処女はお姉さまに恋してる 陰の庭師   作:雹衣

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8月 ケイリの目的

「えっと1、2……「毒霧によって意識不明になりスタートに戻る。 罠カードがあれば無効」ってえぇ!? 罠なんて無いよ!」

 

 冷泉さんが止まったマスに対して悲鳴のような声を上げる。

 ケイリが持ってきたゲームは意外にも普通で双六であった。 分かりやすくスタートからゴールへ向かいマスに書いてある内容に従う普通のあれだ。 時々山札からカードを引いたりはするが、それでもまだまだ普通である。

 

「けどこのゲーム良くスタート地点に戻るな」

「私も戻された」

「もう優雨ちゃんと雪ちゃんが1回、白崎さんが2回戻されてしまいましたね」

 

 俺の言葉に優雨ちゃんと哘さんが同意する。 このボードゲーム、マスの数が人生なゲームより少ない分かなりシビアだ……。

 

「ふっふっふ……そんな中私は一位を独走中です!」

「そんな陽向にプレゼント。 私の駒「魔女」の効果で1回休みだよ」

「え? うぎゃああぁ!」

 

 俺達がスタート地点に戻っている中、悪者の如く笑っていた陽向がケイリから攻撃を受け悲鳴を上げる。

 このボードゲームの特徴がこの能力である。 駒には幾つか種類が有り、駒によって幾つか能力がある。

 ケイリの駒である「魔女」は特定のプレイヤーを1人、1回休みにするもの。 とは言ってもそんなばかすか使えるものではなく特定のマスに止まった時に山札から引けるカードの1つ、「魔力」のカードを捨てなければならない。

 

「さて、俺は3位だし頑張らないとな」

 

 そう言うと俺はサイコロを振り、出た目の数だけ進む。

 

「「沼地で人食い蛙と遭遇。 山札からカードを1枚引き、6マス戻る。 勇気カードがあれば回避」……勇気カードは無いから戻るのか」

 

 俺は自分の駒を6マス戻しカードを引く。

 ちなみに俺の駒は「市民」。 勇気カードを使えばサイコロの出た目の2倍だけ進めるという駒だ……正直勇気カードが全然手札に来ないから余り役立っていないが。

 

「……じゃあ、私の番」

 

 俺が自分の山札を見ながらため息をつくと、優雨ちゃんが何時もの口調で喋りながらサイコロを振る。優雨ちゃんの駒は「騎士」力カードがあれば他の駒からの妨害を防ぐという優雨ちゃんに似合わず力強い駒だ。

 

「「妖精さんにからかわれ道に迷う。 1回休み」」

「妖精……何でも有りだな。 これ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、俺が何度もスタート地点に戻ったり、冷泉さんとさそうさんと優雨ちゃんが俺を追い越し至って平和に3位を目指していたり、陽向とケイリが妨害しあいの1位争いを繰り広げたりしながらも俺は優雨ちゃんに慰められながらビリでゴールした。

 

「ふふふ……願いを叶えるのはこの私だ~!」

 

 ボードゲームが終わった後、陽向が高らかに宣言する。 ちなみに願いというのはこのボードゲームのあらすじからだろう。 「黒い森の中にある願いを叶える宝石。 それを求めて何人もの人々が森に入る」……うん、如何にもファンタジー。

 

「けど願いねぇ……それだけで平民が危険な森に入るのかねぇ?」

「とても叶えたい願いが有ったのでは?」

「娘さんが病気で……みたいなものですか?」

「それは、かわいそう」

「優雨ちゃん、ただの想像だから」

 

 みんなでわいわい騒ぎながらボードゲームを片付ける。 外はもう暗くなり始めていている。 一応俺も職員だし聞いておくか。

 

「お前等は寮に泊まるのか?」

「あれ? 白崎さんお聞きになっていないんですか?」

「ああ、ごめん雅楽乃。 陸には言ってないんだ」

「まあ、そうなのですか?」

 

 ……ケイリとさそうさんの会話からするとどうやらケイリは何やら企んでいるようだ。 正直、妖しい。

 俺のそんな心情に気づいてかどうか知らないがケイリが俺の方に微笑む。

 

「いやいや、ただ今夜は屋上で天体観測をするだけだよ」

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