処女はお姉さまに恋してる 陰の庭師   作:雹衣

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4月 星の女王と小さな姉候補

「はっきり言って生徒相談室はかなり汚いぞ。 それでもいいか?」

「うん、いい」

 

 今俺は優雨ちゃんと二人で生徒相談室を目指し歩いている。 ちなみに何故優雨ちゃんが一緒にいるのかといえば俺の描いていた絵を見たいというやや変わった理由のようだ。 俺の絵は自分からすればそんなに上手くは無いんだが俺の絵を見た人は大体「上手い」と褒める……まあ社交辞令なんだろうけど。

 

「やあ陸、卒業式ぶりだね」

「ん? ああケイリ。 どうした?」

 

 俺と優雨ちゃんが廊下を歩いていると特徴的なブルネットの髪……ケイリとばったり会った。 手にはバッグを持っているのでおそらくこれから帰る予定なのだろう。

 

「どうしたって……何か話す予定が無いと話しかけちゃダメなのかな?」

「いや、どういうわけじゃあ無いけど」

「それに陸は優雨と知り合いだったんだ」

「うん、きのう会った」

「優雨ちゃんケイリと知り合いなのか?」

「度々寮に遊びに行ってるからね」

 

 ケイリは何を考えてるのかよく分からない微笑みをしながら着いてくる。 どうやら生徒相談室まで優雨ちゃんと一緒に来るようだ。

 

「そうだ、陸。 その目……どう?調子は?」

「まあ別に変わりはないな。 いつもと一緒だ」

「目……?」

 

 俺の能力の事はケイリには話している……というか初めて会った時からケイリには何故かばれていた本当にケイリって何者なんだろう……。

 

「そう、なら特に言う事も無いね。けど気をつけておいて損はないよ。イレギュラーな力には代償が付き物だからね」

「なんだその実際にイレギュラーな事が有ったような言い方は」

「まあ、有るかと言われればあるね」

「ケイリなら本当に有りそうだな……」

 

 俺はため息を一つ着く。 それを見てケイリはまたミステリアスな笑みを浮かべ、優雨ちゃんはさっきの会話の意味が理解出来ず首を傾げていた。

 

 

 

 

 

「さて、生徒相談室に到着したな」

「……ここに来たの、初めて」

「まあ、ここは教室とも離れているし、用事が無い人はこっちまで来ないだろうし知らないのは無理も無いよ優雨」

 

 しばらく3人で雑談をしつつ歩きようやく生徒相談室に着いた。 しかし生徒相談室が生徒の目に着きづらい所にあるのはどうよ。

 

「じゃあ、開けるぞ」

「うん……」

 

 いきなり開けるのもどうかと思い一声掛けた後扉を開け、電気を付ける。 その部屋の中は壁一面に飾られた少女の肖像画。 そして多すぎて掛けられない絵は床に規則正しくまるで絵の描かれたパネルのように敷かれている。 俺にとっては見慣れた光景だが優雨ちゃんは小さな口をポカンと開けて分かりやすく驚いていた。

 

「すごい……これ全部りくが描いた絵?」

「ああ、そうだ。」

「いつも思っていたんだけど全部で何枚くらい有るのかな?陸」

「え~っと風景画が4枚と肖像画が50枚くらいじゃないか?」

「これは素直に感心するよ。……陸は去年も結構描いてたけどどの絵も丁寧に描かれている。 本気で画家を目指した方が良いんじゃないかな」

「中学の頃は本気で画家になりたかったんだけどな……」

 

 中学の頃は本気で画家になりたかった。 俺は絵を描くのがずっと好きだった。 けど両親は……

 

「りく?」

「これは聞いてはいけない事情って奴かな?」

「ん?まあ聞いて欲しくは無いかな」

 よく思えば両親とはもう10年も連絡をとっていないんだな。 俺は中学の頃を思い出しそう思った。

 

 

 

 

「そういえば新しい寮生の子とは会ったのか?」

「……あ、今日、寮生が来るからはやく帰ってくるようにってひなたが……」

 

 生徒相談室に赤い光が差し込んで来た頃。 俺たちは生徒相談室で特にすることも無く三人で雑談をしていたのだが俺の何気ない質問で優雨ちゃんは用事を思い出したようだ。

 

「そう、それじゃあ早く寮へ帰らないとね。 私もしばらく陸と話してから帰るよ」

「うん……りく?」

「何だ?」

「また来ても、いい?」

 

優雨ちゃんが頬を赤くし恥ずかしがりながら俺に聞いてくる。 多分彼女は我が儘……というか要求という物を自分からするのが苦手なのだろう。 自分が要求する前には周りがその要求を満たしてしまう。 満たされなくても相手に迷惑を掛けないように妥協してしまう。 多分そんな娘なのだ……。

 

「りく?」

「ん?……ああいいよ何時でも来いよ」

 

急いで生徒相談室から出て行った優雨ちゃんを見て俺は笑顔に成っていた。 そして頭で思った事を否定する。

 

「いや、ただ人付き合いが少ないだけかな……」

「優雨の事かな?」

「ああ、俺とは絵が有ったおかげでここまで打ち解けられたが、違う出会い方だったらここまで仲良くは成らなかっただろうなぁと思ってな」

「ふーん……」

 

 ケイリが静かに見透かしたかのような笑顔を浮かべている。 俺の中ではこの表情が一番ケイリらしいと思っている。 そのケイリは生徒相談室にある描きかけの絵を見ながら俺に話しかけてきた。

 

「そういえばまた聖應の生徒なんだね」

「ああ、そうだな……何でだか分かるか?ケイリ」

「まあ、予想くらいなら……」

「予想が出来るのに驚きだよ」

 

 何でこんなオカルトな能力に推測が出来るんだ……。

 

「多分……思い出じゃないかな?」

「思い出?」

「そう、思い出。 聖應女学院の生徒の思い出を君が見てるんじゃないかな」

「ケイリが言うと本当にありえそうだな」

「残念ながら褒めても何も出ませんよ?」

「別に褒めたつもりは無いけどな」

 

 聖應女学院の、思い出ねぇ……。

 

「じゃあ私もそろそろ帰らせて貰うよ陸、その能力に変化があったらすぐに教えてね」

「ああ、この事を話せるのはケイリだけだしな」

 

 乱れが無い綺麗な動きでケイリは生徒相談室から出て行った。 しかし聖應女学院から思い出を見させて貰えるようになるような大きな出来事俺の人生にあったかな?

 俺は一人になった生徒相談室で俺はしばらく考えていた。

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