日曜日、俺は生徒相談室でのんびりと絵を描いている。 理想の結晶を身につけながら絵を描いてはいけないとあの事件の後ケイリに言われた。 俺の目に反応して勝手に変身してしまうらしい。 なので絵を描くときは適当な場所に放置している。 ……それはともかく
「暑いな……」
今は7月の後半、もう夏真っ盛りである。
「そろそろ夏休みか……」
「やっほー、陸さん!」
「あ、失礼します……」
正午を過ぎたあたりで生徒相談室に綾と槐が2人で入って来た。
「どうした? 何か用か?」
「はい!有ります!」
俺が2人に声を掛けるとえんじゅが意気揚々と答える。 そんなに意気込んで、一体何の用なのだろうか。
「そうですね……陸さんはこれから暇ですか?」
「暇?……まあ暇っちゃあ暇だな」
槐の質問に何も考えず答える。 午後も絵を描く予定しかないし、暇と言われれば暇だ。
「じゃあ陸さん! 私達と一緒に買い物に行きませんか?」
「買い物?」
「はい!」
買い物か……
「別にいいが……何を買いに行くんだ?」
「特にそれと言って無いんですけど……綾が陸さんと一緒に行きたいって」
「は、葉月さん! それは言わないで下さいよ……」
綾が槐の言葉に慌てている。 どういう事だ?
「あ、陸さん。 綾が全然外に出ないんですよ」
「そうなのか?」
「い、いえそんな事は……」
「平日はともかく休日さえ部屋に居るか、校内を散歩しかしていないじゃないですか」
「そ、そうですけど……」
ああ、そういえば綾は聖應に来るまでずっと家の中で過ごしてたんだっけ。
「だから、私が外出デビューの為に買い物に行こうという訳です」
「なる程……」
というか綾は3ヶ月ずっと校内で過ごしてたのか……ある意味凄いな。
「その時に「綾が行くんなら陸さんと一緒に行きたいです」って言いましてね」
「葉月さん……」
綾が顔を真っ赤にして槐を見ている。 よく分からないが綾にはやや積極的な位の槐と居るのはいいな。
「分かった、ちょっとここで待っててくれ色々と準備してくる」
「あ、ありがとうございます!」
「は~い!」
俺が宿直室へ外出の準備をしに行った時、綾の顔は明るい笑顔になっていた。
「で、どこまで行く?」
「そうですね……駅前のショッピングモールはどうですか?」
聖應女学院の正門の前で槐と話す。 外出デビューとは言っていたが大した所には行かないようだ。 ちなみに理想の結晶はバッグの中に入れてある。 生徒相談室に放置していて、優雨ちゃん辺りが触ったら大変だからな。
「綾、ショッピングモールはどこらへんか分かるか?」
「す、すみません……聖應女学院の校門までパパが送って来てくれたので駅が何処にあるのか……」
まあ、そんな事だろうな。 綾の父親はかなりの娘好きみたいだったし。
「あ、私は分かりますよ」
「むしろ知らない方がおかしいだろ」「す、すみません……」
「いやいや、別にお前を責めてるわけじゃないから」
俺の前で頭を下げる彩を見て1つため息を着いた。 綾はやっぱり人見知り過ぎるな。
「ま、綾はこの後覚えればいいんだよ」
「は、はい! そうですね……」
槐の励ましの言葉にも驚きながら反応する綾。 自分が世間知らずなのを気にしてるのだろうか?
「まあ、さっさと行くぞ。 こんな所で他の生徒に見つかりたくないし」
「あ、はい!」
俺は喋りながらゆっくり歩く。 それにつられて綾と槐も歩き始めた。
「わあ!」
聖應女学院から出発して、しばらく経った時、綾が声を上げた。
「どうした? 何かあったか」
「あ、お店を間近で見るのは初めてで……」
「ああ……」
ちなみに綾が見ているのはコンビニだ。 確か聖應女学院に一番近いコンビニで聖應の生徒達はよく利用してるらしい。 ……しかしコンビニだけでこの感激ようは……
「綾、ショッピングモールに行っても気絶しないでよ?」
「え?どういう事ですか?」
槐が綾の肩に手を置きながら頼みごとをする。 けど綾なら本当に気絶しそうだな。 俺の予想以上の箱入り娘だし。
「……今更ながら心配になりますね……彼女の将来が」
「……同意だ」
コンビニをキラキラと目を輝かせながら見ている綾を見ながら槐は苦笑いしていた。