何時からだろうか、心にぽっかり穴の空いたような感覚を持ったのは。
何故だろうか、いっときの間は埋まる穴が、次の日にまた空くのは…
いくら酒を飲んでも埋まらない。いくら戦っても埋まらない。
この穴を埋めてくれる存在はどこかにいるのだろうか……
霊夢達といるのは楽しい。今の生活を不満に思っているわけではない。
酒を飲みながら霊夢達の成長を見守るのは存外に悪く無いと言える。だけど、それでも穴を埋めることは出来なかった。
最後に満たされたのは、あの吸血鬼が異変を起こした時。紅い霧を発生させるとかいうはた迷惑な異変。
だけど、その後に行われた宴会では何故か私の心は満たされていた。
随分と前に勇儀に聞いたことがある。その時あいつは私に伴侶を見つけろと言ったが、正直あいつも私も鬼としての挟持が強く、そこらの男では魅力に感じない程度には力不足だ。
何故かはわからないけど、幻想郷で有名な奴は大抵女だ。こればっかりは何故か判明する気はしない。
ボーっとしながら空を見上げて伊吹瓢を傾ける。味はいい。だけど、それだけだ。何の気持ちも晴れもしない。
今の心境を言葉に表すのは簡単だ。
空虚、その一言に限る。何が零れ落ちたかはわからない。だけど、何かが無いのはわかる。
一体私を苦しませるのは何だろうか……
酷く胸も痛む気がする。本能ではわかっているのに、頭ではわかっていないような感覚。
気持ち悪い。だけど、必要なことだと思う。
葛藤に陥りそうになる。陥るのならとことん陥るのも悪くないかもしれない。
丁度正午の時間、煎餅を齧り、箒で境内を掃除している霊夢を見る。
よく飽きないね。滅多に人も来ない神社の巫女なんてさ。仕えるべき神も存在しない博麗神社の巫女。
それはさておき、心に空いた穴だ。一体いつから穴が空いていると感じたのだろうか。
今思えば、ずっと感じている気がする。いや、空いていなかった時期は覚えている。紫が幻想郷に誘う前までは少なくともそんな空虚な思いはしていなかった。
もしかすると、この幻想郷に原因はあるのかもしれない。だけど、そんな事があれば異変として紫達が動いてどうにかしているだろう。でもそんな話は聞いたこともない。
だけど、時期的に幻想郷にやってきた辺りだ。その時に何があったか……月面戦争には参加しなかった。
他には……妖怪の山から地底に移り住んだ事くらい……これは関係ないと思う。
わからない。どう考えてもわからない。
それもそうだ。千年近く理由のわかっていないことを今更簡単にわかるはずがない。
紫ならば答えてくれるかもと問いただした記憶はある。だけど、意味は無かった気がする……
結局の所、謎に包まれたままってことかい。
これからも私は空虚に生きていくしか出来ないのかね。
「ん?」
突然目の前に紫の隙間が現れた。当然出てくるのは八雲紫本人であり、何故かはわからないけど、神妙な面持ちで扇を持ってこちらを見ていた。
「一体どうしたんだい?紫」
「……貴方心に穴が空いているって前に言ってたじゃない?」
「ああ、言ったね。丁度今もそのことについて考えていたところだよ」
「……その時、原因はわからなかったわよね?」
「ああ、そうだね。私の頭覗かせたけど……あれ?」
「……その時私が何を言ったか覚えている?」
「……覚えてない」
おかしい。少なくとも何かしら覚えているはずだ。意味のないことだった筈。だけど内容が思い出せない。
常日頃感じていた感覚に関する事を簡単に忘れる筈もない。なら何故?
「……私、実は今朝方に藍が見つけた言葉を見て自分の記憶を確認したのよ」
「言葉?記憶?」
「ええ、【思い出して】という言葉。そう私の文字で書いてあったわ。でもそんな事を書いた記憶が無い。だからこそ確認した」
「それで、それと私と何か関係があるのかい?」
「……今、貴方にも思い出させるわ。でも、多分気を失うかもしれないけどいいかしら?」
「……構わない。やってくれ」
紫の手が私の頭に触れる。何かを弄っている感覚にはなれない。
一体紫は何をしようとしているのか。私は何を忘れているのだろうか……
そして、カチリと何かが合わさった。急激に頭に痛みが走る。
記憶の反流。過去千年に及ぶ記憶の修正。
ああ、そうか、今思い出した……
「少しなら、彼にも気づかれないと思う。今は力を集めなければならない。限定的、貴方の周りだけ虚実の境界を弄るわ。力を集めきったら……今度こそ」
意識が沈みそうになる中、一つの思いを胸に宿す。
覚悟していろ。今度こそ、アンタを手に入れてみせる!!
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歴史ハ繰リ返ス
終ワリヲ告ゲル迄
彼女ハマダ答エニ辿リツケナイ
鍵ハ直グ側二
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