東方忘却録   作:茶ゴス

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空視点


最終話「空」

 此方の前に並び立つのは二人の妖怪と一人の人間。しかし、今現在此方に影響を及ぼし得る者は人間一人のみ。その事を妖怪達は理解しているようで、悔しげに此方を見ているだけだった……

 今思えば長い年月を過ごしたものだ。天狐の身で在りながら幾多も出会いと別れを繰り返して此方は生きてきた。しかし此方は朧気に消える存在、故に此方の残響を残すわけにもいくまい。

 

 少々心苦しくは思うが、既に千年は此方が受け持ったのだ。役目を終えても良い頃合いだろう。

 

 一人の人間、博麗の巫女博麗霊夢が霊力を高めているのが分かる。違う、違うのだ。そうではない。

 其方の能力はそう使用するのではない。いかに法則を無視して存在しようとも、それは其方だけなのだ。故に高めるのは己の肉体。其のような子供騙しの遊びではいけないぞ……

 

 打ち出してきた霊力弾を消し飛ばす。此方の能力のように間接的な使用は少々認識を改めなければならんのだ。

 普通の人間では困難だろう……故に其方が攻撃するならば己で攻撃する他ない。

 

 一歩下がってお祓い棒を躱す、次に回し蹴りを放ってきたのを足を掴んで止める。

 肉弾戦ならばまだ勝機はあるかもしれない事には変わりない。しかし、彼女の胆力では些か無理があるかもしれん。そういう点で言えば過去の博麗の巫女達の方がまだ可能性は会ったが、彼女達の場合此方と戦う土俵にすら立ってはいなかった。後10年修行をすれば此方に対抗できるかもしれない。だけど、もう此方を真正面から倒すには時間が足りない。

 

 

 既に準備は終えた。友と語らう言葉は持ち合わせていない。心残りが一つだけあるといえばあるが、それも仕方のない事、文句をいう者達もいるであろうが、此方が消滅すれば自ずと文句を言うための記憶すらも消滅する。真の意味での忘却を知らない者達ばかりだ。生物であろうと無生物であろうと関係のないもう一つの忘却、それが消滅。故に自然に対しても矛盾が働かず妖精にも防ぐ手立てがない。忘れるということは物を隠すのと同義。しかし、隠し通せば物を壊すのと同義なのだ。消滅された記憶はもう戻ることはない。

 

 不安要素といえば目の前の少女だけだ。彼女の浮く力が発動している状態であれば消滅すら受け付けないだろう。それでは意味が無い、いや、意味はあるのだろうが何かあると困るのだ。幸いにも少女は能力を常に展開しているわけではないようだ。これならばまだ大丈夫。

 

 

 右手の拳を振り下ろしてくるのを掌で受け止める。そのまま腕をふるい地面へと叩きつけた。逃げに徹していたのに油断していたのであろう、突然の反撃にろくに受け身も取れなかった少女は能力の制御を見誤る。本来であれば地面に叩きつけられることもないだろうが、此方の反撃に気が動転したのが理由なのだろう。

 

 既に平静ではないであろう少女に霊力弾を打ち込む。死にはしないが複数回当たれば大の鬼でも気絶してしまう程度の威力。

 腹部に3発当てると手に力が入らなくなり、案の定気絶した。少女を見るにやはり気絶している状態では能力を行使出来ないようで、これで問題なく此方は消えれるというわけだ。

 

 

 能力を展開する。博麗の巫女がやられたことにより傍観していた二人は一斉にかけだしてくるがもう遅い。此方を取り囲む霊力壁に行く手を阻まれ、どうすることも出来ない。

 奥では結界に隔離された者達が何かを叫んでいるのが分かる。流石に2枚も霊力で出来た壁を通しては声がろくに聞こえない。少しばかり残念ではあるがこれも仕方のない事。

 

 視界の端には走ってくる者達や開けられた隙間なども見えた。済まないな。此方は随分と勝手に生きてきたであろう?迷惑もかけただろうし困惑もさせたと思う。だが、既に此方は彼女に意味を返さないといけない時が来たのだ。

 

 

 妖精達よありがとう、此方の友となってくれて

 妖怪達よありがとう、戦うすべを教えてくれて

 人間達よありがとう、此方の心を支えてくれて

 

 

 勝手だが、此方は消える。

 

 

 妖精達よ済まない、何も打ち明けなくて

 妖怪達よ済まない、当て馬の様に扱って

 人間達よ済まない、勝手に里に介入して

 

 

ーそして

 

 

 

 済まない。未だ見ぬ存在よ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 その日、幻想の里から忘却の存在が消えた。忘却の存在の痕跡の全てが消滅し幻想の形は新たに形成された。

 

 

 しかし、忘却は消えない。忘却の存在が最期まで懺悔し続けた懸念が確かに実現し、それは形成された。

 

 

 

 つづく

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次回から東方忘却記始まります。

これまでのは東方忘却縁でした。
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