処女はお姉さまに恋してる 陰の庭師   作:雹衣

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7月 エルダー騒動 その2

 食堂へ行こうと廊下を歩く。 今の所生徒には一人しか会っていない。 皆女子だし食べ終わっても世間話とかしているのだろうか?何てことを俺は考えつつ、人が居ない事に感謝しながら進む。

 

「……けど食堂じゃあ騒がれるのは確定だよな」

 

 俺は今更な事を考え、ため息をつく。 すると今までの俺には無かった長い銀髪が顔にかかる。

 

「ま、やるって決めたからにはやるけど」

 

 っと言うか俺は何で独り言をぶつぶつ言ってるんだろう……俺はついに頭も可笑しくなったのか?

 

「はぁ……」

 

 けどやっぱり鬱だ……俺は騒がれるのが一番苦手なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ネガティブ思考に陥りつつふらふらと歩いていると食堂が見えてきてしまった。 食堂からは女子特有の高い声が聞こえるが聖應女学院の生徒だからか、その声には耳煩わしさは感じない位の大きさの声だ。

 

「……ま、ここでウダウダしててもしょうがないか」

 

 俺は意を決して堂々と歩く。 大丈夫……今の俺は「妃宮千早」だ決して男じゃない。 頭の中で念じながら食堂に向かう。

 

「え……」

「っ!」

 

 俺が食堂に到着するかしないかの所でちょうど食堂から出てくる少女とばったり会った。 少女は一年生なのか、「妃宮千早」の事は知らないようだ。 少女と俺が互いに黙ってしまいどうしようか考えたがとりあえず挨拶をする事にした。

 

「ご、ご機嫌よう」

「ご、ご機嫌よう!? お、お姉さま……ですよね?」

 

 少女は俺に対して挨拶を返した後にためらいながら質問してきた。 どうやら彼女は俺を3年生だと思ったようだ。

 

「えーっと、あなたは一年生なのかしら?」

「は、はい!そうです! まさかあなたみたいな綺麗な方がこの学院にいらっしゃるなんて!」

 

 俺(の体)はエルダーなんだし綺麗って言われるのは予想通りだ。 ここで冷静に返さないと……。

 

「そう?ありがとう。 けど私は聖應の生徒じゃないのよ」

「え、違うんですか?」

「ええ、私は卒業生なの」

「え、あ、ああそうなんですか。 なる程」

 

 どうやら自分の知らないお姉さまが卒業生だと分かり納得したようだ。 ……色々と突っ込み所はあるが面倒くさくなりそうだから言わないことにしよう。

 

「ところで、ケイリは知ってるかしら?」

「ケイリお姉さまですか? はい、知ってますよ」

 

 俺は少女に自分の目的の人の事を聞く。 エルダー選挙で上位だった事もあり、彼女も知っているようだ。

 

「じゃあ、今何処に居るか解るかしら?」

「すみません、お姉さま……私はご存知無いです」

「という事は食堂にはいないのね?」

「はい、私は見ておりません」

 

 っと言うことはケイリは食堂以外に居るのか、じゃあ食堂には入らないでいいか……。

 

「ありがとう、助かったわ」

「い、いえ此方こそお姉さまに会えてとても嬉しかったです!」

 

 少女が頬を赤くしながら俺に返事をする……何だろうちょっとこの体でもいいかなって思ってきた。

「じゃあこれで……ご機嫌よう」

「ご、ご機嫌よう! お姉さま!」

 

 とりあえず食堂には用が無いという事が分かり、俺は引き替えそうとする……が。

 

「あれ?千早お姉さま?」

 

 食堂から出てきた別の少女に見つかってしまった。 そしてその少女の声を食堂に居た別の少女が聞いてこっちを見た……あ、何か嫌な予感がする。

 

「え……あ!ち、千早お姉さま!」

「千早お姉さま! 何時此方に!?」

「わぁ……あちらが千早お姉さま……」

「何て美しい……」

 

 食堂に居た人達の視線全てが俺に向く……あ、何かヤバイかもしれない。

 

「え……えぇっとお久しぶりです。 皆さん」

 

 俺はとりあえず周りの視線の多さにやや引きながらも挨拶をする。 こんなに人に見られた事は初じゃないか?なんて思っていると周りから歓声が起きる。

 

「あぁ、千早お姉さまですわ!」

「えぇ……まさかもう一度千早お姉さまの姿を見られるとは思いませんでした……」

「はぁ……戸惑っていらっしゃる姿もやっぱり美しい……」

 

 あぁ……エルダーって大変だな……っと思いつつ現実逃避しかけたが、済んでの所で現実と向き合いキラキラという表現が一番似合う顔をしている少女達に目を合わせる。

 

「あ、あの?皆さん? ちょっと聞きたいのだけれども……」

「はい!何ですか千早お姉さま?」

「い、いえやはり良いです」

 

 ケイリの事を聞こうとしたが、少女達の何か期待に満ちた目に何故か嫌な予感を感じたので聞くのを止める。

 

「千早お姉さま何でも言って良いですよ!」

「はい!私達が手伝える事であれば精一杯手伝わせていただきます!」

 

 そういえばエルダーの頼み事とやらで生徒がずっと聖應女学院に居て、何日か草刈りが出来なかったことが有ったな。 確か烏の巣探しだったかな?何てことを思い出し、俺は思った。 この姿で聖應女学院の生徒に頼み事は絶対にしないようにしようと。

 

「いえ、用事は有りますがすぐに済むことです。 私はのんびりと校舎を周りながら済ませますよ」

「では!千早お姉さま私もお供します!」

「では私も」

 

 ……俺はこの後、どうすれば食堂から脱出出来るか生徒達と適当に話しつつ考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はその後「かなり大事な用事が有る」みたいなニュアンスを含めた話をしながら「妃宮千早」の顔での笑顔で何とか食堂から抜け出した。 ま、聖應女学院の生徒達も俺が困っているのが分かって遠慮してくれたお陰でもある。

 

「ま、あんなに人に囲まれるのはもう勘弁だけどな」

 

 流石にあんな人の波に巻き込まれるのはもう勘弁だ。 驚きを超えて恐ろしい位だ。

 

「……さて、この後どうしたものか……」

 

 もう一度あんなに人に囲まれると流石に俺の精神が保たないのでケイリを探すのを諦めて宿直室に戻ろうとした時

 

「え?あっー! 千早お姉さま!?」

 

 俺の前におでこが特徴的な少女……確か陽向だっけ?が居た。 その隣には綾も居る。 ……確か「妃宮千早」は寮生だった筈。 そして陽向も寮生で一年間「妃宮千早」と居た。 これは絶体絶命というものかもしれないな……。

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