東方忘却録   作:茶ゴス

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レミリア視点


第4話「集まる力」

「……聞こえる?」

 

「ええ、聞こえるわ」

 

 

 森を突き進んでいる途中それは唐突に聞こえた。何かを叩きつけるとても大きな音。何かが戦っている……普通に考えれば私達の目標である妖怪と誰かが戦っているのだろうけど……

 何か嫌な予感がする。この先に行く運命が見えない。こんな事は初めてだ。何かしら悪い運命が見えることは多々あるが、見えないというのは無かった……

 

 だけど、行くしか無い。あの八雲紫に借りを作れる絶好のチャンスだ。そして、少し気になる存在。

 何でも千年近く生きていて忘れられて生きてきた存在らしいのだ。大体私の倍程度の生をそう生きられるか?まず不可能だろう……まず妖怪というのは認識が消えれば消滅する。忘れられるというのはそれだけで消滅の危機に瀕しているということ…ありえない。これから戦う相手の規格外差を再確認する……

 

 一息はいて自分の妹に親友、従者達を見る。

 フランと咲夜は少し顔を強張らせている。無理もない、私は人伝に聞いただけだが、この二人は真正面から対峙したのだ…相手の実力派身にしみて理解しているのだろう。特に咲夜に至っては自身の能力が効かない初めての相手だったはず……時を止めることが効かなかった彼女の心境は察せないが、少なくともいい状態とはいえないだろう……

 

 

「安心しなさい咲夜。此度は貴方の主が付いているのよ?」

 

「はい、わかっております」

 

 

 まだ無理か……口では言っているが、少しばかり身体が震えている。

 仕方ない。取り敢えず二人には後ろに下がっていてもらおう。前衛は美鈴、後衛に咲夜とフラン。そして中に私とパチェで行くしか無いわね…

 

 

「お嬢様!!」

 

「!?」

 

 

 突然何かが前方から迫ってきた。咄嗟に美鈴が前に出て飛んできたものを受け止める。

 

 

「うぅ……」

 

 

 飛んできたのは鬼だった。腕を赤く腫らし、背中の服が少し破れている。確かこの鬼は霊夢の所に住み着いている鬼だったはず…宴会で見かけた。

 にしても、飛んできた方向から察するにこの鬼が戦っていたのだろう。鬼にここまでのダメージを与え、吹き飛ばすほどの存在が例の妖怪なのか…八雲紫の言っていたことは正しいって証明されたわけだ……

 

 

「大丈夫ですか!」

 

 

 美鈴が鬼に気を流し活性化を促している。赤く腫れている腕はみるみる治っていく。流石は鬼といった所か…気による活性がここまで顕著に出るのも元々の生命力の高さ故といった所か…

 鬼は唸り声を止め、はっとするように跳び上がった。

 

 

「くっそ、やられた!」

 

 

 悔しそうに腕を振る鬼に少し妙な物を感じる。何故かこの鬼、楽しそうに感じるのだ。もしかしなくとも力量が自分を上回る相手と戦えることに喜びを感じているとでも言うのか……もしそうならば正しく戦闘狂だ…

 

 

「次はこうはいかないぞ!」

 

 

 鬼は此方を一瞥することもなく駆け出す。これで相手が例の妖怪なのだとは確定したわけだけど…

 

 

「どうするレミィ。正直私達で手に負える相手とは思えないけれど」

 

「愚問よパチェ。ここまで来て引き下がれないわ」

 

「そう言うとは思ったけど…」

 

 

 聞けば八雲紫が考える実力者に片っ端から声を掛けたようだし、ここで来ないというのも勿体無いのだ。

 もしかしたら八雲紫が倒せなかった妖怪を倒すことが出来るかもしれないと言う事もここに残っている理由だろう。

 

 

「さあ、私達も行くわよ!!」

 

「ーーーぁぁぁぁああ」

 

「お嬢様!!」

 

 

 また何かが飛んできて美鈴が受け止める。

 今度も鬼だ。先程の鬼とは違う。さっきのは幼い外見だったのに対し此方は随分と大人びた外見をしている。額を赤くし、気を失っているようだ。また美鈴が気を流すと、直ぐ様赤みが無くなり、意識を取り戻す。

 頭をぶんぶんと振り、頬を2回手のひらで叩いた鬼はこれまた好戦的な笑みを浮かべて、立ち上がった。

 

 

「全く、デコピンでここまでするなんて生意気だねぇ」

 

「ねえ貴女、この先に忘却の妖怪がいるのであっているわよね?」

 

「ん?ああ、あってるさ。って事はアンタらも紫に呼ばれたっていう口かい?」

 

 

 今にも駆け出しそうな鬼を呼び止め問いかけるとそう問い返された。その問いに頷くことで肯定すると、鬼は罰が悪そうに頭を掻いてため息を吐いた。

 

 

「ま、アンタらじゃあ力不足かもしれないけど、いないよりはマシだ。アイツの姿が見えたら最高の攻撃を叩き込んでやりな」

 

 

 鬼はそう言い走りだした。

 全く、舐められたものね。ここまで言われたのなら尚更引けないじゃない……

 

 

「じゃあみんな、見敵必殺で行くわよ。見えたら一切の容赦もなく攻撃を仕掛けるわ」

 

 

 私の言葉に全員が頷いた。それを確認し、スペルカードを手に森を駆ける。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

「くらえ!!」

 

「……」

 

「こっちもだよ!!」

 

 

 音のする方に走ってすぐに敵が見えた。聞いたように白いという印象の外見の妖怪が鬼2人を相手に互角異常、いや寧ろあしらうように戦っている。

 

 

「神槍」「星気」「水符」「幻符」「禁忌」

 

 

 それぞれが手に持つスペルカードを光らせ、力を貯める。

 私の右手には紅い槍が、美鈴の目の前には虹色の気の塊が、パチェの周囲に水色の塊が、咲夜の手に持ったナイフが紅く、フランの手に剣の形をした炎がそれぞれ形成される。

 

 

「スピア・ザ・グングニル!!」

「星脈地転弾!!」

「ベリーインレイク」

「殺人ドール」

「レーヴァテイン!!」

 

 

 轟!という音がひびき、空気を裂くように槍を投げる。渾身の一投を放った。

 他のスペルも同じ様に忘却の妖怪へと殺到する。鬼達はそれをいち早く察知しその場を離れたのだが、忘却の妖怪は避ける仕草も見せなかった。

 

 一番早く到達したのは私のスペル。妖怪は紅い槍が当たる直前、腕を振るい、槍を壊した。

 一瞬思考が止まった。渾身の一撃をああも簡単に壊すのか…と

 次に到達したのはフランの炎剣。上から振り下ろすように繰り出された一撃を手の甲で払い、弾いた。

 次は美鈴の気弾。既に両手を私達のスペルを弾くことに使っていたため、今度こそ命中するかと思われた。しかし、身体にあたった瞬間気弾は消滅した。

 続いて咲夜のナイフとパチェの水魔法が殺到するが、周囲に薄青色の壁を形成したかと思えば、ナイフはその壁にあたって止まり、魔法は消滅した。

 

 なんという規格外。これが私達が相手をしなければいけない妖怪というのか……

 

 

「この程度か、つまらんな」

 

 

 妖怪が思わず零したように告げた。

 正直に言おう、カチンときた。しかし、ここで取り乱しては紅魔館の者達への示しがつかないのも事実。

 

 

「所詮、ひよっこはひよっこか」

 

 

 あ、こいつ嫌い。

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