「っという訳でよろしくね。」
「……まあ、良いですよ。」
今俺は院長室で学院長代理一緒にいる。 学院長は昨年から入院中であり代わりに代理をしているらしい。
「……けど新入生の書類とかは教師にやらせろよ。 学院長はこんな事はさせなかったぞ。」
「別に良いじゃない。 それにあなたも嫌々言いながら手伝っているじゃない。」
「……必要な書類を渡して貰えば直ぐに手伝いをやめるさ。」
ちなみに今何をしているのかと言えば、俺の仕事に必要な書類を貰いに来たら書類の整理をついでにと半ば無理やり手伝されていた。
「俺はまだ春休みにする仕事が残っているんだが……。」
「そんな事言ってるとあなたの使っている教室幾つか返して貰うわよ。」
「……分かったよ。」
俺はため息をつきながら書類の整理を手伝う。 俺は聖應女学院の宿直室と生徒相談室を完全に私物化している。 宿直室は庭師の仕事のついでに夜の見回りをするために宿直室を使っていたが、数年前警備会社に仕事を依頼した為に宿直室はほぼ使われなくなったので俺の半分自室になっている。 生徒相談室はまず相談する人がエルダーや生徒会を頼り大体解決してしまう為、完全に役目が無くなっていたので俺が勝手に使っている。
……まあ生徒相談室には時々生徒が来るので俺が勝手に相談に乗っていたりもするのだが。 その2つの部屋はどちらも校舎の一階の端にあるせいで来る人が殆どいないので学院長からは私物化を許可されていたのでそれを奪われると色々とキツい。
「……寮の書類一式まとめといたぞ。」
「あら、ありがとう。 それじゃあ次の仕事を渡そうかしら?」
「……書類仕事じゃなければいいよ」
「大丈夫書類仕事じゃないしあなたの元々の仕事よ。」
「やっとか……。」
俺は、がっくりと机に倒れながら呟く。 学院長代理は俺の前に紙を一枚差し出す。
「はい、壁紙はもう寮に置いといて貰ったから張り替えてね。」
「はいはい、分かりました。」
俺は、ゆっくり椅子から腰を上げ院長室から出るのであった。
俺は誰もいない学院の廊下をゆっくりと歩く。 流石に春休みの為部活動以外で来る人は殆どいないが改装工事が有るのでやや工事の音がちょっと遠くから聞こえる。
「今年の寮は4人か。」
書類を見ながら呟く。 確か去年は1年生以外にも3年生に妃宮千早、2年生に曾来(わたらい)史(ふみ)という子も入寮してきて合計で7人が寮にいたのに比べるとかなり寂しく感じる……まあ俺は壁紙の張り替え以外で寮に入らなかったのでよく知らないが。
いつもは生徒がいるので使わない表の玄関から出て寮を目指す。 今日は外の部活はどこもやってないらしく工事の音しか聞こえない。
俺は、この静けさにやや珍しさを感じなかがら歩く。
「こんなに静かなのは久々だな……。」
長期休暇の時はいつもこのぐらい静かだがいつもより寂しく感じるのは最上級生が卒業したからだろうか。
俺が、そんな事を考えた後やや苦笑いしながらも寮に辿り着く。
聖應女学院の寮はヨーロッパのお屋敷と言われても信じてしまいそうなくらいの美しさがある。 もっと大きければお屋敷と信じて疑わなかっただろう。 俺は寮の前の門に立ちゆっくりと扉をノックする。 しばらくすると中から元気のいい返事が返ってきた……珍しいな、いつもなら誰もいないからこの後、鍵を自分で入って開けるのだが。
「はいはい……ってどちら様?」
寮から出て来たおでこが目立つ少女は寮の前に立っている俺を見ていきなり疑問をぶつけてくる。
「あれ? 俺の事聞いてないの?」
「いや、何も。」
少女は本当に何も聞いてないようだ。
「寮に誰か要るならそれくらい教えろよ……。」
「?」
俺は何も教えなかった学院長代理を恨みつつ(まあ彼女も知らなかったのだろうけれども)目の前の少女に説明をする。
「分かり易く言うと新入生の部屋の壁紙を張り替えに来た。」
「あー! 昨日何か荷物届いてましたね!」
「ああ、多分それだ。」
俺の言葉に反応して急に彼女の顔が納得顔になる。 ……こんな答えで信じて大丈夫かと思いつつも俺は寮の中に足を入れる。
「何だ~そういう事ですか~。」
「そういう事って?」
「いや~、この学院内で男の人を見たのは初めてですから何事かと思いましたよ~。」
「……まあ、分からなくもない。」
この学院は俺以外教師も含め全員女性だ。 教師は流石に俺の事を知っているが生徒は俺に会うまで存在を知らなかったという人はかなり多い。
「まあ、いつもは生徒には挙力会わない様にしているしな。」
「あれ? 極力って事は学院で働いてるんですか?てっきり業者の方かと……。」
「あぁ~、俺は一応学院で働いてるんだが……。」
まあこの子は俺のことを知らない様だ……多分今この学院内で俺のこと知っているのはケイリくらいなんだろうな……。
「へぇ~、庭師ですか~。」
「まあそれ以外にも体育祭とかの準備を手伝ったりとかもするけど。」
「っという事はこの仕事も……。」
「まあ、元々の仕事とは違うけどこういう事も仕事の一つだな。」
「ほへぇ~。」
目の前にいる少女はやや変な声を上げて感心していた。
「なんか大変ですね~。」
「いや、流石に10年も働けばもう慣れた。」
「え!? 今幾つですか!?」
「24」
「若!?」
「そうか?」
「てっきり18歳かと……。」
こう言われるのにはもう何回目だろうか……20を超えてから何時も年齢を言うと大体こう言われる。
「……さっさと仕事を始めるか。」
「あ、あれ?何か?不機嫌?」
「いや、別に怒ってねーよ。」
「ぜ、絶対嘘です……。」
貼り替えが済んだ時には日が落ち掛けていた。 最近日が落ちるのが遅くなっていたがこういう仕事をしているとまだまだ日が落ちるのは早いと思ってしまう。
「いやー、お疲れ様ですね。」
「ん?お、ありがと。」
俺が作業を終え二階から降りてきたところおでこが目立つ少女が紅茶を用意していた。
「そういえば、お前は何で寮にいるんだ? 他の人は家に帰ってるだろ。」
「あぁ~、その事ですか?まあ分かりやすく言うとですね私の母親が再婚して玉の輿に乗りましてね~。 母親が春休みに旅行に行くっていうんで新婚旅行気分を味あわせようっていう事で私は帰らずに寮にいるって感じですかね。」
「へ、へ~。」
思っていたよりも重い話の様な気がしなくもないが彼女は明るく話しているので彼女には大した問題ではないようだ。
「そういえばどこらへんに住んでいるんですか?結構時間が遅いんですが……。」
「ああ、そこは大丈夫。俺はいつもは宿直室に寝泊まりしてるから。」
「え、聖應女学院に宿直室ってあるんですか?」
「ああ、あるのかどうかすら知らないか……。」
殆どの生徒はこんな感じなのだろう。 俺は苦笑しながら大まかな場所を話したりしながら少女との会話を紅茶を飲みつつ楽しんだのであった。