東方忘却録   作:茶ゴス

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映姫視点


東方花映塚 後日談

 やっとこれで、落ち着きを取り戻したかしら。

 花に憑依した霊魂達の大半は死神達により彼岸へと送られた。残った霊魂達も送られてくるのも時間の問題だろう。

 

 もう少し仕事をもたせる死神の数を増やしたほうがいいかもしれないが、死神の中でも、まだまだ未熟な者も多いのは確か……先が思いやられる。

 ため息を吐きながら裁定を行っていると、執務室の扉がノックされた。入るように促すと、鎌を持った死神、私の部下である小野塚小町が入室してくる。

 

 

「映姫様、取り敢えず、追加で送っておきましたよ」

 

「ご苦労さまです小町。この調子で速やかに仕事を終えなさい」

 

「げぇ、まだ休めないのか……」

 

「何かいいましたか?」

 

「いえいえ、何も言ってませんよ」

 

 

 退出した小町を見送りながら再度ため息を吐く。全く、もう少し真面目に出来ないのだろうか。有能ではあるが、何分サボり癖がある死神。もう少し改善されれば今より立場も良くなるだろうに……

 以前言った時は、今の立場で十分と言っていたっけ……困った部下だ。

 

 それにしても、現世の者達は随分とせっかちだった。時間が経てば解決する事を異変だと思い、わざわざ彼岸までやってきていた。確かにこれまではあまり現世には影響を与えていなかったが……西行寺幽々子や八雲紫ならばわかったのではないだろうか。

 それにしても、あのような者がいるとは驚いた。妖怪の身ではある。だが、霊魂は人間、そして。役割は神というあやふやな存在。私の能力が微塵にも効かない相手。これは正しく幻想郷に存在する何かしらの法則を司っている神であるという証拠。神というのは罰そのもの、定められた決まりなのだ。そして、更に分からないのは妖怪の身でありながら人間だということ。人間が妖怪に変貌したわけでもない。妖怪が人間に変貌したわけでもない。ただ、そうあったのだ。

 

 

「おかしな存在」

 

 

 実力も指折り。もしあれが死神ならば随分と仕事が捗るかもしれない。だけど、それはあり得ない話。

 惜しむべきは"名"が無いことか。どうやって存在しているかはわからないが、あれには名前、即ち存在を証明するものが無い。生物であるならばあり得ないこと。名前がその存在を決定付け、更に定着させている。それが無いということは……

 

 

「存在していない存在」

 

 

 矛盾している。しかし、そうとしか考えられない。更には見逃せない事項があれにはあった。

 

 

「死に体……」

 

 

 既にあの妖怪の身は死んでいる。だけど死徒というわけではない。確かに生きてはいる。多くの矛盾で塗り固められた存在。何をもってそこにいるのかがわからないが。ほっとくことは出来ない。

 しかしだ、あれを滅する事は出来ない。もしあれを消してしまえば幻想郷が崩壊する可能性があるから……

 

 まさしく爆弾だ。いつ爆発してもおかしくないあやふやな存在であり、決して手を出すことも出来ない物。これも時間が解決してくれればいいのだが、恐らくは無理なのだろう……

 頭を抱えこんでしまう。厄介な存在を目にしてしまったという事に何度目かわからないため息を吐く。

 

 今現在八雲紫が動いているようだが、期待はできない。彼女の過去を少し覗いたが、あれに対抗し敗北し続けている。何かしら変化がないとあれに勝つことなど出来はしないだろう。死神を貸し与えるか?

 無駄だろう。力では意味が無い。それこそあれに相反する力を持った存在でないといけない。忘却の反対、記憶を司る神のようなものでないと……あれに倶生神が憑いていたならばまだ対抗の余地はあっただろう。しかし、いない。ならば違うものでないといけない。忘却は突き詰めれば消滅ということ、もし対抗できるとしたならばそれは創造を司ったものでないといけない……しかし、その場合だと神ですら対抗し得ないか……

 

 しかし、あれだけ忘却に包まれながら自我を保つ強さは素晴らしい。何を感じ何を考えているかはわからないが、もし爆弾でないならば真の意味で幻想郷の守護神として存在できただろうに……

 

 

 そう言えばあと一つ気になることがあった。八雲紫の記憶と現在の風貌が違う。それに八雲紫が気づいていないようだった……

 

 ん?もう少しで日付が変わる。今日の執務はこれくらいにしておこう。あれの対処については慎重にいかなくてはならない。暫く死神を何人か現世に派遣しておこう。

 

 

「我としては従っているまで……か」

 

 

 あれが最後に言った言葉を繰り返し頭で呟きながら執務室を出る。

 その言葉がもし真実ならば……勘違いでないとすれば、あれは…….

 

 

「個ではない?」

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