処女はお姉さまに恋してる 陰の庭師   作:雹衣

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4月 気弱な少女との休日 その3

「えっと、綾? まだ帰らないんならどうするんだ?」

「ええっと……迷惑じゃなければ私と少しお話をしませんか?」

「まあ良いけど」

 

 園芸部の花壇でブルーサファイアの少女。 綾と2人で居る。

 

「まあ、とりあえずベンチに座れ」

「あ、はい」

 

 園芸部に有ったベンチにゆっくり綺麗に座る綾。 流石聖應女学院の生徒、こういう所も綺麗だ。

 

「じゃあ、綾何か聞きたいこととか有るか?」

「あ、はい! じゃあこの学院の行事とかを詳しく教えてくれますか?」

「そういう事で良いのか?」

「その、聞いただけじゃ余り分からなくて……」

 

 恥ずかしそうに言う綾。 聖應女学院には独特行事も多いし、学校に行った機会も恐らく人付き合いも少ない綾には分かりづらかったのかも知れない。

 

「じゃあ話すか。 色々有るぞエルダー選挙とか」

「エルダー選挙?」

 

 俺の言葉に綾が首を傾げる。 まあ、初めて聞く言葉だろう。 俺も聖應女学院に来てから初めて聞いたし。

 

「学院の最上級生からエルダーシスターっていうのを生徒の投票で1人選ぶんだ」

「エルダーシスターですか?」

「ああ」

「それは一体何ですか?」

「うーん、人気者?」

 

 俺がエルダーシスターのイメージをアバウトに伝える……まあ、大体合っているだろう。

 

「まあ、特に権力とかは無いが一番の人気者を決めるもんだと思えば良い」

「成る程、そういう物なんですね……分かりました」

 

 本当にこんな説明で分かったのだろうか?と不安になるが、逆にここまで簡単な説明だったおかげで彼女も簡単に理解できたようだ。

 

「けど学院1の人気者って大変そうですね……私にはとても無理そうです」

「まあ、エルダーは良くイベントに引っ張りだこにされてるし大変なんだろうな」

 

 体育祭で仮装競走に出たり、学院祭では劇をしたり……去年だけでを見てもかなり大変そうだ。 見るからに箱入り少女で人見知りは綾には出来なさそうだ……いや、でも頼まれたら断れなくて全部やりそうだな。

 

「案外似合いそうかも……」

「え?白崎さん。 何か言いました?」

「いや、何でもない……そういえば綾って趣味とか有るのか?」

「趣味……ですか?」

「あ、いや何となく聞いただけだ。 言えないなら言わなくて良い」

 

 俺の言葉にキョトンとした声を出す綾。 もしかしたら何か気を悪くしたかも知れないと思い勝手に慌てる俺。 彼女最初のオドオドっぷりを見てまだ俺に気を許してないかも知れない。 だが綾はそんな事気にせず「趣味かぁ……」と呟きながら悩む。 とりあえず俺が嫌われた訳じゃ無いようだ。 良かった良かった。 聖應女学院の生徒とは関わらないようにしているが生徒が嫌いな訳じゃ無いので嫌われるのは中々辛い。

 

「あ、趣味かどうかは知りませんがお屋敷に居た時ママからお菓子作りを習ったので少し出来ますよ」

「お菓子作りか……」

「白崎さんはどうですか? 何か趣味とかは有りますか?」

 

 綾が俺を見ながら聞いてくる。 ……趣味はやっぱり

 

「絵かな」

「絵ですか?」

「ああ、絵を描いているんだ」

「わあ、凄いです」

 

 両手を前で合わせて純粋に驚いてくれる綾。 その初々しいリアクションに可愛さを感じながら苦笑いをする。

 

「そこまで凄くは無いさ、絵を描くのはゆっくりだしな」

「でも凄いです……」

「そうでもないって」

 

 そう言い綾に笑いかけながら頭の中で昔の事を少し思い出していた。 怒っている父の顔に困り果てた母の顔。 そしてそれを見ながら家を出て行った俺。

 

「白崎さん?」

 

 何時の間にか顔が暗くなっていたのか、綾が俺の顔を心配そうに眺めていた。

 

「あ、大丈夫だ。 ちょっと昔を思い出していただけだ」

「昔、ですか?」

「そう、昔」

 

 今思えば両親が正しかったと俺は確信している。 俺はただ世界を知らなかっただけだ。

 

「夢を追いかけようとしたけど、結局追えなかった……それだけの話だ」

「……そう、ですか」

 

 綾が深刻そうな表情になり顔を伏せてしまう。 詳しくは分からないが雰囲気で嫌な事が有ったというのは察したのだろう。

 

「気にすんな、昔のことだ。 そういえばお前運動は得意か?」

「え?運動ですか? ……実はあんまり」

「そうか、9月に体育祭というのが有ってな……」

 

 話の展開にややついて行けなかった綾だが、この後は俺の事を深く聞かず俺の話す聖應女学院の年間行事について真剣に聞いてくれ、途中から行事の話に夢中になっていた。 日本の学校では良くある行事ばかりだが、綾はお祭り等にも行った事が無かった様で全てが初めて聞く物ばかりだった様だ。

 

「成る程、降誕祭の後のお祈りの後にダンスパーティーですか……まるで物語みたいですね!」

「そ、そうか?」

 

 少女の目はキラキラと輝き、まさしく夢見る少女という感じてあった。

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