ある日虚無感に飢えていた少年が自分の生きる意味と最愛の人を思い出し、奮起する話。
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――自分は何なんだろう、物心ついた時からの疑問だった。
父が幼稚園の時に亡くなった際も悲しかった。
だがそれだけだった、自分にとって何か世界が違う気がした。
心の中に何かぽっかりと穴が空いているような感覚。大切な……それこそ世界よりも大切ですべてを敵に回してもいいと思える物が無いような虚無感。
そんな感覚が俺の心を支配していた。
それは何年も続いた。幼稚園を卒園し、小学校に入学し、友達が出来て、転校して別れて、中学校に入学し、新しい友人が出来て、高校入学が決まった時もずっと続いていた。
一度だけ母さんに相談したことがある。しかしその時の母さんは、顔を赤らめ歓喜極まった顔をして使い物にならなかった。やっとその時が来たのね……なんて言っていたけど。
記念すべき高校入学初日。
その日の感覚は人によってそれぞれだろう。
たとば思い人と同じクラスになれただとか。会ったことのない同級生たちに緊張したりだとか。カッコいい人とかが居てそわそわしたりだとか。
俺、五河ユウにもそれは適応される。いつものような無気力な精神を音楽で無理矢理叩き上げ、クラスメイト達を見回していた。
俺の母はいわゆる転勤族という奴で転勤ばかりしていた。小学校の頃は転校していたが中学生になった時には転校するのも面倒になったので母さんだけの単身赴任という形で一人暮らしするようになったのだ。
この私立陽月学園は初等部から大学部までの一貫進学が可能な超エスカレーター校だ。中学校は少し遠い公立校に通っていた俺は私立高校のすごさに圧倒された。
公立高校とは比べ物にならないぐらいの大きな校舎や体育館、金のつぎ込まれた設備などは全て清潔さと新しさを醸し出していた。
入学式に後に行われた各部のオリエンテーションも最高の物だった。たった一分、されど一分。一分という短い時間に凝縮された、部活の紹介は確かな密度と見た人間に興味を持たせるには十分だったと言えるだろう。
だが俺にとっては何かが足りない。
いつも、いつもそうだった。どれだけ感動的な物を見ても、どれだけ素晴らしい物を感じても俺にとっては全てがフィルターの外の物事に見えてしまう。
すべての出来事が透明な板の向こうで起きているようなことに感じてしまうのだ。
「はあ…………」
このため息を吐くのも何度目だろうか。
何年も続いたこの感覚、自分が自分でないような。何かが足りなくて、それでいて心にぽっかりと穴が空いているようなこの虚しさ。自分は何かを忘れている、何故かはわからないが確信ならあった。
自分の虚しさを考えていると上の空の内に自己紹介が終わり、希望する部活動のアンケートが配られていたらしい。急いでペンを走らせ、名前を記入する。やりたい部活も無いので部活欄には無記入だ。
後ろから回されてきたプリントを前の男子に渡す。
「ふんふん……あれ~名前が未記入の物がありますね~」
「あっ……すいません、たぶん俺です、慌ててて」
そういうのもしょうがないよな。特に中学の出席番号で書いちゃったり。
「…ツインテール部? あら、この学校にツインテール部なんて部活ありましたっけ?……あ、新設希望の部活ですね~?」
「え!? いや、俺は、その…」
ツインテール?なんだ?聞いたことのないフレーズなのに……俺の心に沁み渡るような……。
ツインテール……一体何なんだ?こんな感覚は生まれて初めてだ。
「そうですか~、ツインテール部ですか~。観束君はツインテールがとっても大好きなんですね~」
「はい、それはもちろん!!」
観束という生徒に酷い既視感を覚えた。
…………俺はどこかで見たことがある、ここまでツインテールを愛する者を……。
――俺はいつだって、心にツインテールを
「…………うぅっ……」
酷い頭痛だ。思わず、頭を抱えてしまうほどの痛み。辺りの声が殆ど聞こえなくなってしまうほどの頭痛が俺の頭を襲う。
痛みが治まった時にはHRも終わり放課後になっていた。
机にうずくまっていた所を隣の席の女子生徒が声をかけてくれる。
「大丈夫?先生呼ぼうか?」
俺の顔を覗きながら声をかけてくれる女子はかなりの美少女だ。覗き込む際の二房の髪が素晴らしく、主の動きに合わせて自由に、しかし規律のとれた素晴らしさで跳ねている。
「大丈夫、後はもう帰るだけだしさ」
礼を言いながら、教室を出る。クラスメイト達が帰宅していく様子を見ながら先ほどの感覚を思い出す。
「ツインテール……」
そのフレーズを言った瞬間。心の奥底から間欠泉のように力が溢れ出てくるような、俺のぽっかり空いていた穴がふさがっていくような感覚がした。
なんだこの感覚は……。初めての感覚なのにそれが俺のすべてであり正しい姿である気がした。
ツインテール……コレは調べてなくては。
俺は家に帰る予定を止め、ショッピングセンターに向かった。ツインテールが何なのか調べるために。
「これがツインテール……」
本屋にさっそく言った俺は、ツインテールの本は無いかと店員に聞いた。変な顔をした店員が進めてくれたのがツインテール特集と言う雑誌。
そこには大小様々なツインテールが写されていた。
開けた駐車場のベンチに座り、一緒に買ったおにぎりを食べながら雑誌を眺める。
ツインテールとは大雑把に言えば左右で分けた髪のこと。長髪の方が似合うが短髪で小さくまとめてもいいそんな髪型だった。
そう我が学園の生徒会長や隣の席の女子生徒がしていた髪型。あれこそがツインテールだったのだ。
なんてことをしてしまったのだろう。俺はツインテールを眺める瞬間を数秒とはいえ逃がしてしまった。なんてバカなことをしてしまったのだろう。
雑誌に写された写真の上からツインテールを撫でる。虚しい、確かに虚しいがそれは求めるものがあってのこと。今までの俺は求める物すらない虚しい状態だった。
だが今はどうだろう。ツインテールという一つの物に熱中し、少しとはいえ情熱を燃やしている。今の俺は点灯し始めた炎と言えるかもしれない、だがそんな小さな炎でもどんな強風が来ても消える気はしなかった。
雑誌を眺めながら今までにないぐらいに微笑む俺の横で、爬虫類のような怪人が現れたのに俺は気づかなかった。
一拍置いて俺の耳横で炸裂音が響き渡る。それはただの自動車の爆発だったのだが、人生の中で最もリラックスしていたと言っても過言では無かった俺はそのまま気絶してしまった。
「ふははははははは!!この世の生きとし生けるすべてのツインテールを我らの手中に収めるのだ―――――!!」
そんな声が聞こえた気がした。
「そのツインテールを親指と人差し指でつまんで、俺の頬をペチペチ叩いてくれぬか?」
なんだこの声……?聞いたことがあるような……だけど、記憶に残っているわけじゃない。台詞だけで言えば変態そのものだが、声色は……変態だった。
横になって寝ていたのかベンチから立ち、辺りを見回す。そこには数人の倒れている人たちが居た。
そこにはあの素晴らしいツインテールの持ち主、神堂会長も居る。だが全員に共通するのはその髪の毛が全てほどかれていることだ。
あの素晴らしいツインテールが見る影もない。
「なにが……起こって……」
「きゃー!!」
女の子の悲鳴が聞こえた。思わずその方向を注視してしまう。
そこには爬虫類を二足歩行にしてトゲトゲの鎧を着けた怪人と………一人の天使が居た。
「ツインテール……!」
その女の子はツインテールだった。
ツインテールをするためだけに生きている、そんな風に思わせてくれる。赤い髪が自由に舞い、主人の素晴らしさをなお響き奏でる。
恐怖した顔もかわいらしく、それでいた怖さのあまり自分のツインテールを掴むその仕草もグッドだ。
まさしく究極のツインテール…………神型だった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
女の子を、彼女を見た瞬間。俺の頭の中に処理できない程の記憶が封を切ったかのように流し込まれた。
――嬉しい誤算、とはこのことか。やはり予期せぬ難敵に立ちはだかられてこそ、武人の血が騒ぐと言うものよ
――お前は正真正銘、ツインテール属性を持つエレメリアンなんだな……!
――お主の、ツインテールへの深い愛を侮った!
――俺達は、三人でツインテイルズなんだ!!
――素晴らしき健闘だった!わが生涯最強の敵……そして、わが最高の想い人よ!!
――お前がツインテールを愛する限り……そんなこともあるかもな
思い……出した!俺の記憶を……!俺の最愛の人を……!
先ほどの倒れている人たちを見回す。彼女たちは
――ツインテール属性
世界最強の属性であり、俺が愛してやまないもの。
なぜ俺は忘れていたのだろうか、なぜ俺は忘れたままで居られたんだ。
震える足を叱咤し、地面に立ち上がる。
思いだせ、俺が愛してやまない物を。思い出せ、俺の戦い方を!
リザドギルディはテイルレッドが倒す。ならば俺は彼女たちのツインテールを取り戻してあげるだけだ!
落ちていた鉄パイプを掴み上げる。俺が立ったことに気付いた数人の
だが俺に引くことは許されていない。なぜならば俺は奪う側から守る側に移った、
五河ユウ
身長:165cm
体重:53kg
系統:ツインテール恋する男子
その他属性傾向:転生
秘密:ユウという名前は優や雄が元だと思っているが実際は《
趣味:無し
特技:剣道
好きなもの:なし→ツインテール
弱点:花粉、前世
ドラグギルディが人に転生した姿。ツインテール愛した結果である。中学時代は剣道部だったが無趣味さが災いして退部する。入学初日、ツインテールという単語で覚醒し本当の自分を取り戻した。テイルレッドにガチで恋をしているが総二には興味が無い。