私は語り部である。
あくまで語り部である。
主人公は、私ではない。
私は貴殿らにしか真実を明かさない。
私は貴殿らにだけ彼らの物語を語ろう。
彼らも知らない、真実と。
彼らしか知らない、志を語ろう。
それでは、はじまりはじまり_______。
やあ、読者諸君。
私の名は榊楪。
新撰組監察方である。
私の仕事は端的に言うなら潜入捜査だ。
新撰組については貴殿らもあらかた知っているだろう。
幕末の警察、とでもいえばいいだろうか。
まあ、言ってしまえば人斬り集団だよ。
これからお話しするのはそんな奴らの物語なのさ。
まあ過激なところは私も思い出したくないし省略するから、よかったら聞いていっておくれよ。
最近目立つことと言えば、新撰組で預かる子ができた。
そう、
男装をした
名を雪村千鶴という。
情報によると、ある『薬』の研究者である雪村綱道氏の娘だそうだ。
『薬』についてはまあ機密事項だからさ?私の口からは言えません。
ちょっと調べたところによると、実は義娘らしいが・・・
それは今重要ではない。
問題なのは幕府の機密事項の研究者が行方不明で、雪村千鶴はその娘だということ。
彼の勤めていた屋敷が火事で焼け落ち、しかし彼の目撃情報がいくつか寄せられている。
事件に巻き込まれている可能性もあるし、機密を漏らしている可能性もある。
とどのつまり今の彼は新撰組にとって望ましい状況ではない。
だから我々新撰組は雪村綱道氏の行方を追っているのだ。
でも考えてみてほしい。
女性がほとんどいない男の巣窟新撰組に、可愛い女の子ひとり。
どういう状況なのかなど、想像に難くないのではないだろうか。
ではここで、このころ観察した彼女の人柄を掲示しようではないか。
まず、気が強め。
といっても彼女は割と普通の女の子なのだが。
屯所の外に出られない、いつ殺されるかもしれないという絶望的な状況。
最初の頃こそ落ち込んでいたようだが、今となっては食事の手伝いを毎日しているし、洗濯物などの家事もいくつかしているようだ。
次に、コミュニケーション能力が高い。
新撰組幹部は、ある一定のボーダーラインまでは人を受け付けないようなそんな気難しさを持っている奴が多い。
しかし彼女はいつのまにか彼らになじんでいた。
ま、なんだかんだでいいやつばかりだから、ほっとけなかっただけなのだろうか。
それを抜きにしても、彼女の笑顔は人を癒す効果があるからかな。結構すぐに人と仲良くなれるようだね。
彼女が男所帯にはありがたい家事能力が高いというのも、私的にポイントが高いところだ。
やはり飯はまずくてはいけないのだ。
力もやる気もでなくなってしまう。
まあそんなことは置いておいて。
彼女を一言でいうなら、『ヒロイン』だ。
皆に愛され、
皆に求められ、
かわいらしさ、
愛嬌、
あげればキリがない。
少々口が悪く、気が強いという短所があるものの、そんなものここの男たちに比べれば可愛いもの。
しかもあれは素直になれていないだけだ。
幹部たちはじめ、皆が溺愛_あの副長も_するのもうなずける。
ここまで彼女についてあげてきたが、実は私は彼女と接点がない。
私が一方的に副長から山崎とともに承った命で監視と護衛しているだけ。
話したいという訳ではない。
今まで幹部どもに絡まれないようおとなしくしてきたのだから、彼らのお気に入りの彼女にちょっかいをかけて命を捧げたくはない。
ああいう命を預かる者というのは仲良くすると面倒なのだ。
なにかといえばセンチメンタルで繊細で、ネガティヴで理解してもらうことを心の奥底から望んでいる。
それが他人より『解って』しまう私。
他人が何を望んでいるのか、他人が何をどう思っているのか。
本人よりも『解って』しまう。
そんなの当たり前に依存されるんじゃないか?
これは自意識過剰かもしれないが。
____話がそれた。
とどのつまりは、これから語るのは雪村千鶴が中心の誠の武士の物語ということである。
どうぞ、お付き合い願いたい。
榊 楪(さかき ゆずりは)
新撰組監察方
性別不詳 男装女子・女装男子 任務によって化ける
情報通 新撰組には情報操作をしているらしい
古株だが幹部ではなく、詳しく知られていない