処女はお姉さまに恋してる 陰の庭師   作:雹衣

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6月 俺の能力は……

「もう夏が近いな……」

 

 綾が訪れてから次の日、俺は外で庭仕事をしていた。 最近は暑い日も多くなってきたからか草木の成長が早くなっている気がする。

 

「うーん……」

 

 昨日綾が帰った後も絵を探したが見つからなかった。 絵をどこかのコンクールに出したことは無いから生徒相談室以外の場所にある可能性は無いに等しい筈だが……。 誰かに渡した事があったかと思ったが……

 

「ないよなー……多分」

 

 最近は自分の記憶力に不安があるがそういうことをした憶えが無い……まずそういう絵を描いたこと自体憶えていないからどうかと思うが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 授業終了のチャイムが聞こえてきたので俺は宿直室に戻ってきていた。 そして作業用の道具を片付けて生徒相談室に向かう。 もちろん絵を描く為だ。

 

「しかし、最近描くペースが早くなってるな」

 

 最近は2週間に一枚描き終わるペースになっている。 今までは1ヶ月に一枚描き終わるペースだったのでかなり早くなっている。 別に時間に余裕が出来たわけではない筈なのだが……。

 

「失礼いたします。 3年の哘です」

「さ、3年の冷泉です」

「ん? お、久しぶり」

 

 キャンバスの前で色々と考えながら座っていたら。 長い黒髪が特徴的な哘さんと金髪に青い目をした少女が生徒相談室にやってきた。 多分哘さんの友達なのだろう。

 

「で、哘さん達は何しに来たの? そろそろ期末試験だし、色々大変じゃないのか?」

「ええ、私はちょっと陸さんの事を思い出しまして、雪ちゃんにも教えておこうと思いまして」

「わ、私は別に良いと言ったんですけどね」

「ふーん……ま、よろしく」

 

 金髪の少女……冷泉さんに俺は手を前に出す。 それに冷泉さんは気付き、握手をしてくれた。

 

「で、哘さんはここにおしゃべりしに来たのか?」

「端的に言うとそうなりますね」

「つまり暇だと」

「ちょ、直球でいいますね陸さん……」

「別にいいぞ、俺は特に話題が無いけどな」

 

 まあ、女子高生と普通に話せるんだ。 この仕事も中々捨てた物では無いな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、陸さん?」

「何だ?」

 

 しばらく俺の昔有った思い出話などをしていたが。 冷泉さんがさっきから尋ねたそうにしていたことを聞いてきた。 冷泉さんは1つの絵を指さしてこう言った。

 

「この絵に描かれている人ってどこかで見たことがあるような気がするんですけど……誰がモデルですか?」

「ん?この人知っているのか? 俺は誰だが知らないんだが」

「いえ、どこかで見たことがあるってだけですよ」

「そうか……」

 

 冷泉さんはこの絵に描かれている人を知っている……という事はこの絵に描かれている人は実際に居る人? いや、冷泉さんの気のせいかも知れない。 冷泉さんが知っているという発言にやや焦っていると、哘さんが話に入って来た。

 

「そういえば飾ってある絵の殆どが聖應の生徒の絵ですね……この方々は実在する人物なのですか?」

「知らん。 俺は見たことがない」

「なんか不思議ですね……この絵が全部白崎さんの創作なんですよね?」

「ああ一応な」

 

 俺が答えると冷泉さんが不思議そうな顔をしていた。

 

「どうした? 変な顔して」

「あ……何かこの絵の人が創作にしてはリアル過ぎるというか何というか……」

「リアル過ぎる?」

「あ、はい。 何か今すぐにでも動き出しそうな感じがするんですよ」

「ふーん……」

 

 今にでも動き出しそう……その感想は今まで良く聞いてきたが、俺はその言葉がとても印象に残った。 ケイリには「聖應女学院の思い出」と言われた能力。 そしてその能力を使って描かれた絵は実在するかも知れない。 いつも疑問に思っていたが深くは考えていなかったこの能力。 これは一体何なんだ?

 

「……調べてみるか」

「?何か言いましたか?」

「あ、いや、何も」

「そうですか……」

 

 哘さんが俺の回答に心配そうな顔をしている。 ……俺はその後「何でもない」と声を哘さんに掛け、話題を逸らす。

 

 この後、俺は哘さんと冷泉さんと会話をしながらずっと自分の能力の正体を考えていた。

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