とCステージに向けての練習が一段落し、一度帰ってから不良グループの様子を見に行った。

 

 すると金流会のボスが俺を探してアジトを訪ねてきていて、話を聞くと任せていた店の準備に横やりが入ったらしい。

 

 なんでも……

 現在のボスに自由に命令できるのならば、お前がボスだろう?

 トップが変わるのは別に構わないが、変わったのなら一言挨拶に来るのが筋だろう?

 と、金龍会のバックについていたヤクザが俺を呼び出してきたらしい。

 

 ボスが言うには俺が要求した店に関して、法的な問題を解決するための手段は、もともとヤクザから教わっていた為、そちらから話が回ったようだとのこと。

 

 それを聞いた俺は、

 

「そういうことならいいだろう」

 

 と、もはや特に恐れる必要性すら感じず、そのまま呼び出してきたヤクザにご挨拶(・・・)をさせてもらった。

 

「そのご挨拶(・・・)が、爆破ということかい?」

「いや……呼び出された先でも多少は暴れましたけど、爆破したのはそこと敵対関係にあるヤクザの事務所です。なんというか、呼び出した事務所への警告と、利益提供という感じで。邪魔をしなければ、機嫌がよければ手も貸してやるよと」

 

 ちなみに襲撃の前後ではペルソナの能力を全力で使い、事務所までにすれ違った人の顔から適当なモンタージュを作成。服や靴も同じように変えて、まったくの別人を装った。

 

 また、脱出時には転移魔法で飛べる限り遠くに移動している。これで監視カメラの映像から足がつくことはないだろう。

 

 あとは当のヤクザと金流会のボスが口を割らなければ、完全犯罪の成立だ。

 

 最終的に、どちらも心底俺を敵に回したくない、という感じになっていたので大丈夫だろう。万が一連中から警察にタレコミがあったとしても、俺がヒソカという顔を捨てればいいだけの話だ。まったく問題はない。

 

「という感じで……裏の顔の時は行動が派手に、そして制御が利かなくなってます。死人を出さなかったのが不幸中の幸いです」

「確認しました。既にニュースになっていますね。わざわざ現場にいた全員を行動不能になるまで痛めつけ、事務所から放り出した上での爆破事件となっていますね」

「ふむ……一度話してみたいね」

「話す、ですか? Mr.コールドマン」

「ああ、そこまで勝手に動くのならば別人格、当の本人にも意思があるだろう? それなら周囲の安全を確保する必要はあるけど、対話を試みてもいいと思うし、僕は話してみたい。

 少なくとも我々に君を害したり邪魔をする意思はないし、違法行為も今更追及する気はないから大丈夫じゃないかな? まぁ、違法な活動は“葉隠影虎”が犯罪に関与しているとバレないように、気をつけてやってくれたまえ」

「なるほど……確かに」

「まぁ、今は年末の試合に集中したまえ。我々の方でも対策を考えておこう」

「ありがとうございます。……!」

 

 Mr.コールドマンに別人格について相談した!

 正義のコミュがちょっと上がった!

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 影時間

 

 ~タルタロス・15F~

 

 タフなウィリアムさんを倒すには、生半可な攻撃では通用しないだろう。

 オーロラの壁を殴りながら、効果的な技を考えていく……

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 12月17日(水)

 

 朝

 

 ~男子寮・食堂~

 

「こえー……ヤクザの抗争か?」

「爆破までするのかよ」

「しかもただの爆破じゃなくて、自爆らしいぜ。爆発するまで犯人は逃げなかったって」

「え? でも死者0だったんだろ?」

「ネットニュースの方で、襲撃した犯人は逃げないで、そのまま爆発が起こったって書いてたぜ? 死体は見つかってないらしいけど」

 

 昨夜の話がニュースになっている。

 だが捜査は一向に進んでいないようだ。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 午後

 

 ~レンタルスタジオ~

 

「お待たせー!」

「今日はよろしくお願いします!」

 

 安藤家の皆とCステージに備えての練習をしていると、仕事終わりの久慈川さんと井上さんも合流。

 

「いらっしゃーい。リセ、早速だけど準備はいいかしら?」

「もっちろん! 撮影する曲のデータは貰ってたし、予習はばっちりだよ!」

「OK! タイガー、ステージの準備は?」

「こっちも問題ない。突貫工事で背景の書き割りも用意してもらったし、セットの交換は俺の召喚シャドウで対応できる。ロイドの方は?」

「音響も準備できてるよ!」

「衣装も一応、それらしいのを借りてきたわ!」

「なら着替えて始めましょうか。撮影は近藤さんと井上さん、外から見ておかしいところがあれば、指摘してください」

「かしこまりました!」

「了解!」

 

 以前、ノリで相談していた久慈川さんと安藤家、そして俺のコラボ動画を撮影した!   

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 夜

 

 ~アクセサリーショップ・Be Blue V~

 

 昨夜の件で横槍を入れてきたヤクザもおとなしくなったので、リサイクルショップの経営に問題はなくなった。ということで、

 

「あら、 あなた達すごいのね。とっても頼りになるわ」

「うっす!」

「あざっす!」

 

 オーナーの店の終業後。

 就職希望の不良達を連れて行き、地下倉庫に貯められたゴミを回収した!

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 12月18日(木)

 

 夕方

 

 ~男子寮・自室~

 

 午前中は期末試験、午後からはCステージの練習を行なって帰宅。

 夕食まで時間があるので、真田からもらったDVDを見ることにする。

 

 ……

 

 画面に映るプロボクサーの動きは確かに参考になる。

 その中でも興味を引いたのは、

 

「“アリ・シャッフル”……リズミカルに、踊るように。変化をつけて相手に動きを読ませず、それでいて自由に回避行動を取れるようにすれば……」

 

 ウィリアムさんの攻撃は一発一発が強烈だからな……

 

 試合の対策を考えながら、体も休めた!

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 12月19日(金)

 

 昼

 

 ~教室~

 

『終わったー!』

 

 試験期間、最後のテストが終了した。

 解放的な空気がクラス中に満ちている。

 

「やっほー、お疲れー」

「ああ、島田さん。お疲れ。どうだった?」

「おかげさまで、わりとよさげ。ま、赤点の心配はいらないね」

「それはよかった」

「で、本題なんだけどー、試験も終わったことだし、軽く打ち上げでもやらない?」

「打ち上げか……うん、いいんじゃないかな?」

「本当? 試合の準備で忙しくない?」

「それなら大丈夫。本番までは、体調を整えるのがメインだし、そんなに激しい練習はしないから」

「オッケー! なら月曜は予定空いてる? 葉隠君が問題なければ、来週22日の月曜でって話になってるんだけど」

「問題ないけど、土日じゃなくていいのか?」

「うん。来週の月曜にできるなら月曜がいいかなって。だって来週の月曜ってもう終業式でしょ?」

「あ、そうか! 俺の試合がクリスマスイブで、学校はその前に終わるもんな」

「そう。それに葉隠くんの試合前で応援パーティーを兼ねてっていうのと、あと12月22日って山岸さんの誕生日なんだよね」

「え、マジで!?」

「あー、やっぱ葉隠君も知らなかったんだ。山岸さんってあんまり自己主張しないからね……私もつい3日前ぐらいに知ったんだよ。ってことで、当日は山岸さんの誕生日パーティーも兼ねます。詳細は後でまとめてメールするけど、プレゼントの用意は忘れないようにね!」

「色々とお世話になってるしな。了解した」

 

 みんなとパーティーをする約束をした!

 山岸さんへの誕生日プレゼントは何がいいだろうか……

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 影時間

 

 ~タルタロス・15F~

 

 呼吸を整え気の動きに集中する。

 気の使い方、その良し悪しは試合の勝敗に大きく影響を与えるだろう。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 12月20日(土)

 

 朝

 

 ~男子寮・自室~

 

 みんな試合前の俺に気を使ってくれているようで、誰にも声をかけられなかった。

 少し寂しいが、食後は瞑想の後、試合に備えよう。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 昼

 

 ~巌戸台商店街~

 

 気分転換にぶらりと散歩をしつつ、山岸さんへのプレゼントを探そうと思って商店街にやってきた。

 

 冬の空気が肌寒いけれど、買い物客がそれなりにいて、商店街は賑わっている。

 

「毎度ー! たこ焼き安いよー!」

「おっ」

 

 “たこ焼きオクトパシー”

 そういえば俺が山岸さんと出会ったのもこの辺りだったな。

 

 それにもう少し行くと、マジックショップ“浮雲”。

 占いを始めた頃にお世話になった、小さな手品専門店。

 そこを見つけてくれたのも山岸さんだった。

 

 “古本屋・本の虫”に一緒に行ったこともあったな……ん。

 

 本の虫のことを考えていたら、腹の虫が鳴った。

 久しぶりにおじさんの店に行ってみるか。

 

 

 ……

 

 …………

 

 ………………

 

 

 ~鍋島ラーメン“はがくれ”~

 

「いらっしゃい!」

「トロ肉醤油ラーメン1つ、特盛で」

「ご注文ありがとうございます!」

 

 おじさんは……カウンターにいないようだ。

 しかし、よく見ると四人掛けのテーブル席に知っている顔が2人。

 

「文吉お爺さん。光子お婆さん」

「おや! 虎ちゃんじゃないか!」

「まぁまぁ、あなたもここでお昼ご飯?」

「それなら一緒に食べなさい、さぁ座って!」

「では、失礼させてもらいますね」

 

 文吉お爺さんの隣に着席。ラーメンが来るまで話をしていると、どうやら2人は先ほどまでお店のリフォーム業者と打ち合わせがあり、疲れたのでここで昼食を済ませて帰るつもりだったそうだ。

 

「そういえば虎ちゃんはもうすぐ試合じゃろ?」

「頑張ってちょうだいね」

 

 2人も当然のように試合のことを知っていて、応援してくれた!

 さらにチャーハンと餃子までご馳走していただいた!


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