処女はお姉さまに恋してる 陰の庭師   作:雹衣

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8月 お盆の寮

「ねえ陸、今日は暇かな?」

 

 倒れそうな暑い夏……世の中ではお盆休みといわれる時期にもかかわらずケイリは朝から宿直室に来て早々にこう言ってきた。

 

「どうしたんだ急に」

「いや、お盆休みに寮に残っている人達と遊ぼうという話がさっき出てね。陸もどうかなと」

「……寮?」

 

 俺はケイリの話を聞きながら、頭で今寮にいる少女達を思い浮かべる。  確か槐と桜……それに優雨ちゃんと陽向とかいう3月に会った子の4人が在籍していた筈だ。 何の遊びかは知らないが、ケイリを含む5人居れば大体のゲームは出来そうだが……。

 

「いや、槐と桜は居ないよ。 2人共両親の元に帰省中。 雅楽乃と雪も誘ったけど陸もどうかなってね」

「……一体何のゲームをする気だよ」

 

 ケイリのやるゲームって何かオカルトな物をやりそうだ……こっくりさんとか。

 

「そういうのとは違うよ。 余り馴染みが無いゲームかも知れないけどね」

「……まあ行っても良いが。 草刈りが有るから夕方からになるぞ。 それでも良いか?」

「構わないよ……じゃあ、ちゃんと来てね。 優雨達も待ってるから」

 

 そういうと裏口から出て行くケイリ。 相変わらず図々しいというか何というか……けどケイリのゲームねぇ。

 

「少し気になる」

 

 俺は庭仕事の道具を持ちながらそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、庭師さん! 皆揃っていますよ! どうぞどうぞ」

「ああ、お邪魔する」

 

 草刈りを終え日が暮れ始めた頃、俺は寮で陽向に出迎えられていた。

 

「壁紙替え以来ですね」

「そうだ……よな?」

 

 俺が千早になっていた時にも会ったがあれをノーカンにすれば3月の壁紙以来だな……多分。

 

「も~、ちゃんと覚えておいて下さいよ」

「悪い悪い……そういえばケイリとかは?」

「今ちょっとゲーム中でして……手が放せないんですよ」

「ふーん……」

 

 ケイリが持って来たというゲームだろうか? 俺は内容に少し興味を持ちながら陽向と共にリビングに入る。 そこでは……

 

 

「うたちゃん……かな?」

「いえ、私ではないです。 優雨ちゃんでは?」

「私じゃない」

 

 優雨ちゃんと哘さんと淡雪が3人で何やら話し合い……というか疑い合っている。

 

「何あれ?」

「ケイナお姉さまが用意したゲームです。 確か汝は人狼なりやとかいう……」

 

 「汝は人狼なりや」……確かアメリカ辺りで出来たゲームで市民側と人狼側に分かれて人狼が市民を殺し、市民が人狼だと思われる人物を処刑する……という意外とハードなゲームだった気がする。

 

「何か思っていたよりメジャーなゲームを持って来たんだな」

「……」

「陽向?」

 

 俺は疑い合う3人を見つめながら陽向に呟くが返事がない。 彼女の方を向くと口の前で指をバッテンにしている陽向の姿があった。

 

「ああ、そういえば」

 

 このゲームは人狼に殺される。 もしくは市民に処刑されると退場となり、話してはいけなくなる。 つまり陽向はもうやられてしまったようだ。

 

「……だから俺を迎えに来たのか」

「……」

 

 俺が呟くと無口で顔を縦に振る陽向。 ……さっきまで普通に喋ってたのは廊下だから良いのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、陸」

「あ、白崎さんごきげんよう」

「ごきげんよう」

「りく、こんばんは」

「どうも。悪いなこんな女子の中に入って」

 

 その後、一度ゲームが終了した後に皆が一斉に挨拶をしてくる。 メンバーは朝言われた通り、ケイリに哘さんと冷泉さん、それに寮生の優雨ちゃんに陽向の5人だ。

 

「良いよ。 みんな陸の知り合いなんだ。 性別なんて気にしないよ」

「そうか。 で、さっきやっていたゲームはケイリの持ち物か?」

 

 俺がケイリに対して聞いてみると彼女は首を横に振り否定をして来た。

 

「いいや、これは陽向が寮の押し入れから見つけた物だよ」

「面白そうだからやってみたら意外とハマっちゃったんですよね~」

 

 そう言いながら笑う陽向。 彼女が見つけたという事は「汝は人狼なりや?」は昔の寮生が残していった物のようだ。

 

「あの、白崎さんもやりますか? 結構ハマりますよ?」

「ええ、雪ちゃんの言う通りです。 さっきのゲームも優雨ちゃんに見事騙されてしまいました」

「……私、おおかみだったから」

「うーん、そうだな……俺としてはケイリのゲームが気になるのが」

 

 「汝は人狼なりや?」もやったら面白そうだが、もう夕方だしやり始めるとケイリのゲームは絶望的だろう。

 なら今日気になっていたケイリのゲームをしたい。

 

「じゃあ、私のゲームをやろうか。 ずっとそっちのゲームをやってると私のゲームが同じ運命を辿りそうだ」

「え、ケイリお姉さまゲーム置いてくつもりだったんですか?」

「ええ、私1人じゃ遊べないし。 だったら未来の後輩に渡すのも良さそうじゃない」

「それ、綺麗に言ってるが禄でもない事だからな」

「冗談だよ」

 

 そう言い俺に不思議な笑みを浮かべるとケイリは大きめのテーブルにあるボードゲームを置いた。

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