処女はお姉さまに恋してる 陰の庭師   作:雹衣

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5月 優雨との話 それと絵

 さて、結局女子高生と話す話題のない俺は優雨ちゃんと自己紹介した後のような会話をしていた。

 

「趣味は……絵を描くこと?」

「ああ、数少ない趣味の一つだな」

「いつも人の絵を描いているの?」

「ああ、前は風景画も少し描いていたけど今じゃ肖像画しか描いてないよ」

 

 生徒相談室で少女と向き合って質問をしあう……なかなか普通っぽいが普通じゃないなこの光景。

 

「……そういや、優雨ちゃんは何部なんだ? 美術部とか?」

「……園芸部」

「ああ、園芸部か……懐かしい」

「……?」

「ああ、庭師になってから2、3年くらいかな? その頃の園芸部部長に捕まってな、その後は時々花壇に手伝いに行ってたんだ」

「そうなんだ……」

 

 優雨ちゃんが相槌をコクコクと可愛らしく頷く。 ……優雨ちゃんって本当に高校生か? 小学生でも通じそうだな。

 

「……じゃあ、花壇に時々来てたの?」

「ああ、もう行かなくなっちまったけどな」

「……」

 

 う~ん、やっぱ女子高生とは話が続かないな。 何か優雨ちゃんと話が続く話題は……

 

「そういえば絵、完成したけど見るか?」

「……うん」

 

 優雨ちゃんは可愛らしくコクンと大きく首を縦に振った。 良かった話を続ける事に成功した……あれ?そういえば絵を紙に包んでたな………。

 

「包みを開けなきゃいけないのか……」

「……ごめんなさい」

「いや、別に謝らなくてもいいけど」

 

 結局絵をアパートに運ぶ計画は一旦中止になった。 ……この量だからいつかはしなくちゃいけなさそうだが。

 

 

 

 

「お、あったあった。 これだこれ、昨日完成したやつだ」

 

 さて、絵を包んだ紙を開いて探す事5分、目的の絵を見つけた。 俺が昨日完成させた絵は眼鏡をかけた少女が椅子に座りながら紅茶を飲んでいるというとことん絵になる光景を描いた物だ。 その絵をイーゼルに乗せ、一緒に絵を探していた優雨に見せる。

 

「……すごい」

「何が凄いんだ? 普通の絵だろ」

「まるで、本当に生きてるみたい」

「……そんなにか?」

「……うん、そんなに」

 

 優雨ちゃんにやけに褒められる。 俺の絵そんなに良いか? っていうか何でみんなこんな絵を褒めるのか理解できない。 ただ頭に浮かんだ見たことのない少女を描いてるだけだから褒められても自分の手柄だとは思えないだけかな……。

 

「りくはこの絵の人に会ったことあるの?」

「ないな、肖像画の人物は全員知らない人だ……会ったこともない」

「そうなの?」

「ああ」

 

 優雨ちゃんの目が驚いたらしく見開いていた……まあ約50枚ある絵が全て知らない人だって言われたら流石に驚くだろう。 俺だって不審者扱いしたくなる。

 

「前にケイリが言ってた目のおかげ?」

「……ああ、目のおかげだな」

 

 俺がここまで絵を描き続けているのはこの目が有ったおかげだ。

 

 そして……

 

「りく?」

「ああ、ちょっと昔の事を思い出してな」

 

 ここまで半ば諦めた画家の夢を捨てられずにいるのもこの目のせいだ。

 

 俺は溜め息を一つ気持ちを吐くようについたのであった。

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