午後7時頃、僕が玄関の扉を開けた時、目の前に史が学校の制服を着て立っていた。
「おかえりなさいませ、千早様」
「うん、史ただいま」
僕は史からの言葉に普通に返事をし靴を脱ごうと姿勢を低くする。 その時前に立っていた史からぽつりと質問をされる。
「千早様、どうして今日は聖應女学院に来たのですか?」
「……へ?」
思わず靴を脱ごうとした手が止まってしまった。 ……今何て?
番外編 白銀の姫君のお話
「史、今何て言った?」
「ですから何故千早様は今日聖應女学院に入らしたのかを」
僕が聞き直しても史は同じ事を言った。 どうやら聞き間違いでは無いようだ。
「僕は別に聖應女学院には来てないよ……どうしてそんな事言うの?」
「千早様、昼間の電話は覚えていらっしゃいますか?」
「昼間の電話?」
そういえば史が2時位に電話して来たっけ。 確か内容は「千早様は今聖應女学院にいらっしゃいますか?」だったけ?
「うん、まあ覚えてるよ」
「その後聖應女学院で千早様を見かけたのですが……」
「え、まさかそんな事は……」
有り得ない。 今日はずっと大学に居た。 聖應女学院には一度も行ってはいない。
「ですが証拠も御座いますし……」
「証拠?」
「はい、こちらでございます」
史が自分の携帯を僕に向けてくる。 そこには……
「え、僕!?」
「はい、どっからどう見ても千早様です」
食堂で夏服を着て微笑む僕の姿が携帯には映し出されていた。 そして周りには夏服を着た少女達が囲んでいる。 服装からして間違いなく聖應女学院の光景だ。 けど聖應の夏服なんて着た覚えがない。
「これは……どういう事?史」
「私にも分かりません。 というか私としては千早様が聖應女学院に来ていなかった方が驚きです」
「来るわけないだろ。 下手したら正体がばれるかもしれないんだから」
「……そうですね、では千早様。 こちらの方はどなたなのでしょうか?」
史が携帯の画面をこっちに向けながら首を傾げる。
「そっくりさん、っていうのは?」
「にしては声などが似すぎてました」
うーん……じゃあ誰だ? 僕が玄関で悩んでいると不意に携帯が振動する。 メールが着たようだ。
「雅楽乃?」
「哘さんからですか?」
「ああ、そうみたいだ」
何かメールの内容に嫌な予感がしつつもメールを開く。
『千早お姉さま! 私には内緒で聖應女学院にいらしていたそうですね。 会えなくて残念です。 また千早お姉さまとお会いできれば嬉しいです』
……やっぱり嫌な予感が当たったよ。
「完全に僕だと思われてるね」
「やっぱり千早様は行っていないんですか?」
「行ってないって言ってるじゃないか」
「そうですか……そういえば千早様はピンクの下着を持っていませんでしたね」
何か史が色々な意味であり得ない爆弾発言をしてきた。
「史、それは何の話?」
「いえ、聖應女学院に居た千早様はピンクの下着を着ていたので」
「どうしてそれで僕じゃないと思えないんだ史は」
「すみません、女装をしている千早様はピンクの下着を履いていても違和感が無かったもので」
「そこには違和感を持ってくれよ……」
僕はがっくりとOTLの体制で玄関に倒れた。 まさか史からまだそんな目で見られていたなんて……。
「すみません、本当に違和感がなかったもので」
「更に追い討ちを掛けないでくれよ……」