東方忘却録   作:茶ゴス

20 / 34
文視点


第5話「立ち塞がる者」

 私を先頭に、その後方を鴉天狗、次に大天狗様達、最後尾に天魔様という編成で飛行している。

 目指すべきは先程から騒音が響いている場所……恐らくは萃香様達が戦っているのだと思う。あの二人は特にナナシさんを思っているから……

 実力的にも幻想郷内で屈指の二人を相手取るなど考えたくもないが、これから戦う相手はそれが出来る相手。勝ち目なんてないと何度も考えた。だけど、もしそうだとしても止まるつもりはない。あの人には何度も苦汁を舐めさせられてきた。今度の今度は私が舐めさせる番だ。

 

 出来ることならば全力で飛んであそこに行きたい。だけど、私の速度に鴉天狗達は付いてこれない……大天狗様達ならば辛うじて、天魔様くらいしか追いつけないだろう。それではいけない。鴉天狗隊を任せられたのだ。単独行動などもっての外だろう。

 

 

 瞬間、唐突に嫌な予感がした。

 合図を送り、一気に急上昇する。何かが私が立っていた場所を通過した。三日月状の何か…合図はしたものの鴉天狗の何人かが避けきれず、落ちていった。

 

 

「不意打ちとは趣味が悪いですね」

 

「お主達を相手取るのだ、目を瞑って貰えぬか?」

 

 

 現れたのは一人の老人。抜身の刀を持ち、霊魂を傍らに携えた老人。見たことはないが聞いたことがある。白玉楼の庭師、魂魄妖夢の師である魂魄妖忌……何故こんな所に立ち、剰え私達の邪魔をするのだろうか……

 

 

「アンタはそっちに付いたんだな、魂魄妖忌」

 

「無論。初めてスキマ妖怪から記憶を戻されたがな、流石に儂に友は斬れぬよ」

 

 

 天魔様が後方から声をかける。そうか、この人はナナシさんの友人なのか。身体から感じる威圧感は圧巻の一言。あれだけの実力者がこれまで一体何処にいたというのだろうか…少し記者としての血が騒ぐが、今はそうではない。私はナナシさんを倒しに来たのだ。もうあの人のことを忘れたくないから……

 

 

「忘れてもいいのですか?」

 

「ちと勘違いしておらぬか?儂とてあやつに何も思わぬ筈がない」

 

「なら、何故?」

 

「ふむ、頼まれたからじゃよ」

 

 

 頼まれた、あの人に?そんな事はこれまで一度としてなかったはずだ。頼るなら何故私ではないのだろうか…私よりも強い妖怪はいるだろうけど、少しばかり悲しい。

 いや、雑念を取っ払い、対峙しなくては。少しとして油断は出来ない……

 先ほどの一撃、恐らくは斬撃を飛ばしたのだろう。あの速度の一撃、見たこともないほど洗練されているのだろう……

 

 

「お主らはあやつに踊らされてるに過ぎぬよ。真実は巧妙に隠されておるわ。否、近くにあるから見えぬよ」

 

「真実?貴方は何を知っているのですか?」

 

「生憎と停滞しておるお主達には話せぬよ。よっぽどあの店主の方が見どころがあるわ」

 

 

 刀をこちらへ向けて戦闘態勢を取る老人。戦うしか無いのか……それに何かを知っている口ぶりだった。無理矢理にでも聞き出さなければ……

 

 

「射命丸文、お前は先に行け。ここは私が引き受ける」

 

「しかし!」

 

 

 天魔様の突然の言葉に反論する。ここでこの者を倒して先に進むのが最善ではないのかと、訴える。

 

 

「もう遅い。あの半人半霊に斬れないものなど無い。既に私達以外はやられた」

 

「は?」

 

 

 意味がわからず視線を後ろの者達へと向ける。そこにはまだ普通に飛んでいる天狗たちの姿がある。一体何を言ってるのかと

 突然斬撃が襲いかかってきた。咄嗟に身を返して躱す。何も感じれなかった。直感のようなもので躱したようなもの。

 

 はっとして天狗たちをもう一度見ると、全員が落ちていっていた。一体何をしたのだ……

 

 

「これで分かっただろう?あれを相手取るにはお前では力不足だ。ナナシに会う前に離脱するのは嫌だろう?」

 

「しかし……」

 

「黙って命令を聞け。あの斬撃を躱せても見えてはいないだろう?お前には荷が重すぎる」

 

 

 確かにそうだ。このまま私がここに残っていてもどうしようもない。それに今回の目的はナナシさんだ。魂魄妖忌ではない。

 

 

「わかりました。いらぬ心配とは思いますが、天魔様もお気をつけて」

 

「誰に物を言っている?あんな老害、すぐ倒して増援に向かってやる。先に行け」

 

 

 天魔様の言葉を受けたと同時に上空へと飛び立つ。雲を突き抜け、急加速して木が吹き飛ばされている場所へと落下する。

 斬撃が襲いかかってくるが、直ぐ様天魔様の風が斬撃を打ち消し、私の背中を押した。先に行かせてもらいます、天魔様!

 

 

 

 

 

 

 

==============

 

「行かせてしまったか」

 

「私達を甘く見たお前の失敗だよ」

 

「違いない。だが、お主だけでも止めてやろうぞ」

 

「未来からの斬撃とでも言うべきか…全く、私達天狗ですら認識できない斬撃を放つなんて化け物じみているぞ」

 

「数度見ただけで本質に気付くとは思わなんだ」

 

「これでも天狗の長なんだ。舐めてもらっては困るよ」

 

「お主ならば聞こえたのではないか?」

 

「さあね、あんな女の声なんか聞いちゃいないよ。それよりも部下の声の方が大事だからね」

 

「……そうか。尚更お主をあやつに近づけるわけにも行かぬな」

 

「ああ、それでいい。来な、魂魄妖忌」

 

「参る!!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。