東方忘却録   作:茶ゴス

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第3者視点


第12話「偽りの決着」

 大妖精を投げ飛ばした後、チルノは一度距離を取った。距離は30間程。

 周囲からの力の供給は少なくなっているとはいえ間違いなくまだ行われている。だけど、まだあの妖怪を打ち倒すには足りない。総動員で畳み掛けるように攻撃し、時間を稼いでいるのが見える。

 大妖精を庇うように戦っている妖怪は間抜けだと言う者もいるだろうが、チルノはそうは思わない。あの妖怪の事ならば他の者よりも知っているのだ。だからこそ、どういった存在なのだとは理解している。

 

 少しずつ大きくなっていく羽を確認しつつ、何時でも飛べるように構える。

 まだ足りない。全然足りない。もっと力を得なければならない。

 

 

 ふとチルノが背後に視線を向けると十六夜咲夜がパチュリー・ノーレッジと射命丸文を連れて現れた。

 時を止め、この両名をチルノの背後に連れてきた咲夜は直ぐ様駆け出す。あまり時間を止めてはよくない。今現在は大妖精や伊吹萃香がへばりついている状態のため、身体を動かすことは出来ないだろうが、思考は続けることが妖怪には出来る。それでは、連携攻撃の意味が薄れてしまう。使い所を間違えてしまうとその時点で敗北が待っている。

 

 走り去る咲夜を見送りながら、地面に座り込んだパチュリーは肩で息をしながらその口を開いた。

 

 

「…いまかrゲホッ……あなゲホッヒューヒュー」

 

「ちょっと黙ってて下さい。精霊チルノ。貴方のことですから、折を見て突っ込むのでしょう?」

 

「愚問だね。正面から打ち破ってやるよ」

 

「そう言うと思いました。なら私達は貴方の後押しをします。走りだす前に声をかけなさい」

 

 

 チルノはその言葉をいまいち理解できなかったが、視線を前に向けると、機会を伺う。

 まだ自身の力では届かない。何かキッカケがあれば変わるかもしれないが、そのキッカケなど……

 

 

「羽虫にしては頑張ってるじゃない」

 

 

 チルノの背筋が凍りついた。ぐぎぎと鳴るような動作で首を曲げて視線を向けると、そこにはチルノの予想した人物。妖精たちの天敵とも言える存在。風見幽香が立っていた。

 にこやかに笑う彼女に嫌な予感がしてどうしようもないチルノは何時でも逃げれるように準備を行う。

 

 

「安心しなさい。今日の所は貴方を潰すような真似をするつもりはないわ。あいつがやられるのを見に来ただけよ」

 

 

 風見幽香がそう言うと周囲の枯れた植物が途端にその元気を取り戻す。そして、植物たちは更にチルノへと力を送る。

 風見幽香の力は妖力だ。しかし、彼女はその力で植物を活性化させることが出来る。それにより、補完される力はそのままチルノへと流れこむ。凄まじい勢いで流れ込む力は羽を更に巨大化させていき、更にその硬さを増すようにパキパキと音を立てて色が澄んだ薄緑色に変化していく。

 チルノが着ている青いワンピースの色も少しずつ黃色がかっていく。植物の力を多く取り込んだチルノは自身の身体が変わっていくのを感じていた。

 

 

「これで勝率が3割から8割に上がったわね」

 

 

 風見幽香は力を間接的に受け取ったチルノを見て怪しく笑う。まさかだとは思うが、これで残り2割の負けという結果にはならないと考えつつも、彼女は日傘をクルクルと回しながら上空へと視線を向ける。

 

 

「私も少し暴れるとしようかしら」

 

 

 上空へと飛んでいった風見幽香に安堵の息を零しつつ、チルノは足に力を入れる。

 一息吐いて、キッと前方を睨み宣言した。

 

 

「行く!」

 

 

 体を巡る力は凄まじい。今ならあの妖怪にも届くとチルノは感じている。背後から一本の光が打ち放たれた。それと同時にチルノはかけ出し、羽を羽ばたかせて一直線に跳んだ。

 後方の二人も手に持ったスペルカードを発動させた。

 

 

「木…符…【グリーンストーム】」

 

「疾風【風神少女】」

 

 

 パチュリー・ノーレッジのスペルがチルノの周囲に展開され、彼女を守る風を。射命丸文のスペルが暴風を巻き起こしチルノを吹き飛ばすように加速させる風を。

 

 自分自身の加速力に加え、鴉天狗最高峰の風の加速力を得たチルノは周囲の木々を吹き飛ばしながら飛んだ。

 まるで流星と見間違えるほどの凄まじい速度で飛ぶチルノは、自身の手から自然の力を放出した。

 

 虹色の光線が発射され、妖怪へと襲いかかる。

 妖怪は直ぐ様霊力で壁を張ってその光線を止めるが、それを見た悪魔の妹フランドール・スカーレットが嗤い能力を行使する。

 

 

「きゅっとしてドカーン!」

 

 

 破壊の目を潰された壁は音を立てて砕ける。その様子を冷めたようにみた妖怪は再度壁を張った。

 それを見てフランドール・スカーレットは再度破壊をするために、能力を行使する。しかし、敵わなかった。壁には破壊の目が存在しなかったのだ……

 

 光線が壁にあたり拮抗する。それに困惑したのは妖怪の方だった。この壁は忘却の能力を付加した壁なのだ。故に破壊もされない。更には風見幽香のマスタースパークを打ち消す事が出来る。しかし、消滅ではなく抑えているのだ。つまりこの光線は忘却の及ばない力であるとの証明となっている。

 

 妖怪は直ぐ様顔にしがみついている大妖精と足にしがみついている伊吹萃香を引き剥がし投げ飛ばした。

 それと同時に壁にパキパキとヒビが入っていく。急いで霊力を注いで補強するが、一度壊れかけたものがいくら硬くなっても、ヒビからもろく崩壊していくもので、ほんの数秒で壁が壊れ、光線に飲み込まれた。

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