とりあえず生徒相談室にやってきた葉月という少女を部屋に入れ適当に椅子に座らせる。 少女は周りの光景に圧倒されているようだが俺の方をじっと見ている。
「す、凄い絵の量ですね……全部先生が描いたんですか?」
「ああ、そうだが俺は先生じゃないぞ。 ただの庭師だ」
「は、はあ……」
少女が納得したようなしてないような微妙な表情をしているたので、俺は話を進めることにした。
「で、相談っていうのは?」
「あ、そ、そうです!相談したいことがあります!」
「ああ、それは分かっているけど」
「父さ……父上と仲良くするにはどうしたら良いでしょうか!」
「……え?」
「……え、あれ?」
俺は少女の相談内容に思わず変な相槌を打ってしまう。 何というか思っていたよりも相談の内容が……
「普通だな」
「え、普通です、でしょうか?」
「っていうか意識してお嬢さま言葉使おうとしなくていいから」
「あ、は、はい!」
緊張でカチコチになっている少女を見て、俺はため息を一つ着いた。 これはこれで面倒くさそうだ。
「いや、お前の相談が余りにも普通で驚いた」
「そ、そんな普通って……」
「そういう相談って同級生や先輩、他の先生にするものだとばかり思っていたからさ。 てっきり「コンビニの前でヤンキー座りしている感じの人を好きになっちゃいました! どうしたらいいですか」的な相談が来るのかと思っていたから」
「そ、そんな悩みが出来る訳ないじゃないですか」
「……そう思うよな~普通」
「あ、有ったんですね昔……」
「ああ、有ったんだよ」
ここに相談する前に大体「お姉さまに相談」で何とかなってしまう。 その為ここに来る生徒なんてお姉さまや先生に相談出来ない者が殆どだ。
「で、何でお父さんと喧嘩したのか?」
「い、いえ喧嘩っていう訳じゃなくて。 母さんが再婚しまして……」
「ああ、新しいお父さんとまだ上手く付き合えていないと言うこと?」
「そう、そういう事です! 何かやけに優しくしてきてはっきり言って鬱陶しくてついつい冷たくしちゃったり……」
「なるほど……」
「だから鬱陶しくてついつい寮に来ちゃったんですけど……」
「え……」
「え? 変な事言いました?」
つまり今は一緒に住んではいないのかよ!
「……それって緊急の悩みか?」
「い、いや別にそんな急ぎでも無いかな~」
「じゃあ何であんな切羽詰まった感じで入ってきてるんだよ」
「そ、それはこういう部屋に入るのって勇気がいるじゃないですか! 周りには人の気配が全然しないし! 何故か御前様が入っていくのを見たし!」
「は、はぁ……」
「全く! 相談室ならもっと入りやすい部屋にしたらどうなんですか!」
「いや、そんな事俺に言うなよ……」
何この子……すごい面倒臭い。
「……まあいいや。 相談の内容に戻ろう」
「そ、そうですね……じゃあ、どうしたらいいんですか」
「鬱陶しいって正直に言えば?」
「え……でもそれは……」
「お前のお父さんも仲良くなろうと必死なんだから色々と見えてねーんだよ。 こっちの思っていることはしっかり伝えなきゃ」
「あぁ……なるほど」
「別にお父さんはこっちの言うことを全く聞かないって訳じゃ無いんだろ?」
「はい……多分」
少女が目を伏せ納得したようなしてないような……という顔をしていた。
「大丈夫だよ、自信を持て。 お前の頼みを聞かないような父親ならお前との関係を気にしないさ」
「そう……そうですよね! 悪い父親だったら私の事を気に掛けませんよね!」
「そうそう、それにこんな金の掛かる学校には入れねーよ」
「え、そ、そうですね……」
少女が苦笑いをしながら答える。
「そういえば、お前の名前なんて言ったけ。 葉月?」
「あ、はい! 葉月(はづき) 槐(えんじゅ)です! 15歳です!」
「いや、歳は聞いてないから……そういえば寮暮らしだったよな」
「はい、そうですよ? どうかしました?」
「いや、誰の妹かな~っと思って」
「妹……ああ!陽向お姉さまの妹ですよ!」
「陽向……ああ、あのデコか」
確か今年の二年生は二人……そしてもう片方は優雨だった。 という事は壁紙の張り替えの時に会ったあの少女がお姉さまか。
「そういえばあいつも親が再婚じゃなかったか?」
「え、そうだったんですか? 全然知らなかった……」
「あいつにも少し聞いてみれば良いんじゃないか?」
「そうですね! そうします!」
「……っておい! ちょっ!待……」
少女……槐は喜々と立ち上がりそのまま生徒相談室から走って出た行った……なんかものすごい元気な子だな。 俺は椅子に座り一言ため息を一つ着く。
「今年の寮は楽しそうだな……」
しかし陽向と槐って色々と似てるな……何となく。