処女はお姉さまに恋してる 陰の庭師   作:雹衣

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6月 エルダー選挙について

 あの時の俺はいつも通り生徒相談室で絵を描いた。 そして横には車椅子に乗った少女が一人。 いつも来ていたような気がするが、彼女は放課後暇なのだろうか。

 

「もうエルダー選挙の時期ですね」

「ああ、そういえばそうか」

 

 俺は彼女の方には向かず、風景画を描いている。 これもいつも通りだ。

 

「ねえ、その絵4月からずっと描いているけど、何の絵?」

「これか? 風景画だ」

「それはそうでしょうけど……」

 

 俺が描いている絵は右の方のが少し描かれている。

 

「多分、この絵は一年掛けて描くつもりだ」

「超大作なんですか?」

「まあな……そういえばお前の肖像画だっけ?」

 

 目の前に居る少女は少しポカーンという表情をすると、直ぐに笑顔をになった。

 

「ん? ああ、会って間もない頃に頼みましたね」

「描いてやろうか?」

「いいのですか!? てっきり肖像画は下手だから描いてくれないんじゃ無いかと思ったんですけど……」

「一応肖像画も描けるぞ……全く」

「ふふっ……すみません」

 

 彼女はとても嬉しそうな顔をしていた。 そういえばあの絵何処においたっけな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと……白崎さん? 何してるんですか?」

「ん?……ああ、綾。 久しぶり」

 

 6月の初め。 放課後、生徒相談室で俺は珍しく絵を描かず、捜し物をしていた所、綾が生徒相談室にやってきた。 綾は俺の言葉を聞いて、慌てたように頭を下げる。

 

「白崎さん、あのお久しぶりです。 あの時はありがとうございました」

「ああ、いいよ。 仕事だし」

「……ところで何をしているのですか?」

「ふと思い出してな。 昔の絵を探しているところだ」

 

 今日の朝、見た夢。 あの時隣に居た少女を誰だが思い出せない。 けれども手がかりは生徒相談室にあるかも……と探しているが。

 

「……どんな絵を?」

「この学院で一番最後に描いた風景画と一番最初に描いた自画像をな」

「それは何を描いた絵なんですか?」

 

 綾が生徒相談室にある、絵を見渡しながら疑問を投げかけてきた。 俺はそれに対しておそらく予想と違う答えを言った。

 

「忘れた」

「……へ?」

 

 綾が呆然とした表情になる。 まあ、そういう顔をするのは分かる。 探している絵が分からないっていうんだ何言ってるんだとはなるな。

 

「いや、肖像画のモデルが思い出せないからどんな人だっけな~っと思ってな」

「納得したような……しないような」

 

 綾が微妙な顔をしている。 とりあえず彼女をそのまま立たせているのもどうかと思ったのでいつも絵を描くときに座っている席に座らせる。

 

「まあ、いいや。 綾は何しに来たんだ?」

「……いえ、特に意味は無いんですが……葉月さんがあなたと話したって言っていたのを聞きましてちょっと見に来ました」

「……ああ、そうかお前、槐とも知り合いか」

 

 何というか今年は寮の人と関わることが多いな……。 

 

 

 

 

 

 俺は絵を探すのをやめ、綾と話すことにした。 聖應女学院の特注の机を綾の前に置き、紅茶を出す。 ちなみにだが俺の紅茶は別に高級では無い近くのデパートで売っているような安物だ。 普通なら生徒に出すような物ではないがこれぐらいしかないので出している。

 

「そういえば綾は何部に入ったんだ?」

「あ、園芸部に入りました。 ……そういえば白崎さんは優雨お姉さまとはお知り合いなんですか?」

「優雨……ああ、優雨ちゃんか。 そういえば園芸部らしいな」

「はい、優雨お姉さまと一緒の部活にしました」

 

 そういえば今年の寮生は四人で、槐が陽向という人の妹なら綾は優雨の妹っていうのは当たり前か。

 今更な気もするが寮には姉妹を決めるルールがあるらしい。 姉は妹の世話をしたりするという風変わりなルールだ。 どうしてそんなルールがあるのかは俺にはよく分からん。 

 

「そういえばお姉さまと言えば……」

 

 寮生の事を考えていたら夢の事を思い出し、綾に話を振る。

 

「もうエルダー選挙の時期だな」

「あ、白崎さんも知ってるんですね」

「そりゃ、一応ここの職員だしな」

 

 庭師だけど。

 

「そういえば誰がエルダーに選ばれそうかもう分かるのか?」

「エルダーですか? う~ん、有力なのは御前ではないかと……」

「1年にも御前の事は知れ渡っているのか。 早いな」

「はい、全校生徒の面倒を見てくれる素晴らしいお姉さまだと」

「……中々スケールのでかいお姉さまだな」

 

 ちなみに知っているとは思うが御前とは5月に生徒相談室にやってきた哘という少女の二つ名だ。

 

「ま、去年から噂されてたしな」

「へえ、白崎さんって意外と交友関係が広いんですか?」

「いや、去年はケイリ位としか話し相手は居なかったぞ」

「ケイリ?」

「ああ、変わった友人だ」

 

 そのまま綾と俺は日が暮れるまでどうでも良いことを話していた。 ……こういう風に話す奴が昔居たような気がするが、俺はやはり思い出せずに居た。 

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